2012ナ14082
不当利得金返還請求
編集主文
編集- 1. 被告の控訴を棄却する。
- 2. 控訴費用は,被告が負担する。
請求の趣旨及び控訴の趣旨
編集1. 請求の趣旨
編集被告は,原告に対し,55,026,940圓及びこれに対して本件訴状副本送達の翌日から完済日まで年20%の比率により計算した金員を支払え。
2. 控訴の趣旨
編集第1審判決中,被告敗訴部分を取り消し,右取消部分に該当する原告の請求を棄却する。
理由
編集1. 基礎事実
編集イ. 原告は,2006.12.29被告から200,000,000圓を借用するとともに,次の通り約定をした(以下,「本件第1借用及び根抵当権設定契約」という)。
- ○ 利率: 一回払い 150,000,000圓
- ○ 弁済期: 2007.6.30
- ○ 根抵当権設定債権最高額: 400,000,000圓
- ○ 6ヶ月以降元金及び利息未納時2億(現金)に対して月1%支給する。
ロ. 本件第1借用及び根抵当権設定契約に従い原告所有の別紙目録記載各不動産(以下,「本件各不動産」という)を共同担保とし,議政府地方裁判所南楊州登記所2006.12.29受領第162349号により2006.12.29設定契約を原因とする債権最高額400,000,000圓,根抵当権被告とする根抵当権設定登記が完了した。
ハ. ところで,原告が本件第1借用及び根抵当権設定契約において定める借用元利金を弁済せず,被告は,2008.6.23本件各不動産に関して議政府地方裁判所Dに不動産任意競売を申請するとともに,その申請書に請求金額として「金350,000,000圓,右請求金額に対して2007.6.30から完済日まで年12%の延滞利率による遅延損害金」を記載した。
ニ. 競売裁判所は,2008.6.24本件各不動産に対し競売開始決定を行い,1回売却期日を2008.12.23に定めたが,原告は,本件各不動産に対する競売手続の進行を延期するため,被告に対し,追加で100,000,000圓相当の担保を提供することとした。これに従い原告は,2008.12.22被告との間において,原告が20076.6.30付で被告から100,000,000圓を借用したこととして,被告に対し,債権最高額を100,000,000圓とする根抵当権を設定する旨約定し(以下,「本件第2借用及び根抵当権設定契約」という),被告に対して発行人原告,手形金額100,000,000圓,発行日2007.6.30,支払期日一覧払い,発行地・支払地・支払場所 各 城南市,受取人欄白紙とする手形を発行した。
ホ. 本件第2借用及び根抵当権設定契約に従い原告所有の南楊州市C敷地1,671m²及びその地上建物を共同担保として議政府地方裁判所南楊州登記所2008.12.23受付第149816号により2008.12.22設定契約を原因とした債権最高額100,000,000圓,根抵当権者被告とする根抵当権設定登記が終えられた。
ヘ. 以降,農業協同組合中央会が2009.3.30本件各不動産に関して議政府地方裁判所Mに不動産任意競売を申請し,競売裁判所は,2009.4.1競売開始決定を行い,右議政府地方裁判所D不動産任意競売手続に従い右議政府地方裁判所M不動産任意競売手続を行った。
ト. 被告は,2009.9.20競売裁判所に原告から受領する債権に関して次表記載のとおりの内容の債権計算書を提出した。
債権内訳(科目) | 元金 | 利息 | 利息計算期間 | 日数 | 利率(%) |
---|---|---|---|---|---|
貸与金 | 200,000,000 | 54,049.315 | 2007.6.30から 2009.9.29まで |
822 | 年12% |
約定利息 | 150,000,000 | ||||
貸与金 | 100,000,000 | ||||
計 | 450,000,000 | 54,049,315 | 元利金合計 | 504,049,315圓 |
チ. 競売裁判所は,配当期日である2009.9.29被告に対し元金350,000,000圓及びこれに対する利息94,586,301圓合計444,586,301圓中339,076,255圓を配当するとの内容の配当表を作成した。
【認定根拠】争いのない事実,甲第1ないし5号証,乙第1,2,3号証,乙第5ないし8号証,乙第9号証の1,2,3,7ないし10の各記載,弁論全体の趣旨
2. 請求原因に関する判断
編集イ. 関連法理
編集金銭消費貸借とともに利息の約定をする場合,双方当事者の経済力の差異によりその利率が当時の経済的社会的与件に照らし,社会通念上許容される限度を超過して著しく高率に定められたとすれば,そのような許容しうる限度を超過する部分の利息約定は,貸主がその優越した地位を利用して不当な利得を得,借主に対しては過度な反対給付又はその他の不当な負担を負わせるものであるから,善良な風俗及びその他社会秩序に違反した事項を内容とする法律行為として,向こうであると言え,善良な風俗その他社会秩序に反して無効な部分の利息約定を原因として借主が貸主に対して任意に利息を支払うことは,通常不法の原因による財産給付であると解せられるが,不法原因給付においても,その不法原因が受益者にのみある場合又は受益者の不法性が給付者のそれより著しく大きく,給付者の返還請求を認めないことがむしろ公平及び信義則に反することとなるときは,給付者の返還請求が許されるから,貸主が社会通念上許される限度を超える利率を約定し,支払いを受けたことは,その優越した地位を利用し不当な利得を得,借主には,過度な反対給付又はその他の不当な負担を負わせるものとして,その不法の原因が受益者である貸主にのみあり,又は少なくとも貸主に不法性が借主の不法性に比して著しく大きいと言え,その利息の返還を請求することができる。(最高裁判所2007.2.15言渡2004다504261全員合議体判決参照)
ロ. 不当利得返還義務の発生
編集本件に関して見るに,本件第1借用及び根抵当権設定契約において定める約定利息150,000,000圓を年利で換算すると,年150%程度に至る点,本件第1借用及び根抵当権設定契約以降のものではあるが,旧利息制限法(2007.3.29法律第8322号により制定され,2007.6.30施行されたもの)第2条第1項は,「金銭貸借に関する契約上の最高利率は,年40パーセントを超過しない範囲内において大統領令で定める」と規定しており(以降2011.7.25「年30パーセントを超過しない範囲」と改正され,同年10.26施行された),利息制限法第2条第1項の最高利率に関する規定は,最高利率を年30%と規定している点及びその他本件第1借用及び根抵当権設定契約の締結の経緯等各種事情を総合して見ると,本件第1借用及び根抵当権設定契約の約定利息中,年30%を超過する部分は,過度に高い利率による利息として善良な風俗及びその他社会秩序に反し無効であると言える。
ところで,右認定事実及び各証拠によれば,競売裁判所は,被告が競売申立書に記載したところに従い本件第1借用及び根抵当権設定契約による元利金350,000,000圓を元金として,右350,000,000圓に対して弁済期の翌日である2007.7.1から配当期日である2009.9.29まで約定利率である年12%の比率による遅延損害金94,586,301圓(350,000,000圓×0.12×(822日/365日)で計算したものと見られる。)を利息として計算し,その合計額である444,586,301圓を被告の債権金額として確定した後,債権催告額である400,000,000圓の範囲内において先順位債権者らに配当して残った残額339,076,255圓を配当したことが認められるところ,被告に対する右配当金額中,本件第1借用及び根抵当権設定契約上の元金200,000,000圓及びこれに対する本件第1借用及び根抵当権設定契約日から配当期日まで本件第1借用及び根抵当権設定契約上の約定利率である年12%の比率で計算した遅延損害金を超過した部分は,被告が実際的配当受領権なく配当を受けたものであるといえる。
従って,被告は,法律上の原因なく右超過配当額分の利益を得,これにより右のとおり配当が誤っていなかったとすれば,右超過配当額の配当を受けることのできた本件各不動産の所有者兼債権者である原告に対し同額相当の損害を加えたものであると言えるから(最高裁判所1990.11.27 言渡 90ダカ28412 判決参照),被告は,原告に対し右超過配当額相当を不当利得として返還すべき義務を負う。
ハ. 不当利得返還の範囲
編集続いて,被告が変換すべき不当利得の額数について見るに,原告が被告に対し支払うべき総借用元利金及び約定利率による遅延損害金は,合計284,230,136圓[=2006.12.29付借用元金200,000,000圓+2006.12.29から2007.6.30まで年30%の比率により計算した利息20,246,575圓(=200,000,000圓×0.3×184/365,圓未満切捨)+2007.7.1から2009.9.29まで約定利率により計算した遅延損害金53,983,561圓{=200,000,000圓×0.12×(2+91/365),圓未満切り捨て}]であると言えるのであるから,被告は,原告に対し被告が受領した配当金339,076,255圓中,右借用元利金及び約定利率による遅延損害金を超過する不当利得金54,846,119圓(=339,076,255圓-284,230,136圓)及びこれに対し被告が配当金を受領した日以降において,原告が求めるところに従い本件訴状副本が被告に対し送達された翌日である2011.5.17から被告がその履行義務の存否又は範囲について抗争することが相当である第1審判決言渡日である2012.9.5まで民法の定める年5%,その翌日から支払済みまで訴訟促進等に関する特例法の定める年20%の各比率により計算した遅延損害金を支払う義務を負う。
3. 被告の主張に対する判断
編集被告は,2008.12.22原告との間において本件第1借用及び根抵当権設定契約上の遅延利息中弁済期である2007.7.1から2008.12.22までの部分を100,000,000圓に変更する趣旨で本件第2借用及び根抵当権設定契約を行ったものであるところ,右100,000,000圓は,本件第1借用及び根抵当権設定契約上の貸与元金に対する遅延利息であって,被告の本件各不動産に関する根抵当権の被担保債権に含まれるから,仮に本件第1借用及び根抵当権設定契約上の約定利率一部が善良な風俗及びその他の社会秩序に違反し,無効であるとしても,被告は,右配当金額全部を受領すべき権利がある旨の主張を行う。
検討するに,右認定事実及び各証拠によって認められる次のような事情,即ち①100,000,000圓を借用する旨の記載のほか,本件第1借用及び根抵当権設定契約上の遅延損害金中,右2007.7.1から2008.12.22までの部分を右100,000,000圓に変更する旨の記載が全くない点,②被告が2009.9.20提出した債権計算書に貸金元金200,000,000圓に対する利息を右100,000,000圓及び右200,000,000圓について2008.12.23から2009.9.29まで年12%の比率により計算した金銭の合計額として記載せず,右200,000,000圓について2007.6.30から2009.9.29まで年12%の比率により計算した54,049,315圓を記載し,右100,000,000圓は,元金部分に記載した点等に照らしてみるとき,本件第2借用及び根抵当権設定契約は,本件第1借用及び根抵当権設定契約上の遅延利息中,一部を変更する契約ではなく,原告及び被告間の追加担保設定契約ないし別途の消費貸借契約であると解することが相当であり,これに反する乙第10号証の記載は信じがたく,別途反証がない。
従って,右100,000,000圓は,被告の本件各不動産に関する根抵当権の被担保債権に含まれないと言えるから,被告の右主張は,理由がない[また,被告が本件各不動産に関して任意競売を申請した際,請求金額として350,000,000圓及びこれに対して2007.6.30から支払済みまで年12%の比率による遅延損害金のみを競売申請書に記載して提出した事実,被告が2009.9.20競売裁判所に右100,000,000圓を貸金元金として追加する内容の債権計算書を提出した事実は,先に見たとおりであるところ,申請債権者である被告が右100,000,000圓に対して二重競売申請を行った等の事情がない以上,被告の請求金額は,右競売申請書に記載された債権額を限度として確定され,その後被告が右のとおり債権計算書に被担保債権元金部分を拡張して提出したとしても,右金額分請求金額を拡張することはできないのであり,仮に右100,000,000圓が被告の主張程度本件第1借用及び根抵当権設定契約上の貸与元金に対する遅延損害金として付帯債権に該当するとしても,被告が配当要求の終期を経過したものと見られる右2009.9.20右100,000,000圓を増額する趣旨の債権計算書を提出した以上,更に右金額程度請求金額を拡張することができないのであるから(民事執行法第84条第4項,第5項及び最高裁判所2001.3.23言渡99ダ11526等参照),被告は,本件各不動産に関する任意競売手続において右100,000,000圓の配当を受けること名できないのであり,こういった理由からも被告の右主張は,理由がない]。
4. 結論
編集そうすると,原告の本件請求は,右認定範囲内において理由がありこれを認容し,その余の請求は,理由がなくこれを棄却すべきところ,第1審判決は,これと結論を一部異にし不当であるが,被告のみが控訴した本件において不利益変更禁止原則上,控訴人である被告に不利益に第1審判決を変更することはできないというのであるから,被告の控訴の棄却のみをすることとし,主文のとおり判決する。
裁判長 | 判事 | パクビョンテ |
判事 | ジョンジョンニュン | |
判事 | イミング |
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原文: |
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翻訳文: |
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