Page:成吉思汗実録.pdf/144

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たり。その​時​​トキ​ ​土綿 禿別干​​トメン トベゲン​(萬の禿別干部。親征錄​土滿 土伯夷 部​​トマン トベイ ブ​、元史 完澤の傳 土伯燕 氏)、​斡欒 董合亦惕​​オロン ドンガイト​(あまたの董合亦惕 部 親征錄 元史​董哀 部​​ドンガイ ブ​)、​潰​​ツイ​えたる​客咧亦惕​​ケレイト​の​民​​タミ​も、​成吉思 合罕​​チンギス カガン​に​投​​トウ​じて​來​​キ​にけり。

​王罕​​ワンカン​ ​也速該​​エスガイ​の​安荅​​アンダ​の交り

​客咧亦惕​​ケレイト​の​王​​ワン​ ​合罕​​カガン​(卽ち王罕。親征錄​汪 可汗​​ワン カガン​)こそは、​先​​サキ​に​也速該 合罕​​エスガイ カガン​の​時​​トキ​に、​中好​​ナカヨ​く​平​​タヒラ​かに​住​​ス​み​合​​ア​へる​頃​​コロ​、​也速該 罕​​エスガイ カン​と​安荅​​アンダ​と​云​​イ​ひ​合​​ア​ひたりけれ。​彼​​カレ​の​安荅​​アンダ​と​云​​イ​ひ​合​​ア​ひたる​緣故​​コトノモト​は、​王罕​​ワンカン​は、その​父​​チヽ​ ​忽兒察忽思 不亦嚕黑 罕​​クルチヤクス ブイルク カン​の(親征錄​忽兒札胡思 盃祿 可汗​​フルヂヤクス ブイル カガン​。元史は、可汗の二字を省けり。)​弟​​オトヽ​どもを​殺︀​​コロ​すの​故​​ユヱ​に、​古兒 罕​​グル カン​〈[#「古兒 罕」は底本では「古兒罕」。白鳥庫吉訳「音訳蒙文元朝秘史」§150(05:09:09)の漢︀字音訳「古兒 罕」に倣い二語に分割。以後の「古兒 罕」すべて漢︀字音訳が「古兒 罕」または「古兒-罕」なので、すべて同じ]〉親征錄​菊兒 可汗​​グル カガン​、元史 菊兒)なる​叔父​​ヲヂ​と​敵​​テキ​に​爲​​ナ​り​合​​ア​ひて、​合剌溫 合卜察勒​​カラウン カブチヤル​(合剌溫の隘處。親征錄​合剌溫 隘​​カラウンノ ハサマ​元史、哈剌溫 隘)に​鑽​​キ​り​入​​イ​りて、​百人​​ヒヤクニン​にて​出​​イ​でて、​也速該 罕​​エスガイ カン​の​處​​トコロ​に​來​​キ​つれば、​也速該 罕​​エスガイ カン​は、​彼​​カレ​に​己​​オノ​が​處​​トコロ​に​來​​キ​られて、​己​​オノ​が​軍​​イクサ​にて​出馬​​シユツバ​して、​古兒 罕​​グル カン​を​合申​​カシン​(河西の轉、親征錄 元史の西夏)の​地​​チ​に​逐​​オ​ひて、​彼​​カレ​の​人民​​ジンミン​ ​住具​​ヂウグ​を​王罕​​ワンカン​に​取​​ト​りて​與​​アタ​へたる​故​​ユヱ​に、​安荅​​アンダ​と​爲​​ナ​り​合​​ア​へること​然​​シカ​り。


§151(05:11:01)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年) Open original book in Wikimedia


​客咧亦惕​​ケレイト​の​內亂​​ナイラン​

 その​後​​ノチ​ ​王罕​​ワンカン​の​弟​​オトヽ​ ​額兒客 合喇​​エルケ カラ​〈[#「額兒客 合喇」は底本では「額兒客合喇」。白鳥庫吉訳「音訳蒙文元朝秘史」§151(05:11:01)の漢︀字音訳「額兒客-合喇」に倣い二語に分割]〉親征錄 元史​也力可哈剌​​エリコハラ​)は、​王罕​​ワンカン​ ​兄​​アニ​に​殺︀​​コロ​さるゝを​逃​​ノガ​れて​去​​サ​りて、​乃蠻​​ナイマン​の​亦難︀察 罕​​イナンチヤ カン​(親征錄​亦難︀赤 可汗​​イナンチ カガン​、元史、部長 亦難︀赤。喇失惕に依れば、乃蠻の不亦嚕黑 罕の父)の​處​​トコロ​に​投​​トウ​じけり。​亦難︀察 罕​​イナンチヤ カン​は、​軍士​​イクサビト​どもを​遣​​ヤ​りて、

​王罕​​ワンカン​の逃げ走り

さて​王​​ワン​は、​三​​ミ​つの​城​​シロ​(三城は卽ち三國にて、唐忽惕 畏忽惕 合兒魯兀惕)に​沿​​ソ​ひ​去​​サ​りて、​合喇 乞荅惕​​カラ キダト​(合喇 乞丹の複稱、卽ち西遼。親征錄 元史​契丹​​キダン​、元史また黑 契丹)の​古兒 罕​​グル カン​(親征錄​菊律 可汗​​グル カガン​、元史 曷思麥里の傳 西遼 闊兒汗、哈剌亦 哈赤北魯の傳 西遠主 鞠兒 可汗、卽ち西遼の葛兒罕 直魯古