埃及マカリイ全書/第四十二講話

第四十二講話 編集

<< ひと完全かんぜんにみちびき、あるひはこれをそこなものは、がいぞくするものにあらずして、ないぞくするものなり、すなはちあるひ恩寵おんちょうしんなり、あるひ凶悪きょうあくしんなり。 >>

一、 おほいなるまち城垣じょうえんかいによりてきため略取りゃくしゅしてらさるるならば、そのひろきはまちためなにえきもあらざるべし。ゆえまち要用ようようなるはそのおほいなるとともけんなる城垣じょうえんゆうするにあり、てきのこれに侵入しんにゅうせざらんがためなり。かくのごとしき通暁つうぎょういとえいなるりょくとをもつてかざられたる霊魂たましひはこれをおほいなるまちくらぶべし。さりながらこころみはん、かれてきりてらさざらんがためしんちからもつかためられしやいなやと。けだしこの賢哲けんてつたるアリストテリあるひプラトンあるひソクラトごときはその確実かくじつなるしきにより、これをおほいなるくらぶべし、しかれどもてきためらされたり、なんとなればかれにはかみしんいまさざりしによる。

二、 これにはんしてがくなる人々ひとびと恩寵おんちょうあづかるものとなり、じう字架じかちからもつかためられたるしょうたるあり。しかれどもかれ恩寵おんちょうをうばはれてほろぶるはふたつゆうによる、あるひ患難かんなんふて大量たいりょう忍耐にんたいせざるにより、あるひつみなる快楽かいらくよろこびたのしみてこれにふけるによるなり。かれ誘惑ゆうわくなしに旅行りょこうふることあたはざるべし。それさんするときは、まづしきもの王后おうこうもひとしくかんぜん、これとおなじくつとめてたがやさずんば、めるものためにもまづしきものためにも美果びかさんせざらん、心霊しんれいじょうこうおいてもかくのごとし、しゃおよしゃ恩寵おんちょうもつおうとなるは、にあらず、忍耐にんたい憂患ゆうかんおほくの辛労しんろうとにる、なんとなれば「ハリステアニン」の生活せいかつはかくあるべきものなればなり。みつあまきものなればにがあるひどくあるものをいつもおのれにうけざらん、「ハリステアニン」もかくのごとし、すべてぜんなる、あるひあくなる、如何いかなることに遭遇そうぐうするありとも、れんなるものとしてそんすること、しゅのいひたまひしごとくなるべし、いはく『れんなることなんぢちちれんなるごとくなるべし』〔ルカ六の三十六〕。しかれどもひとそこなふものとけがものとはひとないにあることしゅのいひたまごとし、いはく『けだしこころよりづるもの悪念あくねんなり』と〔マトフェイ十五の十九〕。けだしひとないにあるものひとけがさん。

三、 ゆえに凶悪きょうあくしんない心中しんちゅうふく来往らいおうす、これれいある煽動者せんどうしゃすなはち闇黒あんこくおほひふるひとにして、すべてかみはしものだつせざるべからざるところのものたり、てんぞくするあたらしきひとすなはちハリストスんがためなり、是故このゆえがいにあるものはいつひとそこなふあたはずして、そこなふものはただ活発かっぱつにして有勢ゆうせいなる、心中しんちゅう居住きょじゅうする闇黒あんこくしんなり、ゆえひとはおのおのねんおいたたかはざるべからず、ハリストスそのこころてらさんためなり。かれ光栄こうえい世々よよす。アミン。