小倉百人一首』に収められている歌の一覧
歌番号
(括弧内は歴史的仮名遣による読み、
太字は決まり字)
作者
(括弧内は歴史的仮名遣による読み)
出典 かるた
読み札
秋の田の かりほの庵の とまをあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
あきのたの かりほのいほの とまをあらみ
わがころもでは つゆにぬれつつ)
天智天皇
(てんちてんわう)
後撰集秋中302 天智天皇(秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ)
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたへの
ころもほすてふ あまのかぐやま)
持統天皇
(ぢとうてんわう)
新古今集夏175 持統天皇(春過ぎて 夏来にけらし 白妙の)
足引きの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかもねむ
あしびきの やまどりのをの しだりをの
ながながしよを ひとりかもねむ)
柿本人麿
(かきのもとのひとまろ)
拾遺集恋三778 柿本人麻呂(あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の)
田子の浦に 打出でてみれば 白妙の
ふじの高嶺に 雪は降りつつ
たごのうらに うちいでてみれば しろたへの
ふじのたかねに ゆきはふりつつ)
山部赤人
(やまべのあかひと)
新古今集冬675 山部赤人(田子の浦に うちいでてみれば 白妙の)
奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の
聲きく時ぞ 秋は悲しき
おくやまに もみぢふみわけ なくしかの
こゑきくときぞ あきはかなしき)
猿丸太夫
(さるまるだいふ)
古今集秋上215 猿丸太夫(奥山に もみぢふみわけ なく鹿の)
かさゝぎの 渡せる橋に おく霜の
しろきを見れば 夜ぞふけにける
かさゝぎの わたせるはしに おくしもの
しろきをみれば よぞふけにける)
中納言家持
(ちゆうなごんやかもち)
新古今集冬620 中納言家持(かささぎの 渡せる橋に おく霜の)
天の原 ふりさけ見れば 春日なる
みかさの山に 出でし月かも
あまのはら ふりさけみれば かすがなる
みかさのやまに いでしつきかも)
阿倍仲麻呂
(あべのなかまろ)
古今集羇旅406 阿倍仲麻呂(天の原 ふりさけみれば 春日なる)
わが庵は 都のたつみ しかぞ住む
世をうぢ山と 人はいふなり
わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ
よをうぢやまと ひとはいふなり)
喜撰法師
(きせんほふし)
古今集雑下983 喜撰法師(わが庵は 都のたつみ しかぞすむ)
花の色は 移りにけりな 徒に
我が身世にふる ながめせしまに
はなのいろは うつりにけりな いたづらに
わがみよにふる ながめせしまに)
小野小町
(をののこまち)
古今集春下113 小野小町(花の色は うつりにけりな いたづらに)
これや此の 行くも帰るも 別かれては
知るも知らぬも 逢坂の関
これやこの ゆくもかへるも わかれては
しるもしらぬも あふさかのせき)
蝉丸
(せみまる)
後撰集雑一1089 蝉丸(これやこの 行くも帰るも わかれては)
十一 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
人にはつげよ あまの釣舟
わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと
ひとにはつげよ あまのつりぶね)
参議篁
(さんぎたかむら)
古今集羇旅407 参議篁(わたの原 八十島かけて こぎいでぬと)
十二 天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ
をとめの姿 しばし留めむ
あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ
をとめのすがた しばしとどめむ)
僧正遍昭
(そうじやうへんぜう)
古今集雑上872 僧正遍昭(天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ)
十三 筑波嶺の 峯より落つる みなの川
戀ぞつもりて 淵となりぬる
つくばねの みねよりおつる みなのがは
こひぞつもりて ふちとなりぬる)
陽成院
(やうぜいゐん)
後撰集恋三776 陽成院(つくばねの 峰よりおつる みなの川)
十四 陸奥の しのぶもぢずり 誰故に
みだれ初めにし 我ならなくに
みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに
みだれそめにし われならなくに)
河原左大臣
(かはらのさだいじん)
古今集恋四724 河原左大臣(みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに)
十五 君がため 春の野に出でて 若菜つむ
わが衣手に 雪は降りつつ
きみがため はるののにいでて わかなつむ
わがころもでに ゆきはふりつつ)
光孝天皇
(くわうかうてんわう)
古今集春上21 光孝天皇(君がため 春の野に出でて 若菜つむ)
十六 立別れ いなばの山の 嶺におふる
まつとし聞かば 今帰り来む
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる
まつとしきかば いまかへりこむ)
中納言行平
(ちゆうなごんゆきひら)
古今集離別365 中納言行平(立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる)
十七 ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川
から紅に 水くくるとは
ちはやぶる かみよもきかず たつたがは
からくれなゐに みづくくるとは)
在原業平朝臣
(ありはらのなりひらあそん)
古今集秋下294 在原業平朝臣(ちはやぶる 神代もきかず 竜田川)
十八 住の江の 岸に寄る浪 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
みのえの きしによるなみ よるさへや
ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ)
藤原敏行朝臣
(ふぢはらのとしゆきあそん)
古今集恋二559 藤原敏行(住の江の 岸による波 よるさへや)
十九 難波潟 短き葦の ふしのまも
あはで此の世を すぐしてよとや
なにはがた みじかきあしの ふしのまも
あはでこのよを すぐしてよとや)
伊勢
(いせ)
新古今集恋一1049 伊勢(難波潟 みじかき蘆の ふしのまも)
二十 侘びぬれば 今はた同じ 難波なる
身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
わびぬれば いまはたおなじ なにはなる
みをつくしても あはむとぞおもふ)
元良親王
(もとよししんわう)
後撰集恋五961 元良親王(わびぬれば いまはたおなじ 難波なる)
二十一 今来むと いひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな
いまこむと いひしばかりに ながつきの
ありあけのつきを まちいでつるかな)
素性法師
(そせいほふし)
古今集恋四691 素性法師(今こむと いひしばかりに 長月の)
二十二 吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を あらしといふらむ
くからに あきのくさきの しをるれば
むべやまかぜを あらしといふらむ)
文屋康秀
(ふんやのやすひで)
古今集秋下249 文屋康秀(吹くからに 秋の草木の しをるれば)
二十三 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ
わが身ひとつの 秋にはあらねど
つきみれば ちゞにものこそ かなしけれ
わがみひとつの あきにはあらねど)
大江千里
(おほえのちさと)
古今集秋上193 大江千里(月みれば ちぢにものこそ かなしけれ)
二十四 此の度は 幣もとりあへず 手向山
紅葉の錦 神のまにまに
このたびは ぬさもとりあへず たむけやま
もみぢのにしき かみのまにまに)
菅家
(かんけ)
古今集羇旅420 菅家(このたびは ぬさもとりあへず 手向山)
二十五 名にしおはば 逢坂山の さねかづら
人にしられで くるよしもがな
なにしおはば あふさかやまの さねかづら
ひとにしられで くるよしもがな)
三条右大臣
(さんでうのうだいじん)
後撰集恋三701 三条右大臣(名にし負はば 逢坂山の さねかづら)
二十六 小倉山 峯のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ
をぐらやま みねのもみぢば こゝろあらば
いまひとたびの みゆきまたなむ)
貞信公
(ていしんこう)
拾遺集雑秋1128 貞信公(小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば)
二十七 みかの原 わきて流るる 泉川
いつみきとてか 戀しかるらむ
みかのはら わきてながるる いづみがは
いつみきとてか こひしかるらむ)
中納言兼輔
(ちゆうなごんかねすけ)
新古今集恋一996 中納言兼輔(みかの原 わきて流るる いづみ川)
二十八 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける
人目も草も かれぬと思へば
やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける
ひとめもくさも かれぬとおもへば)
源宗行朝臣
(みなもとのむねゆきあそん)
古今集冬315 源宗行朝臣(山里は 冬ぞさびしさ まさりける)
二十九 心あてに 折らばや折らむ 初霜の
置きまどはせる 白菊の花
こゝろあてに をらばやをらむ はつしもの
おきまどはせる しらぎくのはな)
凡河内躬恒
(おほしかふちのみつね)
古今集秋下277 凡河内躬恒(心当てに 折らばや折らむ 初霜の)
三十 有明の つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
ありあけの つれなくみえし わかれより
あかつきばかり うきものはなし)
壬生忠岑
(みぶのただみね)
古今集恋三625 壬生忠岑(有明の つれなく見えし 別れより)
三十一 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
吉野の里に 降れる白雪
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに
よしののさとに ふれるしらゆき)
坂上是則
(さかのうへのこれのり)
古今集冬332 坂上是則(朝ぼらけ 有明の月と見るまでに)
三十二 山がはに 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ 紅葉なりけり
やまがはに かぜのかけたる しがらみは
ながれもあへぬ もみぢなりけり)
春道列樹
(はるみちのつらき)
古今集秋下303 春道列樹(山川に 風のかけたる しがらみは)
三十三 久方の 光のどけき 春の日に
しづごころなく 花の散るらむ
ひさかたの ひかりのどけき はるのひに
しづごころなく はなのちるらむ)
紀友則
(きのとものり)
古今集春下84 紀友則(久方の 光のどけき 春の日に)
三十四 誰をかも 知る人にせむ 高砂の
松も昔の 友ならなくに
たれをかも しるひとにせむ たかさごの
まつもむかしの ともならなくに)
藤原興風
(ふぢはらのおきかぜ)
古今集雑上909 藤原興風(誰をかも しる人にせむ 高砂の)
三十五 人はいさ 心もしらず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
ひとはいさ こゝろもしらず ふるさとは
はなぞむかしの かににほひける)
紀貫之
(きのつらゆき)
古今集春上42 紀貫之(人はいさ 心も知らず ふるさとは)
三十六 夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
なつのよは まだよひながら あけぬるを
くものいづこに つきやどるらむ)
清原深養父
(きよはらのふかやぶ)
古今集夏166 清原深養父(夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを)
三十七 白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
しらつゆに かぜのふきしく あきののは
つらぬきとめぬ たまぞちりける)
文屋朝康
(ふんやのあさやす)
後撰集秋中308 文屋朝康(白露に 風の吹きしく 秋の野は)
三十八 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
わすらるる みをばおもはず ちかひてし
ひとのいのちの をしくもあるかな)
右近
(うこん)
拾遺集恋四870 右近(忘らるる 身をば思はず ちかひてし)
三十九 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど
あまりてなどか 人の戀しき
あさぢふの をののしのはら しのぶれど
あまりてなどか ひとのこひしき)
参議等
(さんぎひとし)
後撰集恋一578 参議等(浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど)
四十 忍ぶれど 色に出にけり 我が戀は
ものや思ふと 人の問ふまで
しのぶれど いろにいでにけり わがこひは
ものやおもふと ひとのとふまで)
平兼盛
(たひらのかねもり)
拾遺集恋一622 平兼盛(しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は)
四十一 戀すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか
こひすてふ わがなはまだき たちにけり
ひとしれずこそ おもひそめしか)
壬生忠見
(みぶのただみ)
拾遺集恋一621 壬生忠見(恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり)
四十二 契りきな かたみに袖を しぼりつつ
末の松山 浪こさじとは
ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ
すゑのまつやま なみこさじとは)
清原元輔
(きよはらのもとすけ)
後拾遺集恋四770 清原元輔(ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ)
四十三 逢ひみての 後の心に くらぶれば
昔はものを 思はざりけり
あひみての のちのこころに くらぶれば
むかしはものを おもはざりけり)
権中納言敦忠
(ごんちゆうなごんあつただ)
拾遺集恋二710 権中納言敦忠(あひみての のちの心に くらぶれば)
四十四 逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
あふことの たえてしなくば なかなかに
ひとをもみをも うらみざらまし)
中納言朝忠
(ちゆうなごんあさただ)
拾遺集恋一678 中納言朝忠(あふことの たえてしなくば なかなかに)
四十五 哀れとも いふべき人は おもほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
あはれとも いふべきひとは おもほえで
みのいたづらに なりぬべきかな)
謙徳公
(けんとくこう)
拾遺集恋五950 謙徳公(あはれとも いふべき人は 思ほえで)
四十六 由良の戸を わたる舟人 楫をたえ
行方もしらぬ 戀の道かな
ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ
ゆくへもしらぬ こひのみちかな)
曽根好忠
(そねのよしただ)
新古今集恋一1071 曽禰好忠(由良のとを 渡る舟人 かぢをたえ)
四十七 八重葎 しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋はきにけり
やへむぐら しげれるやどの さびしきに
ひとこそみえね あきはきにけり)
恵慶法師
(ゑぎやうほふし)
拾遺集秋140 恵慶法師(八重むぐら しげれる宿の さびしきに)
四十八 風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ
砕けてものを 思ふ頃かな
かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもふころかな)
源重之
(みなもとのしげゆき)
詞花集恋上210 源重之(風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ)
四十九 御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
晝は消えつつ ものをこそ思へ
みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ
ひるはきえつつ ものをこそおもへ)
大中臣能宣朝臣
(おほなかとみのよしのぶあそん)
詞花集恋上224 大中臣能宣朝臣(みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ)
五十 君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
きみがため をしからざりし いのちさへ
ながくもがなと おもひけるかな)
藤原義孝
(ふぢはらのよしたか)
後拾遺集恋二669 藤原義孝(君がため 惜しからざりし いのちさへ)
五十一 かくとだに えやはいぶきの さしも草
さしも知らじな もゆる思ひを
かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ
さしもしらじな もゆるおもひを)
藤原実方朝臣
(ふぢはらのさねかたあそん)
後拾遺集恋一612 藤原実方朝臣(かくとだに えやはいぶきの さしも草)
五十二 明けぬれば くるるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな
あけぬれば くるるものとは しりながら
なほうらめしき あさぼらけかな)
藤原道信朝臣
(ふぢはらのみちのぶあそん)
後拾遺集恋二672 藤原道信朝臣(あけぬれば 暮るるものとは 知りながら)
五十三 嘆きつつ 獨りぬる夜の 明くるまは
いかに久しき ものとかは知る
なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは
いかにひさしき ものとかはしる)
右大将道綱母
(うだいしやうみちつなのはは)
拾遺集恋四912 右大将道綱母(なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは)
五十四 忘れじの 行末までは 難ければ
今日を限りの 命ともがな
わすれじの ゆくすゑまでは かたければ
けふをかぎりの いのちともがな)
儀同三司母
(ぎどうさんしのはは)
新古今集恋三1149 儀同三司母(忘れじの ゆく末までは かたければ)
五十五 瀧の音は たえて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞えけれ
たきのおとは たえてひさしく なりぬれど
なこそながれて なほきこえけれ)
大納言公任
(だいなごんきんとう)
千載集雑上1035 大納言公任(滝の音は たえて久しく なりぬれど)
五十六 あらざらむ 此の世のほかの 思ひ出に
今一たびの 逢ふこともがな
あらざらむ このよのほかの おもひでに
いまひとたびの あふこともがな)
和泉式部
(いづみしきぶ)
後拾遺集恋三763 和泉式部(あらざらむ この世のほかの 思ひ出に)
五十七 廻り逢ひて 見しやそれとも わかぬまに
雲がくれにし 夜半の月かな
ぐりあひて みしやそれとも わかぬまに
くもがくれにし よはのつきかな)
紫式部
(むらさきしきぶ)
新古今集雑上1497 紫式部(めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに)
五十八 有馬山 ゐなのささ原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば
いでそよひとを わすれやはする)
大貮三位
(だいにのさんゐ)
後拾遺集恋二709 大弐三位(ありま山 ゐなの笹原 風吹けば)
五十九 やすらはで 寝なましものを 小夜更けて
傾くまでの 月を見しかな
やすらはで ねなましものを さよふけて
かたぶくまでの つきをみしかな)
赤染衛門
(あかぞめゑもん)
後拾遺集恋二680 赤染衛門(やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて)
六十 大江山 いくのの道の 遠ければ
まだふみも見ず 天の橋立
おほえやま いくののみちの とほければ
まだふみもみず あまのはしだて)
小式部内侍
(こしきぶのないし)
金葉集雑上586 小式部内侍(大江山 いく野の道の 遠ければ)
六十一 古への 奈良の都の 八重ざくら
今日九重に 匂ひぬるかな
いにしへの ならのみやこの やへざくら
けふここのへに にほひぬるかな)
伊勢大輔
(いせのおほすけ)
詞花集春27 伊勢大輔(いにしへの 奈良の都の 八重桜)
六十二 夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも
世に逢坂の 関はゆるさじ
よをこめて とりのそらねは はかるとも
よにあふさかの せきはゆるさじ)
清少納言
(せいせうなごん)
後拾遺集雑二940 清少納言(夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも)
六十三 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
いまはただ おもひたえなむ とばかりを
ひとづてならで いふよしもがな)
左京大夫道雅
(さきやうだいぶみちまさ)
後拾遺集恋三750 左京大夫道雅(いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを)
六十四 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに
あらはれ渡る 瀬々の網代木
あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに
あらはれわたる せぜのあじろぎ)
権中納言定頼
(ごんちゆうなごんさだより)
千載集冬419 権中納言定頼(朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに)
六十五 恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを
戀に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
うらみわび ほさぬそでだに あるものを
こひにくちなむ なこそをしけれ)
相模
(さがみ)
後拾遺集恋四815 相模(うらみわび ほさぬ袖だに あるものを)
六十六 諸共に あはれと思へ 山ざくら
花よりほかに 知る人もなし
もろともに あはれとおもへ やまざくら
はなよりほかに しるひともなし)
大僧正行尊
(だいそうじやうぎやうそん)
金葉集雑上556 前大僧正行尊(もろともに あはれと思へ 山桜)
六十七 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
はるのよの ゆめばかりなる たまくらに
かひなくたたむ なこそをしけれ)
周防内侍
(すはうのないし)
千載集雑上961 周防内侍(春の夜の 夢ばかりなる 手枕に)
六十八 心にも あらで憂世に ながらへば
戀しかるべき 夜半の月かな
こゝろにも あらでうきよに ながらへば
こひしかるべき よはのつきかな)
三条院
(さんでうゐん)
後拾遺集雑一861 三条院(心にも あらでうき世に ながらへば)
六十九 嵐ふく 三室の山の もみぢ葉は
龍田の川の 錦なりけり
あらしふく みむろのやまの もみぢばは
たつたのかはの にしきなりけり)
能因法師
(のういんほふし)
後拾遺集秋下366 能因法師(あらし吹く み室の山の もみぢばは)
七十 寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば
いづくも同じ 秋の夕暮
びしさに やどをたちいでて ながむれば
いづくもおなじ あきのゆふぐれ)
良暹法師
(りやうせんほふし)
後拾遺集秋上333 良選法師(さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば)
七十一 夕されば 門田の稲葉 おとづれて
あしのまろやに 秋風ぞ吹く
ゆふされば かどたのいなば おとづれて
あしのまろやに あきかぜぞふく)
大納言経信
(だいなごんつねのぶ)
金葉集秋183 大納言経信(夕されば 門田の稲葉 おとづれて)
七十二 音に聞く 高師の濱の あだ浪は
かけじや袖の ぬれもこそすれ
おとにきく たかしのはまの あだなみは
かけじやそでの ぬれもこそすれ)
祐子内親王家紀伊
(ゆうしないしんわうけのきい)
金葉集恋下501 祐子内親王家紀伊(音に聞く 高師の浜の あだ波は)
七十三 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり
外山の霞 立たずもあらなむ
たかさごの をのへのさくら さきにけり
とやまのかすみ たたずもあらなむ)
権中納言匡房
(ごんちゆうなごんまさふさ)
後拾遺集春上120 前権中納言匡房(高砂の をのへのさくら さきにけり)
七十四 うかりける 人を初瀬の 山おろし
はげしかれとは 祈らぬものを
うかりける ひとをはつせの やまおろし
はげしかれとは いのらぬものを)
源俊頼朝臣
(みなもとのとしよりあそん)
千載集恋二707 源俊頼朝臣(憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ)
七十五 契りおきし させもが露を 命にて
あはれ今年の 秋も去ぬめり
ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて
あはれことしの あきもいぬめり)
藤原基俊
(ふぢはらのもととし)
千載集雑上1023 藤原基俊(ちぎりおきし させもが露を いのちにて)
七十六 わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の
雲居にまがふ 沖つ白浪
わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの
くもゐにまがふ おきつしらなみ)
法性寺入道前関白太政大臣
(ほふしやうじにふだうさきのかんぱくだじやうだいじん)
詞花集雑下380 法性寺入道前関白太政大臣(わたの原 こぎいでてみれば 久方の)
七十七 瀬を早み 岩にせかるる 瀧川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ
をはやみ いはにせかるる たきがはの
われてもすゑに あはむとぞおもふ)
崇徳院
(すとくゐん)
詞花集恋上228 崇徳院(瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の)
七十八 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に
いくよ寝覚めぬ 須磨の関守
あはぢしま かよふちどりの なくこゑに
いくよねざめぬ すまのせきもり)
源兼昌
(みなもとのかねまさ)
金葉集冬288 源兼昌(淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に)
七十九 秋風に たなびく雲の 絶間より
もれ出づる月の 影のさやけさ
あきかぜに たなびくくもの たえまより
もれいづるつきの かげのさやけさ)
左京大夫顕輔
(さきやうだいぶあきすけ)
新古今集秋上413 左京大夫顕輔(秋風に たなびく雲の たえ間より)
八十 ながからむ 心も知らず 黒髪の
みだれて今朝は ものをこそ思へ
ながからむ こころもしらず くろかみの
みだれてけさは ものをこそおもへ)
待賢門院堀河
(たいけんもんゐんのほりかわ)
千載集恋三801 待賢門院堀河(長からむ 心もしらず 黒髪の)
八十一 ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる
ととぎす なきつるかたを ながむれば
ただありあけの つきぞのこれる)
後徳大寺左大臣
(ごとくだいじのさだいじん)
千載集夏161 後徳大寺左大臣(ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば)
八十二 思ひわび さても命は あるものを
憂きに堪へぬは 涙なりけり
おもひわび さてもいのちは あるものを
うきにたへぬは なみだなりけり)
道因法師
(だういんほふし)
千載集恋三817 道因法師(思ひわび さてもいのちは あるものを)
八十三 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞなくなる
よのなかよ みちこそなけれ おもひいる
やまのおくにも しかぞなくなる)
皇太后宮大夫俊成
(くわうたいごうぐうのたいぶとしなり)
千載集雑中1148 皇太后宮大夫俊成(世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る)
八十四 ながらへば また此の頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は戀しき
ながらへば またこのごろや しのばれむ
うしとみしよぞ いまはこひしき)
藤原清輔朝臣
(ふぢはらのきよすけあそん)
新古今集雑下1843 藤原清輔朝臣(ながらへば またこのごろや しのばれむ)
八十五 夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで
ねやのひまさへ つれなかりけり
よもすがら ものおもふころは あけやらで
ねやのひまさへ つれなかりけり)
俊恵法師
(しゆんゑほふし)
千載集恋二765 俊恵法師(夜もすがら 物思ふころは 明けやらで)
八十六 嘆けとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな
なげけとて つきやはものを おもはする
かこちがほなる わがなみだかな)
西行法師
(さいぎやうほふし)
千載集恋五926 西行法師(なげけとて 月やは物を 思はする)
八十七 村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮
らさめの つゆもまだひぬ まきのはに
きりたちのぼる あきのゆふぐれ)
寂蓮法師
(じやくれんほふし)
新古今集秋下491 寂蓮法師(村雨の 露もまだひぬ まきの葉に)
八十八 難波江の あしのかりねの 一夜ゆゑ
みをつくしてや 戀ひわたるべき
なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや こひわたるべき)
皇嘉門院別当
(くわうかもんゐんのべつたう)
千載集恋三806 皇嘉門院別当(難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ)
八十九 玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする
たまのをよ たえなばたえね ながらへば
しのぶることの よはりもぞする)
式子内親王
(しきしないしんわう)
新古今集恋一1034 式子内親王(玉の緒よ たえなばたえね ながらへば)
九十 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
濡れにぞ濡れし 色はかはらず
みせばやな をじまのあまの そでだにも
ぬれにぞぬれし いろはかはらず)
殷富門院大輔
(いんぶもんゐんのたいふ)
千載集恋四884 殷富門院大輔(見せばやな 雄島のあまの 袖だにも)
九十一 きりぎりす なくや霜夜の さむしろに
衣かたしき 獨りかも寝む
きりぎりす なくやしもよの さむしろに
ころもかたしき ひとりかもねむ)
後京極摂政前太政大臣
(ごきやうごくせふしやうさきのだじやうだいじん)
新古今集秋下518 後京極摂政前太政大臣(きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに)
九十二 わが袖は 汐干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね 乾く間もなし
わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの
ひとこそしらね かわくまもなし)
二条院讃岐
(にでうゐんのさぬき)
千載集恋二759 二条院讃岐(わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の)
九十三 世の中は 常にもがもな 渚こぐ
海士の小舟の 綱手かなしも
よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ
あまのをぶねの つなでかなしも)
鎌倉右大臣
(かまくらのうだいじん)
新勅撰集羇旅525 鎌倉右大臣(世の中は つねにもがもな なぎさこぐ)
九十四 みよし野の 山の秋風 小夜更けて
故郷寒く 衣うつなり
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて
ふるさとさむく ころもうつなり)
参議雅経
(さんぎまさつね)
新古今集秋下483 参議雅経(み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて)
九十五 おほけなく うき世の民に おほふかな
我が立つ杣に 墨染の袖
おほけなく うきよのたみに おほふかな
わがたつそまに すみぞめのそで)
前大僧正慈圓
(さきのだいそうじやうじゑん)
千載集雑中1134 前大僧正慈円(おほけなく うき世の民に おほふかな)
九十六 花さそふ あらしの庭の 雪ならで
ふりゆくものは 我が身なりけり
はなさそふ あらしのにはの ゆきならで
ふりゆくものは わがみなりけり)
入道前太政大臣
(にふだうさきのだじやうだいじん)
新勅撰集雑一1052 入道前太政大臣(花さそふ 嵐の庭の 雪ならで)
九十七 来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに
やくやもしほの みもこがれつつ)
権中納言定家
(ごんちゆうなごんさだいへ)
新勅撰集恋三849 権中納言定家(こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに)
九十八 風そよぐ 楢の小川の 夕ぐれは
みそぎぞ夏の しるしなりける
かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは
みそぎぞなつの しるしなりける)
従二位家隆
(じゆにゐいへたか)
新勅撰集夏192 従二位家隆(風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは)
九十九 人もをし 人もうらめし あぢきなく
世を思ふ故に もの思ふ身は
ひともをし ひともうらめし あぢきなく
よをおもふゆゑに ものおもふみは)
後鳥羽院
(ごとばのゐん)
続後撰集雑中1199 後鳥羽院(人もをし 人もうらめし あぢきなく)
百敷や 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
ももしきや ふるきのきばの しのぶにも
なほあまりある むかしなりけり)
順徳院
(じゆんとくゐん)
続後撰集雑下1202 順徳院(ももしきや ふるき軒ばの しのぶにも)

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