通俗正教教話/十誡の第三誡命

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▼十誡（じっかい）の第三（だいさん）誡命（かいめい）

<<汝（なんぢ）主（しゅ）爾（なんぢ）の神（かみ）の名（な）を妄（みだり）に口（くち）に称（とな）ふる勿（なか）れ>>

問　神様の御名（みな）を妄（みだり）に称（とな）へると申（もう）しますると何（ど）う謂（い）ふことなので御座いますか。

答　神様の御名（みな）を妄（みだり）に称（とな）へると申（もう）しまするのは何（なに）も必要（いりよう）もないのに神様（かみさま）々々と神（かみ）の名（な）を口（くち）にし或（あるい）は故意（わざ）と人（ひと）を詐（いつわ）る為（ため）に神様の名（な）を籍（か）りたり兎（と）に角（かく）少（すこ）しも謹慎（つつしみ）の心（こころ）なく神様の名（な）を口（くち）にすることを神様の名（な）を妄（みだ）りに称（とな）へると申（もう）すので御座います。

問　神様の名（な）を妄（みだ）りに称（とな）へまする罪（つみ）の内（うち）には他（ほか）に一体（いったい）何（ど）う謂（い）う罪（つみ）が含（ふくま）って居（お）るので御座いますか。

答　其内（そのうち）には第一に神様の旨（むね）に逆（さから）ったり又（また）は神様を辱（はづかし）むる様（よう）な事（こと）を言（い）ふこと、第二には神様を怨（うら）むこと、第三には神様を祭（まつ）る時（とき）に用（もち）いる聖品物（せいなるもの）を少（すこ）しも敬（うやま）はず此（これ）を玩具（おもちや）にしたり是（これ）を穢（けが）したりすること、第四は祈（き）祷（とう）を虚（うわ）の空（そら）で行（おこな）ふこと、第五は偽（いつわり）の誓（ちかい）を立（た）つること、第六は誓（ちかい）を立（た）てながら其（その）誓（ちかい）を実行（じつこう）しないこと、第七は神様の前（まえ）に誓（ちか）った約束（やくそく）を破（やぶ）ること、第八は詰（つま）らぬことに直（す）ぐ誓（ちかい）をなすこと等（など）が含（ふくま）って居（お）るので御座います。

問　聖書（せいしょ）の中（うち）に詰（つま）らぬことに誓（ちかい）を立（た）ててはならぬと言（い）ふことを誡（いまし）めた場所（ところ）が御座いますか。

答　御座います即（すなは）ち馬太（マトフェイ）の福音書（ふくいんしょ）の中（うち）に主（しゅ）が申（もう）された言（ことば）が御座います『我（われ）爾（なんぢ）等（ら）に告（つ）ぐ一切（いっさい）誓（ちか）ふ勿（なか）れ、爾（なんぢ）等（ら）の言（ことば）は是是（しかりしかり）、否否（いないな）たるべし之（これ）に過（す）ぐる者（もの）は悪（あく）よりするなり』（馬太五の三十四、三十七）

問　其（それ）では誓（ちかい）を立（た）つると謂（い）ふことは一切（いっさい）してはならぬ悪（わる）いことで御座いますか。

答　否（いいえ）其（そ）うでは御座いません、公（おほやけ）の事（こと）に誓（ちかい）を立（た）つることは少（すこ）しも悪（わる）くない許（ばか）りでなく若（も）し正（ただ）しい心（こころ）を以（もつ）て誓（ちかい）を立（た）つるならば世（よ）の中（なか）は其（その）誓（ちかい）によって争（あらそい）がなくなるので御座いますから大変（たいへん）利益（ため）になるので御座います、聖書（せいしょ）の中（うち）に聖（せい）使徒（しと）パエルが申（もう）して居（お）りますには『人（ひと）は己（おのれ）より大（おほい）なる者（もの）を指（さ）して誓（ちか）ふ且（か）つ事（こと）を確証（かくしょう）する誓（ちかい）は彼（かれ）等（ら）の凡（すべて）の争論（あらそい）を息（とど）む故（ゆえ）に神（かみ）も許約（きょやく）を嗣（つ）ぐ者（もの）に己（おのれ）の旨（むね）の易（かわ）らざるを更（さら）に明（あきらか）に示（しめ）さんと欲（ほっ）して別（べつ）に誓（ちかい）を立（た）てたり』（エウレイ六の十六、十七）して見（み）ますれば公（おほやけ）の事（こと）に誓（ちかい）を立（た）てることは決（けっ）して悪（わる）いことでは御座いませぬ。

▼十誡（じっかい）の第四（だいし）誡命（かいめい）

<<安息（あんそく）日（び）を憶（おぼ）えて之（これ）を聖潔（きよく）すべし六（むい）日（か）の間（あいだ）は労（はたら）きて汝（なんぢ）の一切（いっさい）の業（わざ）を為（な）すべし七（なぬ）日（か）は主（しゅ）・汝（なんぢ）の神（かみ）の安息（あんそく）日（び）なれば其（その）日（ひ）には何（なん）の業務（わざ）をも為（な）す可（べか）らず>>

問　七（なぬ）日目（かめ）は何（なん）の為（ため）に『主（しゅ）神（かみ）の安息（あんそく）日（び）』と申（もう）すので御座いますか。

答　其（それ）は七（なぬ）日目（かめ）は主（しゅ）が世（せ）界（かい）を全（まった）くお創（つく）りになって其（その）手（て）をお休（やす）めになった日（ひ）で御座いますから『主（しゅ）の日（ひ）』と特（とく）に申（もう）すので御座います、神様は実（じつ）に六（むい）日（か）の間（あいだ）其（その）手（て）を御（お）働（はたらか）せになって世（せ）界（かい）をお創（つく）りになり七（なぬ）日目（かめ）の日（ひ）は其（その）業（わざ）を全（まった）く終（おわ）って御（お）休（やす）みになったので御座います。

問　私（わたくし）共（ども）の基督（クリストス）正教（せいきょう）会（かい）に於（おい）ても其（それ）では其（その）安息（あんそく）日（び）を矢張（やっぱ）り祭（まつ）るので御座いますか。

答　左（さ）様（よう）で御座います、併（しか）し素（も）と私（わたくし）共（ども）の教会は古（むかし）の旧約（きうやく）教会（きょうかい）とは全（まった）く異（ちが）つた新（あたら）しい新約（しんやく）の教会（きょうかい）で御座いますから敢（あえ）て昔（むかし）の教会（きょうかい）が安息（あんそく）日（び）を祭（まつ）った様（よう）な意味（いみ）で此（この）日（ひ）を祭（まつ）るのでは御座いませぬ、此（この）日（ひ）を私（わたくし）共（ども）の教会（きょうかい）が祭（まつ）りまするのは只（ただ）神様が世（せ）界（かい）の創造（そうぞう）を御（おん）終（おわ）りになったことを記（き）憶（おく）すると共（とも）に古（むかし）の祭（まつり）を後世迄（こうせいまで）傳（つた）へる為（ため）に祭（まつ）りまするので、私（わたくし）共（ども）新約（しんやく）教会（きょうかい）の信（しん）徒（と）の為（ため）には此（この）安息（あんそく）日（び）（今日（いま）の土曜日）よりも尚（もっと）尊（とうと）き主（しゅ）の御（ご）復（ふく）活（かつ）の日（ひ）（日曜日）が有（あ）ります、此（この）日（ひ）こそ私（わたくし）共（ども）が最（もっと）も熱心（ねっしん）に安息（あんそく）日（び）に換（か）へて大（おほい）に祭（まつ）らなければならぬ日（ひ）で御座います。

問　其（それ）では基督（クリストス）の新約（しんやく）教会（きょうかい）では十誡（じっかい）の第（だい）四（し）誡（かい）を何（ど）う謂（い）ふ様（よう）に守（まも）るので御座いますか。

答　其（それ）は前（さき）にも申（もう）しました通（とほ）り私（わたくし）共（ども）の教会（きょうかい）では古（むかし）の旧約（きゅうやく）教会（きょうかい）の様（よう）に七（なぬ）日（か）の終（おわり）の日（ひ）即（すなは）ち今（いま）の土（ど）曜（よう）日（ひ）を祭（まつ）らず七（なぬ）日（か）の首（はじめ）の日（ひ）即（すなは）ち今（いま）の日曜（にちよう）日（び）を祭（まつ）り古（むかし）の祭（まつり）を畢竟（つまり）一日（いちにち）送（おく）ったので御座います。

問　其（それ）では其様（そのよう）に土（ど）曜（よう）日（び）を祭（まつ）るのを停（や）めて主（しゅ）の御（ご）復活（ふくかつ）なさった日曜（にちよう）日（び）を祭（まつ）る様（よう）にしたのは何時（いつ）頃（ごろ）からの事（こと）で御座いますか。

答　主（しゅ）が御（ご）復（ふく）活（かつ）なさった時（とき）からの事（こと）で御座います。

問　其（それ）では聖書（せいしょ）の中（うち）に復（ふく）活（かつ）日（び）を祭（まつ）ったことは記（しる）して御座いますでせうか。

答　記（しる）して御座います先（ま）づ聖（せい）使徒（しと）行（ぎょう）実（じつ）の内（うち）には主（しゅ）の門（もん）徒等（とら）が聖体（せいたい）機（き）密（みつ）を行（おこな）って主（しゅ）の御（おん）苦（くるし）みを記（き）憶（おく）する為（ため）に復（ふく）活（かつ）日（び）に集（あつま）ったことを記（しる）して斯（こ）う申（もう）して御座います『七（なぬ）日（か）の首（はじめ）の日（ひ）門（もん）徒（と）が餅（パン）を擘（さ）く為（ため）に集（あつま）り云々（うんぬん）』（二十の七）又（また）黙（もく）示（し）録（ろく）に『主（しゅ）の日（ひ）に箛（ラッパ）の如（ごと）き大（おほい）なる声（こえ）を聞（き）けり』（一の十）と記（しる）して御座います、『主（しゅ）の日（ひ）』とは主（しゅ）の御（ご）復（ふく）活（かつ）の日（ひ）を指（さ）したもので御座います。

問　十誡（じっかい）の第四誡命（かいめい）に申（もう）して御座いまする『安息（あんそく）日（び）を憶（おぼ）えて之（これ）を聖潔（きよく）すべし』と謂（い）ふ誡命（いましめ）は只（ただ）主（しゅ）の御（ご）復（ふく）活（かつ）日（び）で有（あ）る日曜（にちよう）日（び）許（ばか）りに関（かん）係（けい）した御（おん）誡（いましめ）で教会の他（ほか）の祝（しゆく）日（じつ）大祭（たいさい）には別（べつ）に関（かん）係（けい）しては居（い）ないので御座いますか。

答　否（いいえ）、矢張（やつぱり）関（かん）係（けい）して居（お）るので御座います昔（むかし）の旧約（きゅうやく）教（きょう）会（かい）では只（ただ）七（なぬ）日目（かめ）の土（ど）曜（よう）日（び）の日（ひ）許（ばか）りでなく他（ほか）の祝（しゆく）日（じつ）及（およ）び大（おほ）斎（ものいみ）の日（ひ）をも安息（あんそく）日（び）と申（もう）して其（その）日（ひ）を慎（つつし）むべきことを誡（いまし）めて居（お）りましたが、丁（ちよう）度（ど）其（それ）と同（おな）じく私（わたくし）共（ども）新約（しんやく）教会に於（お）きましても矢張（やつぱ）り只（ただ）主（しゅ）の復（ふく）活（かつ）日（び）許（ばか）りでなく生（しょう）神（しん）女（ぢょ）マリヤ及（およ）び諸聖人（しょせいじん）を祭（まつ）る為（ため）に定（さだ）められた紀（き）念（ねん）日（び）にも慎（つつし）むことを命（めい）じて居（お）るので御座います、で御座いますから十誡（じっかい）の第四誡命（かいめい）は只（ただ）主（しゅ）の日（ひ）許（ばか）りでなく諸聖人（しょせいじん）の日（ひ）にも関（かん）係（けい）して居（お）るので御座います。

問　私（わたくし）共（ども）の教会に設（もう）けて御座（ござ）いまする諸祭日（しょさいじつ）の内（うち）で何（ど）う謂（い）ふ祭日（まつりび）が尤（もっと）も大切（たいせつ）な祭日（まつりび）で御座いますか。

答　其（それ）は私（わたくし）共（ども）の救（すくい）の為（ため）に人体（じんたい）を取（と）り給（たま）ひし神（かみ）の子（こ）イイスス ハリストスの御事（ごじ）跡（せき）を紀（き）念（ねん）する祭（まつり）と、其（その）神（かみ）の子（こ）が身（み）をお籍（か）りになった聖（せい）母（ぼ）マリヤの御事（ごじ）跡（せき）を紀（き）念（ねん）する御（お）祭（まつり）で御座います、茲（ここ）に順（じゆん）序（じよ）を追（お）ふて其（その）祭（まつり）を述（の）べて見（み）ませうならば、

▲第一　生（しょう）神（しん）女（ぢょ）誕（たん）生（じょう）祭（さい）　之（これ）は聖（せい）母（ぼ）マリヤの御（お）生（うま）れになった日（ひ）を紀（き）念（ねん）する祭（まつり）で御座います

▲第二　生（しょう）神（しん）女（ぢょ）進堂（しんどう）祭（さい）　是（これ）は聖（せい）母（ぼ）が神様の宮（みや）に献（けん）ぜられたことを紀（き）念（ねん）する祭（まつり）で御座います

▲第三　生（しょう）神（しん）女（ぢょ）福音（ふくいん）祭（さい）　是（これ）は聖（せい）母（ぼ）が神（かみ）の使（つかひ）から神（かみ）の御子（みこ）が聖（せい）母（ぼ）の体（からだ）に懐妊（みごもり）なさる御（お）告（つげ）をお受（うけ）になったことを紀（き）念（ねん）した日（ひ）で御座います

▲第四　主（しゅ）の降誕（こうたん）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）の母（はは）マリヤが神（かみ）の子（こ）なるイイスス ハリストスをお生（う）みなさった日（ひ）を紀（き）念（ねん）したもので御座います

▲第五　主（しゅ）の洗礼（せんれい）祭（さい）　聖三者（せいさんしゃ）祭（さい）　此（これ）は聖（せい）母（ぼ）から御（ご）誕（たん）生（じょう）なさった主（しゅ）イイスス ハリストスが先（せん）駆（く）預（よ）言（げん）者（しゃ）イオアンから洗礼（せんれい）をお受（う）けになり、聖三者（せいさんしゃ）が御（お）顕（あらはれ）になったことを紀（き）念（ねん）する日（ひ）で御座います

▲第六　主（しゅ）の進堂（しんどう）祭（さい）　之（これ）は聖（せい）母（ぼ）が主（しゅ）を携（つ）れて神（かみ）の宮（みや）に其（その）当時（とき）の風（ふう）に従（したが）って宮詣（みやもう）でに御出（おい）でになった日（ひ）を紀（き）念（ねん）したもので御座います

▲第七　主（しゅ）の変容（へんよう）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）が其門（そのもん）徒（と）なるペトル ヤコフ イオアンに己（おのれ）の栄（さかへ）を御（お）示（しめし）になる為（ため）ハオル山（さん）に於（おい）てお姿（すがた）をお変（か）へになった日（ひ）を紀（き）念（ねん）した祭（まつり）で御座います

▲第八　聖（せい）枝（し）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）が十（じゅう）字架（じか）にお懸（かか）りになる一週間前（まえ）に厳（おごそ）かにエルサリム城（じょう）にお入（はい）りになり人民（じんみん）が手（て）に枝（えだ）を持（も）って主（しゅ）をお迎（むか）へした日（ひ）で御座います

▲第九　主（しゅ）の復（ふく）活（かつ）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）が私（わたくし）共（ども）の救（すくい）の為（ため）に十（じゅう）字架（じか）にお懸（かか）りになり三日目に死（し）より復生（よみがえ）って私（わたくし）共（ども）の救贖（あがない）を御立（おた）てになった日（ひ）で私（わたくし）共（ども）が尤（もっと）も祝（いは）ひ楽（たのし）むべきお祭（まつり）で御座います

▲第十　主（しゅ）の昇（しょう）天（てん）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）が御（ご）復（ふく）活（かつ）の後（のち）四十日目に天（てん）にお昇（のぼ）りになった日（ひ）で御座います

▲第十一　五（ご）旬（じゅん）祭（さい）　是（これ）は主（しゅ）の御（ご）昇（しょう）天（てん）の後（のち）十日目に聖神（せいしん）が門（もん）徒（と）の上（うへ）に降（くだ）ったことを紀（き）念（ねん）し至（し）聖三者（せいさんしゃ）を讃（ほ）め揚（あ）ぐる日（ひ）で御座います

▲第十二　十（じゅう）字架（じか）挙栄（きょえい）祭（さい）　之（これ）はギリシヤ国（こく）の聖（せい）皇（こう）后（ごう）エレナが主（しゅ）のお懸（かか）りになった十（じゅう）字（じ）架（か）を発見（はっけん）した日（ひ）を紀（き）念（ねん）したお祭（まつり）で御座います

▲第十三　聖（せい）母（ぼ）就寝（ねむりの）祭（まつり）　是（これ）は生（しょう）神（しん）母（ぢょ）マリヤの御薨去（おかくれ）になった日（ひ）を紀（き）念（ねん）した祭（まつり）で御座います

問　教会には斎（ものいみ）日（び）と申（もう）して精（しょう）進（じん）潔斎（けっさい）する日（ひ）が御座（ござ）います相（そう）ですが其（その）斎（ものいみ）の内（うち）で重（おも）なる物（もの）は何（ど）う謂（い）う斎（ものいみ）で御座いますか。

答　其（それ）は四（し）旬（じゆん）大斎（たいさい）と申（もう）しまして主（しゅ）イイスス ハリストスが四十日間（かん）斎（ものいみ）をなさいました例（れい）に倣（なら）ひまして四十日の間（あいだ）続（つづ）く斎（ものいみ）で御座います此（この）斎（ものいみ）は毎年（まいねん）主（しゅ）の御（ご）復（ふく）活（かつ）祭（さい）の前（まえ）に御座（ござ）いまして、主（しゅ）が種々（いろいろ）のお苦（くるしみ）をお忍（しの）びになった苦（くるしみ）の一週間に行（おこな）ふ所（ところ）の七（なぬ）日（か）の厳（きび）しき斎（ものいみ）と合（あわ）せて四十七日の斎（ものいみ）を教会では実行（じつこう）して居（お）ります。

問　其（それ）では教会が毎週（まいしゅう）水曜日と金曜日に斎（ものいみ）をする様（よう）に勧（すす）めて居（お）りまするのは何（ど）う謂（い）ふ意味（いみ）から出（で）たので御座いますか。

答　水曜日に斎（ものいみ）をしまするのは我主（わがしゅ）イイススが苦（くるしみ）に御（おん）付（わた）されになったことを思（おもい）出（だ）す為（ため）で金曜日は其（その）苦（く）難（なん）と死（し）とを紀（き）念（ねん）する為（ため）で御座います。

問　其（それ）では主（しゅ）の御（ご）降誕（こうたん）祭（さい）と聖（せい）母（ぼ）の御（お）永寝（ねむり）の祭（まつり）と聖（せい）使徒（しと）ペトルとパエルの祭（まつり）の前（まえ）に斎（ものいみ）を置（お）かれましたのは何（ど）う謂（い）ふ訳（わけ）で御座いますか。

答　此（この）二（ふたつ）のお祭（まつり）の前（まえ）に在（あ）る斎（ものいみ）は主（しゅ）の御（ご）誕（たん）生（じょう）と聖（せい）母（ぼ）の御（お）寝（ねむ）りを敬（うやま）ひ心（こころ）を清（きよ）くして此（この）御（お）祭（まつり）を迎（むか）へるが為（ため）に設（もう）けたもので御座いまして、後（あと）の使徒（しと）の祭（まつり）の前（まえ）の斎（ものいみ）は聖（せい）使徒（しと）の神（かみ）の教（おしへ）を伝道（でんどう）した事（じ）跡（せき）を想（おも）ひ出（だ）し、彼（かれ）等（ら）の行（おこない）に倣（なら）ふ為（ため）に設（もう）けたもので御座います。

問　十誡（じっかい）の第（だい）四（し）誡命（かいめい）を正（ただ）しく履（ふ）み行（おこな）ふには如何（いか）なることをしたならば宜（よろ）しう御座いますか。

答　其（それ）は神様の日（ひ）なる第（だい）七（なぬ）日目（かめ）には俗（ぞく）なる仕（し）事（ごと）をなさず常（つね）に此（この）日（ひ）を慎（つつし）んで清（きよ）い仕（し）事（ごと）に其（その）日（ひ）を献（けん）ずる様（よう）にしなければなりませぬ。

問　清（きよ）い仕（し）事（ごと）と申（もう）しますると何（ど）う謂（い）ふ仕（し）事（ごと）なので御座います。

答　例（たと）へば聖堂（せいどう）に行（い）って祈（き）祷（とう）に與（あづか）って神様の御（おん）教（おしへ）を聞（き）いたり、家（いへ）に居（い）ては霊（たましひ）の益（えき）になるやうな書（ほん）を読（よ）んだり又（また）は美（うつく）しい話（はなし）をしたり、そして教会の為（ため）、教会に務（つと）めて居（い）る者（もの）の為（た）め或（あるい）は病（びょう）気（き）で困（こま）って居（い）る者（もの）や貧（まづ）しい人（ひと）の為（ため）に金品（きんぴん）を惠（めぐ）んだり又（また）は彼（かれ）等（ら）を慰（なぐさ）むることで御座います。

問　其（それ）では神様の日（ひ）にさへ其（そ）う謂（い）ふ行（おこない）をなせば残（のこり）の六（むい）日（か）は何（ど）う謂（い）ふ行（おこない）をしても可（よ）いので御座いますか。

答　否（いいえ）、其様（そん）なことは御座（ござ）いません残（のこり）の六（むい）日（か）とても出来（でき）る丈（だ）け善（よ）い行（おこない）をなし力（つと）めて徳（とく）を積（つ）むやうにしなければなりませぬ、私（わたくし）共（ども）神様を信（しん）じて居（お）る者（もの）は必（かなら）ず毎朝夕（まいあさゆう）神様に祈（き）祷（とう）を献（ささ）げ何事（なにごと）をなすにも人（ひと）の為（た）め神様の栄（さかえ）を現（あら）はすと謂（い）ふ心（こころ）掛（がけ）を以（もつ）てしなければなりませぬ。

問　神様の日（ひ）に卑猥（みだら）な演劇（しばい）を見（み）たり忌（い）むべき遊（あそび）をなしたり、又（また）は飲（の）めや歌（うた）へやの大（だい）痴（ち）態（たい）を演（えん）ずる様（よう）なことは何（ど）う謂（い）ふもので御座いませう。

答　其（それ）は無（む）論（ろん）大罪悪（だいざいあく）で御座います其様（そのよう）な行（おこない）は常（つね）の日（ひ）でさへ甚（はなは）だ善（よ）くない行（おこない）で御座（ござ）いますものを况（ま）して主（しゅ）の日（ひ）などに其様（そのよう）な行（おこない）をなせば赦（ゆる）すべからざることで御座います。

問　毎日（まいにち）自（じ）分（ぶん）の竭（つく）すべき職（しよく）分（ぶん）を尽（つく）さず、只（ただ）浮浪々々（ぶらぶら）として其（その）日（ひ）を送（おく）って居（お）る様（よう）な人（ひと）は何（ど）うで御座いませう。

答　其様（そのよう）な者（もの）は無（む）論（ろん）十誡（じっかい）の此（この）第（だい）四（し）誡命（かいめい）に悖（もと）って居（お）ります、何故（なぜ）かと申（もう）しますれば神様は其（その）誡（いましめ）の内（うち）に於（おい）て『六（むい）日（か）の間（あいだ）は労（はたら）きて汝（なんぢ）の一切（いっさい）の業（わざ）をなすべし』と申（もう）して人（ひと）は六（むい）日（かの）間（うち）は一（いつ）生（しょう）懸命（けんめい）に働（はたら）かなければならぬものと教（おし）へて有（あ）るので御座います。