日朝修好条規附録

第百貳拾七號

今般朝鮮國ト修好條規附錄幷貿易規則別紙ノ通結約相成候條此旨布告候事
明治九年十月十四日太政大臣三條實美

脩好條規附錄

日本國政府曩ニ特命全權辨理大臣陸軍中將兼參議開拓長官黑田淸隆特命副全權辨理大臣議官井上馨ヲシテ朝鮮國江華府ニ詣ラシメ同國政府ハ大官判中樞府事申櫶副官都摠府副摠管尹滋承ニ委任シ日本曆明治九年二月二十六日朝鮮曆丙子年二月初二日雙方互ニ調印シタル修好條規第十一款ノ旨趣ニ從ヒ日本國政府ハ理事官外務大丞宮本小一ニ委任シ朝鮮國京城ニ詣リ朝鮮國政府ハ講修官議政府堂上趙寅煕ニ委任シ相會同シテ議立スル條款左ニ開列ス

第一款

嗣後各港口駐留日本國人民管理官朝鮮國沿海地方ニ於テ日本國ノ諸船困難ニ遭ヒ緊急ナリト聞クトキハ地方官ニ告ケ該地ニ到ル道路ヲ經過スルヲ得ヘシ

第二款

嗣後使臣及管理官ヨリ各所ヘ通スル送文ハ自費ヲ以テ郵送スルモ或ハ該國人民ヲ雇ヒ專差スルモ各其便ニ從フヘシ

第三款

議定シタル朝鮮國通商各港ニ在リテ日本國人民地基ヲ租賃シ住居スルハ各其地主ト相議シテ價ヲ定ムヘシ朝鮮國政府ニ屬スル地ハ朝鮮國人民ヨリ官ニ納ルト同一ノ租額ヲ出シテ住居スヘシ釜山草梁項日本公館ニハ從前同國政府ヨリ守門設門ヲ設ケシカ今後之ヲ廢撤シ一ニ新定ノ程限ニ依リ標ヲ界上ニ立ツヘシ他ノ二港モ亦此例ヲ照ス

第四款

嗣後釜山港ニ於テ日本國人民行歩ヲ得ヘキ道路ノ里程ハ波戸場ヨリ起算シテ東西南北各直徑十里朝鮮里法ニ依ルト定ム東萊府中ニ至テハ里程外ニ在リト雖トモ特ニ往來ヲ爲ス此里程内ニ於テ日本國人民隨意行歩シ其地ノ物産及日本國物産ヲ賣買スルヲ得ヘシ

第五款

議定シタル朝鮮國各港ニ於テ日本國人民ハ朝鮮國人民ヲ賃雇スルヲ得ヘシ朝鮮國人民其政府ノ許可ヲ得ハ日本國ニ來ルモ妨無シ

第六款

議定シタル朝鮮國各港ニ於テ日本國人民若シ死去シタル時ハ適宜ノ地處ヲ選ミ埋葬スルヲ得ヘシ但他ノ二港ノ埋葬地ハ釜山埋葬地ノ遠近ノ例ニ依ル

第七款

日本國人民日本國ノ諸貨幣ヲ以テ朝鮮國人民ノ所有物ト交換シ得ヘシ又朝鮮國人民ハ交換シ買得タル日本國ノ諸貨幣ヲ以テ日本國ノ諸貨物ヲ買入ルヽ爲メ朝鮮國指定ノ諸港ニテハ人民相互ニ通用スルヲ得ヘシ

日本國人民ハ朝鮮國銅貨幣ヲ使用運輸スルヲ得ヘシ兩國人民私ニ錢貨ヲ鑄造スル者アレハ各其國ノ法律ニ照シテ處斷スヘシ

第八款

朝鮮國人民日本國人民ヨリ買得タル貨物或ハ贈與ヲ受タル諸物品ハ隨意使用シテ妨無シ

第九款

脩好條規第七款ニ載スル旨趣ニ從ヒ日本國測量船小船ヲ放チ朝鮮國沿海ヲ測量スル時或ハ風雨ニ逢ヒ或ハ干潮ノ爲メ本船ニ歸ル能ハサル時ハ該處里正ヨリ其近傍ノ人家ニ安著セシムヘシ若シ需用ノ物品アラハ官ヨリ辨給シ後日其入費ヲ完淸スヘシ

第十款

朝鮮國ハ未タ海外諸國ト通信セス日本國ハ年來諸國ト締盟友誼アルノ故ヲ以テ今後朝鮮國ノ沿海ヘ諸國ノ船舶風波ノ爲メ困難シ漂著スルアラハ朝鮮國人民理ニ於テ之ヲ愛恤セサル無シ該漂民本國ニ送還セラレンヲ望マハ朝鮮國政府ヨリ各港口駐留ノ日本國管理官ニ遞付シ本國ニ送還セシム該官員之ヲ領諾セサル無シ

第十一款

右十款ノ章程及之ニ添ヘタル通商規則共脩好條規ト同一ノ權ヲ有ス兩國政府遵行シテ違フ莫カル可シ然レトモ此各款中若シ兩國人民交際貿易上實地ノ障碍ヲ生シ改革セサル可カラサル事柄ヲ認ムル時ハ兩國政府其議案ヲ作リ一箇年前報知シテ協議決定スヘシ

大日本紀元二千五百三十六年明治九年八月廿四日

理事官外務大丞宮本小一印

大朝鮮開國四百八十五年丙子七月初六日

講修官議政府堂上趙寅煕印

朝鮮國議定諸港ニ於テ日本國人民貿易規則
第一則

日本國商船日本國政府所管ノ軍艦及專ラ通信ニ用フル諸船ヲ除ク朝鮮國ニテ許可セシ諸港ニ入津ノ時船主或ハ船長日本國人民管理官ヨリ渡シタル證書ヲ三日ノ内ニ朝鮮國官廳ヘ差出スヘシ

所謂證書ナル者ハ船主所持ノ日本國船籍航海公證ノ類ヲ入港ノ日ヨリ出港ノ日マテ管理官ニ差出シ置キ管理官ヨリ此證書類ヲ預リタル證票ヲ與フ是ヲ日本國現時施行ノ商船成規ト爲ス船主本港碇泊中此證票ヲ朝鮮國官廳ヘ差出シ日本國ノ商船タルヿヲ驗明ス

此時船主又其記錄簿ヲ差出スヘシ

所謂記錄ナル者ハ船名幷ニ本船ヲ發スルノ地名積荷ノ噸數石數共ニ船舶ノ容積ヲ算定スルノ名船長ノ姓名乘組水夫ノ人員船客ノ姓名ヲ詳記シテ船主調印シタル者ナリ

此時船主又本船積荷ノ報單幷船内所用雜物ノ簿記ヲ差出スヘシ

所謂報單ナル者ハ荷物ノ名或ハ其物質ノ實名幷荷主ノ姓名記號番號ヲ詳記シテ記號番號ナキ荷物ハ此ノ例ニアラス報知スルナリ此報單及其他書類共何レモ日本國文ヲ用ヒテ漢譯文ヲ副ルヿ無シ

第二則

日本國商船進港ノ積荷ヲ陸揚ケセント欲スル時ハ船主或ハ荷主ヨリ更ニ積荷ノ物名幷元價斤量個數ヲ書記シ朝鮮國官廳ニ届出ヘシ官廳届書ヲ得ハ速ニ荷卸シ免狀ヲ渡スヘシ

第三則

船主或ハ荷主第二則ノ免狀ヲ得タルノ後其荷物ヲ陸揚ケスヘシ朝鮮國官吏若シ之ヲ驗査セント要スレハ荷主敢テ之ヲ拒ムヿ無シ官吏亦注意驗査シテ之カ爲メ毀損ヲ致スヿ無カレ

第四則

出港セントスル荷物ハ荷主第二則入港積荷届書ノ式ニ照シ船名幷荷物ノ品書個數ヲ書記シ朝鮮國官廳ニ届出ヘシ官廳ハ速ニ之ヲ許可シ出港荷物免狀ヲ渡スヘシ荷主免狀ヲ得ハ本船ニ積込ムヿヲ得ヘシ官廳若シ其荷物ヲ驗査セント要スレハ荷主敢テ之ヲ拒ムヿ無シ

第五則

日本國商船出港ヲ要スル時ハ前日正午前ニ朝鮮國官廳ヘ報知スヘシ官廳報ヲ得ハ嘗テ預リ置キタル證書ヲ還附シ出港免狀ヲ渡スヘシ

日本國郵便船ハ成規ノ時限ニ抅ハラスシテ出港スルトモ必ス官廳ニ報知スヘシ

第六則

嗣後朝鮮國諸港口ニ於テ粮米及雜穀トモ輸出入スルヲ得ヘシ

第七則

港税

連桅檣ノ商船及蒸氣商船税金五圓

單桅檣ノ商船税金貳圓荷物五百石以上積

單桅檣ノ商船税金壱圓五十錢荷物五百石以下積 倶ニ附屬脚艇ヲ除ク

日本國政府ニ屬スル諸船舶ハ港税ヲ納レス

第八則

朝鮮國政府或ハ人民諸物品ヲ不開港場ノ口岸ニ運輸セント欲スル時ハ日本國商船ヲ雇入ルヽヿヲ得ヘシ雇主若シ人民ナレハ朝鮮國政府ノ免狀ニ照シテ雇役スヘシ

第九則

日本國船隻若シ通商ヲ許サヽル朝鮮國ノ港口ニ到リ私ニ買賣ヲ爲スヲ該地方官見屆タル時ハ最寄管理官ニ引渡スヘシ管理官ハ其所得ノ錢物一切ヲ取上ケテ朝鮮國官廳ニ交付スヘシ

第十則

鴉片煙販賣ヲ嚴禁ス

第十一則

兩國現ニ定ムル規則ハ今後兩國商民貿易形況ニ依リ各委員時ニ隨テ事情ヲ酌量シ商議改正スルヲ得ヘシ此カ爲メ兩國委員各調印シテ即日ヨリ遵行セシム

大日本國紀元二千五百三十六年明治九年八月廿四日

理事官外務大丞宮本小一 印

大朝鮮國開國四百八十五年丙子七月初六日

講修官議政府堂上趙寅熈 印

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