門後モンゴに立タちて專モツパラに正面シヤウメンを望ノゾむなり。（明譯俺的 女子ワレラノ ムスメ 到イタラ㆓他家カレノイヘニ㆒呵バ、專一門後センイチモンゴニ 向ムカヒ㆑北キタニ立タヽン㆑地チニ。卑辱なるを云ふ。）彼等カレラの親屬シンゾク、我等ワレラの處トコロに來コば、正面シヤンメンに坐スワりて門後モンゴを望ノゾむなり（明譯他的女子カレノムスメ到イタラ㆓俺家ワレラノイヘニ㆒呵バ、正面シヤウメンニ向ムカヒ㆑南坐ミナミニスワラン。尊榮なるを云ふ。）」とて、己オノレを大オホきく思オモひて、我等ワレラを見下ミクダし言イひて察兀兒 別乞チヤウル ベキを與アタへず、親シタシまざりき。その言コトバにて、成吉思 合罕チンギス カガンは、心コヽロの內ウチに王罕ワンカン、你勒合 桑昆ニルカ サングン（桑昆の全名なり。親征錄亦剌合 鮮昆イラカ セングン）二人フタリに心コヽロ 後オクれけり。（心 進まず協はざるを云ふ。）
§166(05:40:01)
白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年) 
札木合ヂヤムカ 等の協議 讒言ザンゲン
かく心コヽロ 後オクれたるを札木合ヂヤムカ 覺サトりて、猪︀ヰの年トシ（我が 建仁 三年 癸亥、金の泰和 三年、宋の嘉泰 三年、西紀 一二三〇年、成吉思汗 四十二歲の時）の春ハル、札木合ヂヤムカ、阿勒壇アルタン、忽察兒クチヤル、合兒荅乞歹カルダキダイ、額不格眞エブゲヂン、那牙勤ノヤキン、（合兒荅乞歹 以下 三名は、明譯に皆 種族の名とせり。那牙勤 氏は、篾年 土敦の子 合臣の裔なり。）雪格額台シエゲエタイ、脫斡哩勒トオリル、（親征錄脫憐トーリン、成吉思 汗の祖︀先の家奴の裔なり。卷六に見ゆ。）合赤溫 別乞ガチウン ベキ、（成吉思 汗の弟なる合赤溫と異なり。）彼等カレラ 共トモに一ヒトつの協議ケフギをなして、起タちて往ユきて、者︀者︀額兒 溫都︀兒ヂエヂエエル ウンドル（者︀者︀額兒の高地。親征錄徹徹兒 運都︀ 山チエチエル ウンド ザン、元史 折折 運都︀山。明史 韃靼の傳なる徹徹兒 山、水道 提綱 哈納哈達 山の東北なる徹徹 山に音は似たれども、いかゞあらん。）の陰カゲに別兒客 額列惕ベレケ エレト（困難︀なる沙漠。親征錄別里怯 沙陀ベリケ サダ）に你勒合 桑昆ニルカ サングンの處トコロに往ユきて、札木合ヂヤムカ 讒ザンして言イはく「帖木眞テムヂンなる我ワが安荅アンダは、乃蠻ナイマンの塔陽 罕タヤン カン（不亦嚕黑 罕の兄。親征錄太陽 可汗タヤン カガン、元史 太陽 罕）の、處トコロに傳言デンゴンあり使ツカヒあるなり。彼カレの口クチ阿蠻には父子オヤコと云イひて居ヲり、彼カレの性行セイカウ阿不里は別ベツなり。倚信イシンして居ヲるなリ、汝等ナンヂラ。先マヅ 圖ハカらずば、汝等ナンヂラに何ナニぞ從シタガはん。帖木眞テムヂン 安荅アンダの處トコロに出馬シユツバせば、我ワレは橫ヨコより入イり合アはん」と云イひき。阿勒壇アルタン、
