新約聖書譬喩略解/第十八 夜半に餅を借るの譬

第十八 夜半よなかぱんるのたとへ

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路加十一章五節より八節

またかれいひけるはなんぢうちもし或人あるひと夜半よなか其友そのともゆきともわが朋輩ともだちたびよりきたりしにそなふべきものなきゆえみつのぱんをかせよといわんに うちおるものこたへわれわづらはすなかもはもんわれとも兒曹こどもらとこあれたつあたふることあたはずといふものあらんか われなんぢつげ其友そのともなるによりておきあたふるにあらず只管ひたすらこふゆへそのもとめしたがたつあたふべし


〔註〕このたとへ弟子でしうちにいかなる祈祷いのりおしへたまふやととへるによりてイエスかれ祈祷いのりぶんおしへたまひ またかやうにこころもちひばその祈祷いのりえきあることをおしへたまへるなり けだ祈祷いのりはそのこころ懇切ねんごろもちひてよくその応験しるしべきことなればわけたとへまうけときたまへるなり このたとへ路加るか十八じふはちせう不義ふぎなる審司さばきにんたとへたり いづれも祈祷いのり懇切ねんごろになすべきことをときたまへることなれども其中そのうちまた分別わかちありて不義ふぎ審司さばきにんたとへ公義おほやけらんことをもとこのたとへ恩典めぐみほどこさんことをもとむ また不義ふぎ審司さばきにんたとへ自己おのれのためにもとこのたとへにんためもとむるなり ユダヤひときはめ炎暑あつきときあたりては往往おほく陰凉すずしきまちみちをなせりかつ旅舘はたごやいたつすくなければ大約おほむね朋友ともだちいへつき宿やどるものおほし たまたまいへ食物しょくもつたくわへなきにおりあしくとも宿やどることは常時ふだんなり このとき夜間よなかなればゆきかふことならざれば隣家となりにゆき貸求かりもとめてその困乏とぼしきそなへざることをざるなり このたとへほんは(となり)とはまことかみし(たびしてきたひと)とはにんし(ともかはり食物しょくもつもとむ)はわれひとかはり祈祷いのりをなすことをす なかひともとむることありてもそのもとめゆるさざるはあるひはそのわづらはしさをきらへるにり それは此處ここわれわづらはすなかれ兒曹こどもらわれとこにありといふとおなじ あるひはそのときおくれてあはざるをきらへるによりていなむことあり それはここにもんすでにとぢたりといへるにおなじ もとむること懇切ねんごろなるによりてつひかれゆるせるはわれ懇切ねんごろなることかれいなむに打勝うちかちしゆへやむ勉強つとめてそのもとめしたがふなり てんもときによりてはわれもとむることを允准ゆるしたまはざることあるはひとことなることなきににたれどもそのじつわれなるによれり 請所もとむるところあひしことはてんさらいなみたまふことなし 允准ゆるしたまはざるはまつたわれこころまことなるやいなやこころみたまふなり ケナンおんなイエスにそのむすめいやすことをもとめしがイエスかれ兒曹こどもらぱんいぬあたふるはいまだからずといひたまへるはときありて允准ゆるしたまはず そのこころこころみたまふ明徴あきらかなるしるしなり ひと愛心あいしんうすくしてはじめゆるさざることもつひににはゆるさるべし ましてん慈悲じひしゅなればゆるしたまはざることあらんや ゆへイエスこのたとへときおわりたまふのちまたかれかたりたまひてもとむればすなわちたづぬればすなわちもんたたけばすなわちひらかるといへり またおよもとむものうるなりといひたまひしなり いづれのひといづれのことかぎらずそのもとむべきことをもとむれば必ずゆるされざることのなし されば祈祷いのりかなら懇切ねんごろ緊要かんやうとなしかなら多次たびたび緊要かんやうとなさばその允准ゆるしべきなり イエスのここにときたまふことば三層さんだんわかみるときはこと意義いぎあり(もとむ)とはこころのうちにんことをおもねがのぞむことなり(たづぬ)とはさまざまのてだてあふねがふなり(たた)とはすでにそのところれどもなほ阻隔へだてあればこえあげとくよびそのうちすすみいらんことをもとむるなり このみつのものはあひよりひとつをもかきかなわざることなり しかればわれ祈祷いのりはじまことこころこめねんごろに求めつぎてまた方法てだてまうけ時々じじたづねもとめそのもんたづねたれどもなほ阻隔へだてあるをしりたらばよびつぐることをむなかるべし ひともんたたきてやまざるがごとくそのひらくまでははんにてやむべからず只管ひたすらそのぜんにまかすことの不可ふかなるをるべきなり このたとへ大旨おほむねすべねんごろいのりをなししばらくうまざることを教訓おしへたまへるなり われすでに信者しんじゃなり すべてんもとめんとすることあらばこのたとへ熟読じゅくどくしてふかかんがふべきなり