<<不和を避くべし>>
誰とも不和あらざらんことをつとめよ、されどもし何か不和の起ることあらば、即日に和すべし、けだし不和は二日三日とつゞくときは、直に三日は四日となり、四日は五日となりて、此の五日は我等の為に不和の日の更にいよ〳〵長きを生ぜん、何となればいよ〳〵長くこれを遷延する程はいよ〳〵これを耻ぢんとすればなり。さりながら汝は往て侮辱者を接吻するを耻るか。否、是れ誉れなり、是れ栄冠なり、是れ賞讃なり、是れ利益なり、限りなき幸福をみちみつる宝なり、敵は自ら汝をうくべく、居る者は皆汝を賞讃せん、されどもし人々は汝を非難することあらんも神は必ず褒賞せん。然れども若し汝は彼の先づ来りて免しを願ふを待つならば、汝はかゝる利益を有せざらん、彼は賞を奪ふて己れに祝福を得ん、これに反して汝は自ら往くも、彼より下くなるにはあらざるなり、却て汝は神に従順し、己が生命を大に望みあるものとなし、不平と騒擾とより自ら免れて、怒に克ち、欲を制し、大なる明哲をあらはさん。