公教要理説明/03-10

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第（だい）五十六課（くゎ）　聖體（体）拜領（せいたいはいれう）

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335●聖體（体）（せいたい）は必（かなら）ず拜領（はいれう）する筈（はず）でありますか

▲然（しか）り、イエズス、キリスト曰（のたまは）く「若（も）し人（ひと）の子（こ）の肉（にく）を食（しょく）せず其血（そのち）を飮（の）まずば汝等（なんぢら）の中（うち）に生命（いのち）なし」と（ヨ ハ ネ六。五四）

拜領（はいれう）

とは、恭（うやゝゝ）しく戴（いたゞ）くと云（い）ふ事（こと）である。

人（ひと）の子（こ）

とは（第（だい）六十二の問（とひ））の註（ちう）に云（い）はれた通（とほ）り、之（これ）はイエズス、キリストは人間（にんげん）でありながら人間（にんげん）を超越（てうえつ）した事（こと）を仰（おっ）しゃる時（とき）に御自分（ごじぶん）を斥（さ）して用（もち）ひ給（たま）ふた御言（おんことば）である。今御自分（いまごじぶん）の御血肉（ごけつにく）を飮食（いんしょく）させる御話（おはなし）ゆゑ、斯（か）く御自分（ごじぶん）を名（なづ）け給（たま）ふたのである。

汝等（なんぢら）の中（うち）に生命（いのち）なし

とは、天主（てんしゅ）の子（こ）たる生命（いのち）を斥（さ）す言（ことば）で、若（も）し聖體（体）（せいたい）を戴（いたゞ）かなければ長（なが）く惡魔（あくま）や邪欲（じゃよく）に劣（ま）けず、天主（てんしゅ）の子（こ）らしく生活（せいくゎつ）する事出來（ことでき）ぬとの意味（いみ）である。

（註（ちゅう））大昔（おほむかし）から天主（てんしゅ）に物（もの）を供（そな）へた後（あと）で、天主（てんしゅ）との一致（ち）を表（あら）わす徴（しるし）として其供物（そのそなへもの）を引下（ひきさ）げて飮食（いんしょく）するのは通例（つうれい）であったが、聖體（体）拜領（せいたいはいれう）も其（それ）である。聖體（体）（せいたい）の秘跡（ひっせき）はイエズス、キリストと一致（ち）する為（ため）に定（さだ）められたのであるから、之（これ）を望（のぞ）まぬならば長（なが）く天主（てんしゅ）の良（よ）い子（こ）たる状態（ぜうたい）に止（とゞ）まり得（え）ない。

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然（さ）て二百十七の問（とひ）の註（ちう）に云（い）はれた如（ごと）く、聖體（体）拜領（せいたいはいれう）は年（ねん）に一度（ど）では不（ふ）十分（ぶん）である、霊魂（れいこん）の養（やしなひ）であるから常食（ぜうしょく）の如（ごと）く度々戴（たびゝゞいたゞ）くのが本当（ほんたう）である。其（それ）で普通（ふつう）の信者（しんじゃ）でも、或（あるひ）はミサ聖祭（せいさい）に与（あづか）る度事（たびごと）にミサ聖祭（せいさい）の効果（かうくゎ）を潤沢（じゅんたく）に蒙（かうむ）る為（ため）、或（あるひ）は心（こゝろ）を入替（いれか）へ熱心（ねっしん）に務（つと）め得（え）る為（ため）に一般信者（ぱんしんじゃ）が毎日（まいにち）でも聖体拝領（せいたいはいれう）する事（こと）は聖会（せいくゎい）が深（ふか）く望（のぞ）み勧（すゝ）めて居（を）る所（ところ）である。

336●聖體（体）拜領（せいたいはいれう）の効果（かうくゎ）は何（なに）でありますか

▲適当（てきたう）の準備（じゅんび）を以（もっ）て聖体（せいたい）を拜領（はいれう）する者（もの）は、イエズス、キリストと一致（ち）し、聖寵（せいてう）を増（ま）し、邪欲（じゃよく）に勝（か）つ力（ちから）を得（え）、終（をはり）なき生命（いのち）に至（いた）る恩恵（めぐみ）を蒙（かうむ）るのであります。

適当（てきたう）の準備（じゅんび）を以（もっ）て聖体（せいたい）を拝領（はいれう）する者（もの）

とは最（もっと）も注意（ちうい）すべき所（ところ）である即（すなは）ち聖体拝領（せいたいはいれう）さへすれば足（た）ると云（い）ふ訳（わけ）ではない。準備（じゅんび）なくてはイエズス、キリストに対（たい）して無礼（ぶれい）侮辱（ぶじょく）に成（な）る計（ばか）りか拝領（はいれう）する人（ひと）にも効果少（かうくゎすくな）く、尚之（なほこれ）が癖（くせ）に成（な）れば却（かへっ）て損（そん）に成（な）る。適当（てきたう）の準備（じゅんび）こそ大事（だいじ）である。準備（じゅんび）をよくすればするほど、第（だい）一、

イエズス、キリストと夫（それ）

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丈（だ）け親密（しんみつ）に一致（ち）する、

即（すなは）ちイエズス、キリストが食物（しょくもつ）のやうに我々（われゝゝ）に浸込（しみこ）み給（たま）うて全（まった）く一（ひとつ）ものに成（な）る。然（しか）し我（われゝゝ）がイエズス、キリストを同化（どうくゎ）するのではなくて、我々（われゝゝ）がイエズス、キリストに同化（どうくゎ）せしめられるのである。

第（だい）二、聖體（体）（せいたい）は聖寵（せいてう）を与（あた）へるのではない。之（これ）を授（さづか）るには既（すで）に聖寵（せいてう）を有（も）たねばならぬ、唯聖寵（たゞせいてう）を増（ま）す、即（すなは）ち益（ますま）す心（こゝろ）を清（きよ）め、尚々天主（なほゝゝてんしゅ）の御心（みこゝろ）に叶（かな）はせるのである。

第（だい）三、

邪欲（じゃよく）に勝（か）つ力（ちから）を得（え）る。

食物（しょくもつ）が敵（てき）と戦（たゝか）ふ力（ちから）を与（あた）へる如（ごと）く、聖體（体）（せいたい）拝領（はいれう）は何（なに）より惡魔（あくま）や邪欲（じゃよく）に打勝（うちか）つ力（ちから）を与（あた）へる故（ゆゑ）、邪欲（じゃよく）に勝（か）ちたいと思（おも）ふなら適当（てきたう）の準備（じゅんび）を以（もっ）て屢（しばゝゝ）聖體（体）（せいたい）拝領（はいれう）を爲（す）るより功能（こうのう）のある道（みち）はない。

第（だい）四、

終（をはり）なき生命（いのち）に至（いた）る恩惠（めぐみ）を蒙（かうむ）る。

イエズス、キリストの御言（おことば）に

「我肉（わがにく）を食（しょく）し我血（わがち）を飮（の）む人（ひと）は永遠（えいゑん）の生命（いのち）を有（も）つ、

而（しか）して我終（われをはり）の日（ひ）に之（これ）を復活（ふくゎつ）させよう」と（ヨハネ六。五五）、叉（また）「此（この）パンを食（しょく）する人（ひと）は永遠（えいゑん）に活（い）くべし」（ヨハネ六。五九）とあるから明（あきらか）である。

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337●聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）するに最（もっと）も準備（じゅんび）は何（なに）でありますか

▲聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）するに最（もっと）も必要（ひつえう）な準備（じゅんび）は大罪（だいざい）の気掛（きがかり）のない事（こと）と善意（ぜんい）を有（も）つ事（こと）とであります。

聖體（体）（せいたい）拜領（はいれう）の準備（じゅんび）は二種（ふたとほり）ある、即（すなは）ち何（なに）よりも大切（たいせつ）にして是非（ぜひ）なければならぬ準備（じゅんび）と、あってほしい、あるほどよい準備（じゅんび）とである、

何（なに）よりも大切（たいせつ）にして必要（ひつえう）な準備（じゅんび）は

二点（てん）に極（きま）る、

大罪（だいざい）の気掛（きがゝり）のない事（こと）と善意（ぜんい）を有（も）つ事（こと）である

が、次（つぎ）に之（これ）を説明（せつめい）する。

338●大罪（だいざい）をもって聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）すれば如何（いかゞ）

▲大罪（だいざい）をもって聖體（体）（せいたい）を拝領（はいれう）すれば拜領（はいれう）すれば瀆聖（とくせい）の甚（はなはだ）しい罪（つみ）になる。

大罪（だいざい）をもって

とは未（ま）だ赦（ゆる）されて居（をら）ぬ大罪（だいざい）の気掛（きがゝり）がありながらとの意味（いみ）である。

瀆聖（とくせい）の罪（つみ）になる

とは百四十三の問（とひ）の通（とほ）りである。

其罪（そのつみ）

甚（はなはだ）しい

と云（い）はれるは聖（せい）パウロのコリント前書（ぜんしょ）十一章（せう）二十七節（せつ）の言（ことば）による、曰（いは）く「誰（たれ）にもあれ相應（ふさは）しからずして此（この）

[下段]

パンを食（しょく）し或（あるひ）は主（しゅ）の杯（さかづき）を飮（の）む人（ひと）は主（しゅ）の御體（体）（おんからだ）と御血（おんち）とを犯（をか）す」と。云（い）はゞ謀反（むほん）の弟子（でし）ユダが接吻（せっぷん）を以（もっ）てイエズスを、敵（てき）の手（て）に渡（わた）したと同樣（どうやう）に成（な）る。

（註（ちゅう））小罪（せうざい）を以（もっ）て聖体（せいたい）拜領（はいれう）すれば瀆聖（とくせい）には成（な）らぬけれども之（これ）を痛悔（つうくゎい）もせず改（あらた）める決心（けっしん）もなき時（とき）は、拜領（はいれう）の効果（かうくゎ）は自然（しぜん）と少（すくな）い。殊（こと）に屢（しばゝゞ）聖體（体）（せいたい）拜領（はいれう）する人々（ひとゞゝ）が小罪（せうざい）をも憎（にく）み嫌（きら）うて、之（これ）を避（さ）けるやうに努（つと）めるのは、聖體（体）（せいたい）拜領（はいれう）の効果（かうくゎ）を潤沢（じゅんたく）ならしむるに余程（よほど）大事（だいじ）である。

339●大罪（だいざい）あらば聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）する前（まへ）に如何（どう）せねばなりませぬか

▲聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）する前（まへ）に、是非（ぜひ）悔悛（くゎいしゅん）の秘跡（ひっせき）を以（もっ）て其大罪（そのだいざい）の赦（ゆるし）を受（う）けねばなりませぬ。

假令他（たとひた）の秘跡（ひっせき）を受（う）けるには完全（くゎんぜん）なる痛悔（つうくゎい）を以（もっ）て大罪（だいざい）の赦（ゆるし）を得（え）るやうにすれば足（た）らぬ事（こと）なきも、聖體（体）（せいたい）拜領（はいれう）には足（た）らず。是聖（これせい）パウロの殊更（ことさら）の御諭（おさとし）による。コリント前書（ぜんしょ）十一章（せう）二十八、九に曰（いは）く「然（さ）れば人（ひと）は己（おのれ）を試（ため）し、然（しか）して後彼（のちかの）パンを食（しょく）し杯（さかづき）を飮（の）むべし、其（そ）は相應（ふさは）しからずして飮食（いんしょく）する人（ひと）は主（しゅ）の御體（体）（おんからだ）を弁（辨）（わきま）へず己（おの）が宣告（せんこく）を飮食（いんしょく）するものなればなり」と。己（おの）が宣告（せんこく）を飮食（いんしょく）

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するとは、イエズス、キリストを蔑視（ぶべつ）し、其罪（そのつみ）の爲（ため）に自（みずか）ら地獄（ぢごく）に処（しょ）せられるべき宣告（せんこく）を呑込（のみこ）むが如（ごと）きものである。との意味（いみ）である茲（こゝ）に己（おのれ）を試（ため）すとは、己（おのれ）に省（かへり）みて糺明（きうめい）すべき事（こと）、叉聖体（またせいたい）拝領（はいれう）を妨（さまた）げる大罪（だいざい）あらば、相当（さうたう）に心（こゝろ）を清（きよ）むべき事（こと）であるが、教會法（けうくゎいはう）の第（だい）八百五十六条（でう）に斯（か）うある、「如何（いか）なる人（ひと）でも大罪（だいざい）の気掛（きがゝり）ある時（とき）は、如何（いか）ほど痛悔（つうくゎい）して居（を）ると思（おも）っても、先（ま）づ前（さき）に秘蹟的（ひっせきてき）告白（こくはく）を為（し）た上（うへ）でなければ、聖体拜領（せいたいはいれう）に赴（おもむ）いてはならぬ、必要（ひつえう）に迫（せま）って告白（こくはく）を聽（き）く司祭（しさい）なき時（とき）に限（かぎ）って、完全痛悔（くゎんぜんつうくゎい）を起（おこ）すべきものである」と。

340◯善意（ぜんい）を有（も）って聖體（体）（せいたい）を拜領（はいれう）するとは何（なに）でありますか

△聖体拜領（せいたいはいれう）は世間体（せけんてい）や人目（ひとめ）からの訳（わけ）でなく、眞實（ほんとう）にイエズス、キリストと一致（ち）して、一層能（そうよ）く務（つと）めたいとの心（こゝろ）から拜領（はいれう）する事（こと）である。詳（くは）しく言（い）へば

世間体（せけんてい）の訳（わけ）でなく、

例（たと）へば善人（ぜんにん）と見（み）られる爲譽（ためほ）められる爲（ため）、人（ひと）の気（き）に入（い）る爲（ため）、或（あるひ）は誰（たれ）でも拜領（はいれう）するから面目（めんぼく）の爲等（ためなど）の故（ゆゑ）でなく。

イエズス、キリストと同心（どうしん）に成（な）る為（ため）、

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即（すなは）ちイエズス、キリストの嫌（きら）ひ給（たま）ふ事（こと）を我（われ）も嫌（きら）ひ、好（この）み給（たま）ふ事（こと）を我（われ）も好（この）みたいと思（おも）ひ其実行（そのじっかう）に実力（どりょく）する事（こと）である。之（これ）イエズス、キリストは我等（われら）の身（み）に染込（しみこ）み給（たま）ふて、全（まった）く我等（われら）を御自分（ごじぶん）と同樣（どうやう）な心（こゝろ）を有（も）ち、御自分（ごじぶん）と同樣（どうやう）に專（もっぱ）ら行（おこな）はせたいとの思召（おぼしめし）だからである。