<< 不怒 >>
たやすく怒を発し、或は激せざらん人は福なり。彼はつねに平安に居らん。彼は激し易く怒りやすきの気を己より逐出して、戦争と擾乱とより遠ざかり、神気つねに平安にして、顔色怡々たらん。直ちに怒を発せずして空言の為に動かされざる者は義と真実を行ふ者なり。彼は饒舌になやむ者を苦もなく抑へとどめて、忍耐を以て彼らを遇せん。彼は人を辱しめず、彼は無能無力を以て人を拒むことをせず、彼は諍闘をよろこばず、いかんとなれば衆人に愛をあらはせばなり。短慮ならざる者は争論を好まず、智識は常に健全にして、平和を愛さん。怒り易きの気をたやすく己れに容れざる者は聖神の住所とならん。短慮なることのなき者は聖神を大に困しめざらん。彼は温柔なる者となるべく、愛と忍耐と謙遜とを有つべし。怒らざる者はもろもろの善行にてかざられ、ハリストスに愛さるるなり。故に怒りと激し易き気をつねに己より遂ふ者は福なること実に三倍す、いかんとなれば彼は体も霊も智もつねに健全なればなり。