聖金口イオアン教訓下/第12講話

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第12講話

<<聖書（せいしょ）に人（ひと）といふ言（ことば）は何（なに）を意味（いみ）するか>>

もし汝（なんぢ）は我（われ）等（ら）人類（じんるい）一般（いっぱん）の名称（めいしょう）を熟考（じゅくこう）するならば、此（これ）によりても徳行（とくこう）に対（たい）する至（し）大（だい）なる教訓（きょうくん）と勧戒（かんかい）とをうけん。けだし此（こ）の名称（めいしょう）～人（ひと）～は我（われ）等（ら）これを定（てい）義（ぎ）するに外教（がいきょう）者（しゃ）の如（ごと）くせず、神（かみ）の書（しょ）の命（めい）ずる所（ところ）に随（したが）はん、人（ひと）とは人間（にんげん）の手（て）と足（あし）とを有（ゆう）する者（もの）のみをいふにあらず、又（また）たゞ霊（れい）智（ち）を有（ゆう）する者（もの）のみをいふにあらず、敬虔（けいけん）と徳行（とくこう）とを熱心（ねっしん）に練習（れんしゅう）に練習（れんしゅう）する者（もの）をいふなり。されば聖書（せいしょ）に約百（イヲフ）の事（こと）を言（い）ふをきくべし、聖書（せいしょ）に『アウシティデイステの地（ち）に人（ひと）あり』といひて、其後（そののち）彼（かれ）の事（こと）を録（ろく）するに外教（がいきょう）者（しゃ）の言（い）ふ如（ごと）き徴候（ちょうこう）を以（もつ）てせず、又（また）二の足（あし）と廣（ひろ）き爪（つめ）とを有（ゆう）せりといはず、却（かへつ）て其（そ）の敬虔（けいけん）の徴候（ちょうこう）をすべて合（がつ）し、『眞実（しんじつ）に、かつ正（ただ）しく、神（かみ）を畏（おそ）れて諸（もろもろ）の悪（あく）事（じ）に遠（とほ）ざかる』〔イヲフ一の一〕といひて、これぞ則（すなはち）人（ひと）なるをあらはせり、又（また）他（た）の処（ところ）にも同（おなじ）くこれをいへり、曰（いは）く『神（かみ）を畏（おそ）れて其（そ）の誡命（かいめい）を守（まも）れ、是（これ）はすべての人（ひと）の本分（ほんぶん）なり』〔傳道之書十二の十三〕。さりながら人（ひと）といふ名称（めいしょう）はかくの如（ごと）く徳行（とくこう）に対（たい）する勧戒（かんかい）を含有（がんゆう）するならば况（いはん）や信者（しんじゃ）てふ名称（めいしょう）に於（おい）てをや。汝（なんぢ）が信者（しんじゃ）と名（な）づけらるゝは、神（かみ）を信（しん）じて、彼（かれ）より称（しょう）義（ぎ）と、成聖（せいせい）と、心（こころ）の潔浄（じょうけつ）と、義子（ぎし）たることと、天国（てんごく）とを自（みづか）らうくるが為（ため）ならん、神（かみ）は汝（なんぢ）を信任（しんにん）して、此（こ）のすべてを汝（なんぢ）に許（ゆる）し給（たま）へり、さらば汝（なんぢ）は自（みづ）からも亦（また）信任（しんにん）して他（た）の矜恤（きょうじゅつ）と祈（き）祷（とう）と貞潔（ていけつ）と其（その）他（た）のあらゆる徳行（とくこう）を彼（かれ）に顕（あらは）すべし。さりながら我（わ）れ何（なん）ぞ矜恤（きょうじゅつ）といはん。もし汝（なんぢ）は一盃（いつぱい）の冷水（ひやみづ）〔マトフェイ十の四十二〕だも彼（かれ）に與（あた）ふるならば、是（これ）も汝（なんぢ）の為（ため）に失（うしな）はれざらん、彼（かれ）は其（その）日（ひ）に至（いた）る迄（まで）此（これ）を守（まも）りて、大（おほい）に報（むく）いて余（あま）りあらしめん、けだし彼（かれ）はたゞ其（そ）の信任（しんにん）されたるものを守（まも）るのみならず、更（さら）に報復（むくひ）を以（もつ）て此（これ）を増殖（ぞうしょく）するは驚（おどろ）くべきなり。且（かつ）又（また）彼（かれ）は汝（なんぢ）にも其（そ）の力（ちから）に応（おう）じて汝（なんぢ）が信任（しんにん）されたる所（ところ）の者（もの）を行（おこな）ひ、汝（なんぢ）が受（う）けたる所（ところ）の聖（せい）事（じ）をます〳〵大（おほい）にし、聖洗（せいせん）に頼（よ）りて其（その）義（ぎ）をいよ〳〵光（ひか）らし、此（こ）の賜（たまもの）をます〳〵燦然（さんぜん）としてあらはさんことを命（めい）じ給（たま）へり。