米国の西欧援助に関する政策


別紙

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部外秘

ワシントン、]1947年5月23日

アチソン氏へ。付属文書は、企画本部の最初の勧告である。これは、西欧向け援助という問題を扱っている。

もし承認されれば、これはごく近い将来における活動及び計画立案のための総合的政策決定に貢献するであろう。

人手が足りず、暫定的な組織である企画本部が、実質的な職務への配慮を始められるようになってから、まだ数日しか経っていない。いつもならば、私はこれほどの重大事に対する判断と勧告を行うには余りも時間が足りないと判断するところである。だが、この問題に関する行動計画の必要性は緊急であり、我々が今与え得る最善の回答は、恐らく今後1、2か月に徹底的に検討されるであろう研究よりも役立つと、私は認識している。

もしここで提示された見解が長官[1]と貴方自身の承認を得るならば、我々はこの文書を更なる計画立案の基礎とする所存である。

概要

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[同封]

[ワシントン、]1947年5月23日

概要

1. 政策企画本部は、米国の西欧向け援助という問題を研究することを第1の目的として選任された。

2. ここで検討しているのは、長期的課題、即ち欧州復興全般の問題であり、そして短期的課題、即ち建設的解決の可能性に関する国内外の信頼を緊急に下支えすることである。

3. 短期的課題について言えば、政策企画本部は次のように提案している。即ち、合衆国は確かで励みとなる信頼の獲得という観点から、西欧経済における何らかの適切な1つまたは複数の障害を選定し、これらの障害の打破に関する我が政府の重要性を遺憾なく発揮させるための緊急行動を開始する。企画本部はこの提案を大いに重視すると共に、こうした行動という手段によってのみ、長期的課題に対処する時間をある程度稼げると信じている。

4. 長期的課題に関しては、政策企画本部は次のように感じている。即ち、課題を解決するための計画作成に際する公式の主導性と、こうした計画に対する総合的責任とは、共に欧州諸国から発揮されねばならないし、我が政府の公式の役割は、欧州の共同要望によりその計画を支持することであるべきである。当本部は、我々が欧州各国政府に働き掛けてこうした計画の推進という任務に早期に着手させると共に、彼らにあらゆる支援を行い、彼らの我々に対する要望が年末までに我々に届くようにすることを目指すよう提案する。

5. 政策企画本部は、欧州の一部大使館に対し、大使の統一見解の概要を得よとの指示を発するよう提案する。また、問題への総合的アプローチに関する英国との秘密協議を直ちに行うよう提案する。

6. 当本部は、ギリシャ及びトルコに関する大統領教書の含意に関する世論を正すための緊急手段を取るよう勧告する。

米国の西欧援助に関する政策――政策企画本部の見解

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総論

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1. 政策企画本部は、米国の西欧援助という問題を注目すべき最初の主題として選んだ。このことは、当本部が他地域における諸問題の重要性または緊急性を無視し、あるいは世界的基礎に立脚した長期的政策の調整という使命を無視していることを意味する訳ではない。単純に、西欧が長期的計画を真っ先に開始すべき地域であるとみられるということを意味しているのである。

2. 政策企画本部は、共産主義者の活動を西欧の困難の根源とはみていない。当本部が考えるに、現在の危機は主に、戦争が欧州の経済的、政治的、社会的構造に及ぼす破壊的影響や、物質的工場や精神的気力の著しい消耗の結果である。この現状は、大陸の東西分裂によって遥かに悪化し、困難な悲劇となっている。企画本部は、次のように認識している。共産主義者は欧州の危機を利用しており、共産主義者の更なる成功は米国の安全保障への深刻な危機を生み出すと。しかし当本部が考えるに、欧州援助に際する米国の努力が向けられるべきは、共産主義との闘争そのものではなく、経済的混乱である。この混乱こそが欧州社会をしてあらゆる全体主義的運動に利用されやすくしているのであり、現にロシア共産主義はこれを利用しているのである。企画本部が考えるに、米国の計画はこの目的に沿うべきだし、米国民に計画を率直に知らせるべきである。

3. 政策企画本部は米国の西欧援助というこの総合的課題の中に、2つの問題を見出している。即ち、長期的課題と短期的課題である。長期的課題とは、如何にしてこの地域の経済的健全性を回復させるのかという課題、及びこうした回復に向けた米国の援助の程度と形態という課題である。短期的課題とは、西欧の経済的解体を食い止めるために、またその解決において合衆国が適切な役割を果たすとの信頼を生み出すために、ごく近い将来において、如何なる効果的かつ劇的な行動を取るべきかを決定することである。

4. 政策企画本部は、トルーマン・ドクトリンの目的、そして我々の諸外国向け援助の目的に関して、米国民の心中に若干の誤解があると感じており、この誤解を正すための直接行動が取られるよう勧告する。

短期的課題

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5. 短期的課題に関しては、政策企画本部は次のように感じている。我々は西欧の経済様式における、何らかの1つまたは複数の障害を選択すると共に、これらの障害の打破に関して我が政府の重要性を完全に発揮させるための、緊急の行動を起こさねばならないと。この行動の目的は、一方では心理的なものになるであろう――それは守勢ではなく攻勢に出るためであり、我々が本気であることを欧州の人々に判らせるためであり、彼らの希望と信頼のための触媒として奉仕するためであり、そして欧州の諸問題の性格と米国の支援の重要性を米国民に強調するためである。他方では、この行動は欧州の経済的困難を解決する上で真の貢献をすることを意図している。

企画本部はこの事業を大いに重要視すると共に、この事業が全体計画を成就する上で不可欠に近い要素であると考えている。この種の措置が直ちになされなければ、欧州の士気はさらに低下し、長期計画は非常に危うくなると、当本部は危惧している。

ライン渓谷石炭を生産し、欧州の消費地に移送することは、こうした行動の目的として最も相応しいといえよう。企画本部はこの問題を考慮に入れつつ、近日中により詳細な提案をするつもりである。

3億5000万ドルの充当金からイタリアに供与されるであろうこうした援助に加え、短期的緊急問題として同国に関する別の措置を取ることが重要であろう。何故なら、この問題は既に国務省の執行部門が勧告しており、企画本部は本調査の中にこれを含めていないからである。

長期的課題

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6. 長期的課題は極めて複雑かつ困難な課題の1つであると、政策企画本部は認識している。これは慎重な検討を要する主題であって、その検討には少なくとも数週間以上掛かるに違いない。当本部は、直ちに検討作業に入りたい。しかし、我が政府が問題解決に向けた何らかの包括的なアプローチの採用を遅らせる余裕などないと信じつつ、一応の見解を以下に述べておきたい。

a. 一方では欧州経済の再活性化計画と、他方ではそうした再活性化に対する米国の支援計画とを、明確に区別することが重要である。我が政府が、西欧を経済的に自立させるための計画を一方的に立案し、自発的に公式発表しようと図ることは、適切でも有効でもあるまい。これは欧州の人々の仕事である。公式な主導性は欧州から発揮されねばならない。計画は欧州にて進められねばならない。そして欧州の人々は、それに対する基本的責任を負わねばならない。我が国の役割は、欧州の計画の立案を友好的に支援することと、然る後にこうした計画を財政的方法などによって支持することからなるべきである。しかも、欧州の要望に応じてである。

b. 我が国が支持を求められる計画は、欧州の数か国によって合意された共同のものでなければならない。これは個々の国家的計画、例えばフランスにおけるモネ・プランなどと関連するであろうが、経済的理由のみならず心理的・政治的理由により、国際的に合意された計画でなければならない。我々の支持への要望は、孤立した個別の訴えの寄せ集めとしてではなく、友好的諸国の集団からの共同要望としてなされねばならない。

c. この欧州の計画は、経済的自立に基づいた許容可能な生活水準を維持し得るであろうところにまで西欧を導くことを意図するものでなければならない。計画は、あらゆる措置を講ずるとの展望を与えねばならない。計画は、我々の支持があれば、予見可能な将来において我々が支持を要求される最後の計画となるという、合理的保証を含んでいなければならない。

d. 包括的欧州計画は、英国の経済的窮状を扱った何らかの計画を包含し、またはこの計画と関連していなければならない。この計画は、公式には英国のそれであって、英国の主導性と英国の責任に基づき立案されねばならないし、合衆国の役割は、またしても、友好的支持を与えることでなければならない。

e. これは、合衆国が包括的欧州計画の策定に関与せず傍観すべきだという意味ではない。国連の、殊に欧州経済委員会の一員として、そして欧州のとある諸地域を占領する国として、合衆国には計画策定に参加する権利と義務がある。占領国としての我々の立場は同時に、今後進められる計画の遂行に際して誠実に協力する責任を我々に負わせている。こうした理由により、また、こうした援助の技術的に実行可能な範囲についてできる限り速やかに知らねばならないことにより、我々は欧州復興問題の全体に関する独自の現実的研究に着手せねばならない。だが我々は、欧州の人々の明晰さや考えの健全性、そして自尊心のためにも、主導性が欧州から発揮され、かつ主な責任が欧州各国政府によって担われるよう、強く要求せねばならない。米国民は、自助の意志を持たない者を本気で支援することができない。そしてもし、公的責任を負うために求められる主導性と意欲が欧州各国政府から発揮されないとすれば、それが意味するのは我々の見知ってきた欧州政治の「死後硬直」が既に始まったということ、そして我々が決然として事の成り行きを変えるには遅過ぎるということである。

f. この計画は、必然的に欧州地域に集中せざるを得ないとはいえ、疑いなく他の諸地域にも広汎な影響を及ぼすであろう。このことは、国連に関する重要な含意も有しているのであり、我々は国連機関を最大限に活用する必要性を絶えず認識していなければならない。

g. こうした計画に対する米国の支持は、経済的支援に限られてはならない。恐らく、特定の諸問題の解決に際する米国の少なからぬ実際的協力を含むことになろう。

h. 我が政府が最終的に支持するよう要求されるであろう如何なる計画に関しても、以下の諸点を保証する安全策を強く要求する必要があろう。

第1に、こうしたドル支援の経費削減のためになされるであろう全ての可能性。
第2に、欧州各国政府が持てる権限を総動員して、我々の援助が有効な方法で活用されるようにすること。
第3に、我が国への最大限の償還が、経済的に実行可能な、そして合衆国の利益になるような何らかの形でなされること。

i. 欧州計画立案の主導性がどこでどんな形で発揮されるべきかという問題は、疑いなく極めて困難かつ微妙な問題である。それを我々が明確に予定することはできない。多分、まずは欧州経済委員会に、そして恐らく全欧州(西欧のみならず)向けの提案として、その計画を提出する努力がなされるであろう。だが次に、ロシアの衛星諸国が提示された条件の受諾を望まず自ら脱退するのか、さもなければ、各国経済における排他的志向の放棄に合意するのか、という形でなされることが不可欠となろう。仮にロシアが欧州経済委員会でこうした案を妨害できることが判明した場合は、西欧主要諸国がロシアとその衛星諸国の参加なくして会合する方法を見出すことが不可欠となろう。しかし総じて、この主導性がどこでどうやって発揮されるべきかという問題は本来欧州諸国の問題であり、我々は彼らの決定に過度に影響を及ぼそうとせぬよう注意すべきである。

7. 上記の注意事項に基づき、政策企画本部は長期的問題に関する以下の行動指針を勧告する。

a. 「合衆国による対外援助の政策・手続き・費用」[2]を調査しているSWNCCの特別委員会が調査を続けているが、同委員会の国務省代表が調整目的のため政策企画本部との密接な連携を維持すること。

b. SWNCCの調査の補足として、至急電による指示を早期に西欧及び中欧諸国の大使に送り、以下の事項に関する彼らの率直な見解を得ること。

(1) 各国の経済状況、及び救済に必要な規模。

(2) 来年中に合衆国をして同地域からの緊急かつ必死の要求に直面させ得るであろう何らかの要素が、この状況の中にあるのか否か。

(3) 各国の経済的困難が取引(必需品、金融、人材など)の改善によって救済され得るのか否か、もしそうならば、その取引の程度。

(4) 仮にこのような取引の進展が実行可能になった場合に克服されるであろう、主な障害の本質。

(5) 仮にこれらの障害が除去された場合、欧州全体の復興に各国がどの程度まで貢献できるのか。

(6) 実行可能な欧州復興計画に関する、各国の責任ある政府首脳の一般的見解、こうした計画を検討するに際して彼らがロシアまたは共産主義者の圧力にどの程度怯えているのか、そしてこれを立案するに際しての彼らの主導性または協力の見込み。

c. これらの使節団の一部に対し、国務省の執行部門の裁量で、ワシントンにいる職員にこの全般的主題について数週間協議・計画させるよう要請すること。

d. 企画本部が国務省の執行機関の協力のもと、欧州復興の長期的問題に関するこの政府見解の概略の立案を継続すること。これは欧州各国政府との協議に活用するためであり、また欧州経済委員会米国代表の指針とするためである。

e. 欧州各国政府に対し、援助に際して我が国に期待する点を明示した欧州復興計画の立案を秋までに開始し、かつ年末までに援助の請求を我が政府に提示するよう勧誘し、支援することが我々の全般的目的として受け入れられること。

f. この包括的アプローチについて非公式かつ秘密裏に英国首脳と早期に協議し、これを支持するとの保証を英国に要請すること。

「トルーマン・ドクトリン」の含意の明確化

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8. 報道機関が不幸にも「トルーマン・ドクトリン」と呼び習わしているものの意味を明確にするための、とりわけ、現在米国世論のかなりの部分を占めている2つの有害な印象を払拭するための、諸々の措置が取られるべきである。その印象とは、以下の通りである。

a. 合衆国の世界的諸問題への対応は共産主義の圧力に対する防衛反応であり、諸外国に健全な経済状況を回復させようとする努力はこの反応の副産物に過ぎず、たとえ共産主義の脅威がなくとも我々が関心を持つべき類のものではないという印象。

b. トルーマン・ドクトリンは、共産主義者が成功を収める兆候を見せている世界中の如何なる地域に対しても経済・軍事援助を与える、白紙委任手形であるという印象。米国の援助の拡大とは、本質的には文字通りの政治的・経済的問題なのであり、こうした援助は予想される結果が米国の資源と努力の提供との間に良好な関係を生む場合にのみ考慮されるということを明確にしておかねばならない。ギリシャトルコの場合、我々が扱っているのは重要地域であり、行動を起こさなければ著しく深刻な結果を招いたであろうし、首尾よく行動すれば著しく広汎な効果が約束されるし、全体の費用は比較的少ないし、他の地域にも同様の基準が適用されるに違いないということを明確にしておかねばならない。

ジョージ・F・ケナン

訳註

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底本

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"Policy with Respect to American Aid to Western Europe — Views of the Policy Planning Staff", The Director of the Policy Planning Staff (Kennan) to the Under Secretary of State (Acheson), U.S. Department of State, ed (1972). Foreign Relations of the United States 1947. Vol. III: The British Commonwealth; Europe. Washington, D. C., pp. 223-230.

 

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