が軍イクサ、走ハシりて行ユく篾兒乞惕メルキトを夜ヨル 又マタ 追掛オヒカけて虜︀トラへめ行ユく時トキ、帖木眞テムヂンは、走ハシりて來クる民タミに、「孛兒帖ボルテ、孛兒帖ボルテ」と喚ヨびて行ユく時トキ 遇アひて、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンは、その走ハシる民タミの中ナカに居ヲりき。帖木眞テムヂンの聲コヱを聽キきて認ミトめて、車クルマより下オりると走ハシりて來キて、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂン、豁阿忽臣ゴアクチン 二女フタリは、帖木眞テムヂンの轡繩クツワヅラ 手綱タヅナを夜ヨル 認ミトめて執トりけり。月明ツキアカリありき。見ミれば、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂン[なる]を認ミトめて、抱イダき合アひに驅寄カケヨりたり。其處ソコより帖木眞テムヂンは、脫斡哩勒 罕トオリル カン、札木合 安荅ヂヤムカ アンダ 二人フタリに本夜ソノヨ 便スナハち言イひて遣ヤるには「尋タヅぬる所用シヨヨウを得エたり、我ワレ。夜ヨルは勿ナ 夜徹ヨドホしせそ。此處コヽに下馬ゲバせん、我等ワレラ」と云イひて遣ヤりぬ。篾兒乞惕メルキトの部眾ブシウ 走ハシりて來クるを、夜ヨすがら散チりて來クる閒アヒダに、その其處ソコに下馬ゲバして宿ヤドれり。孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンにかく遇アひ合アひて、篾兒乞惕メルキトの民タミより救スクひたる緣故コトノモト、かくあり。
§111(03:17:04)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
孛兒帖ボルテを收ヲサめたる赤勒格兒チルゲルの懺悔︀サンゲ
初 先ハジメ サキに兀都︀亦惕 篾兒乞惕ウドイド メルキトの脫忽脫阿 別乞トクトア ベキ、兀洼思 篾兒乞惕ウワス メルキトの歹兒 兀孫ダイル ウスン、[合阿惕 篾兒乞惕カアト メルキトの]合阿台 荅兒馬剌カアタイ ダルマラ、この三ミつの篾兒乞惕メルキト 三百人サンビヤクニンは、日ヒの前マヘ(さきの日)脫黑脫阿 別乞トクトア ベキの弟オトヽ 也客 赤列都︀エケ チレドより也速該 巴阿禿兒エスガイ バアトルに訶額侖 額客ホエルン エケを奪ウバひて取トられきとて、それに復シカエし報ムクいんと往ユきけり。帖木眞テムヂンを不兒罕 獄ブルカン ダケを三ミたび繞メグらせて、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンをそこに獲エて、赤列都︀チレドの弟オトヽ 赤勒格兒 孛闊チルゲル ボコ(赤勒格兒 力士)に收容シウヨウせし