<<修道士の生涯の美は如何して保護せらるゝか、神に栄を帰するの順序。>>
修道士はすべての行状と動作に於て凡そ彼を見る者の為に建徳の模範とならんことを要す、光線の如く光り輝く許多の徳行の為に、真理の敵も、彼を見て『ハリスティアニン』に堅固不抜なる救の希望あるを自覚せざらんを欲すとも得ずして、八方より、彼に集ひ来ること、宛も真実なる避難所に集ひ来る如くならん為なり。之が為に教会の角は敵に向つて高めらるべく、多くの者は修道士の徳行と競争せんが為に進んで世を棄つべくして、修道士は其生涯の美の為に衆人に尊敬せられん、何となれば修道士の生涯はハリストスの教会の名誉なればなり。
ゆゑに修道士はすべての関係に於て秀美なる行状を有せんことを要す、即見ゆるものを軽んずると、厳格なる無慾と、肉体には全く心を用ひざると、高き禁食と、沈黙を守ると、官能の斎整と、視るを戒むると、此世に属する何事の為にもすべての争を絶つと、言語の簡なると、怨を棄つると、思慮に於ては誠実にして、才智の怜悧と活動と運用に於ては偽なくして正直ならんことを要するなり。彼の為に必ず知らんを要するは、現世の空しくして暫時に過ぎ去ることと、真実にして霊的なる生命の近きこと是なり。人々に知らるゝ者或は非難せらるゝ者とならざるべく、何人にも交り或は之と契を結ぶを以て己を縛らざるべし。居所は幽静なるを有すべし、常に人々を避け、弱らざる忍耐を以て祈祷と読経とを務むべし。名誉を好まざるべく、贈答の為に心を奪はれざるべし、此生命に繋がれざるべく、誘惑は勇気にして忍耐すべし、世の欲望と世事の穿鑿と記憶とより自由なるべし、常に真実なる一方に意を致して、之を熟思すべし、哀みて皺に覆はれたる面を有し、昼も夜も不断涙を流すべし、然して此のすべての外特に自己の貞潔を守り、腹を悦ばすことと大小の欠点とより免れて清潔なるものとならんこと肝要なり。視よ簡短に之を言へば修道士の徳行は世の為に全く死者の如くなると神に接近するとを証するにあるなり。
ゆゑに我等は何の時にも此等の徳行に意を致して之を得んこと肝要なり。然れどももし誰か此等を詳細に解明して、概括的簡短にあらはさゞるは何の要ありやと問ふあらば、答て言はん、是れ緊要の事なり、是れ自己の生命に注意する者が此等の徳行の或るものを其霊中に捜して此の計算せるものゝ中何に於てか乏しきを発見するあらば、之により彼は或る徳行に於る自己の欠点を認識せんが為にして、此記上するものは彼の為に見て之を想起するの益とならん為なり。然るに此処に解明したるものをすべて己れに得る時は予が未だ記さざる他の徳行をも彼に識らしむるを得ん。さらば彼は聖なる人々の為に神に栄を帰するの起原者となるべくして、此生命を去る以前に猶此処に於て霊魂の為に安息の位置を備へん、我等が神に栄を世々に帰せん。「アミン」。