-248-

だい五十七くゎ 悔悛くゎいしゅん秘蹟ひっせき

悔悛くゎいしゅん

とは悔改くいあらためるとおもみつことす(一)唯悔改たゞくいあらためることあるひは(二)悔悛徳即くゎいしゅんとくすなはつみ悔改くひあらためることつね思込おもひこんでしきりこれつぐのひ、つみ機会きくわい謙遜苦行等けんそんくぎょうとうあまんずるにこゝろ

-249-

かたむけるとくす、或は(三)悔悛の秘蹟をことばである。

345●悔悛くゎいしゅん秘蹟ひっせきとはなにでありますか

悔悛くゎいしゅん秘蹟ひっせきとは司祭しさい天主てんしゅ代理者だいりしゃとして洗禮後せんれいごつみゆる秘蹟ひせきであります。

司祭しさい

とは品級ひんきふ秘蹟ひせきさづかって使徒等しとたちあと聖職者せいしょくしゃ

天主てんしゅ代理者だいりしゃとして

とは天主てんしゅほかつみゆるものなきはまうすまでもないけれども、天主てんしゅたまはぬからゆる代理者だいりしゃ地上ちぜうかれひとつみゆるせば天主てんしゅゆるたまふとのかたじけなき御約束おんやくそくがある。此御言葉このおことばよっ天主てんしゅ其代理者そのだいりしゃたる司祭しさいもちひてひとつみゆるたまふのである。しか司祭しさいひとつみゆる權利けんりはあってもおのれつみみづかゆること出来できない、ゆるされるためには自分じぶん悔悛くわいしゅん秘跡ひせきけねばならぬ。

洗禮後せんれいごつみ

とは洗禮せんれいけてからをかしたつみとの意味いみ洗禮せんれいまへつみ洗禮せんれいもっゆるされ悔悛くわいしゅん秘跡ひっせきかゝわらぬわけである。

ゆる

へばつねゆるされるとあるひなぐさめてひ、あるひ

[下段]

宣告せんこくするばかりでない、司祭しさい天主てんしゅ代理者だいりしゃとしてつみ本当ほんたうゆるすのである。

秘跡ひっせきである。

秘跡ひっせきえうする三要件即えうけんすなは罪人側つみびとがはではつみめるとのしるしがあり、なほイエズス、キリスト御定おんさだめによるもので、つみゆるしなる聖寵せいてうほどこすをもっ秘跡ひっせきたるに相違さうゐない。

ちゅう悔悛くゎいしゅん秘跡ひっせき洗禮せんれいつぎもっと必要ひつえうなるものである。大罪たいざいをかしたうへでは救靈たすかりみちがないから悔悛くわいしゅん秘蹟ひっせき救靈たすかりだい二の要策えうさくである。

346◯司祭しさいつみゆる權力けんりょくあたへたのはたれでありますか

イエズス、キリストであります。すなはち「汝等誰なんじらたれつみゆるすとも其罪釋(釈)そのつみゆるされん、たれつみとゞめるとも其罪留そのつみとゞめられん」と(ヨ ハ ネ二十。二三)のたまうて、使徒及しとおよ其相続者そのさうぞくしゃ此權力このけんりょくあたたまふたのであります。 イエズス癱瘋者ちうぶしゃむかひ「なんぢ罪赦つみゆるさる」とおっしゃったとき敵等てきらつぶやいて、冒瀆ぼうとくことばものよ、かみほかつみゆるものがあるかとったが、道理もっともである。司祭しさい自分じぶんちからつみ

-250-

ゆるすとったら、冒瀆ぼうとくである。しか司祭しさい悔悛くわいしゅん秘蹟ひっせきよりひとつみゆるしあたふるのはまったイエズス、キリストあきらかな御言おんことばによって權力けんりょくさづけられてるからである。イエズスかね弟子等でしたちむかひ「すべ汝等なんぢら地上ちぜうにてつなところてんにてもつながるべし、又凡またすべ汝等なんぢら地上ちぜうにて釋(釈)ところてんにても釋(釈)かるべし」と(マ テ オ十八。十八)の御約束おやくそくがあったうへに、ヨハネ聖福音書せいふくいんしょ二十せう十九せつによってれば、御復活ごふくくわつ当日たうじつイエズス弟子等でしたちあらはれて「ちゝわれつかはたまひしごとわれ汝等なんぢらつかはす」とおっしゃって息吹掛いきふきかたまふたがそれ特別とくべつなにかをあたへるとのしるしであったさうしておっしゃるには

聖霊せいれいけよ汝等誰なんぢらたれつみ釋(釈)ゆるすとも其罪釋(釈)そのつみゆるされん、たれつみとゞめるとも其罪留そのつみとゞめられん」

と。

此言このことばもっイエズスが十二使徒及しとおよ其相続者そのさうぞくしゃ聖霊せいれい御力おんちからによってひとつみゆるすのけんあたたまふたと公教會こうきょうくわいではかたしんじてる。すなはひとつみゆるせば其罪赦そのつみゆるされようとのたしか御約束おんやくそくであるがしかまたたれつみとゞめるにも其罪そのつみとゞめられん」と

[下段]

あれば、とゞめるはゆるすの反対はんたいゆえ、地上ちぜうおい汝等なんぢらゆるさぬつみならばてんおいてもゆるされないとの意味いみあきらかであって、司祭しさいとゞめられたときべつゆるされるみちのないことこれられる。

ちゅう新教徒しんきょうとごと唯罪人たゞつみびとなぐさめばかりでなく、イエズス、キリスト御父おんちゝよりつかはされた其使命即そのしめいすなはひとつみより救出すくひだことをはりまでつゞかせる思召おぼしめしであれば、有名無実いうめいむじつでなく実際じっさいゆるされることうたがふべからざることである。

347●悔悛かいしゅん秘跡ひせきもっつみゆるされるためいくつのことりますか

▲五のことります。だい祈禱いのり糺明きうめいだい痛悔つうくわいだい告白こくはくだいつみゆるしだいつぐのひであります。

それ告白こくはくさへすればつみゆるされるとおもっては間違まちがひである。此処ここならべたいつゝことそろはなければつみゆるされぬ。

348●告白こくはくするまへなにいのらねばなりませぬか

糺明きうめい痛悔つうくわい告白こくはくし、つみゆるされること

-251-

祈らねばなりませぬ。

告白こくはくするにさきだって、なにより必要ひつえうなのは祈禱いのりである。しか祈禱いのりとはきまった文句もんく口先くちさきとなへるばかりでなく、罪人つみびと天主てんしゅよりてられてしまはずであれば、おのつみ後悔こうくわいしてちゝ足下あしもと平伏ひれふして、そむきたるつみゆるしねが放蕩息子ほうたうむすこごとく、天主てんしゅ御前みまへ平伏ひれふしてこゝろからいのらねばならぬ。なにいのるべきかとふに

だい一、

糺明きうめいすること

掃除さうぢしたいへにはごみさゝうにへても、雨戸あまどあなからでも太陽たいやうひかりせば、其中そのうちおそろしいほど沢山たくさんごみんでるではないか、我心わがこゝろ其通そのとほり、つみがなささうにおもっても聖寵せいてうてらされるならば、おそろしいほどのつみのあることわかってくる

これ糺明きうめい出来できため天主てんしゅ御光おんひかりてらされることいのらねばならぬ譯(訳)わけである。

だい二、

痛悔つうかい

することたゞ後悔こうくわいではつみゆるされず、又本当またほんとう痛悔つうくわい中々注文通なかゝゝちゅうもんどほりかぬ、こといままでをかれたつみは、

[下段]

うしてにはかしんにくきらひ、かならこれけるとの決心けっしん出來できようか。これこそこゝろてらつよめるのは恩寵おんてうによることで、こゝろ入替いれかへるめぐみ熱心ねっしんいのらねばならぬわけである。

だい三、く、

告白こくはく

することすなは恐怖おそれ面目めんぼくためつみかくしたがるこゝろおさへ、これ此世このよける吾最後わがさいご告白こくはくおもってつみるがまゝに白狀はくぜうするちからいのことである。

だい四、

つみゆるされることいのらねばならぬ。

われ罪故つみゆえ天主てんしゅよりてられるものならば、今度こんど改心かいしん恩寵おんてう助力じょりきによって吾爲わがなすべきこと爲遂なしとげ、まったゆるしいたゞかれるやうにいのことであるが、是皆恩寵これみなおんてうによらねば出来できことゆえ、祈禱いのりだい一に譯(訳)わけである。

349●つみ糺明きうめいとはなにでありますか

つみ糺明きうめいとはつみをかしたかとくはしく考出かんがへだことであります

糺明きうめい

とは、ひとをかした大罪だいざいのこらず告白こくはくすべき義務ぎむがあるから、糺明きうめいしてこれさがさねばならぬ、ゆゑ天主てんしゅひかりてらされる樣祈やういのってから眞面目まじめかんがへめぐらして、つみをか

-252-

したかと考出かんがへだすやうにすべきである。

350●なにいて糺明きうめいするはずでありますか

天主てんしゅの十かい教会けうくわいの六つの律令おきてなゝつ罪源ざいげん各々おのゝゝ職務しょくむいて、おもひのぞみことばおこなひおこたりによってをかしたつみ探出さがしださねばなりませぬ。

なるだけ

天主てんしゅの十かい教会けうくわい律令おきて

を一々繰返ゝゝくりかへして、なにめいずるかなにきんずるかと思出おもひだし、それそむいたことはないかとかんがへる。

なゝつ罪源ざいげん

こと自分じぶん格別かくべつ傾向けいかうってるものを調しらべ、これいてつみをかしたことはないかと糺明きうめいする。

各々おのゝゝ職務しょくむ

たとへばおやたるものは子女こどもき、子女こどもおやたいし、主人しゅじん目下めした取扱とりあつかひき、下男下女げなんげじょ主人等しゅじんらたいする務方つとめかたき、商人あきんど賣買うりかひ職人しょくにん仕事しごと教師けうし教授けうじゅついて、つみをかしたことはないかとかんがへる。それため自分じぶんったところ交際つきあったひといたした仕事等しごとなど思出おもひだし、げたわざばかりでなく、おこたったことったりいたりしたはなしおもひのぞみもっをか

[下段]

したつみ思出おもひだ自分じぶん今死いましひんしてものだとかんがへもっ眞実しんじつ糺明きうめいする。

ちゅう糺明きうめい尚前々なほまへゝゝ告白こくはくいてはじめるがい、すなはまへたびは、糺明きうめい粗末そまつにしたため大罪たいざい云落いひをとしたことはないか、本当ほんたう痛悔つうくわいしてったか、いよいこゝろあらためるかた決心けっしんがあったか、つみかくしたことはないかなどいて、糺明きうめいもしそんことがあったなら、總告白そうこくはくもっ為直しなほさなければならぬ。

立派りっぱ糺明きうめい告白こくはく前一寸まへちょっとばかりでは出來できかねるが、毎晩まいばんしてけば、告白こくはくときにはなんなく出來できる。熱心ねっしんひとつとめて毎日幾度まいにちいくどおのれかへり糺明きうめいして始終改しじゅうあらためるやうに心掛こゝろがけるものであるが。これとくすゝむに余程助よほどたすけとなる方法はうはふである。

351●つみ度數かず糺明きうめいせねばなりませぬか

しかり、せめ大罪だいざい度數かず糺明きうめいせねばなりませぬ。

つみ度數かず

とはおなつみ幾度犯いくたびをかしたか、あるひ一旦罪いったんつみ斷念だんねんしたあと又々またゝゝ行掛やりかゝったのは何遍なんべんであったかとことである。

大罪だいざいことゞゝ告白こくはくせねばならぬから、それだけ糺明きうめい必要ひつえうであ

[253]

る。たとへば日曜にちえうのミサ聖祭せいさいおこたった事何遍ことなんべん毎年まいねん告白こくはく聖体拝領せいたいはいれうおこたったこと大斎小斎だいさいせうさいやぶったこと偸盗ぬすみ邪淫じゃいんわざおもひのぞみ何遍なんべんあったかと糺明きうめいするやうにせねばならぬ。