公教要理説明/00-03

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6●如何（どん）な宗教（しうけう）でも人（ひと）の道（みち）を全（まった）うし、真（まこと）の幸福（さいはひ）を得（え）るか

▲否真（いなまこと）の宗教（しうけう）に限（かぎ）ります。

世間（せけん）には種々（しゅゞゝ）様々（さまゞゝ）の宗教（しうけう）があって、日本（にっぽん）ばかりでも其主（そのおも）なるもの仏教（ぶっけう）十四宗（しう）の諸派（しょは）、宗派（しうは）神道（しんたう）十三派（ぱ）、叉（また）キリスト教（けう）には公教（こうけう）、正教（せいけう）、新教（しんけう）の種々（いろゝゝ）の分派（ぶんぱ）がある。之（これ）を以（もっ）て或（あるひ）は宗教（しうけう）は皆空言（みなそらこと）と云（い）ふ人（ひと）もあれば、或（あるひ）は皆同（みなおな）じ事（こと）と云（い）ふ人（ひと）もあるが、両方（れうはう）の批評（ひへう）は極端（きょくたん）で誤謬（まちがひ）である。併（しか）し宗教（しうけう）の多（おほ）いのは、先（ま）づ宗教（しうけう）が要（い）る、宗教（しうけう）なしには居（を）られぬとの証拠（せうこ）である。

叉其宗教（またそのしうけう）は幾（いく）ら違（ちが）っても、違（ちが）はぬ所（ところ）が二（ふたつ）ある。

第（だい）一違（ちが）はぬのは、名（なづ）け方（かた）こそ異（こと）なれ、誰（たれ）か人間（にんげん）の上（うへ）に在（あ）って、世（よ）の運命（うんめい）を計（はから）ひ、善悪（ぜんあく）を賞罸（せうばつ）するもの、即（すなは）ち人間最上（にんげんさいぜう）の主（しゅ）、最上（さいぜう）の父（ちゝ）とも云（い）ふべきものがあるから人（ひと）は必（かなら）ず之（これ）を有（あり）がたがって、尊（たっと）び、拝（をが）み、之（これ）に祈（いの）り且従（かつしたが）はねばならぬものと何（ど）の宗教（しうけう）も教（をし）へる。併（しか）し拝（をが）むべきもの、最上（さいぜう）の親（おや）、最上（さいぜう）の君（きみ）のある事（こと）を知（し）るよりは、其（それ）が何方（どなた）であるかと、確（たしか）に知（し）る事（こと）は一層大切（そうだいじ）ではないか、我々（われゝゝ）に取（と）って、親（おや）がある、

[下段]

と云（い）ふ事（こと）よりは、其親（そのおや）は誰（たれ）と知（し）る事（こと）が肝要（かんえう）ではないか、親（おや）でなければ、孝行（かうゝゝ）を為（し）ても孝行（かうゝゝ）にならず、君（きみ）でなければ、忠義（ちうぎ）を為（し）ても忠義（ちうぎ）にならぬのである。

本当（ほんたう）の親君（おやぎみ）のあるのに、外（ほか）の者（もの）を親君（おやぎみ）とすれば、本当（ほんたう）の親君（おやぎみ）に対（たい）しては不孝不忠（ふかうふちう）の罪（つみ）に成（な）るに相違（さうゐ）ない。其処（そこ）が宗教（しうけう）各（おのゝゝ）違（ちが）ふ所（ところ）であって、執（どれ）が真（まこと）であるかと云（い）ふ事（こと）を調（しら）べるのは、何（なに）より必要（ひつえう）である。

第（だい）二何（ど）の宗教（しうけう）にも違（ちが）はぬのは、人（ひと）が死（し）んでも魂（たましひ）は死（し）なぬ、極楽（ごくらく）とか云（い）って、行（ゆ）く道（みち）が違（ちが）へば行先（ゆくさき）が違（ちが）ふと云（い）ふ事（こと）である。其（それ）なればこそ神（かみ）とか仏（ほとけ）とか名（なづ）けて、幾千年前（いくせんねんまへ）に死（し）んだ人（ひと）の魂（たましひ）を今（いま）でも尊（たっと）び、之（これ）に祈（いの）るのである。之（これ）は取（と）りも直（なほ）さず人性（じんせい）の声（こゑ）で、見（み）えぬ乍（なが）らも魂（たましひ）は決（けっ）して無（な）く成（な）らぬと頻（しきり）に教（をし）へるのである。

其通（そのとほ）りに名（なづ）けやうが違（ちが）っても、道理（だうり）の変（かは）らぬのは、愈（いよい）よ実際然（じっさいさ）うであるとの証拠（せうこ）に成（な）る。宗教嫌（しうけうきらひ）の人（ひと）は、人間（にんげん）は死（し）んで了（しま）ふとは云（い）ふけれども、人（ひと）が死（し）ねば宗教（しうけう）を以（もっ）て其死骸（そのしがい）を送（おく）り、位牌（ゐはい）を以（もっ）て其魂（そのたましひ）を祭（まつ）り、叉仏法（またぶっぱふ）や神道（しんたう）で仏壇（ぶつだん）、神（かみ）

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棚（だな）を儲（まう）け、叉（また）一般（ぱん）に招魂祭（せうこんさい）と云（い）って、国（くに）の為（ため）に死（し）んだ人々（ひとゞゝ）の魂（たましひ）を招（まね）いて祭（まつ）るではないか。斯（か）く死（し）んだ人（ひと）を尊（たっと）ぶのは死（し）んでから後世（のちのよ）があることの証拠（せうこ）に成（な）る事疑（ことうたがひ）なし。

偖（さ）て死（し）んでから行先（ゆくさき）のある事（こと）を知（し）るよりは、そこへ行（ゆ）く道（みち）のある事（こと）を大切（だいじ）ではないか。其道（そのみち）の話（はなし）は叉宗教（またしうけう）によって違（ちが）ふから、皆真（みなまこと）とは云（い）はれぬ。何処（どこ）にか行（ゆ）かうとするに、道（みち）は右方（みぎて）である、否（い）や左手（ひだりて）である、向（むか）ふである、否（い）や後（うしろ）であると云（い）はれゝば、皆真（みなまこと）とは思（おも）はれまい、執（どちら）が真（まこと）であるかと確（たしか）めるのは必要（ひつえう）であらう。

其通（そのとほ）り宗教（しうけう）は皆真（みなまこと）とは云（い）はれぬ。真（まこと）の天主（てんしゅ）を教（をし）へ、救霊（たすかり）の真（まこと）の道（みち）を教（をし）へるのは、唯一（たゞひと）つ真（まこと）の宗教（しうけう）であって、之（これ）を守（まも）るに限（かぎ）る筈（はず）。是（これ）ばかりで人（ひと）の道（みち）を全（まった）うし、真（まこと）の幸福（さいはひ）を得（え）られるからである。

7●真（まこと）の宗教（しうけう）は多数（たくさん）あるか

▲否（いな）、真（まこと）の神即（かみすなは）ち天主一（てんしゅひとつ）、真理一（しんりひとつ）、人（ひと）の道一（みちひとつ）なるが故（ゆゑ）に、真（まこと）の宗教（しうけう）も唯一（たゞひとつ）の外（ほか）ありませぬ。

[下段]

真（まこと）の宗教（しうけう）の

種々（いろゝゝ）ない訳（わけ）は、

第（だい）一、我々（われゝゝ）の頻（しきり）に云（い）ふ通（とほ）り、

真（まこと）の神即（かみすなは）ち天主（てんしゅ）は一（ひとつ）

しかないからである。其（それ）に神道（しんたう）では、神（かみ）は八百万（やほよろづ）とて、八百万（はっぴゃくまん）あると云（い）ふ。其種々（そのいろゝゝ）の神（かみ）の中（うち）に人間（にんげん）、鳥（とり）、獣（けもの）、木（き）、草（くさ）などがあるから、真（まこと）の神（かみ）とは云（い）はれぬ、真（まこと）の神即（かみすなは）ち、天主（てんしゅ）たるには神性（しんせい）、即（すなは）ち限（かぎり）なき徳（とく）あるを要（えう）するからである。叉日（またひ）の神（かみ）、月（つき）の神（かみ）、日本（にっぽん）の神（かみ）、西洋（せいやう）の神（かみ）など、別々（べつゞゝ）にあるとも云（い）はれぬ、日本（にっぽん）も西洋（せいやう）も同（おな）じ一（ひとつ）の太陽（たいやう）に照（てら）され、一（ひとつ）の世界（せかい）であるからである。

叉人間（またにんげん）は「四海兄弟（しかいけいてい）」とて皆兄弟（みなけうだい）と云（い）はれゝば、同（おな）じ独一（ひとつ）の親（おや）がある筈（はず）。之（これ）こそ真（まこと）の神（かみ）であって、神道（しんだう）と云（い）ふ種々（いろゝゝ）のものは、決（けっ）して真（まこと）の神（かみ）でない。真（まこと）の神（かみ）は唯一（たゞひとつ）の外（ほか）あられぬ全世界（ぜんせかい）を照（てら）らすに一（ひとつ）の太陽（たいやう）、家（いへ）には一人（ひとり）の主人（しゅじん）、国（くに）には一人（ひとり）の皇帝（くゎうてい）あるが如（ごと）し。

第（だい）二、叉（また）

真理（しんり）は一（ひとつ）。

真理（しんり）とは真（まこと）と云（い）ふ事（こと）であるが、同（おな）じ一（ひとつ）の事（こと）に就（つ）いて真（まこと）は種々（さまゞゝ）あるのではない。例（たと）へば二（ふたつ）に二（ふたつ）

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を加（くは）へれば幾許（いくら）に成（な）るかと云（い）ふに、三（みつ）に成（な）る、四（よつ）に成（な）る、五（いつゝ）に成（な）ると、人（ひと）が幾許何百通（いくらなんびゃくとほり）に云（い）っても、四（よつ）に成（な）ると云（い）ふのだけは真（まこと）で、外（ほか）の種々（いろゝゝ）の話（はなし）は皆間違（みなまちがひ）である。

第（だい）三、叉（また）

人（ひと）の道（みち）は一（ひとつ）。

前（まへ）に云（い）った通（とほ）り、人（ひと）は皆同（みなおな）じ人間（にんげん）であって、出処（でどころ）は真（まこと）の神（かみ）、行先（ゆくさき）は真（まこと）の神（かみ）なれば、道（みち）も亦真（またまこと）の神（かみ）による外（ほか）はない。試（こゝろみ）に思（おも）へ、一般（いっぱん）に親（おや）に孝行（かうゝゝ）せねばならず、人（ひと）を殺（ころ）してはならず、物（もの）を盗（ぬす）んではならぬのに何処（どこ）にか孝行（かうゝゝ）は要（い）らぬ、殺（ころ）しても可（よ）い、盗（ぬす）んでも可（よ）いと云（い）ふ処（ところ）があらうか。天主（かみ）を尊（たふと）ばねばならぬのに、構（かま）はぬでも可（よ）いと云（い）ふ処（ところ）があらうか、決（けっ）して然（さ）うでない。人間皆（にんげんみな）出処一（でどころひとつ）、行先一（ゆくさきひとつ）なれば、道（みち）も一（ひとつ）の外（ほか）ないのである。

其（それ）で

真（まこと）の宗教（しうけう）も唯一（たゞひとつ）の外（ほか）ありませぬ。

キリスト教（けう）では神（かみ）は唯一（たゞひとつ）、神道（しんたう）では否（い）や八百万（はっぴゃくまん）あると云（い）ふ仏法（ぶっはふ）では神（かみ）はない、仏（ほとけ）あるが、仏（ほとけ）は一（ひとつ）と云（い）ふ人（ひと）もあれば三千仏（さんぜんぶつ）と云（い）ふ人（ひと）もある。兎角皆真（とかくみなまこと）の宗教（しうけう）とは云（い）はれぬ。仏法（ぶっはふ）が真（まこと）ならば神道（しんたう）もキリスト教（けう）も間違（まちがひ）であらう。神道（しんたう）が真（まこと）ならば、仏法（ぶっはふ）もキリスト教（けう）も間違（まちがひ）であらう。併（しか）し我々（われゝゝ）の云（い）ふ

[下段]

通（とほ）り、真（まこと）の神（かみ）は一（ひとつ）、真理（しんり）は一（ひとつ）、人（ひと）の道（みち）も一（ひとつ）なれば、仏法（ぶっはふ）も神道（しんたう）も間違（まちがひ）であって、我々（われゝゝ）の宗教（しうけう）は真（まこと）であるから、外（ほか）に真（まこと）の宗教（しうけう）はない筈（はず）である。

8●真（まこと）の宗教（しうけう）は孰（どれ）であるか

▲真（まこと）の宗教（しうけう）は天主公教（てんしゅこうけう）であります。我々（われゝゝ）の宗教（しうけう）の名（な）は

公教（こうけう）

であると忘（わす）れるな。

支那（しな）あたりでは、之（これ）を天主教（てんしゅけう）と名（なづ）けるが、然（さ）うも云（い）はれるけれども、西洋（せいやう）などに通（とほ）らぬ詞（ことば）である。世界一般（せかいいっぱん）には、之（これ）を「カトリック」教（けう）と名（なづ）けるが、万国万代（ばんこくばんだい）の教（をしへ）と云（い）ふ意味（いみ）であって、之（これ）を「公教（こうけう）」と訳（やく）したのである。然（さ）り乍（なが）ら支那（しな）で然（さ）う云（い）ふから、日本（にほん）では縁（えん）を現（あらは）す為（ため）に譲合（ゆづりあ）って、「天主公教（てんしゅこうけう）」と名（なづ）けてある。兎角新教（とかくしんけう）から、旧教（きうけう）と云（い）はれる事（こと）あれど、旧（舊）（きう）は殆（ほとん）ど廃物（すたりもの）の意味（いみ）なれば、イエズスに至（いた）る迄（まで）の教（をしへ）は旧（舊）教（きうけう）と云（い）はるれど、イエズスの教（をしへ）に就（つ）いては決（けっ）して云（い）はれぬ。本当（ほんたう）の名（な）は公教（こうけう）と云（い）ふ外（ほか）にはない。

9●公教（こうけう）とは何（なに）であるか

▲公教（こうけう）は、天主即（てんしゅすなは）ち真（まこと）の神（かみ）が、世（よ）の始（はじめ）から顕（あらは）して、万民（ばんみん）の

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救霊（たすかり）の為（ため）に、授（さづ）け給（たま）ふた教（をしへ）であります。

公教（こうけう）は

人（ひと）の造（つく）った教（をしへ）でない、固（もと）から有（あ）るのに人（ひと）が知（し）らぬのを天主（てんしゅ）が顕（あらは）し、即（すなは）ち知（し）らせ給（たま）ふたのである。人（ひと）の造（つく）った教（をしへ）は人為教（じんゐけう）と名（なづ）け、天主（てんしゅ）が教（をしへ）を顕（あらは）し給（たま）ふたのは「天啓（てんけい）」即（すなは）ち天主（てんしゅ）の示（しめし）と云（い）ひ、其教（そのをしへ）を「天啓教（てんけいけう）」、即（すなは）ち天主（てんしゅ）の知（し）らせ給（たま）ふた教（をしへ）と云（い）ふ。

然（さ）りながら、天主（てんしゅ）は何（なに）も角（か）も一遍（いっぺん）に教（をし）へ給（たま）ふたのではなく、漸々（だんゝゝ）に教（をし）へ、恰（てう）ど親（おや）が子等（こども）を漸々（だんゝゝ）に教（をし）へて、其子（そのこ）が次第々々（しだいゝゝゝ）に、小学校（せうがくかう）、中学校（ちうがくかう）、大学校（だいがくかう）で教（おそ）はるが如（ごと）くである。其（それ）で

天主（てんしゅ）が世（よ）の始（はじめ）から

アダム、エワに教（をし）へ、後（のち）にはノエ、アバラハム、モイゼと云（い）ふ人等（ひとたち）に教（をし）へ、叉数多（またあまた）の予言者（よげんしゃ）に教（をし）へ給（たま）ふたのである。而（さう）して愈（いよい）よ天主（てんしゅ）の教（をしへ）であると云（い）ふ事（こと）は、数多（あまた）の奇跡及（きせきおよ）び預言（よげん）を以（もっ）て証（せう）せられた。

即（すなは）ち奇跡（きせき）は人（ひと）の力（ちから）で出来（でき）ぬ不思議（ふしぎ）な事（こと）であって、天主（てんしゅ）の全能（ぜんのう）の印証（いんせう）と成（な）り、預言（よげん）は人（ひと）の知恵（ちゑ）で到底知（たうていし）られぬ事（こと）を前以（まへもっ）て告（つ）げる事（こと）であって、天主（てんしゅ）の全知（ぜんち）の印証（いんせう）となる。奇跡（きせき）と預言（よげん）とは天啓教（てんけいけう）の著（いちじる）しき証拠（せうこ）である。

[下段]

イエズス、キリストに至（いた）る迄（まで）の教（をしへ）は、旧約（きうやく）と名（なづ）けるが、旧約（きうやく）は天主（てんしゅ）が人間（にんげん）に対（たい）して、一番先（いちばんさき）になされた御約束（おんやくそく）である。其時（そのとき）の教（をしへ）は旧（舊）教（きうけう）と云（い）はれる。イエズス、キリストが其教（そのをしへ）を全備（ぜんび）して、新（あらた）に授（さづ）け給（たま）ふたによって、之（これ）をイエズス教或（けうあるひ）はキリスト教（けう）と名（なづ）けるが、旧約（きうやく）の代（かはり）に新（あたら）しい御約束（おんやくそく）をなされたから、新約（しんやく）と云（い）ふ。新約（しんやく）は旧約（きうやく）の如（ごと）くに更（かは）る事（こと）なく、世（よ）の終（をはり）まで続（つづ）く筈（はず）である。旧（舊）約（きうやく）と新約（しんやく）と違（ちが）はぬのは、恰（てう）ど同（おな）じものが、先（ま）づ蕾（つぼみ）と成（な）り、花（はな）と成（な）り、果（み）と成（な）るが如（ごと）し。此教（このをしへ）は天主（てんしゅ）から、万国（ばんこく）

万民（ばんみん）の救霊（たすかり）の為（ため）に

顕（あらは）されたものであるによって、之（これ）を公教（こうけう）と名（なづ）ける。救霊（たすかり）とは、死（し）んでから先（さき）、天国即（てんごくすなは）ち極楽（ごくらく）の終（をはり）なき福楽（さいはひ）を受（う）ける事（こと）であるが、救霊（たすかり）の道（みち）は公教（こうけう）の外（ほか）にない。

其（それ）でも人（ひと）あって公教（こうけう）を少（すこ）しも知（し）らず、詮方（せんかた）なしに他（た）の教（をしへ）を真（まこと）と思（おも）って、真心（まごゝろ）を以（もっ）て守（まも）った時（とき）は、罪（つみ）さへなければ、天主（てんしゅ）の御憐（おんあはれみ）によって、救霊（たすかり）を得（え）る事（こと）あるとも、救霊（たすかり）の道（みち）が幾個（いくつ）もあると云（い）ふ訳（わけ）ではない、真心（まごゝろ）があったからである。即（すなは）ち真（まこと）の道（みち）を知（し）らず、詮方（せんかた）なしに他（た）の教（をしへ）を真（まこと）の道（みち）と思（おも）って

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真心（まごゝろ）を以（もっ）て守（まも）ったからである。救霊（たすかり）の道（みち）として、真（まこと）の神（かみ）から定（さだ）められたのは、公教（こうけう）の外（ほか）にない。其（それ）で救霊（たすかり）を得（え）る為（ため）には、是非之（ぜひこれ）に入（い）らねばならぬ。

10●公教（こうけう）の教（をし）へる所（ところ）は、幾部（いくぶ）に分（わか）つか

△凡（およ）そ三部（ぶ）に分（わか）つ、第（だい）一、信（しん）ずべき事（こと）、第（だい）二、守（まも）るべき事（こと）、第（だい）三、聖寵（せいちょう）を受（う）ける方法（みち）であります。

前（まへ）に云（い）った通（とほ）り、道（みち）を先（ま）づ知（し）らねばならず、而（さう）して歩（あゆ）まねばならぬものなれば、公教（こうけう）も其通（そのとほ）りで、第（だい）一部（ぶ）は道（みち）を知（し）らせて、

信（しん）ずべき事（こと）

を教（をし）へる。第（だい）二部（ぶ）は道（みち）を歩（あゆ）む事（こと）、

即（すなは）ち

守（まも）るべき事（こと）

を教（をし）へる。第（だい）三部（ぶ）は

聖寵（せいちょう）を受（う）ける方法（みち）

即（すなは）ち天主（てんしゅ）の御心（みこゝろ）に叶（かな）ふ道（みち）、罪（つみ）の赦（ゆるし）を受（う）け、恩寵（おんてう）を戴（いたゞ）く道（みち）を教（をし）へるのである。其（その）三部（ぶ）に従（したが）って此説明（このせつめい）を上中下（ぜうちうげ）の三部（ぶ）に分（わか）つ。