シリヤの聖エフレム教訓/第8講話

第8講話

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霊魂たましいや、おとろふるなかれ、かなしむなかれ、つみのおびただしきによりて自己じこうえ決定けってい裁判さいばんをのぶるなかれ、自己じこをみちびくなかれ、『しゅわれをそのかんばせよりいなめり』といふなかれ、ことばかみにかなはざるなり、いかにとなればかれみづかなんぢをよびてごとくくいへばなり、いはく『たみわれなになんぢになししや、なにおいなんぢつからしたるか、われにむかひてあかせよ』〔ミヘイ六の三〕。たふれしものおきるあたはざらんや、はたそむはなれしもの引返ひきかえすことあたはざらんや。霊魂たましいや、しゅのいつくしみの如何いかなるをきくか。なんぢつみせられしものごとく、君将くんしょうにわたさるるなかれ。なんぢざいのとぼしきをうれふるなかれ。改心かいしんするをづるなかれ、一歩いっぽすすみて『ちてちちかん』〔ルカ十五の十八〕といふべし。かれなんぢをうけてめじ、かへつてなんぢ改心かいしんことによろこばん、かれなんぢつ、ただアダムごとづるなかれ、かみ面前めんぜんよりかくるるなかれ。ハリストスなんぢためくぎせられたまへり、しからばあになんぢこばまんや。アアねがはくはこれあらざらん。かれわれらをしへたぐるものたれなるをり、またわれにはかれひとりのほかたすくるものなきをる、ハリストスひとこうなるをる。ゆえにそなへられしものごと怠慢たいまんおちいらざらん。ハリストスにはとうずるのようあらじ、われくるしみにつかはすはかれためところあるにあらざるなり。

さりながらなんぢくるしみのおもきをしらんとほつするか。罪人ざいにんかみかんばせよりはるるときは、ぜん世界せかいもといもその泣號なきさけびへざらん。けだししるしていへるあり、『やみ黒闇くらやみなり、くも雲霧うんむなり、喇叭らっぱ號呼さけびなり』〔ソホニヤ一の十五、十六〕。ここに主君しゅくんよりばつせられて、二年あるいは五年、あるいは十年の流罪るざい発遣はっけんせらるるひとあらんに、なんぢかれにいくばくのなみだあり、いかなるはぢと、いかなる慟哭なげきとありとおもふか。さりながらかれにはなほ期限きげんおわりをまつのなぐさめあらん。ゆえ罪人ざいにんにいかなる期限きげんさだめらるるをらんとほつするか。かれ追放ついほうを二十年あるいは五十年あるいは百年あるいは二百年とさだむるをるか、さりながらかぞとしをもさだめられざるところおいてはいかんぞときかぞふるをんや。アア、アア、期限きげんのぞみあらざるなり。けだし『罪人ざいにんおどかみいかりはふべからざるなり』。なんぢ罪人ざいにんをまつところの困苦くるしみことをきく、ゆえおのれをかくのごときの艱難かんなんいたらしむるなかれ、けだしいつおどしなんぢためふべきにあらざればなり。

おのれにおほくのつみゆうするか。かみによばはるをおそるるなかれ。すすめよ、みづからづるなかれ。苦行くぎょうのために場所ばしょちかし、てよ、物体ぶったいおのれより振落ふりおとすべし、放蕩ほうとうならふべし、かれはすべてをつひやしつくしたるも、みづからはぢずしてちちにゆけり。れどもちち最初さいしょつひやしたるとみよりも、そのまよひしことをかなしめり。かくて面目めんもくにてすすみきたりしものは面目めんもくともり、裸体はだかにてきたりしもの美服びふくをきせてうけられ、みづかおのれ雇人やといにんとしたるもの命令者めいれいしゃくらいふくされぬ。説話せつわわれらにむかふなり。なんぢ健気けなげなることがいかに成功せいこうしたるをきくか。さりながらちち善心ぜんしんをも了解りょうかいするか。さらば霊魂たましいや、なんぢみづからおそるるなかれ、もんたたくべし。なにとぼしきところあるか。もんつべし、さらばとぼしきところのものをすべてうけん、かみしょにいふがごとし、いはく『ひたすらふがゆえちてかれにあたへん』〔ルカ十一の八〕。人々ひとびとかみなんぢしりぞけざるなり、最初さいしょにつひやしたるとみためなんぢめざるなり。けだしかみるところのものにおいてとぼしきことあらざればなり、すべてのひと懇切ねんごろきゅうしたまふこと使徒しとのいふがごとし、『むることなくおしむことなくしてすべてのひとにあたふるかみねがふべし』〔イアコフ一の五〕。なんぢみなとにあらんか。なみ注目ちゅうもくせよ、大風たいふうにわかおこつてなんぢうみのふかきにうばひらざらんがためなり、そのときなんぢ慨嘆がいたんしていはんとす、『れふかきぬまおぼれてつにところなし、れふかきみづにいりてその急瀬はやせわれながす』〔聖詠六十八の三、四(詩編六十九の三、四)〕。けだし地獄ぢごくじつうみふちなり、主宰しゅさいふがごとく、義人ぎじん罪人ざいにんとのあいだおほいなるふちさだめおかるるなり〔ルカ十六の二十六〕。ゆえおのれふちばっするなかれ。放蕩ほうとうならふべし、うえせしむるさとをすてよ、ぶたおなじ困難こんなん生活せいかつむるをのがれよ、豆莢まめがらにてやしなはるるをやめよ、これだになんぢあたへられざらん。ゆえにすすみてせちねがへよ、さらばなんぢ天使てんししょくなる「マンナ」をとぼしきなくくらはん。すすみてかみさかえよ、さらばなんぢかんばせらされん。すすめよ、甘味かんみ楽園らくえんめよ。永久えいきゅうときんがために些少さしょうとしもちひよ。生活せいかつながきに思煩おもいわづらふなかれ。かれやすく、えやすし、アダムより今日こんにちいたまですべてのときかげごとくにすぎれり。りてみちくの用意よういをせよ。おのれをわづらはすことなかれ。ふゆちかし、屋下おくかにいそげよ、われらもハリストス恩寵おんちょうによりてそのしたはしりすすまん。アミン。