馬太傳福音書(明治元訳) 第四章

第四章

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1 さてイエス聖靈せいれいみちびかれ惡魔あくまこころみられんためゆけ
2 じふにちじふくらことをせずのちうゑたり
3 こころむるものかれにきたりていひけるはなんぢもしかみならばめいじてこのいしをパンと
4 イエスこたへけるはひとはパンのみにていくるものにあらただかみくちよりいづすべてことばよるしるされたり
5 ここおい惡魔あくまかれをきよきみやこたづさへゆき殿みや頂上いただきたたせていひけるは
6 なんぢもしかみならばおのしたなげそはなんぢがためかみその使つかひたちめいぜん彼等かれらにてささなんぢあしいしふれざるやうすべしとしるされたり
7 イエスかれいひけるはしゆたるなんぢかみこころむべからずとまたしるせり
8 惡魔あくままたかれいとたかやまたづさへゆき世界せかい諸國くにぐにとその榮華えいぐわとをせて
9 なんぢもしひれふしわれはいせば此等これらみななんぢにあたふべしといふ
10 イエスかれいひけるはサタンよ退しりぞしゆたるなんぢかみはいただこれにのみつかふべしとしるされたり
11 つひ惡魔あくまかれをはな天使てんのつかひたちきたつか

12 イエス、ヨハネのとらはれしことききてガリラヤにゆき
13 ナザレをさりゼブルンとナフタリのさかひなる海邊うみべのカペナウンにいたりここをれ
14 これ預言者よげんしや(※1)イザヤのことば
15 ゼブルンの、ナフタリのうみ沿そひたるヨルダンのむかふ異邦人いはうじんのガリラヤ
16 此等これら幽暗くらきにをるたみおほいなるひかりをみしのしのかげするものうへひかりいでたりといひしにかなはせんためなり

17 このときよりイエスはじめみちのべつた天國てんこくちかづけりくい(※2)あらためよといひたまへり
18 イエス、ガリラヤの海邊うみべあゆみて、ペテロといふシモンその兄弟きやうだいアンデレと二人ふたりにてうみあみうてるをたり彼等かれら漁者すなどりびとなり
19 これいひけるはわれしたがわれ爾曹なんぢら(※3)をひとすなどものなさ
20 彼等かれらやがてあみすててイエスにしたが
21 ここよりすすみけるにまたほか兄弟きやうだい二人ふたりすなはちゼベダイのヤコブとその兄弟きやうだいヨハネちちゼベダイとともふねにてあみつくろへるをこれよびしに
22 彼等かれらやがふねちちとをおきてイエスにしたがへり

23 イエス、ガリラヤをあまねめぐその會堂くわいだうにてをしへをなし天國てんこく福音ふくいんのべつたへかつたみうちなるもろもろやまひもろもろのわづらひいやしぬ
24 その(※3)聲名きこえあまねくスリヤにひろがりしかば人々ひとびとすべてのわづらへるもの萬殊さまざまやまひまたいたみなやめるものあるひはおにつかれたるもの癲癇てんかん癱瘋ちゆうぶやまひかかれるものかれつれきたりければこれいやせり
25 ガリラヤとデカポリス、エルサレム、ユダヤ、ヨルダンのむかふよりおほく人々ひとびときたりしたが

※1 明治14(1881)年版では「預言者」のルビが「よげんじゃ」。
※2 明治14(1881)年版のルビは「くひ」。単なる誤りであろう。
※3 明治14(1881)年版ではどちらもひらがな表記。