春秋左氏傳/002 桓公/03

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訓読文

【經】　三年春正月^[1]、公、齊侯に嬴《えい》に會《くわい》す。夏、齊侯・衞侯、蒲《ほ》に胥命《あひめい》ず。六月、公、杞侯に郕《せい》に會す。七月壬辰朔《じんしんさく》、日《ひ》之を食《しよく》するあり。既《つ》く。公子翬《こうしき》、齊に如《ゆ》きて女《ぢよ》を逆《むか》ふ。九月、齊侯、姜氏《きやうし》を讙《くわん》に送《おく》る。公、齊侯に讙に會す。夫人姜氏、齊より至《いた》る。冬、齊侯、其弟《おとうと》年《ねん》をして來聘《らいへい》せしむ。年《とし》あり。

【傳】　三年（周ノ桓王十一年）春、曲沃《きよくよく》の武公《ぶこう》^[2]、翼《よく》を伐《う》ち、陘庭《けいてい》に次《やど》る。韓萬《かんまん》^[3]、戎《じう》に御《ぎよ》となり、梁弘《りやうこう》、右《みぎ》たり、翼侯《よくこう》を汾隰《ふんしふ》^[4]に逐《お》ふ。驂《さん》（木ニ）絓《さは》りて止《とゞま》る。夜《よる》之を獲《え》、欒共叔《らんきようしゆく》^[5]に及ぶ。
　嬴に會するは、昏《こん》を齊に成《な》す^[6]なり。
　夏、齊侯・衞侯、蒲に胥命《あひめい》ずる^[7]は、盟《ちか》はざるなり。
　公、杞侯に郕に會するは、杞、成《たひら》ぎを求めたればなり。
　秋、公子翬《こうしき》^[8]、齊に如きて女を逆へ、先君《せんくん》の好《よしみ》を脩《おさ》む。故に公子と曰ふ。齊侯、姜氏を送るは、禮に非ざるなり。凡《およ》そ公の女《じよ》敵國《てきこく》^[9]に嫁《か》すれば、姉妹《しまい》なれば則ち上卿《じやうけい》之を送る。以て先君に禮するなり。公の子《むすめ》なれば則ち下卿《かけい》之を送る。大國《たいこく》に於《おい》ては、公の子《むすめ》と雖《いへど》も、亦《また》、上卿之を送る。天子に於ては、則ち諸卿《しよけい》皆《みな》行く。公は自《みづか》ら送らず。小國《せうこく》に於ては則ち上大夫《じやうたいふ》之を送る。
　冬、齊の仲年《ちうねん》・來聘するは、夫人を致《いた》すなり。
　芮伯《ぜいはく》萬《まん》の母芮姜《ぜいきやう》、芮伯の・寵人《ちよじん》多《おほ》きを惡《にく》む。故に之を逐《お》ふ。出《い》でて魏《ぎ》に居《を》る。（→桓公四年）

註

1. 經に春王何月とあるは、皆暦は天王より班たるる故なり。故に春王と無きは、班歴無かりしなり
2. 曲沃の莊伯の子。
3. 莊伯の弟。
4. 汾水の邊。
5. 欒賓の子にして、翼侯の傅。
6. 公、自ら齊侯と會して婚を成すは、禮に非ざるなり。
7. 胥ひ命ずるは、約言を申べて以て相命じて血を歃らざる也。
8. 魯の卿。
9. 敵國は匹敵の國、即ち同等の國なり。