通俗正教教話/十誡の二区分
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(三)十誡 の二 区 分
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- (神に対する愛と人に対する愛)
問 モイセイが
- 答
其 は十誡 の内 に含 って居 りまする御 教 の自 ら分 れて二部分 となるからなので御座います、即 ち初 の四か條は『神に対する愛』を述 べたもので後 の六か條は『人に対する愛』を述 べたもので御座います、此事 に就 いては我主 イイスス ハリストスも嘗 て左 の如 く教 へられた事 が御座います、爾 心 を尽 し霊 を尽 くし意 を尽 して主 なる爾 の神 を愛 せよ此 れ誡 の第一にして大 なる者 なり第二は是 れに同 じき者 、即 ち爾 の隣 を愛 すること己 の如 くせよ斯 の二 の誡 には悉 くの律法 と預 言者 と繋 れり(馬太二十二の三十七 - 四十)。
問
- 答 『
隣 』と申 しまするのは何 も門口 を並 べて住 んで居 る人 許 りのことではなく凡 ての人間 を指 したもので御座います。
問
- 答
一体 人間 と申 しまするものは誰 れでも彼 でも皆 一人 の神様によって創 られ一人 のアダムから生 れ出 たもので御座いますから互 いに兄弟 で御座います、畢竟 主 が隣 と申 されましたのは『近親 な者 』と謂 ふ意味 なので御座います、併 し同 じ『近親 な者 』の内 にも亦 自 ら近 いのと疎 のとが有 りまして同 じ教 を信 じ同 じ神様を父 として頂 いて居 りまする者 などは『近親中 の近親 い者 』と申 さねばなりませぬ。
問
- 答
自己 を愛 する事 は別 に誡命 がなくとも天性 に由 て人々 は自 ら弁 へて居 りますので其様 な誡命 は全 く無 用 なことで御座います、其 で御座いますから神様も其様 な誡 を別 に御 授 けにならなかったので御座います『人 未 だ己 の身 を悪 む者 有 らず乃 ち之 を養 ひ之 を温 む』(エヘス五の二十九)と。
問 神様に
- 答
其 は無 論 申 す迄 も御座いませぬ神様に対 する愛 を真先 にし次 に隣 に対 する愛 を行 ひ己 に対 する愛 は何時 でも一番後 にしなければなりませぬ、で又 自 分 を愛 する行 をなすにしましても只 自 分 と謂 ふ事 許 りを頭 に置 かずして己 を愛 する行 が神様の為 め隣 の為 になる様 に心 掛 けねばなりませぬ、隣 を愛 する行 も又 同 じやうに其 行 が只 隣 の為 め許 りでなく神様の為 にも亦 なる様 に心 掛 けねばなりませぬ第三の神様を愛 する行 は是 こそ神様の為 め許 りで有 って私 共 は専心 専 意 他 を顧 みず神 を愛 さなければなりませぬ。 - 『
人 其友 の為 に生命 を捐 つるは愛 此 より大 なるは無 し』(イオアン十五の十三)此 は自 分 と隣 に対 する愛 とが衝突 )した場 合 隣 に対 する愛 を先 にしなければならぬことを教 へた者 で御座います、又 聖書 の内 に斯 う謂 ふ言 が御座います『父 或 は母 を愛 すること我 に過 ぐる者 は我 に宜 しからず、子 或 は女 を愛 すること我 に過 ぐる者 は我 に宜 しからず』(馬太十の三十七)と此 言 は隣 に対 する愛 と神 に対 する愛 との軽重 を示 したもので神 に対 する愛 を萬 事 に先 って第一にしなければならぬことを教 へたもので御座います。
問
- 答
其 は神様と隣 に対 する愛 の何 う謂 ふ物 であるかを一層 明晰 にする為 で御座います。
問
- 答
此 を十誡 の箇 條 に就 いて申 しますれば先 づ第一 は真 の神様を認 めて此 を崇 め敬 ふこと(第一箇條)第 二 は偽 の神 を排斥 して此 を敬 はぬこと(第二箇條)第三 は真 の神 の名 を無 用 な所 に妄 りに称 へたりして神様の御 威厳 を傷 けぬ様 に気 を附 くること(第三箇條)第 四 は神様を崇 め敬 ふ時 を忘 れず又 己 の働 くべき時 を正 しく守 ること(第四箇條)で御座います。
問
- 答
先 づ第一 には父母 は無論 のこと兄弟 姉 妹 を首 とし私 共 に尤 も親 しい人 を敬 ひ愛 すること(第五箇條)第 二 には人 の生命 に係 る様 な悪 い企 を為 さぬこと(第六箇條)第三 には人 の徳 を傷 つくる様 な行 を慎 むこと(第七箇條)第 四 には人 の物 は何物 によらず是 を損 めたり盗 だりせぬ様 に心 掛 くること(第八箇條)第 五 には行為 許 りでなく口 の上 でも人 のことを彼此 悪 く謂 はぬこと(第九箇條)第六 には口 許 りでなく心 の中 でも人 の物 を欲 がったり人 を傷 ふ様 なことを考 へたりなどしない事 (第十箇條)で御座います。
問
- 答
否 、有 ります此 誡命 は別 に項目 には掲 げて御座いませぬが併 し十 箇 條 の誡命 の内 に自 ら含 って居 るので御座います。