<<愛>>
愛はすべて善なる者の根なり、泉なり、又母なり。実に彼は徳行のおびたゞしき枝葉を生ずること根の如く、あまたの流れを引出すこと泉の如く。趨り就く所の者を己の懐に抱くこと母の如くならんとす。此を知りて福なる保羅は愛と名づけて聖神の果実といへり、又彼は愛に特権を帰して、律法を実成する者とさへ名づけたり、曰く『けだし愛は律法を完全す』〔ローマ十三の十〕。万物の主宰も其の門徒等の為に充分なる徴候となし、又確実なる旌表となして吾人に示し給ひしものは、他に非ずして、愛なり、謂へらくもし汝等互に愛をもたば、これによりて衆皆我が門徒たるを知らん。