教育令 (明治13年太政官布告第59号)
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編集○第五十九号(十二月二十八日 輪廓附)
明治十二年九月第四十号布告教育令左ノ通改正候条此旨布告候事
第一条 全国ノ教育事務ハ文部卿之ヲ統摂ス故ニ学校幼稚園書籍館等ハ公立私立ノ別ナク皆文部卿ノ監督内ニアルヘシ
第二条 学校ハ小学校中学校大学校師範学校専門学校農学校商業学校職工学校其他各種ノ学校トス
第三条 小学校ハ普通ノ教育ヲ児童ニ授クル所ニシテ其学科ヲ修身読書習字算術地理歴史等ノ初歩トス土地ノ情況ニ随ヒテ罫画唱歌体操等ヲ加ヘ又物理生理博物等ノ大意ヲ加フ殊ニ女子ノ為ニハ裁縫等ノ科ヲ設クヘシ
但巳ムヲ得サル場合ニ於テハ修身読書習字算術地理歴史ノ中地理歴史ヲ減スルコトヲ得
第四条 中学校ハ高等ナル普通学科ヲ授クル所トス
第五条 大学校ハ法学理学医学文学等ノ専門諸科ヲ授クル所トス
第六条 師範学校ハ教員ヲ養成スル所トス
第七条 専門学校ハ専門一科ノ学術ヲ授クル所トス
第八条 | 農学校ハ農耕ノ学業ヲ授クル所トス 商業学校ハ商売ノ学業ヲ授クル所トス 職工学校ハ百工ノ職芸ヲ授クル所トス |
以上数条掲クル所何ノ学校ヲ論セス各人皆之ヲ設置スルコトヲ得ヘシ
第九条 各町村ハ府知事県令ノ指示ニ従ヒ独立或ハ聯合シテ其学齢児童ヲ教育スルニ足ルヘキ一箇若クハ数箇ノ小学校ヲ設置スヘシ
但本文校小学校ニ代ルヘキ私立小学校アリテ府知事県令ノ認可ヲ経タルトキハ別ニ設置セサルモ妨ケナシ
第十条 各町村ハ学務ヲ幹理セシメンカ為ニ小学校ヲ設置スル独立或ハ聯合ノ区域ニ学務委員ヲ置キ戸長ヲ以テ其員ニ加フヘシ
但人員ノ多寡給料ノ有無及其額ハ区町村会之ヲ評決シ府知事県令ノ認可ヲ経ヘシ
第十一条 学務委員ハ町村人民其定員ノ二倍若クハ三倍ヲ薦挙シ府知事県令其中ニ就テ之ヲ選任スヘシ
但薦挙ノ規則ハ府知事県令之ヲ起草シテ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第十二条 学務委員ハ府知事県令ノ監督ニ属シ児童ノ就学学校ノ設置保護等ノ事ヲ掌ルヘシ
第十三条 凡児童六年ヨリ十四年ニ至ル八箇年ヲ以テ学齢トス
第十四条 学齢児童ヲ就学セシムルハ父母後見人等ノ責任タルヘシ
第十五条 父母後見人等ハ其学齢児童ノ小学科三箇年ノ課程ヲ卒ラサル間已ムヲ得サル事故アルニアラサレハ少クトモ毎年十六週日以上就学セシメサルヘカラス又小学科三箇年ノ課程ヲ卒リタル後ト雖モ相当ノ理由アルニアラサレハ毎年就学セシメサルヘカラス
但就学督責ノ規則ハ府知事県令之ヲ起草シテ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第十六条 小学校ノ学期ハ三箇年以上八箇年以下タルヘク授業日数ハ毎年三十二週日以上タルヘシ
但授業時間ハ一日三時ヨリ少カラス六時ヨリ多カラサルモノトス
第十七条 学齢児童ヲ学校ニ入レス又巡回授業ニ依ラスシテ別ニ普通教育ヲ授ケントスルモノハ郡区長ノ認可ヲ経ヘシ
但郡区長ハ児童ノ学業ヲ其町村ノ小学校ニ於テ試験セシムヘシ
第十八条 小学校ヲ設置スルノ資力ニ乏シクシテ巡回授業ノ方法ヲ設ケ普通教育ヲ児童ニ授ケントスル町村ハ府知事県令ノ認可ヲ経ヘシ
第十九条 学校ニ公立私立ノ別アリ地方税若クハ町村ノ公費ヲ以テ設置セルモノヲ公立学校トシ一人若クハ数人ノ私費ヲ以テ設置セルモノヲ私立学校トス
第二十条 公立学校幼稚園書籍館等ノ設置廃止其府県立ニ係ルモノハ文部卿ノ認可ヲ経ヘク其町村立ニ係ルモノハ府知事県令ノ認可ヲ経ヘシ
第二十一条 私立学校幼稚園書籍館等ノ設置ハ府知事県令ノ認可ヲ経ヘク其廃止ハ府知事県令ニ開申スヘシ
但公立小学校ニ代用スル私立小学校ノ廃止ハ府知事県令ノ認可ヲ経ヘシ
第二十二条 町村立私立学校幼稚園書籍館等設置廃止ノ規則ハ府知事県令之ヲ起草シテ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第二十三条 小学校ノ教則ハ文部卿頒布スル所ノ綱領ニ基キ府知事県令土地ノ情況ヲ量リテ之ヲ編制シ文部卿ノ認可ヲ経テ管内ニ施行スヘシ
但府知事県令施行スル所ノ教則ニ準拠シ難キ場合アリテ之ヲ斟酌増減セントシ府知事県令之ヲ許可セントスルトキハ其意見ヲ附シテ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第二十四条 公立学校ノ費用府県会ノ議定ニ係レルモノハ地方税ヨリ支弁シ町村人民ノ協議ニ係レルモノハ町村費ヨリ支弁スヘシ
第二十五条 町村費ヲ以テ設置保護スル学校ニ於テ補助ヲ地方税ニ要スルトキハ府県会ノ議定ヲ経テ之ヲ施行スルコトヲ得ヘシ
第二十六条 公立学校ノ敷地ハ免税タルヘシ
第二十七条 凡学事ニ供スル寄附金等ハ其寄附人ヨリ指定セシ目途ノ外ニ支消スルコトヲ得ス
第二十八条 削除
第二十九条 削除
第三十条 削除
第三十一条 削除
第三十二条 削除
第三十三条 各府県ハ小学校教員ヲ養成センカ為ニ師範学校ヲ設置スヘシ
第三十四条 公立師範学校ニ於テハ本校卒業ノ生徒ニ試験ノ後卒業証書ヲ与フヘシ
第三十五条 公立師範学校ハ本校ニ入学セサルモノト雖モ卒業証書ヲ請フモノアラハ其学業ヲ試験シ合格ノモノニハ卒業証書ヲ与フヘシ
第三十六条 削除
第三十七条 教員ハ男女ノ別ナク年齢十八年以上タルヘシ
但品行不正ナルモノハ教員タルヿヲ得ス
第三十八条 小学校教員ハ官立公立師範学校ノ卒業証書ヲ有スルモノトス
但本文師範学校ノ卒業証書ヲ有セスト雖モ府知事県令ヨリ教員免許状ヲ得タルモノハ其府県ニ於テ教員タルモ妨ケナシ
第三十九条 文部卿ハ時々吏員ヲ府県ニ発遣シ学事ノ実況ヲ巡視セシムヘシ
第四十条 公私学校二於テハ文部卿ヨリ発遣セル吏員ノ巡視ヲ拒ムヿヲ得ス
第四十一条 府知事県令ハ管内学事ノ実状ヲ記載シテ毎年文部卿ニ申報スヘシ
第四十二条 凡学校ニ於テハ男女教場ヲ同クスルコトヲ得ス
但小学校ニ於テハ男女教場ヲ同クスルモ妨ケナシ
第四十三条 凡学校ニ於テ授業料ヲ収ムルト収メサルトハ其便宜ニ任スヘシ
第四十四条 凡児童ハ種痘或天然痘ヲ歴タルモノニアラサレハ入学スルコトヲ得ス
第四十五条 伝染病ニ罹ルモノハ学校ニ出入スルコトヲ得ス
第四十六条 凡学校ニ於テハ生徒ニ体罰殴チ或ハ縛スルノ類ヲ加フヘカラス
第四十七条 生徒試験ノトキハ父母或ハ後見人等其学校ニ来観スルコトヲ得ヘシ
第四十八条 町村立学校ノ教員ハ学務委員ノ申請ニ因リ府知事県令之ヲ任免スヘシ
第四十九条 町村立小学校教員ノ俸額ハ府知事県令之ヲ規定シテ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第五十条 各府県ハ土地ノ情況ニ随ヒ中学校ヲ設置シ又専門学校農学校商業学校職工学校等ヲ設置スヘシ
- 底本: 『明治十三年 法令全書』内閣官報局、1890年10月
- 底本中の旧字を新字に改めた。
- 「コト」の合字は「ヿ」を用いて表記した。
関連項目
編集- 学監考案 日本教育法
- 教学聖旨
- 新定教育令ヲ更ニ改正スヘキ以前ニ於テ現在施行スヘキ件
- 小学校設置ノ区域並校数指示方心得 (明治14年文部省達第1号)
- 学務委員薦挙規則起草心得 (明治14年文部省達第2号)
- 就学督責規則起草心得 (明治14年文部省達第3号)
- 府県立学校幼稚園書籍館等設置廃止規則 (明治14年文部省達第4号)
- 町村立私立学校幼稚園書籍館等設置廃止規則起草心得 (明治14年文部省達第5号)
- 小学校教員免許状授与方心得 (明治14年文部省達第6号)
- 学事表簿様式及取調心得 (明治14年文部省達第10号)
- 小学校教則綱領 (明治14年文部省達第12号)
- 町村立私立学校ノ設置認可ノ節其教則等開申及書式 (明治14年文部省達第15号)
- 小学校教則ハ伺出教科書ハ開申及書式 (明治14年文部省達第16号)
- 小学校教員心得 (明治14年文部省達第19号)
- 教育令第九条小学校設置ノ区域町村ノ境界ニ仍リ難キモノハ別ニ区域ヲ画スルヲ得 (明治14年太政官布告第38号)
- 学校教員品行検定規則 (明治14年文部省達第26号)
- 中学校教則大綱 (明治14年文部省達第28号)
- 師範学校教則大綱 (明治14年文部省達第29号)
- 女子高等普通学科編成ノ件 (明治15年3月7日文部省普通学務局長通牒)
- 医学校通則 (明治15年文部省達第4号)
- 薬学校通則 (明治15年文部省達第6号)
- 数町村聯合シテ中学校等ヲ設置スルトキハ特ニ学務委員ヲ置クコトヲ得 (明治15年太政官布告第56号)
- 農学校通則 (明治16年文部省達第5号)
- 府県立師範学校通則 (明治16年文部省達第12号)
- 商業学校通則 (明治17年文部省達第1号)
- 中学校通則 (明治17年文部省達第2号)
- 中学校師範学校教員免許規程 (明治17年文部省達第8号)
- 華族就学規則 (明治17年宮内省達乙第15号)
外部リンク
編集- 「教育令改正」(国立公文書館所蔵「太政類典第四編 第三十七巻」)
- 『現行 類聚法規第三編 下』司法省、1881年7月
- 内閣記録局編輯『法規分類大全第一編 学政門一』1891年3月
- 教育史編纂会編修『明治以降 教育制度発達史 第二巻』竜吟社、1938年7月