ちて遣ヤりて、我等ワレラ、身ミを以モテて「成吉思 合罕チンギス カガンに力チカラを與アタへに來キぬ、我等ワレラ」と云イひて往ユかん。「塔兒忽台タルクタイを拏トラへて來キつ。正主セイシユの君キミを廢スてかねて、「視︀ミるといかんぞ死シなしめん」と云イひて、放ハナちて遣ヤりて、「我等ワレラ、誠實セイジツに力チカラを與アタへん」とて來キぬ、我等ワレラ」と云イはん」と云イへり。納牙阿ナヤアのこの言コトバを父チヽも子コどもも善ヨしとし合アひて、塔兒忽台 乞哩勒禿黑タルクタイ キリルトクを忽都︀忽勒クドクルの隅スミより放ハナちて遣ヤりて、その失兒古額禿シルグエト 翁オキナは、阿剌黑アラク、納牙阿ナヤアなる子コどもと來キぬれば、「いかで來キて」と云イへり。(ては、つるの誤りか。)失兒古額禿シルグエト 翁オキナは、成吉思 合罕チンギス カガンに申マウさく「塔兒忽台 乞哩勒禿黑タルクタイ キリルトクを拏トラへて來キつるに、却カヘツて「正主セイシユの君キミを視︀ミると、いかんぞ死シなしめん」と云イひて、廢スてかねて、放ハナちて遣ヤりて、成吉思 合罕チンギス カガンに力チカラを與アタへんとて來キぬ」と云イへり。
納牙阿ナヤア 等の心を成吉思 汗チンギス カンの褒賞
その時トキ、成吉思 合罕チンギス カガン 言イはく「君キミを塔兒忽台タルクタイを手テに掛カけて來キつるならば、正主セイシユの君キミを手テに掛カけたる人ヒトを汝等ナンヂラを、族ゾクを擧アげて斬キらしめらるゝなりき、汝等ナンヂラ。正主セイシユの君キミを廢スてかねたる汝等ナンヂラの心コヽロ 善ヨくあり」と云イひ、納牙阿ナヤアを恩賞オンシヤウせり。
§150(05:08:10)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
その後ノチ 成吉思 合罕チンギス カガンの處トコロに、客咧亦惕ケレイトの札合敢不ヂヤカガンブ(親征錄 元史 本紀札阿紺孛ヂヤアカンボ、朮赤台の傳 札哈堅普)は、帖兒速惕テルスト(卷六の忽兒班 帖列速惕。親征錄塔剌速 野タラス ノ)に居ヲる處トコロに伴トモとなりに來キぬ。彼カレの來キぬる時トキ、篾兒乞惕メルキト 戰タヽカひに來キつれば、成吉思 合罕チンギス カガン、札合敢不ヂヤカガンブは、便スナハち戰タヽカひて退シリゾけ