新約聖書譬喩略解/第二十八 不義審司の譬
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第二十八 不義 審司 の譬
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イエス
- 〔註〕
此 譬 もまた弟子 に説 たまへるなり上章 の二十二節 より末節 に至 るまでを観 るに末日 の艱苦 と仇敵 のきたり攻 るごとく信者 の逃避 ることとを謂 たまへり イエスすでにその事 を説完 たまひて又 此 譬 を設 て弟子 に難 に遇 し時 は必 ず祈祷 をなして倦 こと勿 と教 たまへり本章 の一節 にその大 意 を見 して常 に祈 るといふものは信者 は此 世 にありて時 として艱難 と試練 のあらざることなし故 に生涯 祈祷 の中 に在 て生命 を保全 べしと明 したまへり喩 の意 は邑 の中 に一人 の審司 あり報應 を信 ぜず天父 を畏 れず己 の権 を恃 みて民 の悦 をも求 めず人 を待 にも礼 義 なかりしがこの同 じ邑 に寡婦 あり固 より家資 にも富 ざれば官司 に賄賂 を納 るゝこともせず又 戚友 もなければ情願 を外 に求 ることもならず惟 一種 の懇切 なる心 ありて恒 にその冤 を伸 んことを願 へり審司 固 より彼 を憐 むの心 なければ彼 に代 て理 を伸 ることをせざりければ寡婦 恒 に来 て請求 めその煩擾 を奈何 ともしがたし卒 に之 と冤 を伸 て救 しとなり イエス此 審司 を借 て天 父 を反形 せり謂 は審司 斯 の如 く不義 なれども人 の請求 を允准 せり况 て天 父 は慈悲 の主 にましませば坐 視 て理 たまはざることなしと喩 したまへり(嫠婦 )は教會 を指 し(仇 )は魔鬼 を指 せり彼得 前書 に謹慎 め儆醒 れ爾 の敵 なる悪 魔 吼 る獅子 の如 く徧行 て呑 べきものを尋 ぬと〔五章八節〕仇敵 の寡婦 を害 に陥 るゝは魔鬼 の教會 を害 ことを指 す末日 に此 戦攻 あるのみにあらず平日 にもまた此 の迫害 あり顕 に来 て窘逐 のみにあらず隠 にきたりて迷惑 に誘 んとすることあり故 にイエス祈祷 の文 に我 を誘惑 に置 くなかれ我 を凶悪 より拯 たまへと言 り(久 く肯 ざりし)とは天 父 に祈祷 ても即 時 には允准 したまはざることあるを指 せり教會 困苦 に遇 ひ或 は信者 艱難 を受 て耐忍 がたく急 に天 父 に公法 を乗 たまひ悪人 の毒計 を敗 り魔鬼 の権 を除 きたまはんことを願 ども天 父 には早 より主意 ありて急 にその求 に応 じたまはざるも罰 したまふべき時 至 て事 を行 たまひ決 て捨置 たまふにあらず黙 示 録 に祭壇 の下 に曾 て神 の道 のため及 び其 立 し證 のために殺 されたる者 どもの霊魂 あるを見 たり彼 等 大声 に呼 り曰 けるは聖 誠 の主 よ何時 まで地 に住者 どもを審判 せず且 之 に我 儕 の血 の報 をなし給 ざるや之 に曰 給 ひけるは彼 等 の如 く殺 されんとする其同 に労 ける兄弟 等 の数 の盈 るまで安 んじて暫 く待 べし〔六章九節より十一節〕といへる如 くなり またイエス其友 ラザロの病 を聞 たまひしかど速 に往 て救 たまはず在 す處 に止 りたまふこと二日 すでに死 たるを俟 て往 たまひ之 を甦 らしたまふが如 し〔約翰 福音十一章一節より十六節〕また弟子 ガリラヤの海中 にて風浪 に揺動 極 めて危険 しときイエス速 に往 て救 たまはず夜 のすでに過半 に至 るを俟 て海 を履 て之 に就 たまふが如 し〔馬太十五章二十四節〕聖書 に載 する事 も斯 の如 く速 に允准 たまはざることあり しかれども即 時 には允准 したまはざれども究 に必 ず凖 したまふ時 あれば終 に至 るまで理 ざるにあらず ただ聴者 の允肯 は求者 の眞誠 なるによれり若 懇切 に求 ざればその求 を聴 したまはざるなり故 にイエス曰 たまふは神 の選 たまふ民 は昼 夜 籲禱 て久 く之 に忍 たる者 には神 終 にその冤 を伸 たまふと惜 くは弟子 の信徳 軟弱 して熱心 するもの少 く冷心 なるもの多 く盡 く救主 の吩咐 に依 る能 はず主 の再臨 たまふときに至 て眞 の信者 幾 くもなし故 にイエス又 曰 たまふ但 人 の子 臨 時 その世 に於 て信 あるを見 んやと しからば此 譬 の大旨 は天 父 を篤 信 じ常 に祈 りて倦 惰 ざることを戒 めたまへるなり神 の選 たまふ民 は必 ず之 を保護 したまへば慎 て祈祷 のいまだ験 あらざるに因 て信仰 を惰 り救主 の望 に負 くことなかるべし