関西文化学術研究都市の建設に関する基本方針


関西文化学術研究都市の建設に関する基本方針

昭和62年9月30日決定(10月19日総告第24号)
平成9年4月9日変更(4月28日総告第15号)
平成11年9月29日変更(9月30日総告第40号)
平成12年12月28日変更(総告第78号)
平成19年4月18日変更(4月24日国交告第494号)


序章

 関西文化学術研究都市の建設は、関西文化学術研究都市建設促進法(昭和62年6月9日法律第72号。以下「法」という。)に基づき、文化、学術及び研究の中心となるべき都市を建設し、もって我が国及び世界の文化等の発展並びに国民経済の発達に資することを目的としている。

 これまでの間、産学官の協力と連携を基調として本都市の建設推進が図られた結果、大学、研究所等の立地、集積が進むとともに、住宅や都市基盤施設等の整備の進展により、着実に文化学術研究都市としての集積が形成されつつある。

 このように都市としての集積が形成されつつある中で、様々な文化・学術・研究活動や交流・連携は活発化しつつあるが、都市としての集客・交流施設等をはじめとする都市基盤や交通基盤は、未だ不十分な状況にある。

 この間、経済のグローバル化や情報通信技術の急速な進展等による世界規模での競争が激化しており、また、世界各国の急激な経済成長や人口増大による地球環境問題等、地球規模での人類の生存に関わる諸問題が深刻化している。一方、国内においては、少子・高齢化が急速に進行しつつあり、また、研究・開発を含め様々な分野で国際競争力の確保が求められている。

 こうした時代潮流の中で、我が国が社会・経済面での活力を今後とも維持しつつ、先進国の一員として世界規模の諸問題の解決に取り組んでいくためには、自然科学のみならず人文・社会科学のさらなる発展とその総合化に取り組むことが必要であり、文化学術研究拠点としての本都市の果たす役割はますます重要なものとなってきている。

 このような観点から、本都市に対する新たな社会的要請の高まり及び本都市の現状を踏まえ、以下の方針のもとで、新たな段階、いわばサード・ステージを迎えた本都市建設の推進を図る。

第一章 都市建設の目標 編集

1 意義及び理念 編集

 今日、世界経済の一翼を担うまでに発展した我が国が、今後、国際社会の一員として、人類の平和と繁栄に一層貢献するためには、科学技術創造立国、さらには世界から尊敬される文化立国を目指して、基礎科学の充実強化、創造的な学術・研究の振興及び新産業の創出を図り、あわせて、日本固有の文化の継承・発展とともに、世界の異なる文化との交流・融合を図ることにより、新しい文化を創造・発信する必要がある。

 このような創造的な学術・研究の振興等を図るための基盤として、既存の文化・学術・研究の集積の活用と連携のもとに、良好な自然・生活環境を備え将来の可能性に対応しうる都市の建設に対する要請はますます高まっている。

 関西文化学術研究都市の建設は、このような要請にこたえるため、近畿圏において培われてきた豊かな文化・学術・研究の蓄積をいかしながら、次の三点を理念として取り組む。

(1)文化・学術・研究の新たな展開の拠点づくり
 歴史、文化、自然環境に、恵まれた京阪奈丘陵において、創造的、かつ国際的、学際的、業際的な文化・学術・研究の新たな展開の拠点づくりを目指す。
(2)我が国及び世界の文化・学術・研究の発展及び国民経済の発展への寄与
 新しい近畿の創生に貢献することはもとより、我が国及び世界の文化・学術・研究の発展及び国民経済の発展に寄与する。
(3)未来を拓く知の創造都市の形成
 市民や研究者の知による生産や文化の創出を促進し、日々新しい価値を創造するとともに、先進的で自立的な「持続可能社会」での市民や研究者による住まい方や生き方を創造し発信していく都市の形成を目指す。

2 都市の機能 編集

 次に掲げる諸機能の整備及び街づくりを図ることにより、本都市の理念を実現することを目標とする。

(1)文化を冠した学術研究都市として、高度な文化拠点としての機能、新たな文化・学術・研究の推進、及び新たな産業の創出を牽引する機能の整備を図る。
(2)国際研究開発拠点として、文化、学術・研究、産業の各側面で地球全体の平和と繁栄に貢献していくため、本都市で行う活動の成果を国内だけでなく、世界に向けて発信する機能の整備を図る。
(3)これら諸活動を支える基盤として、文化学術研究の中枢にふさわしい自然共生型で先端的学術成果を生活の中で実践するような街づくり、世界に開かれた街づくりを進める。

3 施設等の整備の方向 編集

 文化学術研究都市にふさわしい機能を総合的に確保するため、防災性の向上及び環境への負荷の低減や自然との共生を図りつつ、地域の歴史・文化的条件、自然条件等に配慮した都市が概成されるよう、次に掲げる整備等を図る。

(1)文化学術研究施設等の整備
 文化・学術・研究の中心とするべき都市にふさわしい、文化の発展、学術の振興又は研究開発を目的とする施設の整備、誘導を図るとともに、文化の発展、学術の振興並びに研究開発に係る交流及び共同研究を推進するための文化学術研究交流施設の整備・充実を図る。
(2)産業の振興
 文化・学術・研究の成果をいかす研究開発型産業及び文化・学術・研究活動を支援する産業の創出、育成を図る。
(3)居住環境の整備
 文化学術研究都市にふさわしい人間性豊かな快適な居住環境を確保するため、良好な住宅・宅地等の整備を推進する。
(4)都市機能の整備
 研究・経済活動のグローバル化、高度情報化、少子・高齢化等の著しい進展の中で、文化学術研究都市にふさわしい公共施設、情報・通信基盤施設を含む都市機能の総合的な整備を推進する。また、この場合、市民、研究者等の利便性及び都市的サービスの向上に配慮する。
(5)広域的な交通施設、情報・通信基盤施設の整備
 近畿圏をはじめとする国内外の諸都市、研究開発拠点及び産業集積地との連携を確保するため、道路、鉄道等の交通施設及び情報・通信基盤施設の整備を推進する。

第2章 都市建設における学術、産業及び行政の各分野の協力の方針 編集

 学術、産業、行政及び市民がそれぞれの役割を果たしながら、かつ連携を一層強化して、都市の建設を進める。この連携強化、文化・学術・研究における様々な交流・連携等のため、それを支える企画調整機能を充実させる。また、一般市民の参加を含む文化・学術・研究における国際的、学際的、業際的な交流を推進する。 学術、産業、行政等の各分野の基本的役割分担等は次のとおりとする。

(1)学術の分野
 大学・研究所等の有する優秀かつ多様な人材及び研究体制により、本都市における創造的な文化・学術・研究活動を先導するとともに、創造的な研究開発を支える人材を育成する役割を担う。このため、大学・研究所等の立地及び整備を進めるとともに、社会の要請にこたえる水準の高い研究・教育及び機動的な学術研究体制の整備を推進する。また、文化・学術・研究の拠点として他の学術研究拠点又は産業の集積する都市、地域とのネットワーク化を進めることによって、国内及び海外との文化・研究交流、学際的な研究交流、産業界との交流等様々な形態の交流を推進し、文化・学術・研究及び産業の振興を図る。
(2)産業界
 本都市における研究開発活動、文化活動等を通じて、社会ニーズに対応した産業を振興し、社会・経済の発展に寄与することが求められる。このため、本都市の高い研究開発能力の集積を活用して研究開発を行う各種の民間研究施設、研究開発型産業施設や研究成果をいかす産業施設・生産施設の立地促進を図る。さらに、大学あるいは公的試験研究機関との連携、異業種間の交流等を進めることにより、新産業の創出、育成に努めるとともに、幅広く、文化、学術等における活動に参画し、又はこれらを支援する。
(3)国及び地方公共団体
 都市建設の進捗に応じ、良好な生活及び研究活動の基盤となる公共・公益的施設の計画的、段階的な整備に努めるとともに、文化学術研究施設等の整備、誘導を推進する。これらの推進にあたって、国及び本都市を構成する地方公共団体は、相互に連携し一体性をもって本都市の都市計画や都市建設及び文化・学術・研究活動に対する必要な支援等、環境の整備に努める。
(4)独立行政法人都市再生機構及びその他の開発事業者
 都市建設に係る豊富な経験をいかし、土地区画整理事業等により基盤整備を進めるとともに、各分野の快適な都市活動を確保するための施設の整備等により、都市運営に積極的に参加する。特に、独立行政法人都市再生機構等都市整備、都市開発に携わる公的事業者は、地方公共団体等との連携のもとに主導的に本都市建設に係る事業を推進する。
(5)企画調整機能を担う主体
① 財団法人関西文化学術研究都市推進機構は、長期にわたる本都市の建設がこれら各分野の協力及び他の地域とのつながりのもと一体的に推進されるよう、文化・学術・研究の拠点にふさわしい都市の建設の企画・推進及び本都市に関する情報の発信を行うとともに、これら各分野の関係者間の合意形成等を促進する。
② 法第二条第五項第二号に基づき指定された株式会社けいはんなは、文化・学術・研究に関し、本都市内のみならず、幅広く国内外を視野に入れた交流・連携等を推進するために必要な事業を行う。
(6)その他各分野の協力等に関する事項
① (1)~(5)に掲げるもののほか、各分野は、適切な役割分担のもとに協力し、居住環境、都市機能の整備を図るとともに、先進的で自律的な知の創造都市としての街づくりに努める。
② また、本都市ならではの街づくりの推進のため、本都市で生活している多くの市民・研究者等が、主体性をもって計画の段階から都市運営へ積極的に参画していくことを促すとともに、文化・学術・研究活動、コミュニティ活動等に様々な活動においても、市民、研究者等が参画する多様な組織形態を取り入れること等により取り組みの多様化、重層化を図る。

第3章 人口の規模及び配分並びに土地の利用に関する基本的事項 編集

1 人口の規模及び配分 編集

 本都市の人口は、おおむね41万人を想定する。このうち、文化学術研究地区における人口は、おおむね21万人を想定する。また、これらの京都府、大阪府、奈良県の各区域への配分は、おおむね次のとおりとする。

文化学術研究都市の人口 文化学術研究地区の人口
京都府域 19万人 11万人
大阪府域   8万人   3万人
奈良県域 14万人   7万人

また、本都市の文化学術研究地区における従業人口は、おおむね7万人を想定する。

2 土地の利用 編集

 本都市は、優良な農用地、森林等の保全を図るなど環境の保全に配慮しつつ分散して配置する「文化学術研究地区」及びそれ以外の地域である「周辺地区」により構成するものとし、次に掲げる土地の利用を図る。また、都市全体の面積はおおむね15,000ha、文化学術研究地区の面積はおおむね3,600haとする。

(1)文化学術研究地区
 周辺地区との調和等に配慮しつつ、文化学術研究施設又は文化学術研究交流施設と ともに、公共施設、公益的施設、住宅施設その他の施設の一体的整備を推進する。また、地区の特性に応じ、生態系への影響を最小限にとどめ、自然環境の保全を図るなど地区内の緑の確保に努めるとともに、文化学術研究都市にふさわしい景観の形成に努め、良好な研究・生活環境の形成を図る。さらに、文化学術研究地区の配置の特色をいかし、機能面での有機的な連携のもとに都市的サービス機能の集積する地区センターを文化学術研究地区に分散して整備することにより、多核型の都市機能ネットワークの形成を図る。
(2)周辺地区
 現在の土地利用を尊重し、文化学術研究地区との調和を図ることとし、文化学術研究地区の整備に関連して必要な施設の整備、良好な生活環境の形成等を図るための事業を推進するとともに、農林業の振興並びに自然環境の保全と活用を図る。

第4章 文化学術研究地区の配置及び整備の方針 編集

1 文化学術研究地区の配置 編集

 文化学術研究地区は、京都、大阪、奈良等の既存都市とのつながりや全体の有機的な連携に配慮し、次の位置におおむね別図のとおり配置する。

(1)京都府域
 田辺地区、普賢寺地区(以上京田辺市)、南田辺・狛田地区(京田辺市、精華町)、木津地区(木津川市)、精華・西木津地区、平城・相楽地区のうち京都府域(以上木津川市、精華町)
(2)大阪府域
 氷室・津田地区(枚方市)、清滝・室池地区、田原地区(以上四条畷市)
(3)奈良県域
 平城宮跡地区、平城・相楽地区のうち奈良県域(以上奈良市)、高山地区、北田原地区(以上生駒市)

2 文化学術研究地区の整備の方針 編集

 次のとおり、文化学術研究地区の整備を図る。なお、各々の文化学術研究地区は、適切な土地利用方針のもと、整備の条件が整った地区から、都市全体としての整合性に留意しつつ、計画的、段階的に整備を進める。

(1)田辺地区
 同志社大学を中心とする大学等教育研究施設等の整備・充実を図る。
(2)南田辺・狛田地区
 農業、バイオサイエンス系教育研究施設の集積をいかしつつ、文化学術研究施設、研究開発型産業施設等の整備を図るとともに、住宅施設、都市的サービス施設の整備を推進する。
(3)木津地区
 独立行政法人日本原子力研究開発機構関西光科学研究所など主として自然科学系の文化学術研究施設、研究開発型産業施設から成る研究開発、先端産業の拠点としての整備を推進するとともに、自然環境を活用した住宅施設及び都市的サービス施設等の整備を推進する。
(4)精華・西木津地区
 本地区は、本都市の中心地区として住宅施設、都市的サービス施設、及び国際研究開発拠点としての国際交流や情報発信機能の強化に向けた文化学術研究交流施設の充実を図る。また、国立国会図書館関西館、私のしごと館等の情報提供機能の拡充強化を図るとともに、独立行政法人情報通信研究機構、財団法人国際高等研究所、国際電気通信基礎技術研究所等、文化学術研究施設の立地をいかし、情報通信、環境等様々な分野における先導的な文化学術研究施設、研究開発型産業施設等の整備を推進する。
(5)平城・相楽地区
 良好な住宅地との調和に配慮しつつ、生活関連の文化学術研究施設、住宅施設、都市的サービス施設等の整備を推進する。
(6)氷室・津田地区
 関西外国語大学の立地等をいかしつつ、先端的な研究・教育施設等などの文化学術研究施設、研究開発型産業施設等の整備を推進するとともに、住宅施設の整備を推進する。
(7)清滝・室池地区
 自然環境の保全と緑地の回復を図りながら、自然レクリエーションの拠点としてスポーツ、保養等の施設の整備を推進するとともに、大阪電気通信大学の立地等をいかしつつ、研修、教育研究等を行う文化学術研究施設、住宅施設の整備を推進する。
(8)田原地区
 その周辺の自然環境をいかし、住宅施設等の整備を推進するとともに、研修等を行う文化学術研究施設等の整備を推進する。
(9)平城宮跡地区
 第一次大極殿正殿の復原及び院地区の環境整備の推進を図るなど、特別史跡平城宮跡を中心とする歴史・文化的遺産を保全、整備しつつ、それらを活用した文化財、考古学に関する文化学術研究施設の充実、強化を推進する。
(10)高山地区
 奈良先端科学技術大学院大学を中心に、情報通信、バイオサイエンス等の先端的な科学技術分野を対象とする文化学術研究施設等及び住宅施設の整備を推進するとともに、自然環境をいかした公園緑地の整備を図る。
(11)その他の文化学術研究地区
 普賢寺地区、北田原地区においては、今後の社会・経済情勢や需要を勘案した上で、整備に向けた具体的な検討を行う。

第5章 文化学術研究施設の整備に関する基本的事項 編集

 文化学術研究施設としての次の施設の整備を図る。

① 文化、芸術に関する高度な研究、教育及び一般啓発等を行う施設
 我が国の文化、芸術に関する高度な研究、教育、国際交流及び一般啓発等を行うため、平城宮跡の保存復原等の施設整備を推進するとともに、近畿圏が有する歴史的、文化的環境を活用し、それらを研究対象とする施設の整備を図る。
② 大学等の教育・研究施設
 基礎科学の充実強化、創造的な学術の振興を図るとともに、優れた人材の育成、学術の研究成果の活用等の社会的要請にこたえるため、国際的、学際的な研究領域や先端的な科学技術分野等において高度かつ創造的な教育・研究を行うとともに、企業等との連携によりその研究成果の早期事業化に向けた諸活動を行う大学等の整備・充実を図る。
③ 創造的な基礎研究、応用研究及び先端的な技術開発を行う施設
 我が国が科学技術創造立国としての地位を確立していくためにも、世界の科学技術の発展に貢献する創造的な基礎研究を充実強化する必要があり、人類の未来に関わる多様な分野における研究施設の整備を推進する。また、新たな産業創出の原動力として、基礎研究とともに、応用研究及び先端的な技術開発を行うため、各分野における先進的な研究施設の整備を推進する。
④ 文化・学術・研究における交流・連携活動を推進するための機能を備えた施設
 今後、文化・学術・研究の一層の振興を図るためには、国際的、学際的、業際的な交流がますます重要となるとともに、その取り組みにおいても自然科学と人文・社会科学の融合による総合化が強く必要とされる。このため、これら交流・連携活動を推進するための機能を備えた施設の整備を図る。
⑤ 文化・学術・研究を促進・支援する情報提供施設
 既設の文化学術研究施設の情報提供機能の拡充強化、本都市の先端的な文化学術研究成果を内外に広く発信する情報提供施設の整備を推進する。

第6章 文化学術研究交流施設の整備に関する基本的事項 編集

1 文化学術研究交流施設整備の目標 編集

 文化の発展、学術の振興並びに研究開発に係る交流及び共同研究を推進するとともに、国際的、学際的、業際的な共同研究を企画、支援するため、文化学術研究交流施設を整備・充実する。

2 文化学術研究交流施設を整備すべき文化学術研究地区 編集

 文化学術研究交流施設は、精華・西木津地区に、一を限り整備する。

3 文化学術研究交流施設の設置及び運営を目的とする株式会社 編集

(1)国土交通大臣は、関西文化学術研究都市建設促進法に基づき、文化学術研究交流施設の設置及び運営を目的とし、(2)に掲げる事業を的確に遂行するに足る経理的基礎及び能力を有すると認められる株式会社(以下「指定事業者」という。)を一を限り指定する。
(2)指定事業者は、次に掲げる事業を行うものとする。
①文化の発展、学術の振興並びに研究開発に係る交流及び共同研究を推進するための施設の建設及び運営
②文化の発展、学術の振興並びに研究開発に係る交流を推進するために必要な事業
③国際的、学際的、業際的な共同研究を企画、支援するために必要な事業
④文化・学術・研究に関する普及・啓発のために必要な事業
⑤文化・学術・研究活動に必要な情報を提供するために必要な事業
⑥文化・学術・研究活動を支援するための施設の建設及び運営
⑦その他文化学術研究交流施設の目的を達成するために必要な事業

第7章 周辺地区の整備及び保全に関する基本的事項 編集

 周辺地区においては、次のとおり整備・保全を図る。

(1)市街地等
 既に市街地を形成あるいは市街化が予定されている市街地の区域においては、文化学術研究地区との一体的な計画のもとに、良好な生活環境の形成に必要な道路、河川、公園、緑地、水道、下水道等の施設の整備を推進する。また、本都市へのエントランスゾーンである主要駅については、駅周辺等の整備とともに都市機能の集積を図る。
(2)農業的利用区域
 優良な農用地が存在し、あるいは農用地として利用することが適当な農業的利用区域においては、農業者の意向を適切に把握しつつ、蚕食的な市街化の防止を図り、良好な生活環境を備えた都市近郊型農業地帯として整備・保全を図る。
(3)緑地区域及び森林
 緑地区域においては、本都市にふさわしい自然環境の保全とその活用を図ることとし、森林については、国土の保全、生活環境の保全・形成等の機能を高度に発揮させるため、整備・保全を図る。

第8章 公共施設、公益的施設、住宅施設その他の施設の整備に関する基本的事項 編集

 防災性の向上、市民や研究者の利便性の向上、環境への負荷の低減及び自然との共生並びに知の創造都市の形成等に配慮しつつ、次の施設の整備を推進する。

1 公共施設及び公益的施設の整備 編集

(1)交通施設
① 広域交通施設
 関西国際空港、大阪国際空港、国土幹線軸、近畿圏の主要都市及び研究開発拠点等との連携の強化を図るため、次のとおり所要の施設整備を推進する。
ア 道路
 第二京阪道路、京奈和自動車道、学研都市連絡道路(一般国道163号)等の整備を進めるとともに、隣接地域において近畿自動車道名古屋神戸線(第二名神高速道路)等の整備を推進する。さらに、安全、快適な道路利用を促進するため、交通安全施設等の整備及びITS(高度道路交通システム)を推進する。
イ 鉄道
 京都、大阪及び奈良の各都心との連絡性の強化を図るため、既存鉄道である西日本旅客鉄道の片町線(学研都市線)、奈良線の利便性の向上を図る。また、今後の本都市の施設立地や活動展開、交通基盤としての役割等を勘案し、近畿日本鉄道けいはんな線の延伸についての検討を進める。
② 地域交通施設等
 文化学術研究地区相互の連携、周辺地区の調和ある発展、及び都市と広域交通施設との接続を図るため、景観・安全等に配慮した幹線道路、補助幹線道路の整備、交通安全施設等の整備を推進するとともに、駅前広場の整備等鉄道駅を中心とする交通結節機能を強化する。また、バス交通については、コミュニティバスも含め路線網の充実、再編等とともに鉄道との結節強化を図る。
(2)水資源開発施設
 ダム等の水資源開発施設については、今後の都市建設に伴う水需要に対応した水資源が確保されるよう、自然環境との調和を勘案した上で整備を図る。
(3)水道及び下水道
ア 水道
 都市建設に伴う人口の増加及び文化学術研究施設等の立地による水需要に対処するため、水源の確保及び水道施設の整備を推進する。
イ 下水道
 都市建設に伴う人口の増加に対処するとともに、公共用水域の水質保全、浸水の防除等図るため、木津川上流流域下水道等の流域下水道、公共下水道及び都市下水路等の整備を推進する。
(4)国土保全施設
 都市建設に伴う河川の流量増に対処するため、保水・遊水機能の維持増進等と併せて、周辺の自然環境や景観との調和に配慮しつつ、関連河川の河道改修等治水施設の整備を推進する。また、土砂災害を防止するための対策を講じる。
(5)公園、緑地等
 自然環境に配慮した総合公園の整備を推進するとともに、歴史的、文化的遺産や良好な自然環境を結ぶ緑のネットワークが形成されるよう、公園、緑地等の整備・充実を図る。
(6)廃棄物処理施設
 ごみ減量や資源リサイクルを進めるためのリサイクル関連施設や、ごみ処理施設等の整備を図る。
(7)教育施設、厚生施設及び行政サービス施設
 都市内の人口定着に対応して、学校等の教育施設、保育所、病院等の厚生施設及び警察施設、消防防災施設等の行政サービス施設の整備を推進する。
(8)文化施設及び商業施設
 文化学術研究地区に、その特性に応じた地区センターを整備し、文化施設、商業施設の充実を図る。
(9)スポーツ・レクリエーション施設
 市民が健康で充実した生活を送れるよう、スポーツ・レクリエーション施設の整備を推進する。
(10)情報・通信基盤施設
 高度な文化・学術・研究等の活動、産・学・官等の交流活動を支援するとともに、高水準の都市生活を確保するため、本都市内及び本都市と他の:地域を結ぶ情報・通信基盤施設の整備を推進し、高度な情報・通信体系を形成する。
(11)都市エネルギー供給施設
 文化・学術・研究等の活動、市民生活その他の都市活動に必要なエネルギー需要に対応するため、省資源、環境負荷の低減に配慮したエネルギー:供給施設の整備を推進する。

2 住宅施設その他の施設の整備 編集

(1)住宅施設の整備
 文化学術研究地区内においては、周辺の景観に配慮した人に優しい住宅・宅地の整備を推進する。
 住宅・宅地は職住近接に配慮しながら、周辺の既存集落・市街地等と相互に補完しつつ、多様なライフスタイルを持つ人々による健全なコミュニティが形成されるよう配置する。
(2)その他の施設の整備
 文化学術研究地区内においては、文化・学術・研究等の活動を行う施設の整備とともに、当該地区の特性に応じて文化・学術・研究の成果をいかす産業施設や生産施設、文化・学術・研究活動を支援する産業施設の集積を図る。さらに、今後の都市活動の重層化、多様化に対応する新しい都市型産業施設の整備を図る。

第9章 その他都市建設に関する基本的事項 編集

1 防災への配慮 編集

 国土保全施設、交通・通信基盤及び防災拠点施設の整備推進並びに公共施設、建物の耐震性の確保等により地震、風水害等の災害に強い都市の形成に配慮する。また、広域的な連携として確立された災害応急体制により災害等に対応する。

2 環境の保全 編集

 都市の建設に当たっては、環境基本計画をはじめ環境保全に関する行政計画との整合を図るとともに、必要に応じ環境影響評価を実施することなどにより環境の保全について適正に配慮し、環境への負荷の少ない持続可能な都市の建設を推進する。

3 文化財の保護 編集

 都市建設に当たっては、文化財の保護に十分配慮する。

4 地価等への配慮 編集

 国土利用計画法都市計画法等の土地利用関係法令を適切に運用する等により適正な土地利用の確保を図るとともに土地の投機的取引や地価の高騰が生ずることのないよう配慮する。

5 良好な景観の形成 編集

 京阪奈丘陵及びその周辺の恵まれた歴史、文化、自然環境との調和を図るとともに、地区計画、景観計画等による街並みの形成・保全を図る等、良好な都市景観を形成する。

 

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