朕學徒勤勞令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽
昭和十九年八月二十二日
内閣総理大臣 小磯 國昭
軍需大臣 藤原銀次郎
内務大臣 大達 茂雄
文部大臣 二宮 治重
厚生大臣 廣瀬 久忠


勅令第五百十八號

學徒勤勞令

第一條 國家總動員法第五條ノ規定ニ基ク學徒(國民學校初等科及之ニ準ズベキモノノ兒童竝ニ靑年學校ノ生徒ヲ除ク)ノ勤勞協力及之ニ關連スル敎職員ノ勤勞協力(以下學徒勤勞ト總稱ス)ニ關スル命令竝ニ同法第六條ノ規定ニ基ク學徒勤勞ヲ爲ス者ノ使用又ハ從業條件ニ關スル命令ニシテ學徒勤勞ヲ受クル者ニ對スルモノニ付テハ當分ノ內本令ノ定ムル所ニ依ル

第ニ條 學徒勤勞ハ敎職員及學徒ヲ以テスル隊組織(以下學校報國隊ト稱ス)ニ依ルモノトス但シ命令ヲ以テ定ムル特別ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ學校報國隊ニ依ラザルコトヲ得

第三條 學徒勤勞ニ當リテハ勤勞卽敎育タラシムル樣力ムルモノトス

第四條 學徒勤勞ハ國、地方公共團體又ハ厚生大臣若ハ地方長官(東京都ニ在リテハ警視總監)ノ指定スル者ノ行フ命令ヲ以テ定ムル總動員業務ニ付之ヲ爲サシムルモノトス

第五條 引續キ學徒勤勞ヲ爲サシムル期閒ハ一年以內トス

第六條 學校報國隊ニ依ル學徒勤勞ニ付其ノ出動ヲ求メントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ文部大臣又ハ地方長官ニ之ヲ請求又ハ申請スベシ學校ノ校地、校舍、設備等ヲ利用シテ爲ス學校報國隊ニ依ル學徒勤勞ニ付亦同ジ

第七條 前條ノ規定ニ依ル請求又ハ申請ハ厚生大臣又ハ地方長官(東京都ニ在リテハ警視總監)ガ割當テタル人員ノ範圍內ニ於テ之ヲ爲スモノトス但シ命令ヲ以テ定ムル特別ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ

第八條 文部大臣又ハ地方長官第六條ノ規定ニ依ル請求又ハ申請アリタルトキハ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外學校長ニ對シ學徒勤勞ヲ受クベキ者、作業ノ種類、學徒勤勞ヲ爲スベキ場所及期閒竝ニ所要人員數其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ學校報國隊ノ出動ニ關シ必要ナル措置ヲ命ズルモノトス

第九條 前條ノ措置ヲ命ゼラレタル學校長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ學校報國隊ニ依ル學徒勤勞ヲ爲スベキ者ヲ選定シ其ノ選定アリタル旨ヲ本人ニ通知シ學徒勤勞ニ關シ必要ナル事項ヲ指示スベシ

第十條 命令ヲ以テ定ムル特別ノ場合ニ於テハ第六條ノ規定ニ依ル請求又ハ申請ハ之ヲ當該學校長ニ爲スモノトス

 前項ノ場合ニ於テ學校長ハ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外直ニ前條ニ規定スル措置ヲ爲スモノトス

第十一條 前二條ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタル者ハ同條ノ規定ニ依ル指示ニ從ヒ學校報國隊ニ依ル學徒勤勞ヲ爲スベシ

第十二條 文部大臣又ハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事情アル場合ニ於テハ學校報國隊ニ依ル學徒勤勞ノ全部又ハ一部ノ停止ニ關シ必要ナル措置ヲ爲スコトヲ得

第十三條 隊長タル學校長又ハ敎職員ハ當該學校報國隊ノ隊員ノ學徒勤勞ニ關シ其ノ隊員ヲ指揮監督ス

第十四條 文部大臣又ハ地方長官ハ學徒勤勞ヲ受クル工場、事業場等ノ職員ニ對シ學徒勤勞ノ指導ニ關スル事務ヲ囑託スルコトヲ得

第十五條 學徒勤勞ニ要スル經費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外學徒勤勞ヲ受クル者之ヲ負擔スルモノトス

第十六條 厚生大臣(軍需省所管企業ニ於ケル勤勞管理及給與ニ關スル事項ニ付テハ軍需大臣)及文部大臣又ハ地方長官(東京都ニ在リテハ警視總監ヲ含ム)必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第六條ノ規定ニ基キ學徒勤勞ヲ受クル事業主ニ對シ學徒勤勞ヲ爲ス者ノ使用又ハ從業條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

 學徒勤勞ヲ爲ス者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於ケル本人又ハ其ノ遣族ノ扶助ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ學徒勤勞ヲ爲サシメザルモノトス但シ學徒勤勞ヲ爲ス者ニシテ第三號ニ該當スルニ至リタルモノハ此ノ限ニ在ラズ

一 陸海軍軍人ニシテ現役中ノモノ(未ダ入營セザル者ヲ除ク)及召集中ノモノ(召集中ノ身分取扱ヲ受クル者ヲ含ム)
二 徵用中ノ者
三 陸軍大臣若ハ海軍大臣ノ所管ニ屬スル官衙(部隊及學校ヲ含ム)又ハ厚生大臣ノ指定スル工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ軍事上必要ナル總動員業務ニ從事スル者
四 法令ニ依リ拘禁中ノ者

第十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ志願ニ依ル場合ヲ除クノ外學徒勤勞ヲ爲サシメザルモノトス

一 厚生大臣ノ指定スル總動員業務ニ從事スル者
二 其ノ他厚生大臣ノ指定スル者

第十九條 文部大臣又ハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ學徒勤勞ニ關シ學校長又ハ學徒勤勞ヲ爲ス者若ハ學徒勤勞ヲ受クル事業主ヲ監督ス

第二十條 第六條乃至第十二條ノ規定ハ學校報國隊ニ依ラズシテ爲ス學徒勤勞ニ之ヲ準用ス

第二十一條 第十六條及第十九條ノ規定ハ事業主タル國及都道府縣ニ之ヲ適用セズ

第二十二條 本令ニ於テ學徒ト稱スルハ文部大臣ノ所轄ニ屬スル學校ノ學徒ヲ謂ヒ學校ト稱スルハ第十七條第三號ノ場合ヲ除クノ外文部大臣ノ所轄ニ屬スル學校ノ長ヲ謂フ

第二十三條 前條ノ規定ハ朝鮮及臺灣ニハ之ヲ適用セズ

 第六條、第八條、第十二條及第十四條ノ中文部大臣トアルハ朝鮮ニ在ル學校ノ學徒ニ關シテハ朝鮮總督、臺灣ニ在ル學校ニ關シテハ臺灣總督トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在ル學校ノ學徒ニ關シテハ道知事、臺灣ニ在ル學校ノ學徒ニ關シテハ州知事又ハ廳長トス

 前項ノ場合ヲ除クノ外本令中厚生大臣トアリ又ハ文部大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長トス

 本令中都道府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳トス

第二十四條 學徒勤勞ニハ國民勤勞報國協力令ハ之ヲ適用セズ

第二十五條 本令ニ規定スルモノノ外學徒勤勞ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

 本令施行ノ際現ニ國民勤勞報國協力令ニ依リテ爲ス學校在學者ノ國民勤勞報國隊ニ依ル協力ハ之ヲ本令ニ依ル學徒勤勞ト看做ス

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。