引揚援護庁設置令

公布時 編集

ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基く引揚援護庁設置令をここに公布する。

御名御璽


昭和二十三年五月二十九日
内閣総理大臣 芦田  均

政令第百二十四号

引揚援護庁設置令
内閣は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基き、ここに引揚援護庁設置令を制定する。
第一章 総則
(設置)
第一条
この政令により、厚生省の外局として、引揚援護庁を設置する。
2 引揚援護庁の長は、引揚援護庁長官とする。
(所掌事務及び権限)
第二条
引揚援護庁の所掌事務は、左の通りとし、その権限の行使は、その範囲内で法律(法律に基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 今次の戦争の終結により内地以外の地域から内地に引き揚げた者及び内地から内地以外の地域に引き揚げる者に対する応急援護及び検疫に関する事務を行うこと
二 旧陸海軍の復員及びこれに関連する事務を行うこと
第二章 本庁
(内部部局)[1]
第三条
引揚援護庁に長官官房及び左の二局を置く。
援護局
復員局
(長官官房)
第四条
長官官房においては、引揚援護庁の所管行政に関し、左の事務を掌る。
一 機密に関する事務を行うこと
二 所部の職員の任免、分限、懲戒、服務その他人事並びに教養及び訓練に関する事務を行うこと
三 長官及び次長の官印及び庁印を管守すること
四 公文書類の接受、発送、編集及び保存をすること
五 経費及び收入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関する事務を行うこと
六 国有財産及び物品に関する事務を行うこと
七 職員の衛生、医療その他職員の福利厚生に関する事務を行うこと
八 行政を考査すること
九 行政の総合調整に関する事務を行うこと
十 こう報[2]に関する事務を行うこと
十一 調査及び統計に関する事務を行うこと
十二 前各号に掲げるものの外、他局の所掌に属しない事務を行うこと
(援護局)
第五条
援護局においては、左の事務を掌る。
一 内地以外の地域から内地に引き揚げた者に対する応急援護及び検疫に関する事務を行うこと
二 内地から内地以外の地域に引き揚げる者に対する応急援護及び検疫に関する事務を行うこと
三 引揚者の引揚先における更生補導に関する事務を行うこと
四 引揚援護に必要な施設及び物資に関する事務を行うこと
五 引揚者の医療に関する事務を行うこと
(復員局)
第六条
復員局においては、左の事務を掌る。
一 旧軍人軍属の復員手続に関する事務を行うこと
二 旧軍人軍属中の状況不明者の調査及び死亡者の処理に関する事務を行うこと
三 未復員者給与法(昭和二十二年法律第百八十二号)に基く給与の実施に関する事務を行うこと
四 連合国軍の要求に基く諸調査事務を行うこと
五 旧陸海軍の残務整理に関する事務を行うこと
(官房及び各局の内部組織)
第七条
第三条に掲げる長官官房及び二局の内部組織は、引揚援護庁長官がこれを定める。
第三章 地方支分部局
(設置)
第八条
引揚援護庁に左の地方支分部局を置く。
地方引揚援護局
復員連絡局及び同支部
地方復員残務処理部
(地方引揚援護局)
第九条
地方引揚援護局は、第二条の事務を分掌する。
(復員連絡局及び同支部)
第十条
復員連絡局及び同支部は、旧陸軍の復員及びこれに関連する事務を分掌する。
(地方復員残務処理部)
第十一条
地方復員残務処理部は、旧海軍の復員及びこれに関連する事務を分掌する。
(地方支分部局の名称、位置、管轄区域等)
第十二条
第八条に掲げる地方支分部局の名称、位置、管轄区域、内部組織その他必要な事項は、引揚援護庁長官がこれを定める。
第四章 職員
(職員の種類及び定員)
第十三条
引揚援護庁に左の職員を置く。
次長一人       一級
局長
地方引揚援護局長   一級
厚生事務官又は厚生技官
専任九人       一級
専任五百五十四人   二級
専任千二百二十九人  三級
2 前項の職員の外、地方引揚援護局の応急援護及び検疫に関する事務に従事させるため、厚生大臣は、関係各庁の官吏のうちから、厚生事務官又は厚生技官を命ずることができる。
(長官)
第十四条
長官は、厚生大臣の指揮監督を受け、庁務を統括し、職員の服務について、これを統督し、三級官吏以下の進退を専行する。
(次長)
第十五条
次長は、長官を助け、長官に事故があるときは、その職務を代理する。
(局長)
第十六条
局長は、一級の厚生事務官のうちから、厚生大臣がこれを命ずる。
2 局長は、上官の命を受け、局務を掌理する。
(地方引揚援護局長)
第十七条
地方引揚援護局長は、当該地方引揚援護局の所在する道府県の知事をもつてこれに充てる。
2 地方引揚援護局長は、長官の命を受け、地方引揚援護局の事務を掌理する。
(参与)
第十八条
引揚援護庁に参与二十人以内を置き、庁務に参与させる。
2 参与は、厚生大臣の申出により関係各庁の一級の官吏及び学識経驗がある者のうちから、内閣総理大臣がこれを命ずる。
3 参与の任期は、一年とする。但し、特別の事由がある場合においては、任期中にこれを解任することを妨げない。
4 参与は、その職務に関して知り得た秘密を守らなければならない。
附 則
1 この政令は、昭和二十三年五月三十一日から、これを施行し、厚生省の設置に関する法律が制定施行される日に、その効力を失う。
2 引揚援護院官制(昭和二十一年勅令第百三十号)、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く復員庁の部局に対する措置に関する政令(昭和二十二年政令第二百十五号)及び昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く第二復員局及び地方復員局に対する措置に関する政令(昭和二十二年政令第三百二十五号)は、これを廃止する。但し、法律(法律に基く命令を含む。)に別段の定がある場合を除く外、従前の機関及びその職員は、この政令に基く相当の機関及びその職員となり、同一性をもつて存続するものとする。
厚 生 大 臣 竹田 儀一
内閣総理大臣 芦田  均

正誤訂正等 編集

  1. 昭和23年6月18日付け官報本紙第6426号にて「(内部機関)」から「(内部部局)」へ正誤訂正
  2. 「こ」「う」の右側(縦書き)には傍点(ヽ)がそれぞれ付されている。

改廃経過 編集

  • 行政機関職員定員法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律(昭和24年法律第133号): (以下昭和24年6月1日施行)
    • 第13条の見出しを(職員)に改め、同条第1項を次のように改める。
    引揚援護庁に長官の外、次長一人その他所要の職員を置く。
    • 第14条から第16条までを次のように改める。
    第十四条 削除
    (次長)
    第十五条 次長は、長官を助け、庁務を整理する。
    第十六条 削除
  • 厚生省設置法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律(昭和24年法律第154号): 附則第1項を次のように改める(昭和24年6月1日施行)。
    この政令は、昭和二十三年五月三十一日から施行する。
  • ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第120号): 第6条中第4号を削り、第5号を第4号とする。この政令は、日本国との平和条約の最初の効力発生の日以後も、法律としての効力を有するものとする(以上昭和27年4月28日施行)。
  • 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和27年法律第127号): (以下昭和27年4月30日施行、同月1日遡及適用)
    • 第2条中第2号を第3号とし、第1号の次に次の一号を加える。
    二 戦傷病者、戦没者遺族等の援護に関する事務を行うこと
    • 第5条第5号の次に次の二号を加える。
    六 戦傷病者、戦没者遺族等の援護に関する調査企画の事務(厚生省の本省の所掌に属するものを除く。)を行うこと
    七 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)に基く援護の実施に関する事務(厚生省の本省の所掌に属するものを除く。)を行うこと
    • 第6条中第3号の次に次の一号を加える。
    三の二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の実施に必要な旧軍人軍属の調査を行うこと
    • 第2章中第7条の次に次の一条を加える。
    (附属機関)
    第七条の二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の定めるところにより、議決し、及び厚生大臣に対して意見を述べさせるため、引揚援護庁の附属機関として援護審議会を置く。
    2 援護審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員については、政令で定める。
    • 第11条中「これに関連する事務」の下に「並びに旧海軍に関する第六条第三号の二の事務」を加える。
  • 厚生省設置法の一部を改正する法律(昭和27年法律第273号): 廃止。廃止の際引揚援護庁に勤務する職員は、別に辞令が発せられない限り、厚生省の本省の相当の職員となるものとする(以上昭和29年4月1日施行。この廃止時期の変遷については次節「改正法令の改正に関する備考」参照)。
  • 未帰還者留守家族等援護法(昭和28年法律第161号): (以下昭和28年8月1日施行)
    • 第2条第2号を次のように改める。
    二 戦傷病者、戦没者遺族等の援護及び未帰還者留守家族等の援護に関する事務を行うこと
    • 第5条に次の二号を加える。
    八 未帰還者留守家族等の援護に関する調査企画の事務を行うこと
    九 未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)に基く援護の実施に関する事務を行うこと
    • 第6条中第3号を削り、第3号の2を第3号とする、

改正法令の改正に関する備考 編集

このポツダム政令を廃止する法律である厚生省設置法の一部を改正する法律(昭和27年法律第273号)では、当該廃止自体は附則第2項で規定され、その施行期日を附則第1項ただし書で「昭和二十八年四月一日」と規定していたが、同部分は期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律(昭和28年法律第24号)第1条第2項第2号により「昭和二十八年六月一日」に改正され、さらに厚生省設置法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(昭和28年法律第36号)第1条により「昭和二十九年四月一日」に改正されたため、最終的な引揚援護庁設置令の廃止期日は昭和29年4月1日となった。

関連項目 編集

 

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。