Page:成吉思汗実録.pdf/189

このページはまだ校正されていません

き。


§187(07:02:06)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年) Open original book in Wikimedia


​巴歹​​バダイ​ ​乞失里黑​​キシリク​の恩賞

 ​又​​マタ​ ​成吉思 合罕​​チンギス カガン​ ​勅​​ミコト​あるには「​巴歹​​バダイ​、​乞失里黑​​キシリク​ ​二人​​フタリ​の​功​​イサヲ​の​故​​ユヱ​に、​王罕​​ワンカン​の​金​​コガネ​の​天幕​​テンマク​、​鋪陳​​フチン​したる​金​​コガネ​の​酒局​​シユキヨク​の​器︀皿​​キベイ​を、​取扱​​トリアツカ​ふ​人​​ヒト​ごめに[​與​​アタ​へん。]​汪豁只惕 客咧亦惕​​オンゴヂト ケレイト​は、(汪豁只惕 姓の客咧亦惕 人。汪豁只惕は、汪豁眞の複稱なり。卷四の溫眞は、親征錄の嫩眞、別咧津の弘豁攸惕にして、弘豁依惕は、卽ち汪豁只惕なれば、溫眞は、溫豁眞の中略 又は缺脫なるべし。)​彼等​​カレラ​の​番士​​バンシ​と​爲​​ナ​れ。​箭筒​​ヤナグヒ​を​帶​​オ​ばしめて、​喝︀盞​​アイサン​せしめて、(明譯​飲​​ノム​​酒​​サケヲ​​時​​トキ​、​又​​マタ​ ​許​​ユルシ​​他​​カレニ​ ​喝︀盞​​アイサンヲ​)​子孫​​シソン​の​子孫​​シソン​に​至​​イタ​るまで​自在​​ジザイ​に​快樂​​クワイラク​せ[しめ]ん。​多​​オホ​​斡欒​き​敵​​テキ​に​奔​​ハシ​らば​財​​タカラ​​斡勒札​を​得​​エ​​斡替阿速​ば、​得​​エ​​斡魯克撒阿兒​たるまゝに​取​​ト​れ。​野​​ノ​​斡喇阿​の​獸​​ケダモノ​を​殺︀​​コロ​​阿剌阿速​さば、​殺︀​​コロ​​阿剌黑撒阿兒​したるまゝに​取​​ト​​阿不惕​れ」と​勅​​ミコト​ありき。(

​喝︀盞​​アイサン​の​禮​​レイ​

喝︀盞は、盞を乾かすと云ふ意にて、筵會の時に樂を奏して酒を進むるを云ふ。蒙語は​斡脫克​​オトク​にて、明譯には進酒とも譯せり。輟耕錄 卷の二十一に天子​凡​​スベテ​ 宴饗スルニ、一人酒觴、立於右、一人柏板、立於左。執レル者︀、抑其聲、贊シテ​斡脫​​オトト​。執レル者︀、如其聲シテヘバ​打弼​​タビト​、則執レル者︀、節︀一板。從而王侯卿相、合ベキ者︀、合ベキ者︀。於​是​​コヽ​ 眾樂皆作、然メテ。上飮ヘテ、眾樂皆止、別シテ、以飮シム陪位之官。謂​喝︀盞​​アイサント​。蓋沿亡金舊禮、至マデ。諸︀王大臣、非レバハル、不焉。​斡脫 打弼​​オト タビハ​、彼方言ナリ。未アラルニ其義斡脫は、卽ち斡脫克にして、打弼は、「宜し」なり。板を執れる者︀「酒を進めよ」と云へば、觴を執れる者︀「宜し」と應ふるなり。酒を飮む時にこの禮を用ふることは、諸︀王 大臣にても合罕の特許を得たる者︀に非ざれば能はざりしなり。)​又​​マタ​ ​成吉思 合罕​​チンギス カガン​ ​勅​​ミコト​あるには「​巴歹​​バダイ​、​乞失里黑​​キシリク​ ​二人​​フタリ​の、[​我​​ワ​が]​命​​イノチ​の​閒​​アヒダ​に​功​​イサヲ​を​致​​イタ​せる​故​​ユヱ​に、​長生​​トコヨ​の​上帝​​アマツカミ​に​祐︀護​​イウゴ​せられて、