家賃未納者取締の御達江戸の洒落芝居取締方申渡しの高案諸芸人の取締諸芝居名代座元芝居主櫓元取締芝居附茶屋へ御逹芝居ある町々の年寄へ諭す西町奉行の訓旨正直に商売すべき事公儀の煩雑ならざる様注意する事分限相応にして御触を厳守すべきを諭す物価引下げに就いての注意献上物に託けて洒落文句矢喰体の詩日光御社参の役員真田信濃守屋敷の珍事狸の怪奇京都市中の花柳界取締伏見奉行の遊所取締文身を禁ず通貨引替に就いての御触古金銀引替に就いての注意分限相応の服装をなすことを覚す茶屋風呂屋の転業を速かならしめんとす堂島米直段に就いての触書刃製造人の限定を解除す共同地使用に課税す請負地よりも地代と称へて課税す傾城町水道冥加金を地代を称ふること大坂に旅籠を許す規定以外にて旅籠渡世するを許さず家受渡世の者に対する触書借家人の不法を戒む百姓の奢侈を禁ず古銅吹潰しの禁止混浴を禁止す上下の弁別を立てしむ下人に縮緬を禁ず分限により衣類を異にせしむ唐物類売買に就いての達江戸廻送に就いての口達総年寄演舌の写通貨引替の口達夜店を禁ず町々の木戸を厳重にす百姓の奢侈に赴くを禁ず百姓に農事を奨励す子弟の教育に勉めしむ
【家賃未納者取締の御達】此度諸色直下げ申付け候に付ては、家賃銀の儀、寛政の度再糺の上、町々より書出し有㆑之、直段に引当て何れにも引下げ可㆑申旨等の儀、追々申渡し候に付、入家賃銀の相滞り候者不㆑少候に付、夫々家主より相勤め候公役・町役は勿論、家屋敷売買・家賃取組等も差支へ候由相聞え、如何の事に候。右体手厚に引下げ方の儀申渡し置き候上は、以来決して家賃銀為㆑滞申間敷、自然相滞り候者有㆑之ば、早速家主より可㆓申出㆒、其仕儀次第急度可㆓申付㆒候。右の通り三郷町中へ、不㆑洩様可㆓申聞㆒候事。
八月七日
江戸に於て晒落【江戸の洒落】
琴吹や稲の世なみのあたゝまり 今日庵政道 美濃と近江の替る月かげ 岡本庵野水 あそこでも咄しの声の潜まりて 武勝堂吹人 焼火のあたまそらふ人数 宿尻亭皆人 物の値は下げても品のへる計り 商人 無事にすぎゆく遠山の庵 北亭呉服 其のむかし石の地蔵のばけし顔 隅田庵中の 只泣くのみの歌舞妓なりけり 二丁 面憎きくにざむらひの利口ぶり 成島庵黒石 喰習うたる甲斐の玉味噌 野顔庵美筑 三味線も売つて蚊細き朝けむり 歌瑠亭歌女 根太の透間を芽出す若竹 所々庵明店 弁捐とははなしばかりに薫る風 不出亭太夫 急に忙しくなりし具足師 来卯庵光社 大名にまたもふえたる御厄介 因幡庵諏訪丸 垣の透から桔梗笑むなり 太備 薄々と月のうさぎも疲かれけり 林亭浜町 焼はまぐりの哀れゆく秋 駿河 夫をも持つて髪をも結ひならひ 開茶亭若女 庇あはひもなき吉原の町 岡所亭苦理を
雪の日も存じのほかに売れぬ酒 第一庵質素
【 NDLJP:101】此俳諧は、天保壬寅の吟にして、百韻になるべき処、筆紙の費を厭ひて歌仙とす。是月花の座と雖も、酒食珍味を用ひず、神釈の句新しきは所払、無常は早きをよしとす。売体所は百姓地或は武家地を除き、家宅は表色を禁じて、総嫁・辻君をも出さず、衣類・器財は聊奢侈を用ふべからず。此式恒例となすべし。
上寛仁大度下小人を憐む
三那正路五趣意二、霜〔下〕
芝居取締方申渡高案 道頓堀其外諸芝居歌舞伎役者共【芝居取締方申渡しの高案】
道頓堀其外諸芝居歌舞伎役者共、取締り方の儀、元禄年中追々申渡し置き候処、近来相弛み、別して風儀悪しく一般に高給を貪り、右に付身分をも不㆑顧、不相応の奢に長じ候趣相聞え、不埓の至に付、取締方等の儀当五月厳重に申渡し置き候。然る処銘々給金の外加役余内抔と唱へ、其外品々名目を付け、増金を望受け候へども、病気等申立て興行差支へさせ候に付、無㆑拠増金等相渡し候故、追々増長致し、立者・座頭抔と唱へ候者一人に付、年分格別の高給受取り候者も有㆑之。畢竟右等の場合より奢侈及㆓超過㆒候儀等相聞え候間、以来一同弥〻身分相慎み、途中致㆓往来㆒候節、暑寒とも編笠相用ひ、総て素人に立交り候儀は不㆓相成㆒候。且給金の儀は、立者・座頭と唱へ候者、一ヶ年五百両を限り、其余の者共は右に准じ、夫々割合相立て、都て町役人申付は勿論、芝居興行元或は座元等よりの談を違背致す間敷候。尤江戸・京都も同様申渡し有㆑之筈にて、三都の外近遠国城下町在等へ罷越し、狂言致し候儀に付ては、申渡有㆑之候通り弥〻以不㆓相成㆒、其段国々へも御触有㆑之候間其旨を存じ、湯治・神仏参詣などと号し、猥に他国へ参り候儀は致すまじく候。其外取締方の儀は、当五月相触れ候通り、堅く相守可㆑申候。若し此上聊にても申渡の趣相背き候はゞ、厳重の咎可㆓申付㆒候間、心得違無㆑之様可㆑致候。但一同住所の儀、古来より道頓堀に限り有㆑之候に付、以来も唯今迄の通り相心得、市中処々立別れ住居致す間敷候。
【 NDLJP:102】 操芝居・浄瑠璃語・人形遣【諸芸人の取締】
大坂操座の儀、狂言座興行相休み候芝居に於て、其節限り操座元に元名前差出し興行致し来り、兼て操座と差極め芝居無㆑之上は、規定候儀も狂言座に准じ可㆑申筋にて、既に浄瑠璃語・人形遣等の数取締り、座方は当五月厳重に申渡し置き候。然る処近来華美の衣類・上下等著用致し、取締方申渡し候趣に候。浄瑠璃・人形遣給金等、相当の引下げ狂言座の場所羅合ひ不㆑申様致し、
道頓堀其外諸芝居 名代・座元・芝居主・櫓元 【諸芝居名代座元芝居主櫓元取締】
道頓堀其外諸芝居取締方の儀、元禄年中以来追々申渡し置き候へども、近来相弛み、歌舞伎役者共給金の外加役余内抔と唱へ、其外品々名目を付け、増金等相渡し、或は道具仕掛等に諸入用相掛け、右故芝居上り高より給金高多く興行差支へに相成り候趣相聞え、畢竟役者共身分不相応の奢に長じ、右体過分の給金受取り候段不埒には候へども、興行元・座元等にても、古来よりの規矩を崩し、連々給金雑上げ候段是又不束の事に候。向後立者・座頭と唱へ候者、一箇年給金五百両に差極め、其余の者共は右に准じ割合相渡し、以後給金増金は勿論、手を込め候道具仕掛等致す間敷候。尤も大坂表諸芝居の儀、狂言座・操座勝手次第、右芝居於て興行致し来り候儀に付、役者共抱込み日数も三十日宛、或は浜芝居と唱へ候分は廿日又は十五日宛差極候て、一年極と申候儀無㆑之由に付、役者共過不及無㆑之様其時々興行芝居為㆓割合㆒、一箇所に居附不㆑申様致し、夫々雑合ひ抱入候儀は不㆓相成㆒候。且近来大入並平日とも、桟敷代等引上げ候由相聞え、右は不繁昌を招き候儀に付、向後桟敷代・敷物代等に至る迄、古来より取極め有㆑之直段より一切引上げ不㆑申、狂言仕組等猥りなる儀無㆑之様致し、其外取締方の儀は、当五月相触れ候通り心得可㆑申候。但操座興行の節も、右に付給金等も相当に引下げ可㆑申候。尤前条の通り役者共其外の者取締方申渡し候上、夫々給金渡方遅滞無㆑之様致し遣し、興行元等の以㆓権威㆒押付取計らひ致すまじく候。
【 NDLJP:103】 道頓堀其外芝居附茶屋共
【芝居附茶屋へ御逹】此度諸芝居取締方の儀厳重相立ち候間、以来興行打続き可㆑申。然る上は銘々渡世向実意に相営み、食物・料理等高直の品不㆓差出㆒、機敷代・敷物代等に至る迄、古来より取極め候通り相改め、決して直増等不㆑致、見物人物入薄き様可㆓心掛㆒。さ候へば自ら芝居繁昌致し、渡世永続も可㆑致筋に付、心得違無㆑之様可㆑致、且役者共等を見物人へ引合せ、或は酒宴等の相手に差出し候段相聞き候に於ては、吟味の上茶屋商売為㆓差止㆒、厳重咎可㆑申候間、兼ねて其旨可㆑存候。
右町々年寄共
【芝居ある町々の年寄へ諭す】右の通り取締方申渡し候間、得㆓其意㆒先年より追々申渡し、当五月御触次第違失無㆑之様堅く相心得、役者共今般の申渡を背き候か、興行元・座元等如何の取計らひも有㆑之ば早々可㆓申立㆒、若等閑に致し置くに於ては、其方ども可㆑為㆓越度㆒旨精々取締方行届き候様、厚く世話可㆑致候。
大芝居一軒〈三十一匁〉下桟敷一軒〈廿九匁〉土間四人詰・〈上一貫五百文中一貫三百匁下一貫二文〉・但表通続込一人前〈小芝居四十八文〉・一ト切壺人前上場〈廿四文〉・下場〈十二文〉・但表通続込〈一人前十文〉
寅七月
右は前々より定め直段の旨、於㆓年寄㆒書付差出し候事。【西町奉行の訓旨】此頃西御奉行様御歩行にて、町々御見廻被㆑為㆑在候御序に、当郷総会所へ当月廿二日夜御立寄り御座候処、総会所へ参り合せ居り候町々年寄十二町の衆へ、御奉行様御直に御懇の御意被㆑為㆑在候御教諭の趣同廿五日四つ時総会所へ守宅にて、右十二町年寄中より町々年寄へ被㆓申通㆒候、書取の写左の通り。
今般殿改正に付、従㆓江戸㆒被㆓仰下㆒候御趣意の儀は、下々身軽の者に至る迄、暮し方安堵に可㆑為㆑致様との思召を以て、問屋仲間組合等御差止め、金銀融通宜しく相成り、渡世向永久致し候様種々御仁恵御世話被㆑為㆑在候儀は、江戸表は勿論諸国一統の儀にて、当地計り厳敷被㆓仰渡㆒候事にては無㆑之候。業柄に寄り先づ差当り、旧来の流弊を改め候を迷惑に存じ候者も不㆑少、触面を委しく不㆓相心得㆒無㆑謂恐怖致し、万【 NDLJP:104】事手を縮め候者有㆑之趣にて、融通合に相響き、既に諸式二割余引下げの御趣意に付、諸品元方引合行届兼ね、直下げ難㆓出来㆒分は、兼て触面の通り無㆓斟酌㆒可㆓申出㆒、糺の上為㆓引下㆒可㆑遣候。其内表は諸引二割余引下げ候体にて、内実引下げ不㆑申者も有㆑之趣風聞有㆑之、右等の始末及㆓露顕㆒候はゞ、夫々蒙㆓御咎㆒可㆓恐入㆒事にて、兎角御世話被㆑為㆑在候其詮無㆑之、扨々歎かはしき次第に有㆑之間敷哉、右に不㆑限何事にても無㆓斟酌㆒可㆓申出㆒、善悪とも察度咎請け候儀には決して無㆑之候。何れとも家業を精出し、其余力透障には芝居・角力見物・遊山等致し、身分相応の楽み無㆑之ては渡世難㆑営。乍㆑併斯の如く申せばとて、猥りに分限を不㆑弁奢侈に押移り候様成行き候ては、背㆓本意㆒候。至て身軽の働人其日過しの者は、香の物肴に一合酒飲みても難㆑有事と存じ、又其余、身上有福の者は、一二種の肴調へ候ても奢と申すにも無㆑之、身上能き者・働人同前の暮し方致し候ては、御趣意に相触れ可㆑申。右に付何分人気引立て候ため、色々心配致し、此方共は不㆑及㆑申、御老中様・御城代様にも格別被㆑為㆑在㆓御厚配㆒、少しは人気立直り候へども、何分此方初入の節は、当地繁華にも相見え候処、此節市中何となく淋しき模様、灯火の消えたる如く相聞え候故、万事聞取るのみにては不分明に存じ、例なき事ながら此節市中見廻り候内、当北組場所柄も広く有㆑之中にも、末々難渋の所柄も相見え、折角御世話被下候御趣意下々の者へ通じ兼ね、色々心配を致し候儀、町々年寄共其町借屋末々の者へ行届かせ、此上追々御触出も有㆑之間、御趣意相守り、更に恐怖可㆑致儀は無㆑之、盗賊は首を被㆑刎、御触面相背き候者は御咎受け候事故、能々可㆓申聞㆒、尚実に差支へ難渋の事は、是亦借屋末々の者迄、篤と聞調べ存寄りの廉、御役所へ封印にて申出で候とも、又は総年寄共迄なりとも可㆓申立㆒候。総年寄共も心配致し、存付きの廉々種々願立て候儀も有㆑之、骨折致し候事厚く可㆑存候。此度の御趣意半季・一年と限り候には無㆑之、御代と共に万々歳無㆓退屈㆒可㆓相守㆒事に候。今日の申諭は急度立て申渡し候儀にては無㆑之、折節其方共参り合はせ居候趣及㆑見候に付、此方心腹を打明け申聞け候儀に候間、厚く心を用ひ、外々年寄どもへ其方共より篤と申達し、末々の者へ申諭可㆓取計㆒事。今日御通し申し候儀は、町々末々迄篤と御申聞け可㆑被㆑成候。尤書取を以て御銘々御聞取被㆑成【 NDLJP:105】候儘を、御手元にて書取被㆑成候御心得にて御写取可㆑被㆑成勿論、会所表へ張り候儀は被㆑成間敷候。
七月廿五日
総会所へ参居り候町名。 南鍋屋町・内平野町・錦町一丁目・福井町・過書町・新天満町・瓦町一丁目・葭屋町・船坂町安土町二丁目・小倉屋仁兵衛町・橘通六丁目
西奉行様市中御見廻御休息中、町年寄へ被㆓仰諭㆒候大意、傍にて筆記せし写
其方共を態々此処へ呼出し候は、先達より被㆓仰出㆒候御改革の三箇条は、御触にて承知の儀に付、組与力・総年寄夫々役人ゟ毎々申諭し之有り、唯今改めて申す迄も之無く候へ共、此程中の様子、下々実に有難く承伏致し候哉、我等も未だ土地不案内故、町並盛衰をも現に見受け度くと、所々相廻り候へども、一通り見計らひに及び候ては、下々の情我等に分り兼候へば、定めて下々は、上の有難き事をばえ知り難きと存じ候。依つて委敷申聞け候へども、恐れながら御仁徳の厚き次第、口にも述べ尽さゞる事に候。
【正直に商売すべき事】一、奢り甚しく諸色高直にては、表向義理合張り信実を失ひ、無益の事より困窮に及び恥も存ぜざる儀に至り、欲心増長し、遂には悪事も仕出し候に付、質素倹約諸色直下げ等に相成り、下々安閑に暮し候様との儀、誠に有難き事に候へども、年来不正心付かず相過ぎ候間、当今人間並に相成るを窮屈に存じ、或は迷惑に存じ候は不埒の事にて、是迄右体の所業直に如何様の御咎有㆑之共無㆓致方㆒処、冥加も御免無代納物は、御買上に相成候計りの事も莫大の御違ひ候へども、一向無頓著、猶下々を御救下さるべしとの儀は、格別に身に染み申すべき筋に候。右等の処を有難く承知致し候はゞ、銘々暮し向に費無㆑之様商ひ物は利を薄く致し、品数にて売徳有㆑之様に心を用ひ候へば、自と店繁昌致し、自分々々の為に候。自分の為心掛け候儀は即ち御趣意を能守り候事に候間、町々限り厚く世話致し、一町風儀直り候へば、隣町へも推移り候。一体此度の儀は、江戸計り諸色の都合宜しき様にとの儀には無㆑之、世上一同の御触に候へども、大坂は先前土地自慢致し候通り、諸国の台所に候間、当地の者共正路に相成り、
【公儀の煩雑ならざる様注意する事】一、右体江戸表より難㆑有御趣意仰出され、当地にては此上なき重き御城代様にも、何卒右御趣意下々へ行届き、弥〻土地繁栄致し候様にと日夜御配意成られ候へども、市中支配致し候我々は、難㆑有江戸の御趣意、厚き御城代様の思召し下々へ通じ、下々の苦楽の体も委しく申上げ度き事故、御触を背き候者有之度毎に、胸を割る様に存じ候へども、右様の者を御仕置御咎に被㆓仰付㆒候儀、則ち諸人の為め御仁恵に候間、此上一己々々を慎み、公儀御世話薄き様致すべく候。
【分限相応にして御触を厳守すべきを諭す】一、右御触の儀は、三月・四月限りの儀には無㆑之、万々歳も此通りにて変らざる事下々の者御時節柄抔とて、宅内にて膝も崩さゞる様に心得候ては間違に候、其日の商ひ相当に致し候上にも、猶ほ相働き候て、折々暇には少しは気保養致さず候ては続き兼ね候。右保養にも様々有㆑之、香物にて盃飲み候ても、程よく酔ひ候心地は終日の労を散じ候。縦令傾城・芸子を集め候とも、家内の事諸の払等を考へ候へば、楽しみにも相成らず候間、何事も身分相当を勘弁致し、芝居・相撲・船遊山、心置きなく致すべく候。此上も又々厳重の取締り触渡しも之あるべく候へども、御触を背かず候はゞ、御咎には相成らず、少しも怖しき事にては無㆑之候。一同縮居り世間を見置き候ては、自と手狭に相成り御趣意違ひ候間、他に構はず存分手広く危ぶみなく、商売致すべく候。
【物価引下げに就いての注意】一、二割下げの事も、先頃より直段引下げの儀世話致し候へども、格別日立ち候程の儀も無㆑之候間、何品にも二割と申すを見当と致し候事にて、触書にも之ある通り、引下げ相成るべき品は、三四割にても引下げ申すべく、若し二割下げ兼ね候品は、其段申立つべき旨も認め有㆑之候。返す〴〵有難き御趣意を存じ、精出し直下致すべく候へども、元直段高直にて引下げ難き分は、心配なく申立つべく、早速其元方を取調べ遣すべく候。元は高く仕入れ、中にて損を致し安く売出せと申す儀には之無し、然るを通例二割下げとさへ認め候へば、相済む事と存じ、実に引下げず候ては、以ての外の事に候。此儀は売物計りには之なく、表向御趣意を守り、内に不埒の者は猶更罪重く候。右は白洲に申渡し受証文申付け抔と事替り、今日町方見廻り【 NDLJP:107】休息中、其方共は町役をも勤居る事柄、弁別も之あるべき間打明かし咄に及び候事也。扨其方共にも兼て存じ付き候儀有㆑之候はゞ、聊遠慮なく申聞くべく候。尤此席にて申述べ兼ね候はゞ、追て総年寄へ申立て候とも、又は封書にても差出し候とも致すべく候。此儀は其方に限らず、裏屋小屋の者にても御為の事、土地の為と存じ候儀は申出づべく候。若し得手勝手を申立て候とも叱りは致さず候。当り障り之有る儀にても宜敷候間、必ず〳〵心配なく申立つべし。兎角下々の事知れ兼ね候間、呉々も存じ付き候儀其儘申出づべく候。恐れながら上には天下の為を思召し、御配慮遊ばされ、御城代様には大坂の為を思召し、御配慮遊ばされ候事故、我々は骨を粉に致しても相働き候御時節なり。此理を順操々々に致し候へば、其方共は一町一店の事、厚く心配世話致すべき筈の事に候。
今度格別の御仁政被㆓仰出㆒難㆑有御事に付、御酒十樽・鮮鯛十尾奉㆓献上㆒候。【献上物に託けて洒落文句】寛政初度にふくし樽 恵みの程も御目出鯛 殿中ひとりりきみ樽 沢瀉引かせて貰ひ鯛 何事やれで枯果て樽 貴様を生かして詠鯛 国替止んで馬鹿げ樽 二万石とはありが鯛 藪から棒といだし樽 杉浦智慧を出させ鯛 矢部こえ工夫を
寛政のむかしに御代はかへれどもかへらぬものは老と借金
天軒考 地名潰 直下札 家主困 能懸触 株騒痛 前後下 新借取 樽代止 貸金弱 地愁如 古強出 役諸歎 国肝近 賢人退 護要心 町苦厳 軍也繋
夫れ人間の不用なる、品を
後生よりも現世大事とかせぎなば節季の鬼のおそれ気もなし【日光御社参の役員】
来る卯年日光御参詣に付、国主大名御関所堅め御明城番所場名前付左の通
碓井峠 加賀殿 甲州駒木根 肥後殿 相州浦賀 薩州殿 下総銚子 小倉殿 相州箱根 仙台殿 常州大津 備前殿 奥州白河 長州殿 下野高下崎 藤堂殿 日光中禅寺 庄内殿 総州関宿 丹羽殿 大井川 南部殿 遠州新井 佐竹殿 久能山兼帯駿府御城番上杉殿 甲府御城番 有馬殿 上野宮様御附 土州殿 増上寺 雲州殿 御浜御殿 津軽殿 日光今市 阿波殿 宇都宮城番 因州殿 岩槻城番 芸州殿 御本丸御手先 酒井雅楽頭榊原式部殿 西御丸大手 松平大和守殿 御本丸 神戸殿
御留守居〈但西丸様御本丸御移り〉 西御丸 未詳。
御留守居御道中人数揃 中山通り 尾州殿〈御三卿様御同道〉 千住通り 紀州殿〈若年寄衆中〉
其外御老中方は、日光御通り、其余大目附以下の役人は不㆑残、御参詣の御人数凡一万二千人余、御譜代の面々大方御供、外様衆面々三十六目附方〆 仙台・箱根陣備 〈総勢六千人騎馬武者七百人〉万石以上七人・普以上、廿五人。右三十二人にて三千八百人。大将定。
一、仙台殿手元二千二百人備、本陣箱根小田原先陣三島宿、片倉小十郎
三島備神原にて、八町四方地雷火の備、本陣箱根には三貫目十五挺、西南向に備へ、総て武具・兵具数不㆑知、尤日数十三日の間、其外大名方夫々加備へ御座候ても、未だ触も無㆑之事に候間、他見の儀は御遠慮可㆑被㆑下候。以上、
【 NDLJP:109】【真田信濃守屋敷の珍事】真田信濃守殿於㆓屋敷㆒、当三月珍事。尤も右同藩中より参り候者の風聞及㆑承候間、早速罷越承り候物語の由。
高百五十石〈但小高に候へども内福〉内田鵜殿・同四百七十石〈一刀大袈裟即死〉池田八太夫・同三百五十石 〈追かけ討留即死〉上原勘兵衛・同三百五十石〈深手疵〉師岡七郎左衛門・〈二階に居候処逃候由〉竹村熊吉
右五人の内熊吉一人実子にて、余人は何れも同藩中より養子に参り候由。右の面面鵜殿を始め在勤にて、何れも当時御取次役相勤め、六箇年来外四人の面々、毎度鵜殿内福の上実体の人柄に候へども附合悪しく、折々遊里に誘進め候へども、余り参り候事も無㆑之、質素倹約致す行を心悪く思ひ、雑言恥を与へられ候箇条、三月九日迄に七十五箇条有㆑之。扨右大変有㆑之候九日には、八太夫・勘蔵両人にて、鵜殿に申聞け候は、「貴様身上殊の外能く候ても、士の刀が切れねば役に立たぬ」抔其外例の毒言甚しきに付、其時直に可㆓討果㆒と存じ詰め候処、七郎左衛門致㆓他出㆒、夜に入り七郎左衛門帰りを承届け、其砌御広間休息所に八太夫・勘兵衛居合せ候折柄、鵜殿八太夫に向ひ、「日頃の雑言、又先刻の刀の切味の事覚えたるかや、則ち刀の切味見よ」とて抜打ち、大げさに切放ち候。此体に恐れ、勘兵衛脇指を以て逃出で候処を追駈け、御茶屋部屋御台所口迄逃出し、大戸のくやり明けかけ候に手間入り候内追詰め、後より斬付け、是非なく手にて受け候節、指四本切落され、其上面半面切裂け候故、即時に倒れ候を首討落し、刀を納め何気なき体にて、七郎左衛門小屋へ参り、家来に承り候処、小用に参り候哉と答ふ。之に依つて待受け居り候処を、六年已来意趣覚え有るべきとて、抜討に肩より脊へかけ一尺余り切付け候故、即死の真似にて能く仕留め候と心得、夫より熊吉へ仕掛け、在宿の程を家来に尋ね候より、此体平日の様子に無㆑之候間、家来頓智を以て留守の由を答へ、殊に多くは又御泊に御出被㆑成候様子の旨申しければ、其分に捨置き、夫より公用人寺内多宮方へ罷越し、右の次第委しく申述べ、「恐入り候得共右の仕合不㆑及㆓是非㆒、此上は御家法の通り御仕置覚悟仕り候。熊吉を討漏らし候事、甚だ以て残念に奉㆑存候。当人御糺被㆑下候へば、一々覚可㆑有㆓御座㆒候。何分宜敷奉㆓頼上㆒候。」一向に取乱したる体は更に無㆑之由。右鵜殿事は当時親類へ御預けに相成候由。且又師岡氏大疵、外科横山新賢療治七十針余縫ひ候事は、意趣七十箇条余有㆑之候と承違ひ可㆑有㆑之由。深手に候得共、丈夫の【 NDLJP:110】人故療治も相届き可㆑申旨、医師申聞け候由にも承り候事。
【狸の怪奇】越後国魚沼郡小千谷組真人村は、千石余の村高にて十六箇所に家居を構へ候場所に候。右の内若土の分は、本村より乾に当り、一里余隔て、山中に家居十軒余有㆑之、畑方郷にて粟・稗・蕎麦重に作付け、夫食の料に致し候処なり。村居より七八町も隔て、字南の山と唱へ候所に、何の頃より住みしか、其所の村民も不弁狸多く住みて、年々作物を荒し、畑に有㆑之分は踏倒し喰散らし、家々へ取入る分は穴中へ運び貯置き、折々は婦女子抔の名を呼び、或は白張提灯夥しく見せ葬礼の体を為し、或は大勢集りたる様の物音をなし、民家を地震抔の様に動かし抔致したるも有㆑之、色々奇異の事共をなし、人をおびやかし候事数年の間なれども、近隣には妖狸と言ひ、若土にては南山と唱へ候。深くも怪まず、女童迄も驚く気色もなく、「又南の山が出たるぞ」拓申居り候由の処、近来狸の数増し、諸作残少に荒し候て当惑致し、穴の口に、夜中篝を焚き、毎秋作物熟する頃は、郷民不㆑寝番致し居り候処、さ候ても何れより抜出で候哉作物を荒し候事大方ならず候に付、狸を取るべきため、撞木の如き木を拵へ、外に出刄庖丁・山刀様の物を持ち、竹松明をあかし、枝穴々へ入り候由の処、右穴入口甚だ狭く、四つ這にて漸く這り候場〔〈所脱カ〉〕二三箇所も有㆑之、夫より奥は中腰位にて通路相成り申候。内至つて場広に相成り、上へ手の不㆑届所も有㆑之、又溜水抔も有㆑之、或は庇造の形に穴の出来候場所も有㆑之、中々人作の及ぶ処に非ず、誠に妖獣の為す業と云ひながら、珍しき事也とぞ。扨又狸共行留り迄は逃入り、推詰り候処、人に懸り候由。其節彼撞木を以て押付け置き、刄物にて刺殺し候由の処、狸の居合ふ穴へ当り候は至つて稀なる由。年に五六匹宛は狩取り候由。其形犬位にて真丸肥太り、手足甚だ短く、其目方は四五貫目も可㆑有㆑之哉、並々の狸とは形至つて違ひ候様相見え、其四足熊の油の様なる白味多く、其味至つて油濃く覚え候。右狸去去亥年頃より百姓共手に不㆑及由を以つて、小千谷陣屋へ鉄炮等拝借願を致し候由の処、御備兵器の儀は地下へ貸渡し候儀不㆓相成㆒、村方所持の猪防筒などを以て相防ぎ候処、丑年に至り候ては防ぐに手なく、猶又陣屋へ訴へ、御威光を戴き狩り候はねば、村中一統へ仇致し候由にて、御紋の高張提灯拝借願出で、其外郡中人足【 NDLJP:111】助合等申談じ、人足裁判の為め軽き役人の内罷越し、年久しく狸穴を掘崩し候処、何の間に逃去り候哉、纔に五六匹ならでは不㆓狩取㆒由、然る処真人村拾六
京都御触
【京都市中の花柳界取締】京地傾城町の外、遊女渡世の儀は祇園町・同新地、且つ二条新地・北野七条新地、右四ヶ所へ先年より追々年限を以て差免し、其外端々所々にて株式を以て、茶屋渡世差免し置き候処近来差定め、遊女の外、茶立女・芸者等追々人数相増し、何時となく風儀猥りに相成り、隠売女の働き并宿等致し候者も有㆑之、不埒の事に候。此度諸事御改革の折柄、遊女渡世の者等多分有㆑之候ては、風俗に拘はり候間、傾城町の外は速に不㆑残取払可㆑被㆓仰付㆒候処、格別の御宥恕を以て、先づ商売替の儀御免被㆑成候間、難㆑有奉㆑存、当月より六ヶ月を限り、追々商売替致し、正路の渡世可㆑致候。併し是迄抱置き候女共、傾城町へ奉公住替差遣し候儀、并右渡世の者共傾城町人別に加り、遊女商売致し候儀は勝手次第の事に候。尤も傾城町の者共、奉公人住居替等の儀申来り候はゞ、給金等に付不相当の取計致す間敷候。併し引越し来り遊女屋相始め候を、無㆑謂差障申す儀無㆑之様可㆑致候。此上商売替不㆑致有来りの場所は勿論、外に於ても隠売女渡世致し候者有㆑之候はゞ、厳格に御仕置申付け、地主は武士地・寺社門前地・町地の無㆓差別㆒、其地面永代被㆓召上㆒、家主・所役人も可㆑被㆓厳科㆒候間、【 NDLJP:112】兼ねて其旨を存じ、右被㆓仰出㆒候趣、厳重に可㆓相守㆒候。
右の通り洛中・洛外不㆑洩様可㆓相触㆒者也。
寅八月
此度祇園町・同新地を始め、所々売女屋并茶屋渡世の者共、商売替等可㆑致旨、町触差出し候に付ては、差当り迷惑致し候者も可㆑有㆑之候得共、世上の風俗にも拘はり候儀に付、速に取払可㆓相成㆒処、格別の御宥恕を以て、商売替又は傾城町へ引越し候儀等、勝手次第に被㆓成下㆒候御仁恵の程、難㆑有奉㆑存、商売替の儀銘々存じ付き次第、正路の渡世を営み永続可㆑致候。又は傾城町へ引越し候者、并に商売替致し候者共、是迄抱へ置き候女共、身分の儀に付不実の取扱ひ不㆑致様、精々入念其所々町役人共厚く申談じ、篤と申諭し候様可㆑致候。
右の趣洛中・洛外不㆑洩様可㆓相触㆒者也。
寅八月
【伏見奉行の遊所取締】伏見御奉行の裁許、何事も行届き総て是迄毎事に憐愍の取捌にて、下々大に悦べる事のみなり。此度遊所取払の儀に付、柳町とやらん、墨染とやらん、撞木とやらん、何れとも、忘れたれども只一ヶ所のみ差免されて、多く有る処の遊所、悉く取払ひ申付けられしにぞ、何れも京・大坂の噂を聞きぬる事、如何とも詮方なく、途方に暮れて居たりしに、三日目に至りて一ケ所の免されし遊女町を、中しよ島へ所替すべしと申付けられしといふ。此島伏見にて船乗場の向にある所の島にして、是迄も尤卑劣の遊女ありて、下賤の者の遊べる所なるに、此度停止仰付けられし事故、是も大に困り居たりしに、一ヶ所の免されしを此所へ引移さるゝ事なれば、是迄の姿にて渡世するに至り、一統大悦びなりと云ふ。此島至つて場所広き事なれば、外外の遊所町何れも此島へ移り来ても、土地窮屈になくして、何れの遊所も差支なく是迄の渡世を致す事故、少しも混雑する事なくして、大に祝ひなどをなして悦べる事なりといふ。
口達
【文身を禁ず】身軽の者共、ほり物と唱へ、総身へ種々の絵物又は文字等を彫り、墨を入れ、或は色【 NDLJP:113】入等に致し候者も有㆑之由、右体の儀は風俗にも拘はり、殊に無疵の総身へ疵付け候は、銘々恥可㆑申筈の処無㆓其儀㆒、若き者共都て伊達と心得候哉、諸人の嘲笑ひ候をも不㆑顧、右様の儀致し候者多く相見え不㆑宜事に候間、向後手足は勿論、総身の彫物致すまじく候。能々町役人共よりも為㆓申開㆒、心得違の儀無㆑之様可㆓申諭㆒候。且又右彫物致し遣り候者共は、人々任㆑頼旨とは乍㆑申、忌嫌ふべき事を不㆓差構㆒、好に随ひ彫り遣し候者別て不埒の儀に付、自今心得違致し、新に彫物致し候者有㆑之ば、其者は勿論彫物〔〈彫り脱カ〉〕遣し候者一同召捕り急度申付け、其次第に寄り町役人共迄咎可㆓申付㆒候条、右の者共より町々并若年の者共へは、別て厚く可㆓申諭㆒候。
右の通り夫々不㆑洩様可㆓申聞㆒事。
寅八月
八月十二日御触
【通貨引替に就いての御触】文政度以来金銀吹直し被㆓仰付㆒候処、当時保字金銀一分銀・弐朱金等を以て、専ら世上通用に被㆓成置㆒候に付ては、文政度の文字金銀・草字二歩判・二朱銀・一朱銀等、此度不㆑残通用停止被㆓仰出㆒候間、其旨相心得、凡て古金銀是迄停止の品共所持致し候者は、多少とも有体の員数銘々より書付け、其筋へ可㆓差出㆒候。数度引替の儀相触れ候へども、今以て引替残りし高不㆑少候は、畢竟金銀持囲候余力有㆑之者共、品位宜しきと存じ候方を宝と致し隠置き候故に候哉、人情に於て無㆑謂事には無㆑之候へども、心得違にて候。金銀は世上通用を以て宝と致し候事故、品位何程宜敷金銀たりとも、既に停止の上は持囲ひ候は一己の宝と致し候迄にて、世上一同の宝には不㆓相成㆒候。公儀御製作世上の宝たる品を、一己の私を以て宝と致し、持囲ひ隠置き候は心得違にて、触渡しの趣を背き、罪科不㆑軽儀に有㆑之、世上の為め品々御改正被㆓仰出㆒、下々痛みに相成候儀相厭候様の御趣意にて、誠に難㆑有御時節の処、一己の迷により違犯の罪科に陥り候者共も有㆑之候ては、其節に至り後悔致し候ても無㆑詮不便の儀に付、兼て諭示し候。是迄の停止此度より停止の金銀共、速に触書に応じ、銘々持囲ひ候員数有㆑之儘書出し候者は、自己の冥加を弁へ、触渡し相守り候奇特の段可㆑被㆑賞候。若し世上通用の義理を不㆑顧、一己私情の迷を不㆑悟有の儘【 NDLJP:114】不㆓書出㆒、此上猶隠置き候はゞ、取上げの上厳しく咎可㆓申付㆒候。此旨能々相心得違犯致すまじく候。右の趣諸国御代官所御預り所・諸奉行所私領は国主・領主・地頭より不㆑洩様為㆓触知㆒、停止の金銀所持の有無吟味致し、所持の者は為㆓書出㆒、御勘定所へ右書付可㆓差出㆒候。引替遣し方の儀は御勘定奉行可㆓申達㆒候。若し持隠しの吟味行不届等閑の儀も有㆑之に於ては、面々可㆑為㆓越度㆒候。右の通り可㆑被㆓相触㆒候。
右の趣従㆓江戸㆒被㆓仰下㆒候条、此旨三郷町中可㆓触知㆒者也。
覚
【古金銀引替に就いての注意】一、此度文字金銀・草字二歩判・二朱銀・一朱銀等通用停止相成り候に付ては、右御触面の通り所持の者は、多少とも有体の員数、銘々より書出し候儀は勿論の事に候て、於㆓奉行所㆒猶又厳重の糺方可㆑致儀に候へども、右の内一朱銀の儀は当時専ら通用致し候に付ては、身薄き者持合ひ候分、追て引替方の儀相達候迄、其儘に相成り居り候ては、取続方等に拘はり候分も可㆑有㆑之哉に付、右様の者は其町々年寄は不㆑及㆑申、於㆓其方共㆒も能々致㆓世話㆒、所柄に寄り兼ねて積金有㆑之町々は、其方より引替へ遣置き候か、又は身元宜しき両替屋其外町人共抔と及㆑談、引替貰ひ遣し候て、書出し方名前の儀は相対次第に致し、何れにも身薄者取続方等不㆓差支㆒様、厚く取計らひ可㆑遣候。右の段差し心得、町々年寄共へ急度可㆓申諭㆒事。
【分限相応の服装をなすことを覚す】一、先達て衣類の品直段の限をも伺済の上、相達し置き候。右は一般に綿服に相成り、女などは別て主臣の差別も無㆑之候に付、身分の品に寄り、繻子帯等の儀も相用ひ候様達し置き候処、中には下女迄も繻子等の帯相用ひ候も有㆑之由にて、是又主臣の訳不㆓相立㆒風俗にも拘はり候間、右伺済の次第能々致㆓弁別㆒、総て右の類に不㆑限、其分限に不㆑違様、於㆓町々㆒年寄より心を被㆑付、且下男・下女等は其主人、借屋人は其家主より心添可㆑致候。質素倹約の儀銘々の為にて、何れも暮らしよく相成り候様との厚き御仁恵の御改正を難㆑有奉㆑存、自分限り其家限り深き御趣意の程を相守り、分限を能く心得候へば、風俗も不㆓相乱㆒、衣類の品も自ら次第相立ち候事に候。畢竟銘銘分限を不㆑弁より、右の通り相成候間、委細に夫々へ可㆑被㆓申諭し置㆒候事。
寅八月
【 NDLJP:115】 寅八月十五日御触
【茶屋風呂屋の転業を速かならしめんとす】大坂古町并新地請負地、其外町続在領建家場等に、前々より差免し有㆑之候茶屋・風呂屋致渡世候者共、近来猥りに相成り、定の外茶立女・髪洗女等多人数召抱へ、品品不正の稼致し候趣相聞え、元来傾城町の外は都て隠売女に候は勿論の儀にて、一体の風俗に拘はり候間、此度諸事御改正の御趣意を以て、右商売不㆑残差止め、速に場所取払ひ可㆑被㆓仰付㆒処、格別の御宥恕を以て、一統御仕置・御咎等の不㆑及㆓御沙汰㆒、先づ商売替の儀被㆓差免㆒候間、格別難㆑有奉㆑存、来る卯正月迄の内、追々外商売致し、正路の渡世可㆑致候。尤も銘々抱女共数多可㆑有㆑之間、相対を以て傾城町へ奉公住替へ差遣し候儀、並に是迄右渡世の者共、傾城町へ引移り、同所人別に加はり、遊女屋商売候し候儀勝手次第、傾城町の者も右奉公人住替の儀申来り候はば、給金等に付不相当の取計らひ致すまじく候。勿論新規引移り来り候者、遊女屋相始め候儀を、無㆑謂差障り候儀無㆑之様可㆑致候。此上右月数過し候ても、商売替致さず、是迄の場所にて隠売女渡世致し候者之あるに於ては、夫々厳格に御仕置等申付け、地主は寺社前・町地の差別なく、其地面永代召上げられ、家主並に所の者も是又厳科に可㆑破㆑処候間、兼ねて其旨を存じ、右の趣厳重可㆓相守㆒候。
右の通り江戸表より御下地を以て申渡す間、夫々不㆑洩様可㆓触知㆒者也。
寅八月若狭遠江
八月十七日御触
【堂島米直段に就いての触書】大坂米相場の儀、諸国米直段の基本にて、其上米穀を以て仕出し候品は勿論、諸色共総て米直段を本として売出し候道理に候上は、右米相応の高下に寄り、万価に拘はり候筋に付、享保年中格別の御世話有㆑之、天明度にも米売買方の儀に付、米仲買共へ品々仰諭され候趣も有㆑之、当時迄も右御趣意に基き取扱ひ来るに付、堂島米相場は諸国米直段より下直の方に有㆑之、右にて世上釣合宜しき趣相聞え候処、此度総て株札並に問屋仲間組合等停止、素人直売買相成り候に付ては、諸家払米は勿論、目余る商米共、素人一同銘々手元限の直立てを以て売買致し、普通の相場相立ち申さず候ては、世上米直段の為め宜しからざるのみならず、万価に差響き候筋に【 NDLJP:116】付、此後も堂島米売買方等の儀は、唯今迄の通り居置き候段、其筋の者共へ申渡し候間、一統其旨を存じ、以来素人にても、米方奉行司へ相届け市場へ立交り、諸家払米、其外共直売買致し候儀勝手次第、右に付取締向きの儀、諸事年行司の差配を受け、享保の度以来の掟を相守り、新古の差別なく相互に和合致し、弥〻以来米直段のめ為宜しき様掛引可㆑致候。
但米方両替の儀も、右同様の振合に相心得申すべく候。
一、玉沢町相撲〔模カ〕屋又市先代又市儀、明和年中願受け候米相場の儀、堂島相場移取り、正米竑に流相場帳合商取組み、諸家払前入札をも致し候仕法に有㆑之、右は冥加金相納め候故を以て、願受け候儀にて外に訳柄無㆑之、此度右体株仲間組合等停止、素人直売買勝手次第に相成り、右に付冥加金も上納に及ばざる旨申渡し候上は、当時又市差配致し候市場差止め候ても、敢て米融通合に差支へ候儀無㆑之候得共、大坂米市場の儀、堂島一箇所にては手狭の方に相成り、其上同所の儀も前条の通り申渡し候儀に付、旁〻江戸堀並に出店久左衛門町・東天満右三箇所市場の儀、以来年季に拘はらず、唯今迄の通り居置き、又市、市元に相成り、素人打込み米売買致し候儀勝手次第、尤も市場雑費の儀、日々寄集り候者共より、割合受取り候儀は苦しからず候得共、株料と唱へ、入用多く相掛け申すまじき段、又市へ申渡し候間、是又一統の旨を存じ、向後右市場へ寄集り候者共、米直段の儀は是迄の振合を以て取計らひ、弥〻不正の儀無㆑之様可㆑致候。
【刃製造人の限定を解除す】一、刃製法人の儀は初発江戸表に於て御吟味の上、大坂・堺両所一体に相成り、七人に限り製法仰付けられ、改印を以て御下渡し、当時迄も大切に相用ひ来り候儀にて、通例商売人共願により株仲間差免し候類とは訳も違ひ、其上元文年中元極め直段にて、高下無之売出し来り候処、此度厚き御趣意相弁へ、右定め直段より格別引下げ売買致し候趣相聞え、右に付何等差支へ候筋も無㆑之候に付、刃製法商売の儀、唯今迄の通り居置き候。且つ人数七人に限り候ては、仲間組合の姿と相成り、都て株仲間組合等差止められ候御趣意にも差障り候に付、以来大坂・堺両所の内、刃製法相届け候者は、其処の奉行所へ断出で、聞届け請けにて製法致し候上は、大坂改会【 NDLJP:117】所へ差出し、夫々立会ひ相改め相違無㆑之候分は、改印申受け、勝手次第売出し申すべく候。在来製法人共無㆑謂差障り候は勿論、改めに事寄せ、入用多く相掛け候儀無㆑之筈に付、其旨を存じ、新規刃製法相始め候者は、在来製法人売出し直段より、下直に候とも高直に売買致すまじく候。尤も此後も改印無㆑之、紛らはしき刃売買致し候者有㆑之ば、吟味の上急度申付くべく候。
【共同地使用に課税す】一、大坂町々・浜地・川岸通り等を、兼て町人共願済の上、銘々遣用に致し候故を以て、年々上納金銀仕来り候分は金地代にて、株仲間商売人等より差出し候冥加金銀の類とは訳も違ひ候に付、右の分は以来一般に地代と唱へ替へ、唯今迄の通り上納致すべく候。
【請負地よりも地代と称へて課税す】一、右同断新地請負地等の分、初発地所御払切又は請負仰付けられ候節、場所に応じ諸商売筋株物口々差免し、右助成を見込み、冥加金銀取極め上納致し来り候処、此度都て株札並に問屋仲間組合等停止、冥加金銀上納に及ばざる旨、最前触渡し候に付ては、別段地所に附き候株冥加の分引去り、金地子に相当り候分前同様地代と唱へ替へ、上納致すべき段其筋の者共へ申渡し候間、其旨を存じ、場所に株物等附無㆑之、請負地地子の分も、以来地代と唱へ替へ、唯今迄の通り上納致すべく候。
但堀江地子銀の儀は、猶又吟味の上追て沙汰に及ぶべく候。
【傾城町水道冥加金を地代を称ふること】一、傾城町水道冥加銀の儀、金地代に准じ候筋にて、株仲間商売人等より、相納め候冥加金銀の類とは訳も違ひ候に付、是又以来地代と唱へ替へ、唯今迄の通り上納致すべく候。
右の通り江戸表より御下知を以て申渡〔〈候脱カ〉〕間、夫々洩れざる様可㆓触知㆒者也。
【大坂に旅籠を許す】大坂表の儀は、諸国の商旅等多く立廻り候場所に付、此度左の箇所に限り旅籠屋商売差免し候。
新堀〈但安治川上一丁目同二丁目〉 曽根崎新地〈但一丁目ゟ三丁目迄〉 道頓堀〈但立慶町組日本橋ゟ西へ幸町五丁目迄芝居裏難波新地迄町地面限〉
右の通り申付け候。尤も右旅籠屋一軒に付、飯盛女二人宛召抱へ、其内大暮しの者は右に准じ、人数十人迄は勝手次第差置き、右に付品々定の儀夫々申渡し、右商売取締りの儀、此度改めて総年寄共に申付け候間、一統其旨を存ずべく候。
【 NDLJP:118】但大坂十一橋掛直し御修復等の為め。手当先前より右請負人へ差免し置き候廉も有㆑之候に付、前書三箇所旅籠屋の儀も追て沙汰せしめ候迄、右請負人常盤町三丁目重三郎へ相対に及ぶ外、旅籠屋並通り出銀致すべく候。
【規定以外にて旅籠渡世するを許さず】一、此度差免し候三箇所旅籠屋の儀、軒数相定め候ては、自ら仲間組合の姿に相成り、御趣意差障り候間、軒数に拘はらず、場所にて取極め候に付、此度飯盛女附旅籠屋渡世望の者は、右三箇所へ引移り、定めの通り相守り商売致すべく、其外何方にても水茶屋・料理屋、或は一通り旅籠屋渡世致し候儀は、之又勝手次第に候得共、飯盛女は勿論余程紛らはしき名目を以て、抱女致し、三箇所内旅籠屋同様の身過致し候儀、堅く相成らず候。
右の通り江戸表より御下知を申渡し候間、夫々洩れざる様可㆓触知㆒者也。
寅八月十七日若狭遠江
八月廿三日御触
【家受渡世の者に対する触書】一、此度問屋唱へ方等の儀に付、御触達の趣を以て、大坂三郷並に町続在方家受人の儀も、株仲間等唱へ候儀差止め、冥加銀も上納に及ばざる旨申渡し置き、猶又取調の処、右家受の儀、先年願受け候以後、右渡世致し候者、人数に引当て、所割りに致し家受判元と唱へ、銘々受持場を差定め有㆑之に付、縦へ親類・懇意の間柄にて、受人に相立ち遣し候者有㆑之候ても、何れ右場所受持の家受人、受判致さず候ては、家貸借相成らざる振合に押移り、借家人共に於ても、二重受人相頼み候仕儀に至り、手狭に相成り候のみならず、家受判料の失費も有㆑之、難儀に及び候事の由相聞え、前段御触面の差障りに候に付、家受渡世の儀更に差止むべきの処、右にては当地に金無㆑之者家借は勿論、外の借家人家入用有㆑之、家主ゟ家明の儀申出で候節、取扱ひ方不弁理に相成り、旁〻差支へ候趣に付、此後も右渡世の儀只今迄の通り、居置・家受判先と唱へ夫々箇所受持の儀差止め、巳来家受人共
但右家受流世の者方に
【借家人の不法を戒む】一、町々借家人共儀、家主へ家明渡し候節、差向き
但本文の通り申渡し候とて、実々家入用の儀有㆑之か、又へは家賃銀等相滞り、家主より家明の儀申出で候事は、聊か遠慮に及ばず候。借家人又は家受人に於ても右に事寄せ、家明き難渋致し候儀は勿論、家賃銀等滞らせ申すまじく、夫々家主も成丈け家賃銀引下げ遣すべく候。
【百姓の奢侈を禁ず】一、近年大坂最寄り在々の者共、兎角に都会の風儀に心を寄せ、百姓の本意を打忘れ、商人多く相成り、前々文政の度摂・河両国の内、綿作
一、材木屋・竹屋・並に商売にて、川中を置物に相用ひ候者、兼て願済にて冥加銀上来り候分、已来川岸地代と唱へ替へ、材木屋の儀も一同総会所へ上納銀取集め、万端取計らひ候様仰渡され候間、其旨右商売人洩れざる様、町銀達置かるべく候。且又願立・願止・名前替等の度毎、御月番川方御役所へ罷出で、帳面張替へ等致すべく、同日総会所帳面をも張替へ候様、町々に於て相心得置き、其筋へも心得置かせ申さるべく候事。
八月廿六日御触
【古銅吹潰しの禁止】先達て問屋並に仲間組合差止め候に付、是迄の銅細工人に限らず、素人にても勝手に細工致すべき旨触渡し候処、銅に携り候者共、真鍮吹職・銭物職の者共の内心得違ひ、古銅類勝手に売買致し、吹潰し候族も有㆑之哉に相聞え、不埒の事に候、古銅の儀は、前々触渡しの趣皆相守り、是迄の通り銅吹屋・古銅売上人共へ売渡し候か、又は勝手により銅座へ直に差出すべく、右の外売買吹潰しの儀等致すまじく候。若し心得違ひ、猥りに売買致し、又は吹潰し候者有㆑之候はゞ、其品取上げ急度沙汰に及ぶべく候。右の通り三郷町中可㆓触知㆒者也。
【混浴を禁止す】一、湯屋男女入交り相成らざる様仰出し候に付、当八月限り相改め候仕方、来る廿八日迄書付を以て申出さるべく候事。
八月廿七日御触
【 NDLJP:121】【上下の弁別を立てしむ】一、近年世上衣食住を始め、万事奢侈超過に及び候に付、質素節倹を相守り候様、追追御仁恵の御触達有㆑之候に付ては、猶又取締り方の儀、先達て品々申渡し置き候処、身元相応の者迄も段等を失ひ候次第に至り、右に付き其筋の者へ沙汰に及び候得共、都て軽き者迄規則を越え候て、一同相弛み申すべき様子に相聞え、不埒の儀には候得共、畢竟下々其時に心取違ひ候筋にも有㆑之べきやに付、弁別能き様に箇条を以て申渡し候。
一、家持の町人並に妻子等金入に無㆑之共、縫物並に錦織物高直の唐反物・華美染物類、一切著用致すまじき事。但し町人の内にも家名新古地面掛け屋敷多少等も有㆑之儀故、銘々身分を弁へ、分限より内輪に心掛け、召仕下人も無㆑之程の者は、縮緬は小切たりとも用ひ申すまじく候事。
【下人に縮緬を禁ず】一、借家人は縦へ男女多く召仕ひ候程の者にても、其身並に妻子共縮緬は小切たりとも堅く相成らず候事。但裏借家の者は木綿に限り候事。
一、同居人は名前人より、一等手軽に致すべき事。但身代限りの上、同居の者は、先達て相触れ候通り心得べき事。
【分限により衣類を異にせしむ】一、召仕の下人・下女の儀、家持町人の召仕は仕儀により、紬相用ひ候儀苦しからず候得共、平日は木綿たるべし。且借家人の召仕は、一向木綿相用ふべく候事。
一、御用掛り勤中は、借家住の者にても御用筋の節は、同勤並の品著用致すべく候儀苦しからず候事。
一、諸家用達立入りの者、其家々より貰受け候品は、家持借家人の差別なく、其儘著用苦しからず候得共、紋所無㆑之品は譬へ貰受け候品にても、:分限に応じ申すべき事。
一、寺社家は勿論医師・儒者・山伏・座頭・瞽女・能役者等前条に拘はらず、其分限に応じ申すべき事。
一、三箇所旅籠屋食盛女共は、先般申渡し候通り、余り華美に無㆑之、傾城町同様に相成らざる様致すべく候事、
一、歌舞伎役者・人形遣等は、兼て取締り申渡し置き候通り、相心得べく候事。
【 NDLJP:122】一、夏衣類の儀すきや・縮の類は縮緬、越後縮の類は絹・紬・晒麻の類木綿に准じ申すべく候間、右段等を心得、総て分限不相応の品著用致すまじき事。
右の通り此度改めて申渡し候間、一統其旨を存じ、違失なく相守るべし。尤も右に相洩れ候廉も有㆑之ば、前条の振合を以て、夫々分限に応じ勘弁致すべく候。自然此後右申渡しを背き、不相応の衣類等著用致し候儀、外より相聞き候に於ては、急度申付くべく候条、其節後悔致すまじく候事。
右の通り三郷町中端々迄も洩れざる様可㆓触知㆒者也。
寅八月若狭遠江
口達
【唐物類売買に就いての達】唐紅毛持渡る薬種・荒物類、並に毛類反物・皮類共、正路の品は危ぶみなく売買可㆑致旨、当四月以来追々申渡し置き候得共、兎角に町人共気配り縮々一際存じ込み、商売薄く取組み手狭に相成候趣相聞え、心得違の事に候。総て右品々の儀は、公事出入吟味中にても無㆑障取引致し、正銘の品所持或は並合ひ引当等に取置き候とも、妻子に拘はらず、当人計り御仕置き被㆑行候節は、其家不㆑及㆓闕所㆒、妻子へ被㆓下置㆒、又は吟味中家財を改め、封印付け候共、正銘の品に於ては、封印相成候儀をも能々弁別致し、何れにも唐紅毛正銘の品は、聊無㆓危踏㆒、一統見込み次第、出精取引可㆑致候。右の通り大坂町中へ早々可㆓申聞㆒候事。
口達
【江戸廻送に就いての口達】近来諸色江戸積致し候者、代銀仕切り相滞り候に付、自ら積み気配不進に相成候事の由相聞え、以の外の儀に候。此後右仕切銀相滞り難儀致し候者有㆑之ば、早速月番の奉行所へ可㆓申出㆒候。糺の上其筋へ掛合ひ、当人出府に及ばず取立て可㆑遣候。尤古借の儀は、年来等閑候儀に付、右同様には不㆓相成㆒候得共、是又取計らひ方勘弁致し可㆑遣間、一統其旨を存じ。注文並に送荷物共、聊無㆓危踏㆒、出精積廻し候様可㆑致候。
右の通り三郷町中へ可㆓触知㆒者也。
八月廿七日
【 NDLJP:123】 町々年寄へ総年寄永瀬七郎右衛門ゟ演舌の写【総年寄演舌の写】
何事によらず、御触並に触渡しを粗略に心得申すまじく、与の儀義〔余の義カ〕は兼て申諭し、其方精々心配致し候趣に候へども、兎角御触を背き、又は表向のみ御触通りに取計らひ候体にて、内実不埒の所業、或は御触を心得違ひ候者抔有㆑之儀、畢竟町役人共、等閑よりの儀に付、右様の者御咎相成候者、其筋の者不本意至極の事に候。さりながら一体の修理を弁へざる仕癖に拘はり、泥㆓私情㆒蠱惑致し候は凡俗の常に候間、有難き御改革の御趣意を弁へ、裏屋小屋の者共迄、厚く教導致し、一同を風靡致し候様努力致すべきの秋に候条、其方共ゟ町々年寄へ篤と申聞置き、其上にも不行届者は、早速引替へ申立つべく候。若し此後御触を背き候者有㆑之候節は、品に寄り夫々年寄迄も、吟味を遂げ申すべく候。事により候はゞ、其方共迄も越度と相成るべく候に付、此段兼て申聞け置き候事。
寅八月 〈提紙に但右は町々年寄心得方の儀にて会所表へ張出し置き候訳にては之なき事〉
ロ達
【通貨引替の口達】此度文政度の文字金銀・草字二歩判・二朱銀・一朱銀等不㆑残通用停止相成り、所持の者は員数書付け、其筋へ可㆓差出㆒旨の御触面に付、銘々所持の員数有㆑之儘、書付を以て申立て候へば、猶引替方の儀御沙汰有㆑之手続に候得共、囲持ち候筋に無㆑之、当用の為所持致し候分は、右迄にも不㆑及、近々引替へ相成候間、其旨を可㆑存候。尤当用に無㆑之分は、右御触の通り所持の員数其筋へ可㆓書出㆒候。
右の通り三郷町中夫々の者迄へも、洩れざる様申聞可㆑置事。
寅九月四日
【夜店を禁ず】当夏以来町々道端へ夜店差出し、小商致し候者多く有㆑之。右は軽き者身過の一助にも可㆓相成㆒候得共、追々風立ち候時節に至り、火の元等の為も不㆑宜候間、来る十五日ゟ来る卯の三月二日迄の間、昼の間は勝手次第致し、夜店差出し候儀相休み可㆑申候。尤も年来夜店差出し来り候場所は、是迄の通り相心得、別て火の元入念可申候。但此度限りの事にては無㆑之、此段年々右の振合に相心得可㆑申候。
寅九月十日
【 NDLJP:124】【町々の木戸を厳重にす】町々木戸追々修覆相調へ、最早取揃ひ候様相見え候処、番人等閑にて木戸を開き候儘差置き候も有㆑之由、且夜を残し番人引取りも有㆑之、銘々盗難の儀は申す迄も無㆑之相歎くべき事に候処、等閑に相成り候ては、木戸造り候詮も無㆑之、追々冬分にも至り候間、町々見廻り等念入れ、右等閑無き様可㆑被㆑申、且又用水の儀も入念水弾・水籠等損ひ候はゞ、相改め五印水の手人足も、常々屈強の者相選置き、出火の節は手早く消留め候様専一に候間、平生厚く心掛け、何れも銘々の為に候間、能々可㆑被㆓申含㆒候事。
寅九月
【百姓の奢侈に赴くを禁ず】百姓の儀は、粗服を著し髪も藁を以て
【百姓に農事を奨励す】一、近年男女共作奉公人少なく、自然高給に相成り、殊に機織下女と唱へ候者、別て過分の給金を取り候由。是又余業に走り候所存の儀、本末取失ひ候事に候。元来百姓共は商ひ当座の利潤を以て営み候町人共とは、格別の儀に候条、之等の儀能々弁別致し、一途に農業精出し、銘々持伝へ候田畑に離れざる様、専一に心掛くべく候事。
【子弟の教育に勉めしむ】一、勘当・久離・帳外の儀、一体軽からざる儀に候処右体親族の因を抱き候程の者出来候は、兼々教へ方不㆑宜故の事に候、忰又は厄介等有㆑之者は勿論、村役人共一統其【 NDLJP:125】段厚く相心得、不実の儀無㆑之様常々異見を差加へ、一人たりとも其所人別相洩れざる様取計らひ致すべき儀肝要に候。右の趣堅く相守るべく、若し等閑に心得候者有㆑之ば、夫々吟味の上厳重に沙汰に及ぶべく候条、違失無之様、御料は御代官・私領は領主・地頭より相触れらるべく候。
九月
右の通り江戸より仰下され候条、此旨三郷市中にても相心得べき旨可㆓触知㆒者也。
この著作物は、1925年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)70年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。