春秋左氏傳/001 隱公/02

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訓読文

【經】　二年春、公、戎《じう》に潛《せん》に會す。夏五月、莒人《きよひと》、向《しやう》に入る。無駭、師《し》を帥《ひき》ゐて極《きよく》に入る。秋八月庚辰《かうしん》、公、戎《じう》と唐《たう》に盟ふ。九月、紀の裂繻《れつじゆ》來《きた》りて女《じよ》を逆《むか》ふ。冬十月、伯姫《はくき》、紀に歸《とつ》ぐ。紀の子帛《しはく》・莒子《きよし》、密《ひそか》［＃ルビはママ］に盟ふ。十有《いう》二月乙卯《いつぼう》、夫人《ふじん》子氏《しし》薨《こう》ず。鄭人《ていひと》、衛を伐《う》つ。

【傳】　二年（周ノ平王五十年）春、公、戎に潛^[1]に會するは、惠公の好《よしみ》を修《おさ》むるなり。戎、盟《ちかひ》を請《こ》ふ。公、辭《じ》せり^[2]。
　莒子《きよし》^[3]、向《しやう》^[4]に娶《めと》る。向姜《しやうきやう》、莒《きよ》に安《やす》んぜずして歸《かへ》れり。夏、莒人《きよひと》、向に入り、姜氏を以て還《かへ》る。
　司空無駭《しこうむがい》^[5]、極《きよく》^[6]に入り、費庈父《ひきんぽ》^[7]、之を勝《ほろぼ》^[8]す。
　戎《じう》盟《ちかひ》を請《こ》ひしかば、秋、唐^[9]に盟《ちか》ふ。復《ま》た戎の好《よしみ》を修《おさむ》むるなり。
　九月、紀《き》^[10]の裂繻《れつじよ》^[11]來りて女《ぢよ》を逆《むか》ふるは、卿《けい》、君が爲に逆ふるなり。
　冬、紀の子帛《しはく》^[12]と莒子と密《みつ》^[13]に盟ふは、魯の故なり^[14]。
　鄭人、衛を伐《う》つは、公孫滑《こうそんくわつ》の亂《らん》（←隱公元年）を討ずるなり^[15]。（→隱公四年）

註

1. 魯の地名。
2. 戎狄は禮文備はらず、故に遂に盟を許さゞるなり。之を待つこと嚴なるを見る可し。
3. 莒は國名。
4. 向は國名。
5. 魯の卿。
6. 極は附庸の小國の名。
7. 庈父は前に見えたる費伯也。
8. 勝は滅す也。
9. 魯の地。
10. 紀は國の名。
11. 紀の大夫。
12. 裂繻の字。
13. 莒の邑。
14. 魯が莒と和するやうにせんが爲なり。
15. 去年廩延を取りし亂を治むるなり。廩延の取らるゝや、鄭、之に報いて其南鄙を伐ちしが、未だ志を得ざりしかば、此に至りて罪を聲らして之を伐つ也。