教育令 (明治12年太政官布告第40号)
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編集○第四十号(九月二十九日 輪廓附)
明治五年八月第二百拾四号ヲ以テ布告候学制相廃シ更ニ教育令別冊ノ通相定候条此旨布告候事
(別冊)
教育令
第一条 全国ノ教育事務ハ文部卿之ヲ統摂ス故ニ学校幼穉園書籍館等ハ公立私立ノ別ナク皆文部卿ノ監督内ニアルヘシ
第二条 学校ハ小学校中学校大学校師範学校専門学校其他各種ノ学校トス
第三条 小学校ハ普通ノ教育ヲ児童ニ授クル所ニシテ其学科ヲ読書習字算術地理歴史修身等ノ初歩トス土地ノ情況ニ随ヒテ罫画唱歌体操等ヲ加ヘ又物理生理博物等ノ大意ヲ加フ殊ニ女子ノ為ニハ裁縫等ノ科ヲ設クヘシ
第四条 中学校ハ高等ナル普通学科ヲ授クル所トス
第五条 大学校ハ法学理学医学文学等ノ専門諸科ヲ授クル所トス
第六条 師範学校ハ教員ヲ養成スル所トス
第七条 専門学校ハ専門一科ノ学術ヲ授クル所トス
第八条 以上掲クル所何ノ学校ヲ論セス各人皆之ヲ設置スルコトヲ得ヘシ
第九条 各地方ニ於テハ毎町村或ハ数町村聯合シテ公立小学校ヲ設置スヘシ
但町村人民ノ公益タルヘキ私立小学校アルトキハ別ニ公立小学校ヲ設置セサルモ妨ケナシ
第十条 町村内ノ学校事務ヲ幹理セシメンカ為ニ学務委員ヲ置クヘシ
但人員ノ多寡給料ノ有無ハ其町村ノ適宜タルヘシ
第十一条 学務委員ハ其町村人民ノ選挙タルヘシ
第十二条 学務委員ハ府知事県令ノ監督ニ属シ児童ノ就学学校ノ設置保護等ノ事ヲ掌ルヘシ
第十三条 凡児童六年ヨリ十四年ニ至ル八箇年ヲ以テ学齢トス
第十四条 凡児童学齢間少クトモ十六箇月ハ普通教育ヲ受クヘシ
第十五条 学齢児童ヲ就学セシムルハ父母及後見人等ノ責任タルヘシ
但事故アリテ就学セシメサルモノハ其事由ヲ学務委員ニ陳述スヘシ
第十六条 公立小学校ニ於テハ八箇年ヲ以テ学期トス土地ノ便宜ニ因リテハ此学期ヲ縮ムルコトヲ得ヘシト雖モ四箇年ヨリ短クスヘカラス此四箇年ハ毎年授業スルコト必四箇月以上タルヘシ
第十七条 学校ニ入ラスト雖モ別ニ普通教育ヲ受クルノ途アルモノハ就学ト做スヘシ
第十八条 学校ヲ設置スルノ資力ニ乏シキ地方ニ於テハ教員巡回ノ方法ヲ設ケテ児童ヲ教授セシムルコトヲ得ヘシ
第十九条 学校ニ公立私立ノ別アリ地方税若クハ町村ノ公費ヲ以テ設置セルモノヲ公立学校トシ一人若クハ数人ノ私費ヲ以テ設置セルモノヲ私立学校トス
第二十条 公立学校ヲ設置或ハ廃止セント欲スルモノハ府知事県令ノ認可ヲ経ヘシ
第二十一条 私立学校ヲ設置或ハ廃止スルモノハ府知事県令ニ開申スヘシ
第二十二条 公立学校ノ教則ハ文部卿ノ認可ヲ経ヘシ
第二十三条 私立学校ノ教則ハ府知事県令ニ開申スヘシ
第二十四条 公立学校ノ費用府県会ノ議定ニ係レルモノハ地方税ヨリ支弁シ町村人民ノ協議ニ係レルモノハ町村費ヨリ支弁スヘシ
第二十五条 町村費ヲ以テ設置保護スル学校ニ於テ補助ヲ地方税ニ要スルトキハ府県会ノ議定ヲ経テ之ヲ施行スルコトヲ得ヘシ
第二十六条 公立学校ノ土地ハ免税タルヘシ
第二十七条 凡学事ニ供スル寄附金等ハ其寄附人ヨリ指定セシ目途ノ外ニ支消スルコトヲ得ス
第二十八条 公立小学校ヲ補助センカ為ニ文部卿ヨリ毎年補助金ヲ各府県ニ配付スヘシ
第二十九条 府知事県令ハ文部卿ヨリ領収セシ補助金ヲ各公立小学校ニ配付スヘシ
第三十条 前年中授業四箇月ニ満タサリシ小学校ニハ補助金ヲ配付セサルヘシ
第三十一条 私立小学校タリト雖モ府知事県令ニ於テ其町村人民ノ公益タルコトヲ認ムルトキハ補助金ヲ配付スルコトフ得ヘシ
第三十二条 教員巡回ノ方法ヲ以テ教授セシムルコト一箇年四箇月以上ニ至ルノ町村ニハ補助金ヲ配付スルコトヲ得ヘシ
第三十三条 各府県ニ於テハ便宜ニ随ヒテ公立師範学校ヲ設置スヘシ
第三十四条 公立師範学校ニ於テハ本校卒業ノ生徒ニ試験ノ後卒業証書ヲ与フヘシ
第三十五条 公立師範学校ハ本校ニ入学セサルモノト雖モ卒業証書ヲ請フモノアラハ其学業ヲ試験シ合格ノモノニハ卒業証書ヲ与フヘシ
第三十六条 公立師範学校ノ整備ヲ要センカ為ニ文部卿ヨリ補助金ヲ各府県ニ配付スルコトアルヘシ
第三十七条 教員ハ男女ノ別ナク年齢十八年以上タルヘシ
第三十八条 公立小学校教員ハ師範学校ノ卒業証書ヲ得タルモノトス
但師範学校ノ卒業証書ヲ得スト雖モ教員ニ相応セル学力ヲ有スルモノハ教員タルモ妨ケナシ
第三十九条 文部卿ハ時々吏員ヲ府県ニ発遣シ学事ノ実況ヲ巡視セシムヘシ
第四十条 公私学校ニ於テハ文部卿ヨリ発遣セル吏員ノ巡視ヲ拒ムコトヲ得ス
第四十一条 府知事県令ハ管内学事ノ実状ヲ記載シテ毎年文部卿ニ申報スヘシ
第四十二条 凡学校ニ於テハ男女教場ヲ同クスルコトヲ得ス
但小学校ニ於テハ男女教場ヲ同クスルモ妨ケナシ
第四十三条 凡学校ニ於テ授業料ヲ収ムルト収メサルトハ其便宜ニ任スヘシ
第四十四条 凡児童ハ種痘或ハ天然痘ヲ歴タルモノニ非サレハ入学スルコトヲ得ス
第四十五条 伝染病ニ罹ルモノハ学校ニ出入スルコトヲ得ス
第四十六条 凡学校ニ於テハ生徒ニ体罰殴チ或ハ縛スルノ類ヲ加フヘカラス
第四十七条 生徒試験ノトキハ父母或ハ後見人等其学校ニ来観スルコトヲ得ヘシ
- 底本中の旧字を新字に改めた。
関連項目
編集- 学監考案 日本教育法
- 公立幼穉園書籍館等ノ設置廃止認可方 (明治12年文部省布達第5号)
- 私立幼穉園書籍館等ノ設置廃止開申方 (明治12年文部省布達第6号)
- 公私立幼穉園ノ保育法認可及開申方 (明治12年文部省布達第7号)
- 教育令第九条但書私立小学校ニ付心得 (明治12年文部省布達第8号)
- 教育令第三十一条私立小学校設立心得 (明治12年文部省達第5号)
- 公立学校ノ教則文部卿ノ認可ヲ経ントスルモノ記載方 (明治12年文部省達第8号)
- 公私学校ノ教旨ニ弊害アリト認ムルモノハ文部卿ヘ禀申 (明治12年文部省達第9号)
- 学務委員選挙規則ヲ設ケ伺出 (明治13年文部省達第1号)
- 普通教育小学校変則小学校区別 (明治13年文部省達第2号)
- 普通教育就学変則就学区別 (明治13年文部省達第3号)
- 地方税設立公立学校ノ廃置ハ其都度開申 (明治13年文部省達第10号)
- 公立小学校教則記載方書式 (明治13年文部省達第15号)
- 地方税並他ノ金種ヲ以テ府県設立公立学校ノ廃置開申 (明治13年文部省達第17号)
- 国安妨害風俗紊乱及教育上弊害アル書籍ハ教科書ニ採用セサル様注意 (明治13年文部省達第21号)
外部リンク
編集- 「学制ヲ廃シ更ニ教育令ヲ定ム」(国立公文書館所蔵「太政類典第三編 第五十五巻」)
- 『現行 類聚法規第三編 下』司法省、1881年7月
- 内閣記録局編輯『法規分類大全第一編 学政門一』1891年3月
- 教育史編纂会編修『明治以降 教育制度発達史 第二巻』竜吟社、1938年7月