甲陽軍鑑/品第四十六

 
オープンアクセス NDLJP:206甲陽軍鑑品第四十六
軍陣の時之事 抜書数ケ条 

軍の時敵味方を見るに二色あり  武者の黒きは勝なり  赤く見ゆる方は必ず負なり

軍の時馬よりおりたるに、北へ向方まくる也、よくこころへべし

軍兵の寄来るをもつ勝負てを知る事見知と云ふは人数押来る時に、はらに見へそれに烏付事有、武者にほこりなく、人馬共に足なみ音たかくなりきこへばかならず滅亡なり、太刀打に及ばず負也

との井ときの順逆の事陣中にて日入ぬる時分、大将の陣より時かしらをあぐるに、うけ事あらば三日は軍仕る事なかれ、敵陣との井を逆に作る事あらば三日よりうちによせかけて切勝べき事、万代と云ふとも此おきて替也

軍陣の物たち縫日、庚申を用ふべし物たちかき板は、柳たるべし、縫事は跡へ針を返さぬなり、又たちさまに刀の先をそろと三度先へつきやりてさてたつべし

時日を不嫌行事有之合戦に出る時の事なり、東へ行には木を越へよ、南へ行には火を越へよ、西へ行には金を越へよ、北へ行には水を越へよ何れも三度也、又或る説には甲乙には木を越へよ丙丁には火を越へよ戊巳には土を越へよ、庚辛には鉄を越へよ、壬癸には水を越へよ

殺害の日正月は丑、二月寅、三月卯、四月辰、五月巳、六月午、七月未、八月申、九月酉、十月戌、十一月亥、十二月子、

オープンアクセス NDLJP:207小眼の方、此方より盗人来る也、子午卯酉此方より十二目、丑未辰戌は八ツ目也、寅申巳亥は、四ツ目此方より、何間付也

五音勝負占相の事、凡音律の方に学有人を軽足の馬に乗て敵陣に近付て十二律を耳に当て、微音に吹て時の宮商角徴羽を知る事、有情非情の声を何の調子と聞仰せて吾勝べき方角時分を知て敵の城に詰寄て可攻也雖万代と此占なひ違ふ事有べからず其方に曰、双調の時は東の方より敵の城可破云々黄鐘調の時は南の方より敵城可破云々平調の時は西より敵城可破云々一越調の時は巳午の方の間丑未の方の間より敵城可破云々可秘々々

馬をあたらしき馬と云ふは悪し、珍らしき馬と云ふ也但し常の事か、

軍陣の馬ひきいだして馬の前足の左の足のすくみたる時のり出すべききり

軍陣の祝は、具足しても、小具足してもなり、くはへこと、その中のを、くはへ候事なり

弓法秘歌

「鴈鳴て菊の花咲秋はあれど春の海辺に住吉の浜「思ふ事など問ふ人のなかるらん仰げは空月ぞさやけき「白玉か何ぞと人の問ひし時露とこたへて消へなまし物を「唱ふれば十万億も爰にありみれば仏の姿もぞなき「右は月左は照日清よければ白き心のかげはくもらず「大水の先にながれてとちがらも身を捨てこそ浮む瀬もあれ「よなの月もゆがけも弓矢にて心を結ぶつるのひとすぢ「立波も又立浪も吾も霜有にまかせよ谷川の水「称れば仏も我もなかりけり南無阿弥陀仏の声計りして「生来る人の命は五こくにて金剛仏は一りうのこめ「人となり人とならばやとぞ思ふさらずは終に墨染の袖「うつ者もうたるゝ者も諸共に只一時の夏のたはふれ「立波も水なりけりと知ぬればとにもかくにも噪がざりけり

ひれは糟糠立先 弘法大師 たひれは瓦礫留跡 伝教大師