外國人登錄令
朕は、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外國人登錄令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
昭和二十二年五月二日
勅令第二百七号
外國人登錄令
第一條 この勅令は、外國人の入國に関する措置を適切に実施し、且つ、外國人に対する諸般の取扱の適正を期することを目的とする。
第二條 この勅令において外國人とは、日本の國籍を有しない者のうち、左の各号の一に該当する者以外の者をいう。
一 連合國軍の將兵及び連合國軍に附属し又は随伴する者並びにこれらの者の家族
二 連合國最高司令官の任命又は承認した使節團の構成員及び使用人並びにこれらの者の家族
三 外國政府の公務を帶びて日本に駐在する者及びこれに随從する者並びにこれらの者の家族
第三條 外國人は、当分の間、本邦(內務大臣の指定する地域を除く。以下これに同じ。)に入ることができない。
前項の規定は、連合國最高司令官の承認を受け(連合國最高司令官が経由すべき港湾又は飛行場を指定したときは、当該港湾又は飛行場を経由し)本邦に入る外國人については、これを適用しない。
第四條 外國人は、本邦に入つたときは六十日內に、外國人でないものが外國人になつたときは十四日以內に、居住地を定め、內務大臣の定めるところにより、当該居住地の市町村(東京都の区の存する区域並びに京都市、大阪市、名古屋市、横浜市及び神戶市においては区 以下これに同じ。)の長に対し、所要の事項の登錄を申請しなければならない。
第五條 市町村の長は、內務大臣の定めるところにより、外國人登錄簿を調製し、これを市町村の事務所に備えなければならない。
第六條 市町村の長は、第四條の規定により登錄の申請を受けたときは、內務大臣の定めるところにより、所要の事項を登錄するとともに、登錄証明書を交付しなければならない。
第七條 外國人は、居住地を変更したときは、十四日以內に、內務大臣の定めるところにより、新居住地の市町村の長に登錄の申請をしなければならない。
前項の場合においては、新居住地の市町村の長は、內務大臣の定めるところにより、所要の事項を登錄するとともに、前居住地の市町村の長の交付した登錄証明書と引き替えに登錄証明書を交付しなければならない。
第八條 外國人は、登錄事項に変更を生じたときは、十四日以內に、內務大臣の定めるところにより、変更の登錄を申請しなければならない。
第九條 外國人は、本邦を退去するときは、その経由する港湾又は飛行場の所在地を管轄する地方長官(東京都においては警視総監を含む。)の指定する官公吏に、登錄証明書を返還しなければならない。
外國人が外國人でなくなつたときは、その者は、十四日以內に、居住地の市町村の長に登錄証明書を返還しなければならない。
第十條 外國人は、常に登錄証明書を携帶し、內務大臣の定める官公吏の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
外國人は、內務大臣の定める官公吏の請求があるときは、旅券、國籍を証明する文書その他登錄証明書の正当な所持人であること又は登錄証明書に記載された事項の眞実であることを証明するに足る文書を呈示しなければならない。
第十一條 台湾人のうち內務大臣の定めるもの及び朝鮮人は、この勅令の適用については、当分の間、これを外國人とみなす。
この勅令及びこの勅令に基く命令に規定する登錄の申請その他の行爲は、疾病その他內務大臣の定める事由に因り本人においてこれをすることができないときは、內務大臣の定める者がこれをしなければならない。
第十二條 左の各号の一に該当する者は、六箇月以下の懲役若しくは禁錮、千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
一 第三條の規定に違反して本邦に入つた者 二 第四條第一項、第七條第一項又は第八條第一項の規定に違反して登錄の申請をなさず[1]又は虚僞の申請をした者 三 第四條第一項、第七條第一項又は第八條第一項の規定による登錄の申請を妨げた者 四 第四條第三項又は第七條第三項において準用する第四條第三項の規定に違反して二以上の市町村の長に登錄の申請をした者 五 第九條の規定に違反して登錄証明書を返還しない者 六 第十條の規定に違反して登錄証明書その他の文書の呈示を拒否した者 七 行使の目的を以て登錄証明書を他人に交付し若しくは他人名義の登錄証明書の交付を受け又は他人名義の登錄証明書を行使した者 八 行使の目的を以て登錄証明書を僞造若しくは変造し又は僞造若しくは変造に係る登錄証明書を行使した者
第十三條 地方長官(東京都においては警視総監 以下これに同じ。)は、左の各号の一に該当する外國人に対し、本邦外に退去を命ずることができる。
第十四條 內務大臣は、その定めるところにより、左の各号の一に該当する外國人に対し、退去を强制することができる。
第十五條 前二條の規定による地方長官又は內務大臣の処分に対して不服のある者は、第十三條の場合にはその処分のあつた日、前條の場合にはその强制に著手した日から十日以內に訴を提起することができる。
附則
正誤訂正
- ↑ 昭和22年8月26日付け官報本紙第6185号にて「せず」から「なさず」へ正誤訂正
この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。