聖詠講話中編/第百三十二聖詠講話

第百三十二聖詠講話 編集

兄弟きょうだいむつましくるはぜんなるかななるかな〔一節〕。


。 おほくのぶつぜんなれども快楽かいらくなく、あるものは快楽かいらくあたふれどもぜんならず、この両者りょうしゃあはせらるゝははなはようならずとす。しかれどもこの両者りょうしゃすなは快楽かいらくぜんとは預言者よげんしゃところのことにおいあはせられたり。ことあいくのごときものなり、あい其中そのうちえきとも便べんをも快楽かいらくをも含有がんゆうす。預言者よげんしゃここあいさんす。かれたん住所ぢうしよおよいつ居住きよぢうすることにきてぶるのみならずむつましくること』すなはごうあいとをもつ生活せいかつすることにきてふなり、なんとなれば同心どうしんこれりてしょうずればなり。かれ此事このことぜんにしてなることをべ、つぎれいもつおのれことば解釈かいしゃくし、およもつとあきらかなる状態じょうたいもつ聴衆ちょうしゅうぶつ想像そうぞうせしめ実物じつぶつかくをなせり。如何いかなるかくなるか。いはたからなるあぶらかうべにありて、ひげすなはアアロンひげながれ、そのころもすそながるゝがごとく』〔二節〕。アアロンさいちょうにして諸方しょほうよりながいづあぶらとしてあらはれ、しかうしてこのあぶらによりてアアロンかれものためすこぶぼうあり、ここあいすべきものたりき。預言者よげんしゃいはく、アアロンあぶらつけられてそのさまかがやき、そのかんばせひかり、馥郁ふくいくたるこうみたされ、かれものよろこばしむるがごとく、これまたうるはし、またみもの其物そのものただぜんなりしのみならず、るがためにもこころよかりしがごとく、此事このこともまたたましひたのしましむ。


『エルモンのつゆのシオンざんくだるがごとし』〔三節〕。かれだいなる趣味しゅみ含有がんゆうするかくをもりて観客かんかく満足まんぞくあたふ。かれこれふやむなしからず。イズライリの十種族しゅぞくとらはるゝまで種族しゅぞく別々べつべつ生活せいかつし、これよりしてかれあひだおほくのほう混乱こんらん争論そうろんおよ戦争せんそうしょうじたるがゆえに、預言者よげんしゃ此事このことのなからんようすすめ、以後いご人民じんみんぶんすることなく、とも合同ごうどういつして一の首長しゆちやう王政おうせいもと生活せいかつし、萬有ばんゆううへつゆくだるがごとく、はじめよりをはりいたまであい貫徹かんてつせんことをさとすなり。かれあいあぶらおよつゆかくして、あぶらもつあい懇篤こんとくしめし、つゆもつあんおよこころよ状態じょうたいしめさんとほつしたるなり。けだし彼処かしこおいしゅ降福こうふくめいじたり』彼処かしことは何処いづこなるか。くのごと生活せいかつくのごといつくのごと同心どうしんくのごと同棲どうせいうちにあるをふ。じつ祝福しゅくふくにしてこれはんするものはのろひなり。ればよ、或者あるものこれさんしつゝ『兄弟けいていあひだ同心どうしんおよ近者きんしゃあひだあいなり、つまをつとたがひ生活せいかつするものこれもついつすべし』〔シラフ書廿五の二〕といへり。或者あるもの合同ごうどうちから隠密いんみつあらはしつゝ『二人ふたりともにぬれば温暖あたたかなり、また三根みこなは容易たやすたたれざるなり』〔傳道之書四の十一及び十二〕といへり、ここには安息あんそくときにもおほいなる快楽かいらくあり、はたらときにもおほいなるちからあることをきつゝ、快楽かいらくをもちからをもともに示すなり。また曰く『いかれる兄弟けいていかたしろにもまさりてがたし』〔箴言十八の十九〕。ハリストスまた『二にんあるひは三にんりてあつまところには、われ其中そのうちるなり』〔マトフェイ福音十八の二十〕といへり。然物ぜんぶつこれ要求ようきゅうす。ればかみはじめひとつくりて『ひとひとりなるはよからず』〔創世記二の十八〕といひ、しかうして活物かつぶつすなはつまつくり、すう方法ほうほうもつ吾人われらたがひ接近せつきんせしめんとほつしつゝ共與きょうよ必要ひつようもつこれおつと合一ごういつにせり。永生えいせいめいじたり』預言者よげんしゃこのことばくはへたるやし、あいのあるところにはおほいなる安全あんぜんあり、かみおほいなる寛仁かんにんあり。あい諸福しょふくははなり、あい諸福しょふくなり、源泉げんせんなり、あいたたかひしづあらそひつ。かれこれあらはしつゝ永生えいせいめいじたり』附加つけくはへたり。争論そうろん不和ふわようまねくがごとく、あいごうとは平安へいあん同心どうしんとをしょうじ、しかうして平安へいあん同心どうしんとのところには生活せいかつじょうばん安全あんぜんにしてまつたぼうありとす。しかれどもなんため現在げんざいのことにきてふべきか。あいてんおよふべからざる幸福こうふく吾人われらしむ、あい善行ぜんこう皇后こうごうなり。吾人われらこれりつゝ熱心ねつしんあいやしなはん、我々われわれ衆人しゅうじん光栄こうえい世々よよちち聖神せいしんともする吾人われらしゅイイスス ハリストス恩寵おんちょう仁愛じんあいとによりてくべきげんおよび来世らいせい幸福こうふくをもけんためなり。アミン。


参考 編集

第百三十二聖詠せいえい

登上とうじやううたダワィドさく
1 兄弟けいていむつましくるは、ぜんなるかななるかな
2 たからなるあぶらかうべにありて、ひげすなはちアアロンひげながれ、そのころもすそながるるがごとく、
3 エルモンのつゆのシオンざんくだるがごとし。けだし彼處かしこおいしゅ降福かうふく永世えいせいとをめいじたり。


へん第133篇(文語訳旧約聖書)

ダビデがよめるみやこまうでのうた
1 よ はらからあひむつみてともにをるはいかによくいかにたのしきかな
2 かうべにそそがれたるたふときあぶらひげにながれ アロンのひげにながれ そのころものすそにまでながれしたたるるがごとく
3 またヘルモンのつゆくだりてシオンのやまにながるるがごとし そはヱホバかしこに福祉さいはひをくだしかぎりなき生命いのちをさへあたへたまへり