<< 従順 >>
真実にして虚飾なき従順を獲たる者は福なり、いかんとなればかくの如き人は『死に至る迄順へる』〔フィリプ二の八〕我等の善なる師に倣ふ者なればなり。故に従順なる者は実に福なり、いかんとなれば彼は主に倣ふ者にして、主の後嗣となるべければなり。従順なる者は衆人と愛にて相和す。従順なる者は大なる家財と大なる富とを得ん。従順なる者は衆人によろこばれ、衆人に頌揚せられ、衆人に讃美せらるるなり。従順なる者はすみやかに昇るべく、速に進歩をあらはさん。従順なる者に命ぜんに彼は抗せざるべく、命令をあたへんに彼はこれを変ぜざるべく、譴責をなさんに彼は怒らざるなり。彼はもろもろの善なる行に向つて用意を為す。短慮の為にたやすく制せられず。もし責罵をきかんも心は乱されざるべく、凌辱の為に憤激するに至らざるべし、哀みに於ては喜び、憂に於ては感謝せん。彼は彼方此方に転住せざるべく、院より院にうつらざるべし。勧戒は彼を驚かさざるべく、召されたる所にとどまりて、憂に沈まざらん。父を蔑ぜず、兄弟をそしらず、修道院にとどまりて離れざらん。身を安楽に處くを好まざるべく、位置の為に俘とならざるべく、空気を以て楽とせざるべし、聖使徒の言ふが如く召されたる所にとどまらん〔コリンフ前七の二十〕。さらば従順の結果は実に多し、故にこの徳を獲たる者は福なり。