國家總動員法

国家総動員法から転送)


朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國家總動員法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽

昭和十三年三月三十一日

內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
外務大臣 廣田宏毅
海軍大臣 米內光政
司法大臣 鹽野季彥
陸軍大臣 杉山元
遞信大臣 永野柳太郞
大藏大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬賴寧
商工大臣 吉野信次
鐵道大臣 中島知久平
拓務大臣 大谷尊由
文部大臣兼
厚生大臣
侯爵 木戶幸一
內務大臣 末次信正


法律第五十五號(官報 四月一日)

國家總動員法

第一條 本法ニ於テ國家總動員トハ戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ國防目的達成ノ爲國ノ全力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル樣人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ

第二條 本法ニ於テ總動員物資トハ左ニ揭グルモノヲ謂フ

、艦艇、彈藥其ノ他ノ軍用物資
國家總動員上必要ナル被服、食糧、飮料及飼料
國家總動員上必要ナル醫藥品、醫療機械具其ノ他ノ衞生用物資及家畜衞生用物資
國家總動員上必要ナル船舶、航空機、車輛、馬其ノ他ノ輸送用物資
國家總動員上必要ナル通信用物資
國家總動員上必要ナル土木建築用物資及照明用物資
國家總動員上必要ナル燃料及電力
前各號ニ揭グルモノノ生產、修理、配給又ハ保存ニ要スル原料、材料、機械具、裝置其ノ他ノ物資
前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要ナル物資

第三條 本法ニ於テ總動員業務トハ左ニ揭グルモノヲ謂フ

總動員物資ノ生產、修理、配給、輸出、輸入又ハ保管ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル運輸又ハ通信ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル金融ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル衞生、家畜衞生又ハ救護ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル敎育訓ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル試驗硏究ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル情報又ハ啓發宣傳ニ關スル業務
國家總動員上必要ナル警備ニ關スル業務
前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要ナル業務

第四條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民ヲ徵用シテ總動員業務ニ從事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ

第五條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民及帝國法人其ノ他ノ團體ヲシテ國、地方公共團體又ハ政府ノ指定スルノ行フ總動員業務ニ付協力セシムルコトヲ得

第六條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ從業ノ使用、雇入若ハ解雇、就職、従業若ハ退職又ハ賃金、給料其ノ他ノ從業條件ニ付必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第七條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞働爭議ノ豫防若ハ解決ニ關シ必要ナル命令ヲ爲シ又ハ作業所ノ閉鎖、作業若ハ勞務ノ中止其ノ他ノ勞働爭議ニ關スル行爲ノ制限若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得

第八條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物資ノ生產、修理、配給、讓渡其ノ他ノ處分、使用、消費、所持及移動ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第九條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ輸出若ハ輸入ノ制限若ハ禁止ヲ爲シ、輸出若ハ輸入ヲ命ジ、輸出稅若ハ輸入稅ヲ課シ又ハ輸出稅若ハ輸入稅ヲ增課若ハ減スルコトヲ得

第十條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ヲ 使用若ハ收用シ又ハ總動員業務ヲ行フヲシテ之ヲ使用若ハ收用若ハ收用セシムルコトヲ得

第十一條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ會ノ設立、資本ノ增加、合併、目的變更、債ノ募集若ハ第二回以後ノ株金ノ拂込ニ付制限若ハ禁止ヲ爲シ、會ノ利益金ノ處分、償却其ノ他經理ニ關シ必要ナル命令ヲ爲シ又ハ銀行、信託會、保險會其ノ他勅令ヲ以テ指定スルニ對シ資金ノ運用、債務ノ引受若ハ債務ノ保證ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第十二條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ總動員業務タル事業ヲ營ム會ノ當該事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲ノ債ノ募集ニ付商法第二百九十七條ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得

第十三條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル事業ニ屬スル工場、事業場、船舶其ノ他ノ施設又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル施設ノ全部又ハ一部ヲ管理、使用又ハ收用スルコトヲ得

政府ハ前項ニ揭グルモノヲ使用又ハ收用スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ從業ヲ供用セシメ又ハ當該施設ニ於テ現ニ實施スル特許發明若ハ登錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得

政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務ニ必要ナル土地若ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用若ハ收用シ又ハ總動員業務ヲ行フヲシテ之ヲ使用若ハ收用スルコトヲ得

第十四條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ鑛業權、砂鑛權及水ノ使用ニ關スル權利ヲ使用若ハ收用シ又ハ總動員業務ヲ行フヲシテ特許發明及登錄實用新案ヲ實施セシメ若ハ鑛業權、砂鑛權及水ノ使用ニ關スル權利ヲ使用セシムルコトヲ得

第十五條 前二條ノ規定ニ依リ政府ノ收用シタルモノ不用ニ歸シタル場合ニ於テ收用シタル時ヨリ十年內ニ拂下グルトキ又ハ第十三條第三項ノ規定ニ依リ總動員業務ヲ行フノ收用シタルモノ收用シタル時ヨリ十年內ニ不用ニ歸シタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ舊所有若ハ舊權利又ハ其ノ一般承繼人ハ優先ニ之ヲ買受クルコトヲ得

第十六條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ヲ制限若ハ禁止シ又ハ總動員業務タル事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ヲ命ズルコトヲ得

第十六條ノ二 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡其ノ他ノ處分、出資、使用又ハ移動ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第十六條ノ三 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業ノ開始、委託、共同經營、讓渡、廢止若ハ休止又ハ法人ノ目的變更、合併若ハ解散ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第十七條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ同種若ハ異種ノ事業ノ事業主間ニ於ケル當該事業ニ關スル統制協定ノ設定、變更若ハ廢止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制協定ノ設定、變更若ハ取消ヲ命ジ又ハ統制協定ノ加盟若ハ其ノ統制協定ニ加盟セザル事業主ニ對シ其ノ統制協定ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得

第十八條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ同種若ハ異種ノ事業ノ事業主ニ對シ當該事業ノ統制又ハ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル團體又ハ會ノ設立ヲ命ズルコトヲ得

前項ノ命令ニ依リ設立セラルル團體ハ法人トス

第一項ノ命令ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル其ノ設立ヲ爲サザルトキハ政府ハ定款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得

第一項ノ團體成立シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ當該團體ノ構成員タル資格ヲ有スルヲシテ其ノ團體ノ構成員タラシムルコトヲ得

政府ハ第一項ノ團體ニ對シ其ノ構成員(其ノ構成員ノ構成員ヲ含ム以下之ニ同ジ)ノ事業ニ關スル統制規程ノ設定、變更若ハ廢止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制規程ノ設定若ハ變更ヲ命ジ又ハ其ノ構成員若ハ構成員タル資格ヲ有スルニ對シ團體ノ統制規程ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得

第一項ノ團體又ハ會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第十八條ノ二 第十六條ノ二ノ規定ニ依リ設備若ハ權利ノ讓渡若ハ出資ヲ命ジ又ハ第十六條ノ三ノ規定ニ依リ事業ノ讓渡ヲ命ジタル場合ニ於テ讓渡又ハ出資ノ負擔スル債務ノ承繼及其ノ擔保ノ處理ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第十八條ノ三 第十六條ノ二ノ規定ニ依ル設備若ハ權利ノ讓渡若ハ出資、第十六條ノ三ノ規定ニ依ル事業ノ讓渡若ハ法人ノ合倂又ハ第十八條第一項若ハ第三項ノ規定ニ依リ設立セラルル團體若ハ會ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ課稅標準ノ計算ニ關スル特例ヲ設ケ又ハ租稅ノ減ヲ爲スコトヲ得

第十九條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ價格、運送賃、保管料、保險料、賃貸料 、加工賃、修繕料其ノ他ノ財產的給付 ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第二十條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ新聞紙其ノ他ノ出版物ノ揭載ニ付制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得

政府ハ前項ノ制限又ハ禁止ニ違反シタル新聞紙其ノ他ノ出版物ニシテ國家總動員上支障アルモノノ發賣及頒布ヲ禁止シ之ヲ差押フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ併セテ其ノ原版ヲ差押フルコトヲ得

第二十一條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民及帝國臣民ヲ雇傭若ハ使用スルヲシテ帝國臣民ノ職業能力ニ關スル事項ヲ申吿セシメ又ハ帝國臣民ノ職業能力ニ關シ檢査スルコトヲ得

第二十二條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ學校、養成所、工場、事業場其ノ他技能ノ養成ニ適スル施設ノ管理又ハ養成セラルベキノ雇傭主ニ對シ國家總動員上必要ナル技能ノ養成ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

第二十三條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ノ生產、販賣又ハ輸入ヲ業トスルヲシテ當該物資又ハ其ノ原料若ハ材料ノ一定數量ヲ保有セシムルコトヲ得

第二十四條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル事業ノ事業主又ハ戰時ニ際シ總動員業務ヲ實施セシムベキヲシテ戰時ニ際シ實施セシムベキ總動員業務ニ關スル計畫ヲ設定セシメ又ハ當該計畫ニ基キ必要ナル演ヲ爲サシムルコトヲ得

第二十五條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ總動員物資ノ生產若ハ修理ヲ業トスル又ハ試驗硏究機關ノ管理ニ對シ試驗硏究ヲ命ズルコトヲ得

第二十六條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ノ生產又ハ修理ヲ業トスルニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ一定ノ利益ヲ保證シ又ハ補助金ヲ交付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ政府ハ其ノニ對シ總動員物資ノ生產若ハ修理ヲ爲サシメ又ハ國家總動員上必要ナル設備ヲ爲サシムルコトヲ得

第二十七條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第八條第十條第十三條第十四條若ハ第十六條ノ二ノ規定ニ依ル處分、第九條ノ規定ニ依ル輸出若ハ輸入ノ命令、第十一條ノ規定ニ依ル資金ノ融通、有價證券ノ應募、引受若ハ買入、債務ノ引受若ハ債務ノ保證ノ命令、第十六條ノ規定ニ依ル設備ノ新設、擴張若ハ改良ノ命令又ハ第十六條ノ三ノ規定ニ依ル事業ノ委託、讓渡、廢止若ハ休止若ハ法人ノ目的變更若ハ解散ノ命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス但シ第二項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラズ

總動員業務ヲ行フハ第十條、第十三條第三項又ハ第十四條ノ規定ニ依リ使用、收用又ハ實施ヲ爲ス場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償スベシ

第二十八條 政府ハ第二十二條第二十三條又ハ第二十五條ノ規定ニ依リ命令ヲ爲ス場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償シ又ハ補助金ヲ交付ス

第二十九條 前二條ノ規定ニ依ル買受ノ價格ハ總動員補償委員會ノ議ヲ經テ政府之ヲ定ム

總動員補償委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第三十條 政府ハ第二十六條又ハ第二十八條ノ規定ニ依リ利益ノ保證又ハ補助金ノ交付ヲ受クル事業ヲ監督シ之ガ爲必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得

第三十一條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得

第三十一條ノ二 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ十年以下ノ役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス

第八條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル
第十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル

第三十二條 第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サントシタルハ三年以下ノ役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス

前項ノ場合ニ於テ輸出又ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サントシタル物ニシテ犯人ノ所有シ又ハ所持スルモノハ之ヲ沒收スルコトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵スルコトヲ得

第三十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ三年以下ノ役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス

第七條ノ規定ニ依ル命令又ハ制限若ハ禁止ニ違反シタル
第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ爲サザル
第十條ノ規定ニ依ル總動員物資ノ使用又ハ收用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌シタル
第十三條ノ規定ニ依ル施設、土地若ハ工作物ノ管理、使用若ハ收用又ハ從業ノ供用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル

第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ二年以下ノ役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス

第十一條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル
第十六條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル
第十六條ノ二ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル
第十六條ノ三ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル
第十七條若ハ第十八條第五項ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ統制協定若ハ統制規程ヲ設定、變更若ハ廢止シ又ハ第十七條若ハ第十八條第五項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル
第二十三條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ保有ヲ爲サザル
第二十六條ノ規定ニ違反シ生產、修理又ハ設備ヲ爲サザル

第三十五條 前四條ノ罪ヲ犯シタルニハ情狀ニ因リ役及罰金ヲ併科スルコトヲ得

第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ一年以下ノ役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス

第四條ノ規定ニ依ル徵用ニ應ゼズ又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事セザル
第六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル

第三十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス

第二十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル
第二十四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ計畫ノ設定又ハ演ヲ爲サザル
第二十五條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ試驗硏究ヲ爲サザル

第三十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スルハ千圓以下ノ罰金ニ處ス

第十八條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ團體又ハ會ノ設立ヲ爲サザル
第十八条第六項ノ規定ニ違反シタル
第三十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル
第三十一條ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル

第三十九條 第二十條第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ發行人及編輯人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ發行ヲ二年以下ノ役若ハ禁錮又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス

新聞紙ニ在リテハ編輯人以外ニ於テ實際編輯ヲ擔當シタル及揭載ノ記事ニ名シタル前項ニ同ジ

第四十條 第二十條第二項ノ規定ニ依ル差押處分ノ執行ヲ妨害シタルハ六月以下ノ役若ハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス

第四十一條 前二條ノ罪ニハ刑法併合罪ノ規定ヲ適用セズ

第四十二條 第三十一條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルハ六月以下ノ役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス

第四十三條 第二十一條ノ規定ニ違反シテ申吿ヲ怠リ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルハ五十圓以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ處ス

第四十四條 總動員業務ニ從事シタル其ノ業務遂行ニ關シ知得シタル當該官廳指定ノ總動員業務ニ關スル官廳ノ機密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス

公務員又ハ其ノ職ニ在リタル職務上知得シタル當該官廳指定ノ總動員業務ニ關スル官廳ノ機密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ五年以下ノ役ニ處ス

第四十五條 公務員又ハ其ノ職ニ在リタル本法ノ規定ニ依ル職務執行ニ關シ知得シタル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス

第十八條第一項又ハ第三項ノ規定ニ依リ事業ノ統制ヲ目的トシテ設立セラレタル團體又ハ會其ノ他本法ニ依ル命令ニ依リ統制ヲ爲ス法人其ノ他ノ團體ノ役員若ハ使用人又ハ其ノ職ニ在リタル其ノ業務執行ニ關シ知得シタル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキ亦前項ニ同ジ

第四十六條及第四十七條 削除

第四十八條 法人ノ代表又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十一條ノ二乃至第三十四條第三十六條第二號第三十七條第三十八條又ハ第四十三條前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑又ハ科料刑ヲ科ス

第四十九條 前條ノ規定ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表、代理人、使用人其ノ他ノ從業ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ付亦同ジ

本法ノ罰則ハ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル帝國臣民ニモ之ヲ適用ス

第五十條 本法施行ニ關スル重要事項(軍機ニ關スルモノヲ除ク)ニ付政府ノ諮問ニ應ズル爲國家總動員審議會ヲ置ク

國家總動員審議會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

軍需工業動員法及昭和十二年法律第八十八號ハ之ヲ廢止ス

本法施行前軍需工業動員法ニ基キテ爲シタル命令又ハ處分ハ之ヲ本法中ノ相當規定ニ基キテ爲シタルモノト看做ス

軍需工業動員法ニ違反シタルノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル

現代表記

朕帝国議会の協賛を経たる国家総動員法を裁可し茲に之を公布せしむ

御名御璽

昭和十三年三月三十一日

内閣閣総理大臣 公爵 近衛文麿
外務大臣       広田宏毅
海軍大臣       米内光政
司法大臣       塩野季彦
陸軍大臣       杉山元
逓信大臣       永野柳太郎
大蔵大臣       賀屋興宣
農林大臣    伯爵 有馬頼寧
商工大臣       吉野信次
鉄道大臣       中島知久平
拓務大臣       大谷尊由
文部大臣兼
厚生大臣    侯爵 木戸幸一
内務大臣       末次信正

法律第五十五号(官報 四月一日)

国家総動員法

第一条 本法に於て国家総動員とは戦時(戦争に準ずべき事変の場合を含む以下之に同じ)に際し国防目的達成の為国の全力を最も有効に発揮せしむる様人的及物的資源を統制運用するを謂ふ

第二条 本法に於て総動員物資とは左に掲ぐるものを謂ふ

兵器、艦艇、弾薬其の他の軍用物資
国家総動員上必要なる被服、食糧、飲料及飼料
国家総動員上必要なる医薬品、医療機械器具其の他の衛生用物資及家畜衛生用物資
国家総動員上必要なる船舶、航空機、車輛、馬其の他の輸送用物資
国家総動員上必要なる通信用物資
国家総動員上必要なる土木建築用物資及照明用物資
国家総動員上必要なる燃料及電力
前各号に掲ぐるものの生産、修理、配給又は保存に要する原料、材料、機械器具、装置其の他の物資
前各号に掲ぐるものを除くの外勅令を以て指定する国家総動員上必要なる物資

第三条 本法に於て総動員業務とは左に掲ぐるものを謂ふ

総動員物資の生産、修理、配給、輸出、輸入又は保管に関する業務
国家総動員上必要なる運輸又は通信に関する業務
国家総動員上必要なる金融に関する業務
国家総動員上必要なる衛生、家畜衛生又は救護に関する業務
国家総動員上必要なる敎育訓練に関する業務
国家総動員上必要なる試験研究に関する業務
国家総動員上必要なる情報又は啓発宣伝に関する業務
国家総動員上必要なる警備に関する業務
前各号に揭ぐるものを除くの外勅令を以て指定する国家総動員上必要なる業務

第四条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り帝国臣民を徵用して総動員業務に従事せしむることを得但し兵役法の適用を妨げず

第五条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り帝国臣民及帝国法人其の他の団体をして国、地方公共団体又は政府の指定する者の行ふ総動員業務に付協力せしむることを得

第六条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り従業者の使用、雇入若は解雇、就職、従業若は退職又は賃金、給料其の他の従業条件に付必要なる命令を為すことを得

第七条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り労働争議の予防若は解決に関し必要なる命令を為し又は作業所の閉鎖、作業若は労務の中止其の他の労働争議に関する行為の制限若は禁止を為すことを得

第八条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り物資の生産、修理、配給、譲渡其の他の処分、使用、消費、所持及移動に関し必要なる命令を為すことを得

第九条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り輸出若は輸入の制限若は禁止を為し、輸出若は輸入を命じ、輸出税若は輸入税を課し又は輸出税若は輸入税を增課若は減免することを得

第十条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員物資を 使用若は収用し又は総動員業務を行ふ者をして之を使用若は収用若は収用せしむることを得

第十一条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り会社の設立、資本の增加、合併、目的変更、社債の募集若は第二回以後の株金の払込に付制限若は禁止を為し、会社の利益金の処分、償却其の他経理に関し必要なる命令を為し又は銀行、信託会社、保険会社其の他勅令を以て指定する者に対し資金の運用、債務の引受若は債務の保証に関し必要なる命令を為すことを得

第十二条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは総動員業務たる事業を営む会社の当該事業に属する設備の費用に充つる為の社債の募集に付商法第二百九十七条の規定に拘らず勅令を以て別段の定を為すことを得

第十三条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員業務たる事業に属する工場、事業場、船舶其の他の施設又は之に転用することを得る施設の全部又は一部を管理、使用又は収用することを得

政府は前項に掲ぐるものを使用又は収用する場合に於て勅令の定むる所に依り其の従業員を供用せしめ又は当該施設に於て現に実施する特許発明若は登録実用新案を実施することを得

政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員業務に必要なる土地若は家屋其の他の工作物を管理、使用若は収用し又は総動員業務を行ふ者をして之を使用若は収用することを得

第十四条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り鉱業権、砂鉱権及水の使用に関する権利を使用若は収用し又は総動員業務を行ふ者をして特許発明及登錄実用新案を実施せしめ若は鉱業権、砂鉱権及水の使用に関する権利を使用せしむることを得

第十五条 前二条の規定に依り政府の収用したるもの不用に帰したる場合に於て収用したる時より十年内に払下ぐるとき又は第十三条第三項の規定に依り総動員業務を行ふ者の収用したるもの収用したる時より十年内に不用に帰したるときは勅令の定むる所に依り旧所有者若は旧権利者又は其の一般承継人は優先に之を買受くることを得

第十六条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り事業に属する設備の新設、拡張若は改良を制限若は禁止し又は総動員業務たる事業に属する設備の新設、拡張若は改良を命ずることを得

第十六条の二 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り事業に属する設備又は権利の譲渡其の他の処分、出資、使用又は移動に関し必要なる命令を為すことを得

第十六条の三 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り事業の開始、委託、共同経営、譲渡、廃止若は休止又は法人の目的変更、合併若は解散に関し必要なる命令を為すことを得

第十七条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り同種若は異種の事業の事業主間に於ける当該事業に関する統制協定の設定、変更若は廃止に付認可を受けしめ、統制協定の設定、変更若は取消を命じ又は統制協定の加盟者若は其の統制協定に加盟せざる事業主に対し其の統制協定に依るべきことを命ずることを得

第十八条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り同種若は異種の事業の事業主に対し当該事業の統制又は統制の為にする経営を目的とする団体又は会社の設立を命ずることを得

前項の命令に依り設立せらるる団体は法人とす

第一項の命令に依り設立を命ぜられたる者其の設立を為さざるときは政府は定款の作成其の他設立に関し必要なる処分を為すことを得

第一項の団体成立したるときは政府は勅令の定むる所に依り当該団体の構成員たる資格を有する者をして其の団体の構成員たらしむることを得

政府は第一項の団体に対し其の構成員(其の構成員の構成員を含む以下之に同じ)の事業に関する統制規程の設定、変更若は廃止に付認可を受けしめ、統制規程の設定若は変更を命じ又は其の構成員若は構成員たる資格を有する者に対し団体の統制規程に依るべきことを命ずることを得

第一項の団体又は会社に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む

第十八条の二 第十六条の二の規定に依り設備若は権利の譲渡若は出資を命じ又は第十六条の三の規定に依り事業の譲渡を命じたる場合に於て譲渡者又は出資者の負担する債務の承継及其の担保の処理に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む

第十八条の三 第十六条の二の規定に依る設備若は権利の譲渡若は出資、第十六条の三の規定に依る事業の譲渡若は法人の合倂又は第十八条第一項若は第三項の規定に依り設立せらるる団体若は会社に付ては勅令の定むる所に依り課税標準の計算に関する特例を設け又は租税の減免を為すことを得

第十九条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り価格、運送賃、保管料、保険料、賃貸料、加工賃、修繕料其の他の財産的給付 に関し必要なる命令を為すことを得

第二十条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り新聞紙其の他の出版物の掲載に付制限又は禁止を為すことを得

政府は前項の制限又は禁止に違反したる新聞紙其の他の出版物にして国家総動員上支障あるものの発売及頒布を禁止し之を差押ふることを得此の場合に於ては併せて其の原版を差押ふることを得

第二十一条 政府は国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り帝国臣民及帝国臣民を雇傭若は使用する者をして帝国臣民の職業能力に関する事項を申告せしめ又は帝国臣民の職業能力に関し検査することを得

第二十二条 政府は国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り学校、養成所、工場、事業場其の他技能者の養成に適する施設の管理者又は養成せらるべき者の雇傭主に対し国家総動員上必要なる技能者の養成に関し必要なる命令を為すことを得

第二十三条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員物資の生産、販売又は輸入を業とする者をして当該物資又は其の原料若は材料の一定数量を保有せしむることを得

第二十四条 政府は国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員業務たる事業の事業主又は戦時に際し総動員業務を実施せしむべき者をして戦時に際し実施せしむべき総動員業務に関する計画を設定せしめ又は当該計画に基き必要なる演練を為さしむることを得

第二十五条 政府は国家総動員上必要あるときは総動員物資の生産若は修理を業とする者又は試験研究機関の管理者に対し試験研究を命ずることを得

第二十六条 政府は国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り総動員物資の生産又は修理を業とする者に対し予算の範囲内に於て一定の利益を保証し又は補助金を交付することを得此の場合に於て政府は其の者に対し総動員物資の生産若は修理を為さしめ又は国家総動員上必要なる設備を為さしむることを得

第二十七条 政府は勅令の定むる所に依り第八条第十条第十三条第十四条若は第十六条の二の規定に依る処分、第九条の規定に依る輸出若は輸入の命令、第十一条の規定に依る資金の融通、有価証券の応募、引受若は買入、債務の引受若は債務の保証の命令、第十六条の規定に依る設備の新設、拡張若は改良の命令又は第十六条の三の規定に依る事業の委託、譲渡、廃止若は休止若は法人の目的変更若は解散の命令に因り生じたる損失を補償す但し第二項の場合は此の限に在らず

総動員業務を行ふ者は第十条、第十三条第三項又は第十四条の規定に依り使用、収用又は実施を為す場合に於ては勅令の定むる所に依り之に因り生じたる損失を補償すべし

第二十八条 政府は第二十二条第二十三条又は第二十五条の規定に依り命令を為す場合に於ては勅令の定むる所に依り之に因り生じたる損失を補償し又は補助金を交付す

第二十九条 前二条の規定に依る買受の価格は総動員補償委員会の議を経て政府之を定む

総動員補償委員会に関する規程は勅令を以て之を定む

第三十条 政府は第二十六条又は第二十八条の規定に依り利益の保証又は補助金の交付を受くる事業を監督し之が為必要なる命令又は処分を為すことを得

第三十一条 政府は国家総動員上必要あるときは命令の定むる所に依り報吿を徵し又は当該官吏をして必要なる場所に臨検し業務の狀況若は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得

第三十一条の二 左の各号の一に該当する者は十年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処す

第八条の規定に依る命令に違反したる者
第十九条の規定に依る命令に違反したる者

第三十二条 第九条の規定に依る命令に違反し輸出又は輸入を為し又は為さんとしたる者は三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処す

前項の場合に於て輸出又は輸入を為し又は為さんとしたる物にして犯人の所有し又は所持するものは之を没収することを得若し其の全部又は一部を没収すること能はざるときは其の価額を追徵することを得

第三十三条 左の各号の一に該当する者は三年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処す

第七条の規定に依る命令又は制限若は禁止に違反したる者
第九条の規定に依る命令に違反し輸出又は輸入を為さざる者
第十条の規定に依る総動員物資の使用又は収用を拒み、妨げ又は忌難したる者
第十三条の規定に依る施設、土地若は工作物の管理、使用若は収用又は従業者の供用を拒み、妨げ又は忌避したる者

第三十四条 左の各号の一に該当する者は二年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処す

第十一条の規定に依る制限若は禁止又は命令に違反したる者
第十六条の規定に依る制限若は禁止又は命令に違反したる者
第十六条の二の規定に依る命令に違反したる者
第十六条の三の規定に依る命令に違反したる者
第十七条若は第十八条第五項の規定に違反し認可を受けずして統制協定若は統制規程を設定、変更若は廃止し又は第十七条若は第十八条第五項の規定に依る命令に違反したる者
第二十三条の規定に依る命令に違反し保有を為さざる者
第二十六条の規定に違反し生産、修理又は設備を為さざる者

第三十五条 前四条の罪を犯したる者には情狀に因り懲役及罰金を併科することを得

第三十六条 左の各号の一に該当する者は一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処す

第四条の規定に依る徵用に応ぜず又は同条の規定に依る業務に従事せざる者
第六条の規定に依る命令に違反したる者

第三十七条 左の各号の一に該当する者は三千円以下の罰金に処す

第二十二条の規定に依る命令に違反したる者
第二十四条の規定に依る命令に違反し計画の設定又は演練を為さざる者
第二十五条の規定に依る命令に違反し試験研究を為さざる者

第三十八条 左の各号の一に該当する者は千円以下の罰金に処す

第十八条第一項の規定に依る命令に違反し団体又は会社の設立を為さざる者
第十八条第六項の規定に違反したる者
第三十条の規定に依る命令又は処分に違反したる者
第三十一条の規定に依る報吿を怠り又は虛偽の報吿を為したる者

第三十九条 第二十条第一項の規定に依る制限又は禁止に違反したるときは新聞紙に在りては発行人及編輯人、其の他の出版物に在りては発行者及著作者を二年以下の懲役若は禁錮又は二千円以下の罰金に処す

新聞紙に在りては編輯人以外に於て実際編輯を担当したる者及揭載の記事に署名したる者亦前項に同じ

第四十条 第二十条第二項の規定に依る差押処分の執行を妨害したる者は六月以下の懲役若は禁錮又は五百円以下の罰金に処す

第四十一条 前二条の罪には刑法併合罪の規定を適用せず

第四十二条 第三十一条の規定に依る当該官吏の検査を拒み、妨げ又は忌避したる者は六月以下の懲役又は五百円以下の罰金に処す

第四十三条 第二十一条の規定に違反して申吿を怠り又は検査を拒み、妨げ又は忌避したる者は五十円以下の罰金又は拘留若は科料に処す

第四十四条 総動員業務に従事したる者其の業務遂行に関し知得したる当該官庁指定の総動員業務に関する官庁の機密を漏泄又は窃用したるときは二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処す

公務員又は其の職に在りたる者職務上知得したる当該官庁指定の総動員業務に関する官庁の機密を漏泄又は窃用したるときは五年以下の懲役に処す

第四十五条 公務員又は其の職に在りたる者本法の規定に依る職務執行に関し知得したる法人又は人の業務上の秘密を漏泄又は窃用したるときは二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処す

第十八条第一項又は第三項の規定に依り事業の統制を目的として設立せられたる団体又は会社其の他本法に依る命令に依り統制を為す法人其の他の団体の役員若は使用人又は其の職に在りたる者其の業務執行に関し知得したる法人又は人の業務上の秘密を漏泄又は窃用したるとき亦前項に同じ

第四十六条及第四十七条 削除

第四十八条 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の従業者其の法人又は人の業務に関し第三十一条の二乃至第三十四条第三十六条第二号第三十七条第三十八条又は第四十三条前段の違反行為を為したるときは行為者を罰するの外其の法人又は人に対し各本条の罰金刑又は科料刑を科す

第四十九条 前条の規定は本法施行地に本店又は主たる事務所を有する法人の代表者、代理人、使用人其の他の従業者が本法施行地外に於て為したる行為にも之を適用す本法施行地に住所を有する人の代理人、使用人其の他の従業者が本法施行地外に於て為したる行為に付亦同じ

本法の罰則は本法施行地外に於て罪を犯したる帝国臣民にも之を適用す

第五十条 本法施行に関する重要事項(軍機に関するものを除く)に付政府の諮問に応ずる為国家総動員審議会を置く

国家総動員審議会に関する規程は勅令を以て之を定む

本法施行の期日は勅令を以て之を定む

軍需工業動員法及昭和十二年法律第八十八号は之を廃止す

本法施行前軍需工業動員法に基きて為したる命令又は処分は之を本法中の相当規定に基きて為したるものと看做す

軍需工業動員法に違反したる者の処罰に付ては仍旧法に依る

 

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。