入国管理庁設置令

公布時

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入国管理庁設置令をここに公布する。

御名御璽


昭和二十六年十月四日
内閣総理大臣 吉田  茂

政令第三百二十号

入国管理庁設置令
内閣は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基き、この政令を制定する。
(目的)

第一条 この政令は、入国管理庁の所掌事務の範囲及び権眼を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。

(設置)

第二条 外務省の外局として、入国管理庁を設置する。

(任務)

第三条 入国管理庁は、出入国管理令(昭和二十六年政令第三百十九号)及び外国人登録令(昭和二十二年勅令第二百七号)による出入国の管理、外国人登録令による外国人の登録並びに出入国管理令、外国人登録令及び北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令(昭和二十五年政令第二百二十七号。以下「臨時措置令」という。)による退去強制に関する事務を行うことを任務とする。

2 入国管理庁は、前項に掲げる任務を一体的に遂行する責任を負う唯一の行政機関とする。

(権限)

第四条 入国管理庁は、この政令に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(法律に基く命令を含む。)に従つて、なされなければならない。

一 予算の範囲内で、所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 収入金を徴収し、所掌事務の遂行に必要な支払をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所等の施設を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な事務用品等を調達すること。
五 不用財産を処分すること。
六 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
七 職員の厚生及び保健のため必要な施設を設置し、及び管理すること。
八 職員に貸与する宿舎を設置し、及び管理すること。
九 所掌事務に関する記録を保管し、並びに調査資料及び統計を収集し、頒布し、又は刊行すること。
十 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
十一 入国管理庁の公印を制定すること。
十二 出入国管理令に基き、本邦に上陸しようとする外国人に対して審査を行い、及び上陸を許可すること。
十三 出入国管理令に基き、外国人に対して仮上陸、寄港地上陸、観光のための通過上陸、転船上陸、緊急上陸及び水難による上陸を許可すること。
十四 出入国管理令に基き、本邦から出国するすべての人の旅券に出国の証印をし、及び本邦に帰国する日本人の旅券に帰国の証印をすること。
十五 出入国管理令(外国人登録令第十六条第二項において準用する場合を含む。)に基き、外国人の入国、上陸又は在留に関する違反事件を調査し、及び違反事件に係る外国人について審査を行うこと。
十六 出入国管理令(外国人登録令第十六条第二項において準用する場合を含む。)に基き、前号の外国人を收容し、及びその退去を強制すること。
十七 臨時措置令に基き、北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の退去を強制すること。
十八 出入国管理令(外国人登録令第十六条第二項において準用する場合を含む。)に基き、収容されている者を仮放免すること。
十九 出入国管理令に基き、外国人について、在留資格を変更し、在留期間を更新し、及び永住を許可すること。
二十 本邦に在留する外国人の一般処遇に関する事務を行うこと。
二十一 前各号に掲げるものの外、法令に基き入国管理庁に属させられた権限
(内部部局)

第五条 入国管理庁に、長官官房及び左の二部を置く。

実施部
審判調査部
(長官官房の事務)

第六条 長官官房においては、左に掲げる事務をつかさどる。

一 機密に関すること。
二 長官の官印及び庁印を管守すること。
三 公文書類の接受、発送、編集及び保存に関すること。
四 ほん訳[1]その他の渉外事務に関すること。
五 こう報[2]に関すること。
六 職員の職階、任免、分限、懲戒、服務、給与その他の人事並びに教養及び訓練に関すること。
七 職員の衛生、医療及び福利厚生に関すること。
八 経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関すること。
九 行政財産及び物品を管理すること。
十 有線又は無線による通信を接受し、発送し、及び保存すること。
十一 入国管理庁の使用する通信施設の整備及び維持管理に関すること。
十二 入国管理庁の使用する輸送機関の整備及び維持管理に関すること。
十三 事務所、収容所等の建造物の建設及び維持管理に関すること。
十四 入国審査官及び入国警備官の制服、装備等の補給に関すること。
(実施部の事務)

第七条 実施部においては、左に掲げる事務をつかさどる。

一 出入国の管理に関する政策の企画立案及びその実施の確保に関すること。
二 出入国の管理に関する関係行政機関の事務の総合調整に関すること。
三 外国人の上陸のための審査、上陸の許可及び再入国の許可並びにすべての人の出国に関すること。
四 出入国管理令、外国人登録令及び臨時措置令による退去強制に関すること。
五 本邦に在留する外国人の一般処遇に関すること。
六 水難から救護された外国人の保護及び送還に関すること。
七 外国人登録令による外国人の登録に関すること。
(審判調査部の事務)

第八条 審判調査部においては、左に掲げる事務をつかさどる。

一 所掌事務に係る行政事件訴訟に関する関係機関との連絡に関すること。
二 出入国の管理に関する法令の実施に伴つて生ずる刑事上及び民事上の法律問題に関する関係機関との連絡に関すること。
三 出入国の管理に関する法令の集録及び編さん[3]に関すること。
四 出入国の管理に関する法令の解釈に関すること。
五 外国人の上陸及び退去強制についての口頭審理及び異議の申立に関すること。
六 外国人の在留資格の変更、在留期間の更新及び永住許可に関すること。
七 保証金の納付、返還及び没取に関すること。
八 左の記録を分類し、及び保管すること。
(一) 外国人の上陸及び再入国に関する記録
(二) すべての人の出国に関する記録
(三) 外国人の在留資格及び在留期間に関する記録
(四) 外国人の永住許可に関する記録
(五) 外国人の登録に関する記録
(六) 外国人の上陸の拒否及び退去強制に関する記録
(七) 北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の退去強制に関する記録
九 出入国の管理に関する内外事情の調査に関すること。
十 出入国の管理に関する統計の作成に関すること。
(入国審査官)

第九条 入国管理庁に、入国審査官を置く。

2 入国審査官は、左の事務を行う。

一 上陸及び退去強制についての審査及び口頭審理を行うこと。
二 収容令書又は退去強制令書を発付すること。
三 収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者を仮放免すること。
(入国警備官)

第十条 入国管理庁に、入国警備官を置く。

2 入国警備官は、左の事務を行う。

一 入国、上陸又は在留に関する違反事件を調査すること。
二 収容令書及び退去強制令書を執行するため、その執行を受ける者を収容し、護送し、及び送還すること。
三 入国者收容所、收容場その他の施設を警備すること。

3 入国警備官は、国家公務員法(昭和二十二年法律第二百十号)及び一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)の規定の適用については、警察職員とする。

4 入国警備官の階級は、国家公務員の職階制に関する法律(昭和二十五年法律第百八十号)に基く職務の分類が定められるまでは、政令で定める。

(武器の携帯及び使用)

第十一条 入国審査官及び入国警備官は、その職務を行うに当り、武器を携帯することができる。

2 入国審査官及び入国警備官は、その職務の執行に関し、その事態に応じ、合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、左の各号の一に該当する場合を除く外、人に危害を加えてはならない。

一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条に該当するとき。
二 収容令書又は退去強制令書の執行を受ける者がその者に対する入国審査官若しくは入国警備官の職務の執行に対して抵抗しようとする場合又は第三者がその者を逃がそうとして入国審査官若しくは入国警備官に抵抗する場合において、これを防止するために他に手段がないと入国審査官又は入国警備官において信ずるに足りる相当の理由があるとき。
(制服及び証票)

第十二条 入国審査官及び入国警備官がその職務を執行する場合においては、出入国管理令又は外国人登録令中に特別の規定がある場合の外、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帯しなければならない。

2 前項の証票は、職務の執行を受ける者の要求があるときは、その者にこれを呈示しなければならない。

3 第一項の制服及び証票の様式は、外務省令で定める。

(附属機関)

第十三条 入国管理庁に、左の附属機関を置く。

入国管理庁研修所
入国者収容所
(入国管理庁研修所)

第十四条 入国管理庁研修所(以下「研修所」という。)は、入国管理庁の職員及び出入国の管理に従事する関係行政機関の職員に対して、必要な研修及び訓練を行う機関とする。

2 研修所は、東京都に置く。

3 研修所に、所長その他必要な職員を置く。

4 前各項に規定するものを除く外、研修所に関し必要な事項は、長官が定める。

(入国者収容所)

第十五条 入国者収容所(以下「収容所」という。)は、退去強制令書の執行を受ける者を送還するため一時これらの者を収容する機関とする。

2 収容所の名称及び位置は、左の通りとする。

名称 位置
大村入国者収容所 長崎県大村市
横浜入国者収容所 神奈川県横浜市

3 収容所に、所長その他必要な職員を置く。

4 前各項に規定するものを除く外、収容所の内部組織、警備その他収容所に関し必要な事項は、長官が定める。

(出張所)

第十六条 入国管理庁に、その所掌事務を分掌させるため、地方支分部局として、出張所を置く。

2 出張所の名称、位置及び管轄区域は、左の通りとする。

名称 位置 管轄区域
仙台出張所 仙台市 北海道 宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
東京出張所 東京都 東京都 新潟県 埼玉県 群馬県 千葉県 茨城県 栃木県 山梨県 長野県
横浜出張所 横浜市 神奈川県 静岡県
名古屋出張所 名古屋市 愛知県 三重県 岐阜県 福井県 石川県 富山県
神戸出張所 神戸市 大阪府 京都府 兵庫県 奈良県 滋賀県 和歌山県
高松出張所 高松市 香川県 愛媛県 徳島県 高知県
松江出張所 松江市 鳥取県 島根県
下関出張所 下関市 広島県 岡山県 山口県 福岡県のうち門司市
福岡出張所 福岡市 福岡県(門司市を除く。) 佐賀県 熊本県 大分県 長崎県のうち対馬及び壱岐
大村出張所 大村市 長崎県(対馬及び壱岐を除く。)
鹿児島出張所 鹿児島市 宮崎県 鹿児島県

3 出張所には、主要令書の執行を受ける者を収容する収容場を設ける。

4 前各項に規定するものを除く外、出張所の内部組織、収容場の警備その他出張所に関し必要な事項は、長官が定める。

(被収容者の処遇)

第十七条 第十五条に規定する収容所又は前条第三項に規定する収容場(以下「収容所等」という。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)には、収容所等の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。

2 被収容者に対する給養は、適正でなければならず、収容所等の設備は、衛生的でなければならない。

3 収容所長又は出張所長(以下「収容所長等」という。)は、収容所等の保安上又は衛生上必要があると認めるときは、被収容者の身体、所持品又は衣類を検査し、及びその所持品又は衣類を領置することができる。

4 収容所長等は、収容所等の保安上必要があると認めるときは、被収容者の発受する通信を検閲し、及びその発受を禁止し、又は制眼することができる。

5 前各項に規定するものを除く外、被収容者の処遇に関し必要な事項は、外務省令で定める。

(関係行政機関の協力)

第十八条 入国管理庁は、国家地方警察、自治体警察、海上保安庁、税関、法務府特別審査局その他の関係行政機関に対し、所掌事務の遂行に関して、必要な協力を求めることができる。

2 前項の規定による協力を求められた関係行政機関は、本来の任務の遂行を妨げない範囲において、できるだけその求めに応じなければならない。

附 則

1 この政令は、昭和二十六年十一月一日から施行する。

2 出入国管理庁設置令(昭和二十五年政令第二百九十五号)は、廃止する。但し、従前の機関及びその職員は、この政令に基く相当の機関及び職員となり、同一性をもつて存続するものとする。

3 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。

別表第一中「出入国管理庁」を「入国管理庁」に改める。

4 行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。

第二条第一項の表中「出入国管理庁」を「入国管理庁」に改める。

5 外務省設置法(昭和二十四年法律第百三十五号)の一部を次のように改正する。

第四条第二十号を次のように改める。
二十 出入国管理令(昭和二十六年政令第三百十九号)及び外国人登録令(昭和二十二年勅令第二百七号)による出入国の管理、外国人登録令による外国人の登録並びに出入国管理令、外国人登録令及び北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令(昭和二十五年政令第二百二十七号)による退去強制に関する事務を行うこと。
第十条第四号を次のように改める。
四 在日外国人等の送出に関すること。
第二十条中「出入国管理庁」を「入国管理庁」に改める。
第二十一条中「出入国管理庁」を「入国管理庁」に、「出入国管理庁設置令(昭和二十五年政令第二百九十五号)」を「入国管理庁設置令(昭和二十六年政令第三百二十号)」に改める。

6 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

第二十条第五号及び第六号を削る。

7 関税法(明治三十二年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

第百一条ノ五を次のように改める。
第百一条ノ五 削除
外 務 大 臣 吉田  茂
大 蔵 大 臣 池田 勇人
内閣総理大臣 吉田  茂

備考

編集
  1. 「ほ」「ん」の右側(縦書き)にはそれぞれ傍点(ヽ)が付されている。
  2. 「こ」「う」の右側(縦書き)にはそれぞれ傍点(ヽ)が付されている。
  3. 「さ」「ん」の右側(縦書き)にはそれぞれ傍点(ヽ)が付されている。

改廃経過

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  • 北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令等の一部を改正する政令(昭和27年政令第8号)(ポツダム政令): 第3条第1項、第4条第17号及び第8条第8号(七)中「北緯三十度」を「北緯二十九度」に改める(昭和27年2月1日施行)。
  • ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第126号):
    第3条第1項を次のように改める。
    入国管理庁は、出入国管理令(昭和二十六年政令第三百十九号)による出入国の管理及び外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)による外国人の登録に関する事務を行うことを任務とする。
    第4条第15号、第16号及び第18号中「出入国管理令(外国人登録令第十六条第二項において準用する場合を含む。)」を「出入国管理令」に改め、同条第17号を削り、同条第18号を同条第17号とし、以下順次一号ずつ繰り上げる。第7条第4号中「、外国人登録令及び臨時措置令」を削り、同条第7号中「外国人登録令」を「外国人登録法」に改める。第8条第8号中(七)を削る。第16条第2項の表中
仙台出張所 仙台市 北海道 宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
」を
札幌出張所 札幌市 北海道
仙台出張所 仙台市 宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
」に改める。
入国管理庁設置令は、この法律施行後も法律としての効力を有するものとする(以上昭和27年4月28日施行)。
  • 公安調査庁設置法(昭和27年法律第241号): 第18条第1項中「法務府特別審査局」を「公安調査庁」に改める(昭和27年7月21日施行)。
  • 法務府設置法等の一部を改正する法律(昭和27年法律第268号): 廃止(昭和27年8月1日施行)

関連項目

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この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。