甲陽軍鑑/品第四十五

 
オープンアクセス NDLJP:203甲陽軍鑑品第四十五 一寸法之事

末那板まないた 支那梵語也此には云魚と広さ一尺八寸、足の高さ二寸、板厚さ四寸、長さ三尺、己上の高さ六寸也鵠末那板可替也

手綱八尺三寸か、腹帯不定、敷皮の長さ三尺一寸五分、横二尺一寸ばかり、緒付所、上下八寸三分計り也

手綱二尺五尺、ふせ縄も二丈五尺、六尺五寸

爪剪刀一尺二寸、広さ二寸、爪剪板長さ二尺四寸、広さ一尺二寸、厚さ二寸八分、馬ふね長さ二尺四寸、広オープンアクセス NDLJP:204さ一尺二寸高さ八寸也、馬櫛長さ七寸、歯のあい九七五也、馬刷刀ばだけ二尺一寸、中は二尺八寸、下は二尺五寸也、爪撃槌うちづち上二寸二分、下八寸、緒付三分さとさ五寸三分也、是を合せ一尺八寸と也、馬髪捲数、三十六、卅三廿八、何も如

軍陣の手綱長さは、弓の弦程候はん歟、但し大馬小馬にかはりつゝむべきり、口伝有之、取染の手綱と云ふ事有、是れは一寸まだらなり、色赤し有口伝

厩の事、五間厩七間厩の時、中を一の厩と云ふ、然間中を見て、奥を見て、其儘奥の次より次第に見るなり、又四間六間八間十間歟の時は奥があがりなり、それよりつぎを見る也、はんの時、中より、ちやうの時は、奥より見るなり口伝に有之なり

犬のやり縄は、三ひろ一寸也、鶉狭竹は、上四寸、下八寸、水引にてゆふ 竹は竹なり

鶴山かくる事、四寸也、上は二ふせに剪也、うさぎ懸る事、後にゑだゆい、かしらをゆふ、耳の中ゆふ也五寸五分に縛也

鳥の山懸の事、おんどりは五寸五分、めんどりは四寸五分也

鳥春は田物懸にする也、さきは一刀そぎにする也、爰に口伝有

雁の鶴山懸の事二ツ結びて上下を引揃へて結びて三ツ伏に剪なり、下は上を一ツも結ぶ也

具足かき出付かぶと見する事

  他流也


 さがる

返る
手 一面
左 右




人あがる
さきにかき出る人帰て甲を持出て御目にかくるなり持様は左の手にて忍の緒をかいたぐりて右の手にて見あげの右脇しころの右のさきにそと手をつくばいて、御目にかくるなり、其上はじめの吾かき出る所を持て、二人して持帰へる也、先へかき


当流たうりう 貴 人
さがる

 右

一面

左 



両手一所にして、なをす時手をひろぐる是は御手のひろがると云ふ心也

是もさきにかきて出る人かへりてかぶとをもち出て、御めにかけ候也、御目にかくる式躰は、右に申候と同意也よく口伝あるべき也

軍陣の時は、一切かはる也



  さがる




――――――

上人

当流さきにかき出る人の貴人の左へ帰る、跡にかく人吾が左の手具足入たるすみの方へはしらかし、又右の角の方へはしらかし、貴人の方へつき出し置也、他流は貴人の右の方へさきの人帰る也、跡にかく人右の手、具足入たる箱の角の方へはしらかし、又左の手を左の角へはしらかしつき出す也、何時も他流は貴人の右の方へ帰る也、当流は何時も貴人左の方へ帰る貴人左へ帰れば、吾弓手先に出也、右へ帰れば吾めての方先へ出る也、以此可分別

一人して具足持出るも、軍陣のは面を貴人へむけて持て出る、御手ひろがる式躰同意也

一人して具足平生持て出る式躰は如

貴 当流   ┏手





――
――
     ┗ 手
爰にて御手ひろがる式躰
すべしわが右へかへる也
貴 他流   ┏手








――
――
     ┗ 手
爰にて御手ひろがる式躰
あるべしわが左へかへる也


  右条々当流他流の仕分、秘事口伝多く候也

决拾ゆがけと云ふは天照大神未だ此国大海なりしに、国土龍神を退治し給ひし時、国土の龍神の放つ流矢にて大神の、二中指を射きられ給ふ時、帝釈天謀ごとをもつて、决拾をさゝせ御申、在時則代を切取給ふによつて、指の数は十家真空名也、緒の長さ主の指にて二尺八寸也、諸の兵具を調へる也、軍をぎやうせんには兵の决拾をさすこと此吉例也、緒の長さ主の指にて一寸八分也、左よりさし、右よりぬくべし、緒のとめ様口伝に有之十空白檀戒忍進前恵方願力智也
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空大指
風頭指
火中指
水无名指
地小指
〈[#図は省略]〉阿弥陀

軍陣の決拾陰陽とて、昼夜に緒の結び様かはる也、弓法の内幕、决拾、鞭、此三色は大秘事也、聊爾れうじ之陰は先一重巻て、大指のとをりにてむすび、引返し又いつものごとく順に二重まわして大指のとなりにてとむるなり、陽は手の甲にて如右留なり、是は上品上生と云ふさしやう也是を軍陣の時さすなり、正八幡大菩薩、本地阿弥陀仏にてまします也

大指

大指
〈[#図は省略]〉 南無八幡大菩薩と三返
神の数は九万八千七社仏の数は十万人千躰三返
南無摩利支尊天三返

流鏑馬やぶさめの决拾、先一重まはしてむすび、手の甲より薬指へかくる、其上二重同じく手の甲にて留るなり、是は中品中生のさしやうと云ふなり、兎八幡大菩薩本地地蔵にて御座ます

大指

大指
人指ユヒ
〈[#図は省略]〉
南無八幡大菩薩と三返
南無地蔵大菩薩と三返
神の数は九万八千七社仏の数は十万八千体と三返
南無摩利支尊天と三返

常の馬乗決拾陰陽とて是も二様有之なり

陽は三重ながらまはして大指のとをりにて留る也、陽の歌に曰、心こそまことの道にかなひなば祈らずとても神やまもらん、陰は二重めに中へ通とをして前へと又ひとへまはして前にて緒を取そろへて留る也陰の歌、慈悲仏すぐなるは神ゆがむ人、人ひとりをぞみつにわけゝる

 是は下品下生のさしやうなり

大ゆび
〈[#図は省略]〉
 八はた八幡大菩薩本地観音にて御座也
南無観世音菩薩と三返  南無摩利支尊天と三返
神の数は九万八千七社仏の数は十万八千体と三返

歩立射時片决拾也  南無大日如来と三返  南無摩利支尊天と三返ヲンマリシエソワカト三返

摩利支天と吾と一体にして、無二平等也急々如律令

和歌

ゆがけさし結びて人を剪ならば劒は波よ、敵も水なり

ゆがけさし今うつ太刀に月出て入日の露の消かへるいへ

ゆがけさし我討太刀に露消てながるゝ水にかへる故郷

   飯一盃を十文に定め二度に二十也

    過去  現在  未来  口伝在之也

漢の武帝の御時鞭の寸は定め十二束三ツがけ也、矢の寸也、但し長くはつけ短くはきれと云ふ事有口伝

本の鞭は熊柳也、軍陣にも用候也、寸法の事己れが尺と云ふ事口伝有之指二ツふせ置し緒をつくるなり

竹の根の鞭八幡殿御嫌候事有之口伝多き也

常のかもさぎは、一ツまはして吾前へとりてする也、太刀鞭の結びは一ツまはして上よりとりてかもさぎにする也口伝

夫鞭と云ふは、天の廿八宿を表したり、さるによつて二尺八寸也、口伝天竺にて牢と云ふ虫也長さ七寸、食物に諸い悪難を食し千年を経て祖師と云ふ虫に成て、陰陽和合の姉を請取て、ア胎内に籠りて九月を送りて生人体仏体種虫也、一時に一万里を飛帰る然ば伊行前崩動輪す天竺にては月輪と云ふ又団と云ふ、震旦にては寒深と云ふ、仏所にては錫杖、武士にては兵杖、鬼神国にては死活杖と云ふ、禅家にはオープンアクセス NDLJP:206払子と云ふ悪鬼を払策はらふむちの事也、然る間其身の手にて七寸を龍と云ふ、七四半と取て本尺に合はすれば二尺八寸也、長は続くと云ふは鞭の陽、短くは切と云ふは団陰にかたどるなり


兎は月宮の物なれば、象月日也故に、此含日月の二光云々

ひのさきには龍と云ふ字を書て可裹右条々六身の巻乎

月の前には牛と云う字を書て可つゝむ牛の字は、廿八宿の其一也、漢の孝文皇の御宇に天下の人遇難死する事皆此当牛宿故に帝除之、爾来廿七宿なり、是を以て書牛字納なり

貫入の結び金物一寸貫入六寸煩悩の緒と云ふ又曰抜入一尺二寸なるべし

〈[#図は省略]〉

  是を露と云ふ

仮粧皮六寸結留三寸菖蒲皮御免皮先を劔さきになるへし

取柄七寸は表七星惣は廿八宿を表す、然る間日月星之三光也、龍七寸藤返しと云ふ

仮粧藤一寸龍と中央の半分、はらいとも云ふ

繁昌之藤一寸惣の中央

身口意藤一寸中央半分三毒也

菟頭之藤一寸

金物一寸

本来之劔なる間日の先と云ふ


ゆかけむちに結び付やう是陽なり、かもさぎ也
〈[#図は省略]〉
小刀に陰陽の渡し様二ツ有

ヒル ヨル
〈[#図は省略]〉
是は陰の結び付やう女結也、口伝あり
〈[#図は省略]〉