国際捕鯨取締条約/公布時/1949年10月11日発効
国際捕鯨取締條約をここに公󠄃布する。
御名 御璽
昭和二十六年七月十七日
内閣総理大臣 吉田 茂
條約第二号
国際捕鯨取締條約
正当な委任を受けた自己の代表者がこの條約に署名した政府は、
鯨族という大きな天然資󠄄源を将来の世代のために保護することが世界の諸国の利益であることを認󠄃め、
捕鯨の歷史󠄃が一区域から他の区域への濫獲及び一鯨種から他の鯨種への濫獲を示しているためにこれ以上の濫獲からすべての種類の鯨を保護することが緊要であることにかんがみ、
鯨族が捕鯨を適󠄃当に取り締まれば繁殖が可能であること及び鯨族が繁殖すればこの天然資󠄄源をそこなわないで捕獲できる鯨の数を増加することができることを認󠄃め、
広範囲の経済上及び栄養󠄄上の困窮を起さずにできるだけすみやかに鯨族の最適󠄃の水準を実現することが共通󠄃の利益であることを認󠄃め、
これらの目的を逹成󠄃するまでは、現に数の減つたある種類の鯨に回復期間を與えるため、捕鯨作業を捕獲に最もよく耐えうる種類に限らなければならないことを認󠄃め、
千九百三十七年六月八日にロンドンで署名された国際捕鯨取締協定並びに千九百三十八年六月二十四日及び千九百四十五年十一月二十六日にロンドンで署名された同協定の議定書の規定に具󠄄現された原則を基礎として鯨族の適󠄃当で有効な保存及び増大を確保するため、捕鯨業に関する国際取締制度を設けることを希望󠄅し、且つ、
鯨族の適󠄃当な保存を図つて捕鯨産業の秩序のある発展を可能にする條約を締結することに決定し、
次󠄄のとおり協定した。
第一條
1 この條約は、その不可分󠄃の一部を成󠄃す附表を含む。すべて「條約」というときは、現在の辞句における、又󠄂は第五條の規定に従つて修正されたこの附表を含むものと了解する。
2 この條約は、締約政府の管轄󠄅下にある母船󠄄、鯨体処理場及び捕鯨船󠄄並びにこれらの母船󠄄、鯨体処理場及び捕鯨船󠄄によつて捕鯨が行われるすべての水域に適󠄃用する。
第二條
この條約で用いるところでは、
1 「母船󠄄」とは、船󠄄内又󠄂は船󠄄上で鯨を全󠄃部又󠄂は一部処理する船󠄄舶をいう。
2 「鯨体処理場」とは、鯨を全󠄃部又󠄂は一部処理する陸上の工場をいう。
3 「捕鯨船󠄄」とは、鯨の追󠄃尾、捕獲、引寄せ、緊縛󠄃又󠄂は探索の目的に用いる船󠄄舶をいう。
4 「締約政府」とは、批准書を寄託し、又󠄂はこの條約への加入を通󠄃吿した政府をいう。
第三條
1 締約政府は、各締約政府の一人の委員から成󠄃る国際捕鯨委員会(以下「委員会」という。)を設置することに同意する。各委員は、一個の投票権を有し、且つ、一人以上の專門家及び顧問を同伴󠄃することができる。
2 委員会は、委員のうちから一人の議長及び副議長を選󠄄挙し、且つ、委員会の手続規則を定める。委員会の決定は、投票する委員の單純多数決で行う。但し、第五條による行動については、投票する委員の四分󠄃の三の多数を要する。手続規則は、委員会の会合における決定以外の決定について規定することができる。
3 委員会は、この書記長及び職員を任命することができる。
4 委員会は、その委任する任務の遂󠄅行のために望󠄅ましいと認󠄃める小委員会を、委員会の委員及び專門家又󠄂は顧問で設置することができる。
5 委員会の各委員並びにその專門家及び顧問の費用は、各自の政府が決定し、且つ、支󠄂拂う。
6 国際連󠄃合と連󠄃携する專門機関が捕鯨業の保存及び発展と捕鯨業から生ずる生産物とに関心を有することを認󠄃め、且つ、任務の重複を避󠄃けることを希望󠄅し、締約政府は、委員会を国際連󠄃合と連󠄃携する一の專門機関の機構󠄃のうちに入れるべきかどうかを決定するため、この條約の実施後二年以内に相互に協議するものとする。
7 それまでの間、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連󠄃合王国政府は、他の締約政府と協議して、委員会の第一回会合の招集を取りきめ、且つ、前記の第六項に揭げた協議を発議する。
8 委員会のその後の会合は、委員会が決定するところに従つて招集する。
第四條
1 委員会は、独立の締約政府間機関若しくは他の公󠄃私の機関、施設若しくは団体と共同して、これらを通󠄃じて、又󠄂は單独で、次󠄄のことを行うことができる。
⒜ 鯨及び捕鯨に関する研究及び調󠄃查を奬励し、勧吿し、又󠄂は必要があれば組織すること。
⒝ 鯨族の現状及び傾向並びにこれらに対する捕鯨活動の影響に関する統計的資󠄄料を集めて分󠄃析すること。
⒞ 鯨族の数を維持し、及び増加する方法に関する資󠄄料を研究し、審查し、及び頒󠄃布すること。
2 委員会は、事業報吿の刊行を行う。また、委員会は、適󠄃当と認󠄃めた報吿並びに鯨及び捕鯨に関する統計的、科学的及び他の適󠄃切な資󠄄料を、單独で、又󠄂はノールウェー国サンデフョルドの国際捕鯨統計局並びに他の団体及び機関と共同して刊行することができる。
第五條
1 委員会は、鯨資󠄄源の保存及び利用について、⒜保護される種類及び保護されない種類、⒝解禁期及び禁漁期、⒞解禁水域及び禁漁水域(保護区域の指定を含む。)、⒟各種類についての大きさの制限、⒠捕鯨の時期、方法及び程度(一漁期における鯨の最大捕獲量を含む。)、⒡使󠄃用する漁具󠄄、裝置及び器具󠄄の型式及び仕様、⒢測定方法並びに⒣捕獲報吿並びに他の統計的及び生物学的記録に関して規定する規則の採󠄃択によつて、附表の規定を随時修正することができる。
2 附表の前記の修正は、⒜この條約の目的を遂󠄅行するため並びに鯨資󠄄源の保存、開発及び最適󠄃の利用を図るために必要なもの、⒝科学的認󠄃定に基くもの、⒞母船󠄄又󠄂は鯨体処理場の数又󠄂は国籍に対する制限を伴󠄃わず、また母船󠄄若しくは鯨体処理場又󠄂は母船󠄄群若しくは鯨体処理場群に特定の割󠄅当をしないもの並びに⒟鯨の生産物の消󠄃費者及び捕鯨産業の利益を考慮に入れたものでなければならない。
3 前記の各修正は、締約攻府については、委員会が各締約政府に修正を通󠄃吿した後九十日で効力を生ずる。し、⒜いずれかの政府がこの九十日の期間の満了前に修正に対して委員会に異議を申し立てたときは、この修正は、追󠄃加の九十日間は、いずれの政府についても効力を生じない。⒝そこで、他の締約政府は、この九十日の追󠄃加期間の満了期日又󠄂はこの九十日の追󠄃加期間中に受領された最後の異議の受領の日から三十日の満了期日のうちいずれか遅󠄂い方の日までに、この修正に対して異議を申し立てることができる。また、⒞その後は、この修正は、異議を申し立てなかつたすべての締約政府について効力を生ずるが、このように異議を申し立てた政府については、異議の撤回の日まで効力を生じない。委員会は、異議及び撤回の各を受領したときは直ちに各締約政府に通󠄃吿し、且つ、各締約政府は、修正、異議及び撤回に関するすべての通󠄃吿の受領を確認󠄃しなければならない。
4 いかなる修正も、千九百四十九年七月一日の前には、効力を生じない。
第六條
委員会は、鯨又󠄂は捕鯨及びこの條約の目的に関する事項について、締約政府に随時勧吿を行うことができる。
第七條
締約政府は、この條約が要求する通󠄃吿並びに統計的及び他の資󠄄料を、委員会が定める様式及び方法で、ノールウェー国サンデフョルドの国際捕鯨統計局又󠄂は委員会が指定する他の団体にすみやかに伝逹することを確保しなければならない。
第八條
1 この條約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適󠄃当と認󠄃める数の制限及び他の條件に従つて自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認󠄃可する特別許可書をこれに與えることができる。また、この條の規定による鯨の捕獲、殺害󠄆及び処理は、この條約の適󠄃用から除外する。各締約政府は、その與えたすべての前記の認󠄃可を直ちに委員会に報吿しなければならない。各締約政府は、その與えた前記の特別許可書をいつでも取り消󠄃すことができる。
2 前記の特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、收得金は、許可を與えた政府の発給した指令書に従つて処分󠄃しなければならない。
3 各締約政府は、この條の第一項及び第四條に従つて行われた研究調󠄃查の結果を含めて鯨及び捕鯨について同政府が入手しうる科学的資󠄄料を、委員会が指定する団体に、実行可能な限り、且つ、一年をこえない期間ごとに送󠄃付しなければならない。
4 母船󠄄及び鯨体処理場の作業に関連󠄃する生物学的資󠄄料の継続的な收集及び分󠄃析が捕鯨業の健全󠄃で建󠄄設的な運󠄃営に不可欠であることを認󠄃め、締約政府は、この資󠄄料を得るために実行可能なすべての措置を執るものとする。
第九條
1 各締約政府は、この條約の規定の適󠄃用とその政府の管轄󠄅下の人又󠄂は船󠄄舶が行う作業におけるこの條約の規定の侵󠄃犯の処罰とを確保するため、適󠄃当な措置を執らなければならない。
2 この條約が捕獲を禁止した鯨については、捕鯨船󠄄の砲󠄃手及び乗組員にその仕事の成󠄃績との関係によつて計算する賞與又󠄂は他の報酬を支󠄂拂つてはならない。
3 この條約に対する侵󠄃犯又󠄂は違󠄄反は、その犯罪について管轄󠄅権を有する政府が起訴しなければならない。
4 各締約政府は、その監督官が報吿したその政府の管轄󠄅下の人又󠄂は船󠄄舶によるこの條約の規定の各侵󠄃犯の完全󠄃な詳細を委員会に伝達󠄃しなければならない。この通󠄃知は、侵󠄃犯の処理のために執つた措置及び科した刑罰の報吿を含まなければならない。
第十條
1 この條約は、批准され、批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託する。
2 この條約に署名しなかつた政府は、この條約が効力を生じた後、アメリカ合衆国政府に対する通󠄃吿書によつてこの條約に加入することができる。
3 アメリカ合衆国政府は、寄託された批准書及び受領した加入書のすべてを他のすべての署名政府及びすべての加入政府に通󠄃知する。
4 この條約は、オランダ国、ノールウェー国、ソヴィエト社会主義共和国連󠄃邦󠄆、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連󠄃合王国並びにアメリカ合衆国の政府を含む少くとも六の署名政府が批准書を寄託したときにこれらの政府について効力を生じ、また、その後に批准し又󠄂は加入する各政府については、その批准書の寄託の日又󠄂はその加入通󠄃吿書の受領の日に効力を生ずる。
5 附表の規定は、千九百四十八年七月一日の前には、適󠄃用しない。第五條に従つて採󠄃択した附表の修正は、千九百四十九年七月一日の前には、適󠄃用しない。
第十一條
締約政府は、いずれかの年の一月一日以前に寄託政府に通󠄃吿することによつて、その年の六月三十日にこの條約から脫退󠄃することができる。寄託政府は、この通󠄃吿を受領したときは、直ちに他の締約政府に通󠄃報する。他の締約政府は、寄託政府から前記の通󠄃吿の謄󠄄本を受領してから一箇月以内に、同様に脫退󠄃通󠄃吿を行うことができる。この場合には、條約は、この脫退󠄃通󠄃吿を行つた政府についてその年の六月三十日に効力を失う。
この條約は、署名のために開かれた日の日付を附され、且つ、その後十四日の間署名のために開いて置く。
以上の証拠として、下名は、正当な委任を受け、この條約に署名した。
千九百四十六年十二月二日ワシントンにおいてイギリス語で作成󠄃した。本書の原本は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する。アメリカ合衆国政府は、その認󠄃証謄󠄄本を他のすべての署名政府及び加入政府に送󠄃付する。
アルゼンティン国
オー・イヴァニセヴィッチ
ホータ・エメ・モネータ
ジー・ブラウン
ベドロ・アーチェ・ブルーノ・ヴィデーラ
オーストラリア
エフ・エフ・アンダースン
ブラジル国
パウロ・フローエス・ダ・クルーズ
カナダ
エイチ・エイチ・ロング
ハリー・エー・スコット
チリ国
アグースティン・エレ・エドワーズ
デンマーク国
ペー・エフ・エリクセン
フランス国
フランシス・ラコスト
オランダ国
デー・イェー・ファン・ダイク
ニュー・ジーランド
ジー・アール・パウルズ
ノールウェー国
ビルゲル・ベルゲルセン
ペルー国
セー・ロタルデ
ソヴィエト社会主義共和国連󠄃邦󠄆
アレクサンデル・エス・ボグダーノフ
ユージン・イー・ニキーシン
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連󠄃合王国
エー・ティー・エー・ドブスン
ジョン・トムスン
アメリカ合衆国
レミントン・ケロッグ
アイラ・エヌ・ゲーブリエルスン
ウィリアム・イー・エス・フロリー
南アフリカ連󠄃邦󠄆
エイチ・ティー・アンドルーズ
附表
1⒜ 各母船󠄄には、二十四時間監督を行うために、少くとも二人の捕鯨監督官を置かなければならない。これらの監督官は、母船󠄄に対して管轄󠄅権を有する政府によつて任命され、且つ、給料を支󠄂拂われる。
⒝ 各鯨体処理場では、充分󠄃な監督を行わなければならない。各鯨体処理場に勤務する監督官は、鯨体処理場に対して管轄󠄅権を有する政府によつて任命され、且つ、給料を支󠄂拂われる。
2 こく鯨又󠄂はせみ鯨を捕獲し、又󠄂は殺すことは、禁止する。但し、これらの鯨の肉及び生産物を土民の地方的消󠄃費のためにのみ用いる場合には、この限りでない。
3 稚鯨若しくは乳󠄃飮鯨又󠄂は稚鯨若しくは乳󠄃飮鯨を伴󠄃う雌鯨を捕獲し、又󠄂は殺すことは、禁止する。
4 次󠄄の区域では、ひげ鯨を捕獲し、又󠄂は処理するために母船󠄄又󠄂はこれに附属する捕鯨船󠄄を使󠄃用することは、禁止する。
⒜ 北緯六十六度以北の水域。但し、東経百五十度から東へ西経百四十度までにおいては、母船󠄄又󠄂は捕鯨船󠄄によるひげ鯨の捕獲又󠄂は殺害󠄆は、北緯六十六度と北緯七十二度との間で許可する。
⒝ 南緯四十度以北の大西洋及びその附属水域
⒞ 南緯四十度と北緯三十五度との間にある西経百五十度以東の太平󠄃洋及びその附属水域
⒟ 南緯四十度と北緯二十度との間にある西経百五十度以西の太平󠄃洋及びその附属水域
⒠ 南緯四十度以北のインド洋及びその附属水域
5 西経七十度から西へ西経百六十度までの南緯四十度以南の水域においては、ひげ鯨を捕獲し、又󠄂は処理するために母船󠄄又󠄂はこれに附属する捕鯨船󠄄を使󠄃用することは、禁止する。
6 南緯四十度以南の水域においては、ざとう鯨を捕獲し、又󠄂は処理するために母船󠄄又󠄂はこれに附属する捕鯨船󠄄を使󠄃用することは、禁止する。但し、千九百四十九年―千九百五十年及び千九百五十年―千九百五十一年の各遠󠄄洋捕鯨期には、最大限千二百五十頭のざとう鯨をこれらの水域で捕獲することができる。
7⒜ 南緯四十度以南の水域においては、ひげ鯨を捕獲し、又󠄂は処理するために母船󠄄又󠄂はこれに附属する捕鯨船󠄄を使󠄃用することは、禁止する。但し、十二月二十二日から翌󠄃年四月七日までの期間(両日を含む。)は、この限りでない。
⒝ 禁漁期における処理に関する前記の禁止にかかわらず、解禁期に捕獲した鯨の処理は、解禁期の終󠄃了後に完了することができる。
8⒜ 解禁期に捕獲されるひげ鯨で締約政府の管轄󠄅下の母船󠄄に附属する捕鯨船󠄄によつて南緯四十度以南の水域で捕獲されるものの数は、しろながす鯨單位一万六千頭をこえてはならない。
⒝ この項の⒜の適󠄃用上、しろながす鯨單位の頭数は、しろながす鯨一頭が次󠄄のものに等しいという基礎で計算する。
㈠ ながす鯨二頭 又󠄂は
㈡ ざとう鯨二頭半󠄃 又󠄂は
㈢ いわし鯨六頭
⒞ 各締約政府の管轄󠄅下の母船󠄄に附属するすべての捕鯨船󠄄が南緯四十度以南の水域で捕獲したしろながす鯨單位の頭数に関する資󠄄料については、各曆週󠄃が終󠄃つた後二日以内に、條約第七條の規定による通󠄃吿がなされなければならない。
⒟ いずれかの年の四月七日前に鯨の捕獲がこの項(の)aによつて許された最大量に達󠄃すると認󠄃められる場合には、委員会又󠄂は委員会が指定する他の団体は、鯨の最大捕獲量に達󠄃すると認󠄃める日を提供された資󠄄料を基礎として決定し、且つ、この日の二週󠄃間以上前にこの日を各締約政府に通󠄃吿する。母船󠄄に附属する捕鯨船󠄄によるひげ鯨の捕獲は、こうして決定した日の後は、南緯四十度以南の水域では違󠄄法とする。
⒠ 南緯四十度以南の水域で捕鯨作業に従事する意図を有する各母船󠄄については、條約第七條の規定による通󠄃吿がなされなければならない。
9 次󠄄の長さに達󠄃しないしろながす鯨、ながす鯨、いわし鯨、ざとう鯨又󠄂はまつこう鯨を捕獲し、又󠄂は殺すことは、禁止する。
⒜ しろながす鯨 |
七十フィート(二十一メートル三) |
⒝ ながす鯨
|
五十五フィート(十六メートル八) |
⒞ いわし鯨
|
四十フィート(十二メートル二) |
⒟ ざとう鯨
|
三十五フィート(十メートル七) |
⒠ まつこう鯨
|
三十五フィート(十メートル七) |
但し、長さが六十五フィート(十九メートル八)以上のしろながす鯨、五十フィート(十五メートル二)以上のながす鯨及び三十五フィート(十メートル七)以上のいわし鯨は、これらの鯨の肉が人又󠄂は動物の食󠄃料として地方的消󠄃費のために使󠄃用される場合には、鯨体処理場に引き渡すために捕獲することができる。
鯨は、甲板又󠄂は解剖盤に靜置したときに、鯨の一端に並べて甲板の張板に打ち込󠄃むことのできるスパイクのついた棒を零の方の端に付けた鋼製の卷尺でできるだけ正確に測らなければならない。卷尺は、鯨体に平󠄃行して直線に伸ばし、且つ、鯨の他の端に並べて目盛󠄃を読まなければならない。測定上、鯨の両端は、上あごの先端と尾ひれの岐点とする。寸法は、巻尺で正確に読み取つた後、最近󠄃値のフィートで記入しなければならない。すなわち、七十五フィート六インチと七十六フィート六インチとの間の鯨は、七十六フィートと記入し、また、七十六フィート六インチと七十七フィート六インチとの間の鯨は、七十七フィートと記入しなければならない。鯨の寸法のうち丁度二分󠄃の一フィートの部分󠄃は、二分󠄃の一フィート上位に記入しなければならない。たとえば、丁度七十六フィート六インチは、七十七フィートと記入しなければならない。
10⒜ ひげ鯨を捕獲し、又󠄂は処理するために締約政府の管轄󠄅下にある鯨体処理場及びこれに附属する捕鯨船󠄄を使󠄃用することは、禁止する。但し、この項の⒝に従つて締約政府が許可した場合を除く。
⒝ 各締約政府は、その管轄󠄅下にあるすべての鯨体処理場及びこれらの鯨体処理場に附属する捕鯨船󠄄に対して、ひげ鯨の捕獲又󠄂は処理が許される一解禁期を宣言する。この解禁期は、いずれかの十二箇月間において継続的な六箇月をこえない期間とし、且つ、締約政府の管轄󠄅下にあるすべての鯨体処理場に適󠄃用する。但し、ひげ鯨の捕獲又󠄂は処理に使󠄃用する同じ締約政府の管轄󠄅下にあるもよりの鯨体処理場から千マイルをこえた所にある、ひげ鯨の捕獲又󠄂は処理に使󠄃用する鯨体処理場に対しては、別個の解禁期を宣言することができる。
⒞ この項の⒜の禁止にかかわらず、解禁期に捕獲した鯨の処理は、このような解禁期の終󠄃了後に完了することができる。
11 ひげ鯨を処理するために南緯四十度以南の水域で一漁期中に使󠄃用した母船󠄄をこの漁期の終󠄃了から一年間以内に同じ目的のために他の区域で使󠄃用することは、禁止する。
12⒜ 捕獲したすべての鯨は、母船󠄄又󠄂は鯨体処理場に引き渡さなければならない。また、この鯨のすべての部分󠄃は、煮󠄃沸又󠄂は他の方法で加工しなければならない。但し、すべての鯨の内臓、ひげ及び胸びれ、まつこう鯨の肉及び人の食󠄃料又󠄂は動物の飼料に充てる鯨の部分󠄃の肉を除く。
⒝ 「ダヴァル」及び防げん材として使󠄃用する鯨の死体の完全󠄃な処理は、これらの鯨の肉又󠄂は骨が不良の状態にある場合には必要でないものとする。
13 母船󠄄への引渡しのための鯨の捕獲は、殺した時から処理のために母船󠄄の甲板に引き揚げる時までに、鯨の死体(防げん材として使󠄃用する鯨の死体を除く。)が三十三時間以上海中に置かれないように、母船󠄄の船󠄄長又󠄂は管理人が調󠄃整し、又󠄂は制限しなければならない。捕鯨に従事するすべての捕鯨船󠄄は、各鯨を捕獲した時刻を無線で母船󠄄に報吿しなければならない。
14 母船󠄄、鯨体処理場及び捕鯨船󠄄の砲󠄃手及び従業員は、報酬が捕獲した鯨の種類、大きさ及び生産高のような要素に相当の程度よるものであり、捕獲した鯨の数のみによるものではないという條件で雇用しなければならない。乳󠄃の充満した鯨又󠄂は乳󠄃を分󠄃泌中の鯨の捕獲については、捕鯨船󠄄の砲󠄃手又󠄂は乗組員に賞與又󠄂は他の報酬を支󠄂拂つてはならない。
15 鯨及び捕鯨に関するすべての公󠄃の法令及び規則並びにこれらの法令及び規則の変更󠄃の謄󠄄本は、委員会に送󠄃付しなければならない。
16 すべての母船󠄄及び鯨体処理場については、⒜捕獲した各種の鯨の数、そのうちの失われたものの数及び各母船󠄄又󠄂は鯨体処理場で処理したものの数に関する統計的資󠄄料、⒝これらの鯨から得た各品位の油の合計数量及びミール、肥料(グァーノ)その他の生産物の数量に関する統計的資󠄄料並びに⒞母船󠄄又󠄂は鯨体処理場で処理した各鯨に関する捕獲の日及び大体の経緯度、種類及び性、長さ並びに胎兒があるときは確めうる限り胎兒の長さ及び性の詳細について、條約第七條の規定による通󠄃吿がなされなければならない。前記の⒜及び⒞に揭げた資󠄄料は、実地検数の際に検証しなければならない。また、鯨の子を産む場所及び移動経路についても、委員会に通󠄃吿しなければならない。
これらの資󠄄料を通󠄃報するに当つては、次󠄄の事項を明示しなければならない。
⒜ 各母船󠄄の船󠄄名及び総トン数
⒝ 捕鯨船󠄄の数及び合計総トン数
⒞ 当該期間中作業を行つた鯨体処理場の表
17 條約第二條に揭げた鯨体処理場の定義にかかわらず、締約政府の管轄󠄅下で作業を行う母船󠄄で、その移動がこの政府の領水のみに限るものは、次󠄄の区域内では、鯨体処理場の作業を規律する規則に従わなければならない。
⒜ マダガスカル及びその属地の沿󠄄岸並びにフランス領アフリカの西岸
⒝ 北ヘエクスマス湾を含むノースウェストみさきに至るまでのシャーク湾という区域及びオールバニー港󠄃を含むキング・ジョージズ・サウンドにおけるオーストラリアの西岸並びにトゥーフォゥルド湾及びジャーヴィス湾におけるオーストラリアの東岸
18 次󠄄の用語は、それぞれ定められた意味を有する。すなわち、
「ひげ鯨」とは、歯鯨以外の鯨をいう。
「しろながす鯨」とは、ブルー・ホェール、シボルズ・ロークァル又󠄂はサルファー・ボトムの名で知られる鯨をいう。
「ながす鯨」とは、コモン・フィンバック、コモン・ロークァル、フィンバック、フィナー、フィン・ホェール、ヘリング・ホェール、レーザーバック又󠄂はトルー・フィン・ホェールの名で知られる鯨をいう。
「いわし鯨」とは、バラエノプテラ・ボレアリス、セイ・ホェール、ルドルフィーズ・ロークァル、ポラック・ホェール又󠄂はコールフィッシュ・ホェールの名で知られる鯨をいい、且つ、バラェノプテラ・ブリデイ、ブライズ・ホェールを含むものと解する。
「こく鯨」とは、グレー・ホェール、カリフォルニア・グレー、デヴィル・フィッシュ、ハード・ヘッド、マッセル・ディガー、グレー・バック、リップ・サックの名で知られる鯨をいう。
「ざとう鯨」とは、バンチ、ハンプバック、ハンプバック・ホェール、ハンプバックト・ホェール、ハンプ・ホェール又󠄂はハンチバックト・ホェールの名で知られる鯨をいう。
「せみ鯨」とは、アトランティック・ライト・ホェール、アークティック・ライト・ホェール、ビスケーヤン・ライト・ホェール、バウヘッド、グレート・ポーラー・ホェール、グリーンランド・ライト・ホェール、グリーランド・ホェール、ノードケーバー、ノース・アトランティック・ライト・ホェール、ノース・ケープ・ホェール、パシフィック・ライト・ホェール、ピグミー・ライト・ホェール、サザン・ピグミー・ライト・ホェール又󠄂はサザン・ライト・ホェールの名で知られる鯨をいう。
「まつこう鯨」とは、スパーム・ホェール、スパーマセット・ホェール、カシャロット又󠄂はポット・ホェールの名で知られる鯨をいう。
「ダヴァル」とは、漂流中を発見された死鯨で請󠄃求者のないものをいう。
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。