薩哈嗹州派遣軍不動産証明令
○薩軍令第十二號󠄂
薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍不動產證明令左ノ通󠄃定ム
大正九年八月三十日
薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍司令官 兒島惣次󠄄郞
薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍不動産證明令
第一條 薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍占領地域內ノ不動產ニ關スル權利八本令ニ依リ之ヲ證明ス
第二條 不動產ニ關スル權利ノ設定、保存、移轉ノ變更󠄃處分󠄃ノ制限又󠄂ハ消󠄃滅ハ本令ニ依リ證明ヲ爲スニ非サレハ其ノ效カヲ生セス
前󠄃項ノ規定ハ相續又󠄂ハ遺󠄃言ニ因ル場合ニハ之ヲ適󠄃用セス但シ本令ニ依リ證明ヲ爲スニ非サレハ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三條 不動產證明ハ薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院ヲ以テ證明官署トシ其ノ審判󠄃官ヲ以テ證明官吏󠄄トス但シ同法院所󠄃在地外ニ在リテハ證明スヘキ權利ノ目的タル不動產ノ所󠄃在地ヲ管轄󠄅スル軍政署長又󠄂ハ同支署ヲ以テ證明官署トシ其ノ署長又󠄂ハ支署長ヲ以テ證明官吏󠄄トス
不動產カ數個ノ證明官署ノ管轄󠄅地ニ跨ルトキハ薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院ハ之ヲ管轄󠄅シ又󠄂ハ管轄󠄅證明官署ヲ指定スルコトヲ得
第四條 證明官署ニハ左ノ帳簿󠄃ヲ備フ可シ
一 土地證明簿󠄃
二 建󠄄物證明簿󠄃
三 受附簿󠄃
證明簿󠄃ハ薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院長豫メ其ノ枚數ヲ表紙ノ裏面ニ記載シ職󠄃氏名ヲ署シ職󠄃印ヲ押捺シ且每葉ノ綴目ニ職󠄃印ヲ以テ契󠄅印ヲ爲シ證明官吏󠄄ニ交󠄄付スヘシ
第五條 證明ノ申請󠄃ハ當事者又󠄂ハ其ノ代理人證明官署ニ出頭シテ之ヲ爲ス可シ但シ判󠄃決又󠄂ハ相續遺󠄃言ニ因ル證明ハ證明權利者ノミニテ之ヲ申請󠄃スルコトヲ得
證明權利者カ證同義務者ト共ニ證明ヲ申請󠄃スヘキ場合ニ於テ證明義務者ノ所󠄃在不明ナルトキハ申請󠄃書ニ其ノ事實ヲ證スヘキ書面ヲ添󠄃ヘ證明權利者ノミニテ之ヲ申請󠄃スルコトヲ得
第七條 申請󠄃書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請󠄃人之ニ署名捺印ス可シ
一 土地ニ付テハ所󠄃在地名、地番、地目、面積
二 建󠄄物ニ付テハ所󠄃在地名、地番、建󠄄物及󠄃附屬建󠄄物ノ種類、構造󠄃、建󠄄坪󠄃
三 證明ノ原因及󠄃其ノ日附
四 證明ノ日的
五 申請󠄃人ノ氏名住󠄃所󠄃法人ナルトキハ其ノ名稱󠄄事務所󠄃
六 代理人ニ依リテ申請󠄃スルトキハ其ノ氏名住󠄃所󠄃
七 申請󠄃年月日
八 證明官署ノ表示
申請󠄃書ハ正副二通󠄃ヲ提出スルコトヲ要󠄃ス
第八條 證明官吏󠄄請󠄃書ヲ受取リタルトキハ直ニ受附簿󠄃ニ受附ノ年月日、番號󠄂、申請󠄃人ノ氏名、及󠄃證明ノ目的ヲ記載シ且申請󠄃書ニ受附ノ年月日番號󠄂ヲ記載ス可シ
第九條 證明官吏󠄄ハ左ノ場合ニ限リ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ申請󠄃ヲ却下ス可シ但シ申請󠄃ノ缺點カ補正スルコトヲ得ヘキモノナル場合ニ於テ申請󠄃人カ遲滯ナク之ヲ補正シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 事件カ其ノ證明官署ノ管轄󠄅ニ屬セサルトキ
二 事件カ證明スヘキモノニ非サルトキ
三 當事者又󠄂ハ其ノ代理人カ出頭セサルトキ
四 申請󠄃書カ要󠄃件ヲ具󠄄備セサルトキ
五 申請󠄃書ニ揭ケタル不動產又󠄂ハ證明ノ目的タル權利ノ表示カ證明簿󠄃ト抵觸スルトキ
六 申請󠄃書ニ揭ケタル證明義務者ノ表示カ證明簿󠄃ト符合セサルトキ
七 申請󠄃書ニ揭ケタル事項カ證明ノ原因ヲ證スヘキ書類ト符合セサルトキ
八 申請󠄃書ニ必要󠄃ナル書類又󠄂ハ圖面ヲ添󠄃付セサルトキ
九 手數料ヲ納󠄃メサルトキ
第十條 證明官吏󠄄證明ヲ爲スニハ受附番號󠄂ノ順序ニ從ヒ之ヲ證明簿󠄃ニ登錄ス可シ
第十二條 證明官吏󠄄證明完了後錯誤󠄄又󠄂ハ遺󠄃漏アルコトヲ發見シタルトキハ速󠄃ニ其ノ旨ヲ當事者ニ通󠄃知シ當事者ハ遲滯ナク證明更󠄃正ノ申請󠄃ヲ爲ス可シ
證明官吏󠄄前󠄃項ノ申請󠄃ヲ受ケタルトキハ證明簿󠄃ノ登錄ヲ更󠄃正シ其ノ旨ヲ常事者ニ通󠄃知ス可シ
第十三條 何人ト雖證明簿󠄃ノ謄󠄃本若ハ抄本ノ下付ヲ申請󠄃シ又󠄂ハ利害󠄆關係アル部分󠄃ヲ限リ證明簿󠄃若ハ其ノ附屬書類ノ閱覽ヲ申請󠄃スルコトヲ得
第十五條 證明簿󠄃又󠄂ハ其ノ附屬書類ノ閱覽ハ官吏󠄄ノ面前󠄃ニ於テ之ヲ爲サシムヘシ
第十六條 審判󠄃官以外ノ證明官吏󠄄ノ證明又󠄂ハ處分󠄃ヲ不當トスル者ハ薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院ニ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第十七條 抗吿ハ證明官吏󠄄ノ決定又󠄂ハ處分󠄃ヲ知リタル日ヨリ七日內ニ之ヲ爲スコトヲ要󠄃ス
第十八條 抗吿ハ理由ヲ具󠄄シタル抗吿狀ヲ當該證明官署ニ差出シテ之ヲ爲ス
第十九條 抗吿ハ新ナル事實及󠄃證據方法ヲ以テ其ノ憑據ト爲スコトヲ得ス
第二十條 證明官吏󠄄抗吿ヲ理由ナシトスルトキハ三日內ニ意見ヲ付シ關係書類ヲ添󠄃ヘ抗吿狀ヲ薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院ニ送󠄃付ス可シ
證明官吏󠄄抗吿ヲ理由アリトスルトキハ相當ノ處分󠄃ヲ爲ス可シ若シ證明ヲ完了シタル後ナルトキハ其ノ證明ニ付異議アル旨ヲ證明簿󠄃ニ附記シ之ヲ證明ノ利害󠄆關係人ニ通󠄃知シ且前󠄃項ノ手續ヲ爲ス可シ
第二十一條 薩哈嗹州派󠄄遣󠄃軍法院ノ抗吿ニ對スル裁判󠄃ハ口頭辯論ヲ經スシテ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ之ヲ爲ス
法院ハ抗吿人ト反對ノ利害󠄆關係ヲ有スル者ニ抗吿ヲ通󠄃知シテ書面上ノ陳述󠄃ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十二條 法院ハ抗吿ヲ許ス可キヤ否ヤ又󠄂法律上ノ方式ニ從ヒ若ハ其ノ期間ニ於テ提出シタルヤ否ヤヲ職󠄃權ヲ以テ調查シ此ノ要󠄃件ノ一ヲ缺クトキハ抗吿ヲ不適󠄃當トシテ棄却ス可シ
第二十三條 法院ハ抗吿ヲ適󠄃法ニシテ且理由アリトスルトキハ證明官吏󠄄ニ相當ノ處分󠄃ヲ命スル裁判󠄃ヲ爲ス可シ
第二十四條 法院ハ證明官吏󠄄及󠄃證明ノ利害󠄆關係人ニ決定書ノ謄󠄃本ヲ送󠄃達󠄃ス可シ
第二十五條 不動產證明ニハ別ニ定ムル所󠄃ニ從ヒ手敷料ヲ納󠄃付ス可シ
附則
本令ハ公󠄃布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。