朕行政裁判所令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム

   

大正二年六月十三日

內閣總理大臣 伯爵山本權兵衞

勅令第百三十九號

行政裁判所令

第一條  行政裁判所ニ三部ヲ置ク

行政裁判所長官ハ各部ニ屬スヘキ事務ノ分配ヲ定ム

第二條  部ニ部長ヲ置ク

長官ハ一ノ部ノ長ト爲ル

他ノ部長ハ勅任官タル行政裁判所評定官ノ中ヨリ之ヲ命ス

第三條  部長ハ裁判長ト爲リ部ノ事務ヲ監督シ其ノ分配ヲ定ム

第四條  長官ハ部長及評定官ノ部屬ヲ定ム

第五條  部長故障アルトキハ其ノ部ノ評定官行政裁判法第七條第二項ノ順序ニ依リ之ヲ代理ス

評定官故障アル場合ニ於テ之ヲ代理スヘキ者ハ長官隨時之ヲ定ム

第六條  部長ハ一事件每ニ審判準備ノ爲其ノ部ノ評定官ニ專理ヲ命スルコトヲ得

專理評定官ハ口頭審問ヲ爲ス前及合議ノ際部長及他ノ評定官ニ對シ訴訟ノ事實證憑及爭點ニ付說明ヲ爲スヘシ

第七條  判決ハ審問終結シタル期日又ハ其ノ期日ヨリ十四日內ニ之ヲ言渡スヘシ

第八條  裁判長行政裁判法第三十八條第二項ノ場合ニ於テ科罰ヲ言渡シタルトキハ書記ヲシテ訴訟記錄ニ之ヲ記入セシム

第九條  行政裁判所ノ總會ハ評定官總員ノ三分ノ二以上出席スルニ非サレハ決議ヲ爲スコトヲ得ス

總會ノ決議ハ出席評定官ノ過半數ニ依ル可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル

第十條  總會ハ長官之ヲ召集ス

長官ハ總會ノ議長ト爲リ議事ヲ整理ス

前二項ノ場合ニ於テハ第五條第一項ノ規定ヲ準用ス

第十一條  合議ノ際各評定官意見ヲ述フルノ順序ハ官等ノ最モ低キ者ヲ始トシ裁判長ヲ終トス官等同シキトキハ年少ノ者ヲ始トシ專理ヲ命シタル事件ニ付テハ專理評定官ヲ始トス

第十二條  評定官ハ決議スヘキ問題ニ付自己ノ意見ヲ表スルコトヲ拒ムコトヲ得ス

第十三條  法規ノ解釋ヲ一定シ又ハ判例ヲ變更スル必要アリト認ムルトキハ長官之ヲ總會ノ議ニ付ス

第十四條  書類ノ送達ハ廷丁若ハ郵便ヲ以テシ又ハ通常裁判所ニ囑託シテ之ヲ爲ス

第十五條  行政裁判所ハ其ノ職權ニ屬スル事項ニ付吿示ヲ發スルコトヲ得

第十六條  本令ノ施行ニ關シ必要ナル事項ハ長官之ヲ定ム

附則

本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

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