§139(04:25:03)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
主兒勤ヂユルキンの民の緣由コトノモト
この主兒勤ヂユルキンの民タミの緣由コトノモト。主兒勤ヂユルキンと爲ナるには、合不勒 罕カブル カンの七人ナヽタリの子コの大兄オホアニ 斡勤 巴喇合黑オキン バラカクありき。其ソの子コ 莎兒合禿 主兒乞シヨルカト ヂユルキありき。主兒勤ヂユルキンとなるには、合不勒 罕カブル カンの子コどもの兄アニと云イひて、その民タミ亦兒堅の中ウチより擇エラびて、肝カン(はら)に膽キモある、拇指オホユビ赫咧該にて善ヨく射イる、肺ハイ阿兀失吉 滿ミつる心ムネある(胸に肺の滿ちたる)、口クチ阿蠻 滿ミつる(大聲を發する)剛氣ガウイある、男ヲトコ額咧ごとに技能ギノウ額兒迭木惕ある、猛タケき氣力キリヨクあるを擇エラびて、與アタへて、剛氣ガウキあり膽キモあり勇ユウあり抗サカふ者︀モノ 無ナき(蒙語拙兒乞篾思ヂユルキメス)、(明譯但タヾ有アレバ㆓去處ユクトコロ㆒、皆攻破ミナセメヤブリ、無ナキ㆓人能敵ヒトノヨクテキスル㆒)が故ユヱに主兒勤ヂユルキンと云イはれたる緣由コトノモトかくあり。かゝる勇ユウある民タミを成吉思 合罕チンギス カガンは降服マツロはせて、主兒勤ヂユルキン 姓ウヂある者︀モノを滅ホロボせり。彼等カレラの民タミを部落ブラクを、成吉思 合罕チンギス カガンは、己オノが昵近ヂツキンの民タミとなしたり。
§140(04:26:09)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
別勒古台ベルグタイに殺︀さるゝ不哩 孛可ブリ ボコ
成吉思 合罕チンギス カガンは、一日ヒトヒ 不哩 孛可ブリ ボコ、(前の不哩 孛闊)別勒古台ベルグタイ 二人フタリに「搏ウち合アはしめん(相撲 取らせん)」と云イへり[先サキに]不哩 孛可ブリ ボコは、主兒勤ヂユルキンの處トコロに居ヰたりき。不哩 孛可ブリ ボコは、別勒古台ベルグタイを片手カタテにて拏トラへて片足カタアシにて撥ハねて倒タフして動ウゴかせず壓着オシツけたりき。不哩 孛可ブリ ボコは、國クニの孛可ボコ(力士)。そこに別勒古台ベルグタイ、不哩 字可ブリ ボコ 二人フタリを相撲スマヒせしめたり。不哩 孛可ブリ ボコは、勝カたれざる人[なれども、殊更コトサラに]倒タフれて與アタへたり。別勒古台ベルグタイは、壓着オシツけかね、肩カタ 把トりて、臀シリの上ウヘに上ノボりて、別勒古台ベルグタイ 顧カヘリみて、成吉思 合罕チンギス カガンを見ミれば、合罕カガンは下脣シタクチビルを咬カめり。別勒古台ベルグタイ 悟サトり得エて、彼カレの上ウヘに