鐵道震害調査書/第一編/第二章/第七節
第七節 横濱線(東神奈川八王子間26.4哩)
切取 切取の被害󠄂は相原隧道󠄁南口の約1,000立坪󠄁,及び相原八王子間東神奈川起󠄁點24哩34鎖󠄁附近󠄁(以下哩程󠄁は東神奈川を起󠄁點とす)の約1,200立坪󠄁の崩󠄁壞を最も大なるものとし,その他東神奈川小机間寺尾隧道󠄁口,長津田原町田間12哩50鎖󠄁及び同哩60鎖󠄁附近󠄁の崩󠄁壞これに次󠄁ぎ,その他數箇所󠄁の小被害󠄂あり。
築堤 築堤の被害󠄂は長津田原町田間最も甚しくして13哩附近󠄁の如きは深最大約20呎の沈下を生じ,尙同區間に於ては最大沈下7呎程󠄁度のもの3箇所󠄁あり(寫眞第九十一及び第九十二參照),又󠄂東神奈川小机間に最大約15呎の沈下を生じ,小机中山間にも最大沈下約6呎乃至8呎のもの3箇所󠄁を生じたり。その他最大6呎以下の沈下を生ぜしもの10數箇所󠄁に達󠄁す。而して原町田相原間に於ては被害󠄂比較󠄁的輕微なりき。
土留壁 土留壁の被害󠄂は寺尾隧道󠄁前󠄁後坑門口附近󠄁の切取に於ける間知石空󠄁積合計約180面坪󠄁の崩󠄁壞を最大なるものとし,これに次󠄁ぐを原町田淵野邊󠄔間の築堤土留間知石空󠄁積の崩󠄁壞とす。この外切取箇所󠄁に設けたる間知石空󠄁積の崩󠄁壞せるもの數箇所󠄁あり。
橋梁 橋梁の被害󠄂は東海道󠄁線乘越橋梁(徑間56呎2連)の八王子方橋臺崩󠄁壞し,東神奈川方橋臺は水平󠄁に切斷して上部傾斜󠄁し,橋脚も亦水平󠄁に切斷して上部八王子方に傾斜󠄁し,第二徑間鈑桁は汽車線上に墜󠄁落せり(寫眞第九十三乃至第九十五參照)。長津田原町田間南橋跨線人道󠄁橋(徑間28呎1連,24呎2吋2連)は古軌條を使󠄁用せる鐵筋混凝土桁を架設しありしが,桁はその軌條接合部より中斷し,この部分󠄁より北側橋臺間の桁墜󠄁落し,尙北橋臺は崩󠄁壞,南橋臺は約3呎沈下せり(寫眞第九十六乃至第九十九參照)。その他橋臺に罅裂を生じ,又󠄂はバラス止の破壞或は罅裂のため橋臺の傾斜󠄁せしもの多し(寫眞第百參照)。尙相原八王寺〔ママ〕間第一兵衞川橋梁(徑間12呎工形桁)に於ては兩橋臺傾斜󠄁して徑間1呎短縮し,これがため直角輾壓工形桁なりしも斜󠄁角に變形せり。
隧道󠄁 東神奈川小机間寺尾隧道󠄁は兩坑門口,內部の穹拱及び側壁に縱横〔ママ〕の罅裂を生じ,且橫に切斷せらるゝ等相當大なる被害󠄂あり(寫眞第百一參照),又󠄂相原八王子間相原隧道󠄁の兩坑門口附近󠄁,穹拱及び側壁にも縱橫の罅裂數條を生ぜしが,,〔ママ〕小机中山間に於ける城山隧道󠄁には何等の被害󠄂を認󠄁めざりき。
停車場 停車場本屋の倒潰せるものは小机原町田の2驛にして,淵野邊󠄔驛本屋は著しき損害󠄂を受け,その他各驛の本屋も亦傾斜󠄁破損せり。尙原町田驛本屋附屬上家及び下り乘降場上家並に小机中山兩驛に於ける積卸場上家等は何れも倒潰せり。
乘降場及び積卸場擁壁 乘降場及び積卸場の擁壁中木造󠄁又󠄂は古枕木造󠄁のものは被害󠄂極めて輕微なれども,混凝土又󠄂は煉化石造󠄁のものは笠石の墜󠄁落,擁壁の崩󠄁壞,沈下或は罅裂等多少の損害󠄂を受けざるものなし。
跨線橋 原町田驛に於ける跨線橋は階段部傾斜󠄁破損せる外特記󠄂すべき被害󠄂なし。
信號機 中山,長津田,原町田,淵野邊󠄔及び相原各驛に於て信號󠄂機各1基傾斜󠄁せり。
軌道󠄁 軌道󠄁の被害󠄂は築堤の崩󠄁壞に依る沈下彎曲最も多く,これに次󠄁ぐは切取崩󠄁壞のため埋沒せるものにして,前󠄁者に在りては東神奈川小机間,長津田原町田間,原町田淵野邊󠄔間及び相原八王子間に於ける各延󠄂長1哩餘に亘る沈下を最も大なるものとし,その他尙10數箇所󠄁の沈下あり。後者に在りては相原八王子間延󠄂長約4鎖󠄁の埋沒を最も大なるものとし,その他數箇所󠄁の埋沒あり。
列車 中山長津田間9哩60鎖󠄁附近󠄁に於て進󠄁行中なりし貨物列車の4輛貨車脫線したり。(第十七表及び附圖󠄃第三參照)