<<適當の備なくして聖機密を領るに就く者に告ぐ>>
信者の中かぎりなく罪にみたさるゝも、己の事を少しも慮らず、祭日に當りて、軽率且は偶然に聖機密を領るに就くほどの無智と怠慢とに至る者多くこれあり、領聖の時を定めらるゝは祭日と祝賀との為に非ずして、清き良心と、責むべきなき生活とによるものなるを彼等知らざるなり。それ何等のあしきことも己の心に自覚せざる者は毎日これに就くを得べきも、これに反して罪に沈没して悔改せざる者は、祭日に於てさへこれに就くは危きなくんばあらず。けだし年に一度就く所の我等は、もし不適當にしてこれに就くならば、我等を罪より脱せざるなり、反つて我等年に一度就くも、潔きをもて就かざるならば、これ大なる定罪とならん。故に我れ願ふ汝等衆人神の機密に就くは単に祭日の為にあらざらんことを、却て汝等此の聖なる献祭をうけんと欲する時は、数日の前より先づ悔改と祈祷と施與と霊神上の事をつとむるとを以て己を潔うすることに尽力すべし、犬の其吐たる物に於る如く、後を顧るなかれ。それ汝は身体上の事は大にこれを慮り、祭日の至らんとするや、数日の前より、己が最良き衣服を櫃より取出して、これを整へ、履を買ひ、食膳のために豊なる備を為し、種々の買入を多く為さんことを考へて百方己を粧ひ且飾れども、霊魂の事に至てはこれを等閑にし、不潔汚穢にして、飢且疲るれどもかへりみず、其の修らざるがまゝに放棄てゝ、少しも慮るをなさず、即一言にてこれをいへば、身体は飾りて此処に導き入れんとするも、霊魂は裸体且は不具なるがまゝにしてこれを放棄つるは、実に極て恐るべきことにあらずや。さりながら汝の身体を見る者は汝に等しき僕ならん、さらば身体は如何なる衣服を衣るも、何の害もあらざらん、然れども霊魂を見る者は主なり、さらばこれを等閑にしたる為には大なる罰に服せん。それ此の食は霊火をみちみつなり、されば源泉が自ら天然の水を放出する如く、此食も或る言ふべからざる火焔を己れに包有するなり、汝等豈これを知らざらんや。故に藁や、木や、草をもてこれに就くなかれ、火焔をいよ〳〵強めて、これをうくる汝の霊魂を焼かざらんが為なり、却て貴重なる宝石と金と銀とを以てこれに就くべし、其質のをいよ〳〵純潔になり、大なる益を得て此処より出でんが為なり。もし汝の霊中に何かあしきものあらば、此を外に投出して逐去るべし。もし誰か敵を有して、大なる耻辱をうけたるか。其の怨を絶つべし、炎々として燃えて激する心を鎮むべし、内部に何等の激動騒擾もあらざらんが為なり。領聖によりて汝は己れに王をうくるを得ん、然れどもこれ思念の大に静に、大に穏にして、深く安和なる時にあり。