第九「カフィズマ」


第六十四聖詠 編集

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠、歌謡のため。

神よ、讃頌はシオンに於いて爾に属し、盟はイエルサリムに於いて爾に償われん。

爾は祈祷を聴く、凡その肉身は爾に趨り附く。

不法の行いは我に勝ち、爾は我等の罪を浄めん。

爾が選び近づけて。爾の庭に居らしむる者は福なり。我等は爾の家、爾の聖殿の福に飽き足らん。

義判に於いて畏るべき者よ、神、我が救世主、地の四極と遠く海に居る者とを恃みよ、

其の力にて山を建て、権能を帯ぶる者よ、

海の騒ぎ、波の聲、及び諸民の亂れを鎮むる者よ、我等に聴き給え。

地の極に居る者は爾の休徴を畏れん。爾は朝夕を起こして爾を讃榮せしめん。

一〇爾地に臨みて、其の渇きを止め、豊かに之を富ましむ、神の流れには水盈ち、穀物を備う、蓋此くの如く之を作れり、

一一爾其の田溝に飲ませ、其の土塊を平らげ、雨の滴りを以て之を和らげ、祝福して盟はイエルサリム出ださしむ。

一二爾の恩沢を以て年に冠らせ、爾の歩みには膏滴る、

一三即郊邊の牧場に滴り、丘は喜びを帯ぶ、

一四草原は獣の群を衣、谷は穀物にて覆われ、慶び呼びて歌う。

第六十五聖詠 編集

伶長に歌わしむ。歌。

全地よ、神に歓びて呼び、

其の名の光榮を歌い、光榮と讃美とを彼に帰せよ。

神に謂うべし、爾は其の行事に於いて何ぞ畏るべき、爾が力の多きに由りて爾の敵は爾に降らん。

至上者よ、願わくは全地は爾に叩拝し、爾を歌い、爾の名に歌わん。

来たりて、人の子に行う所に於いて畏るべき神の行事を視よ。

彼は海を変じて陸となせり、人歩みて河を渉れり、我等は彼処に在りて彼の爲に楽しめり。

彼は己の能力を持って永く宰どり、其の目は諸民を鑑みる、反逆の者の自ら誇らざらん爲なり。

諸民よ、我が神を讃揚し、其の讃美を伝えよ。

彼は我等の霊の生命を守り、我等の足に躓くを免さざりき。

一〇神よ、爾我等を試み、銀を錬るが如く、我等を練り給えり。

一一爾我等を網に引き入れ、械を我等の腰に加え、

一二人を我等の首の上に置きたり。我等は火と水との中に入り、而して爾我等を引き出して自由を賜えり。

一三我等燔祭を以て爾の家に入り、我の盟いを爾に償わん、

一四即我が憂いの時我が口の出しし所、我が舌の言いし所の者なり。

一五我肥えたる燔祭を、牡羊の脂の香りと与に爾に奉り、牡牛と牡山羊とを祭に獻げん。

一六凡そ神を畏るる者、来たりて聴け、我爾等に彼が我が霊の爲に行いし所を述べん。

一七我嘗て我が口を以て彼に呼び、我が舌を以て彼を讃揚せり。

一八若し我、我が心に不法のあるを見しならば、主は我に聴かざりしならん。

一九然れども神は已に聴き、我が祷の聲を聴き納れ給えり。

二〇崇め讃めらるる哉神、我が祈祷を却けず、其の憐れみを我より離さざりし者や。

第六十六聖詠 編集

伶長に琴を弾きて歌わしむ。詠。歌。

神よ、我等を憐れみ、我等に福を降し、爾の顔を以て我等を照らし給え、

爾の途の地に知られ、爾の救いの萬民の中に知られん爲なり。

神よ、願わくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。

願わくは諸族楽しみ歓ばん。蓋爾は義を以て諸民を審判し、地上の諸族を治む。

神よ、願わくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。

地は其の果を出せり、願わくは神我が神は我等に福を降さん。

願わくは神は我等に福を降し、地の極は悉く彼を畏れん。9

光榮讃詞

第六十七聖詠 編集

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠。歌。

神は興き、其の仇は散るべし、彼を悪む者は其の顔より逃ぐべし。

煙の散るが如く、爾彼等を散らし給え、蝋の火に因りて融くるが如く、斯く悪人等は神の顔に因りて亡ぶべし。

惟義人等は楽しみ、神の前に欣びて祝うべし。

我等の神に歌い、其の名に歌い、諸天を行く者を崇め讃めよ、其の名を主と曰う、彼の顔の前に欣べ。

孤児の父、寡婦の審判者なる神は、其の聖なる住居に在り。

神は孤独の者を家に入れ、囚者の鎖を釈く、惟逆う者は炎野に遺てらる。

神よ、爾が爾の民に先立ちて出し時、爾が野を行きし時、

地は震い、天も神の顔に因りて融け、此のシナイも神、イズライリの神の顔に因りて融けたり。

一〇神よ、爾は甘霖(ゆたかなるあめ)を爾の嗣業に注ぎ、其の労に依りて弱る時、爾之を固め給えり。

一一爾の民は彼処に居りたり、神よ、爾は仁慈に依りて、貧しき者の爲に備えをなせり。

一二主は言葉を賜わん、之を伝うる女甚だ多し。

一三軍旅の諸王は走り走る、只家に坐する婦は獲物を分かつ。

一四爾等各々其の彊に安んずるを得て、恰も鴿が其の翼を銀にて覆われ、羽根を純金にて被われたる如くなれり。

一五全能者此の地の諸王を散らしし時、地は白まりしこと、セルモンの雪の如し。

一六ワサンの山は神の山、ワサンの山は高き山なり。

一七諸々の高き山よ、爾等何すれぞ神が居らんを欲し、主が永く住まんとする山を嫉み視る。

一八神の兵車は萬萬千千、主は其の中に、シナイの聖所に在り。

一九爾は高きに登り、虜者を虜にし、人々の爲に獻物を享け、逆う者にも主神に居るべきを得しむ。

二〇主は日々に崇め讃めらる。神は我等に重荷を負わすれども、亦我等を救い給う。

二一神は我等の爲に救いの神なり、死の門は主全能者の権に在り。

二二神は其の敵の首、己の不法に溺るる者の髪の毛多きを砕かん。

二三主言えり、ワサンより囘し、海の深水より携え出さん、

二四爾に爾の足を、爾の犬に其の舌を敵の血に浸さしめん爲なり。

二五神よ、爾の行くを見、我が神、我が王の聖所に行くを見たり。

二六歌う者は先んじ、楽器を鳴らす者は後に従い、童女は振り鼓を持ちて其の間に在りき。

二七イズライリの源より出ずる者よ、教会に於いて主神を崇め讃めよ。

二八彼処には小なるワェニアミン、彼等の侯たるあり。イウダの諸侯、彼等の主宰たるあり、又ザウロンの諸侯、 ネファリムの諸侯あり。

二九爾の神は爾に力を賜うを予定せり。神よ、爾我等の爲に行いし事を固めよ。

三〇イエルサリムに在る爾の殿の爲に、諸王は物を爾に奉らん。

三一爾葦の間の猛獣を制し、銀塊を以て伐れる諸民の犢の中の牡牛の群を制し、戦いを好める諸民を散らし給え。

三二公卿はエギペトより来たり、エフィヲピヤは其の手を挙げて神に向かわん。

三三地上の諸国よ、神に歌い、

三四世々諸天を行く主を讃め歌え。視よ、彼は其の聲に力の聲を与う。

三五光榮を神に帰せよ、其の威厳はイズライリの上に在り、其の能力は雲に在り。

三六神よ、爾は爾の聖所に於いて厳かなり。イズライリの神は其の民に力と固めとを賜う。神は崇め讃めらる。

光榮讃詞

第六十八聖詠 編集

伶長に「ソサンニム」の楽器を以て歌わしむ。ダワィドの詠。

神よ、我を救い給え。蓋水は我が霊にまで至れり。

我深き泥に溺れて、立つ處なし、我深き水に入りて、其の急瀬は我を流す。

我は呼びて倦み、我が喉は枯れ、我が目は我が神を望みて疲れたり。

故なくして我を憎む者は我が首の髪りも多く、我が敵、不義を以て我を迫むる者は益々強し、我が奪はざる所の者は、我に之を償わしむ。

神よ、爾は我が無知なるを知る、我の罪は爾に隠るるなし。

主、萬軍の神よ、願わくは凡そ爾を恃む者は我に因りて羞を得ざらん。イズライリの神よ、願わくは爾を尋ぬる者は我に因りて辱しめを得ざらん、

蓋我爾の爲に侮りを負い、辱しめは我が面を蔽う。

我我が兄弟には疎き者となり、我が母の子には外人となれり、

一〇蓋爾が家に於ける熱心は我を蝕み、爾を謗る謗りは我に墜つ、

一一我霊に斎みして泣く、彼等此を以て我の辱しめとなす、

一二我麻を衣て衣服に易う、乃ち彼等の諺となる。

一三門の傍らに坐する者は我を評し、酒を飲む者は歌を以て我を歌う。

一四主よ、惟我祈祷を以て爾に赴く、神よ、爾が喜ぶ時に於いて、爾の大仁慈に依り、爾の救いの誠を以て我に聞き給え、

一五我を泥の中より引き出して、我の溺るるを容す毋れ、我を憎む者及び深き水より免るるを得しめ給え、

一六急瀬に我を流さしむる毋れ、淵に我を呑ましむる毋れ、大壑に其の口を我が上に閉ざさしむる毋れ、

一七主よ、我に聆き給え、爾の憐れみは善なればなり、爾の恵み多きに因りて我を顧みよ。

一八爾の顔を爾の僕に匿す毋れ、我哀しめばなり、速やかに我に聴き給え、

一九我が霊に近づきてこれを援けよ、我が敵に縁りて我を救い給え、

二〇爾は我が受くる所の侮りと恥と辱しめとを知れり、我の敵は悉く爾の前に在り。

二一侮りは我の心を裂き、我が疲れは極まれり、我憐憫を望めども無し、慰安者を望めども得ざりき。

二二彼等膽を以て我に食ませ、我が渇ける時醯を以て我に飲ましめたり。

二三願わくは彼等の筵は其の網となり、彼等が平安の席はその機檻とならん、

二四願わくは彼等の目は昏みて見るを得ざらん、彼等の腰を永く悩せ。

二五爾の忿恚を彼等に注ぎ、爾が怒りの焔に彼等を囲ましめよ。

二六願わくは彼等の住所は虚しくなり、彼等の幕に居る者なからん、

二七蓋爾が撃ちし者は彼等之を迫め、爾が傷つけし者の苦しみは彼等之を益す。

二八彼等の不法に不法を加え、彼等を爾の義に入らしむる毋れ。

二九願わくは彼等は生命の記録より抹され、義人と共に記されざらん。

三〇我貧しく且つ苦しめり、神よ、願わくは爾の助けは我を起こさん。

三一我歌を以て我が神の名を讃榮し、頌を以て彼を讃揚せん。

三二此れ主に悦ばるるは、牛及び角と蹄とある犢に逾らん。

三三苦しむ者は之を見て悦ばん。神を尋ぬる者よ、爾等の心は活きん、

三四蓋主は貧しき者に聴き、其の囚人を軽んじ給わず。

三五願わくは天及び地、海及び凡そ其の中に動く者は彼を讃美せん、

三六蓋神はシオンを救い、イウダの諸邑を建てん、其の民は彼処に住いて之を嗣がん、

三七彼が諸僕の裔は彼処に居を定め、彼の名を愛する者は其の中に住まわん。

第六十九聖詠 編集

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠。記念の爲に此を作れり。

神よ、速やかに我を救え、主よ、速やかに我を助け給え。

我が霊を求むる者は、願わくは恥を得て辱しめを受けん、禍を我に望む者は、願わくは退けられて嘲けられん。

我に向かいて、良し良しと云う者は、其の我を辱しむるに因りて、願わくは退けられん。

凡そ爾を求むる者は、願わくは爾の爲に喜び楽しまん、爾の救いを愛する者は、願わくは常に神は大いなりと云わん。

我は貧しくして乏し、神よ、我に到り給え、爾は我の助けなり、我を救う者なり、主よ、遅なわる毋れ。

光榮讃詞