鐵道震害調査書/第一編/第二章/第十二節


第十二節 山手線(品川赤羽間13哩及び池袋田端間3.3哩)

切取 切取法面石垣の崩󠄁壞及び孕出せるもの2,3箇所󠄁あり。

築堤 新宿新大久保驛間,靑梅街道󠄁道󠄁前󠄁後に於て築堤延󠄂長約1,450呎に亘り最大約1呎沈下し,又󠄂下目黑川橋梁,五反田陸橋及び目黑乘越橋梁(電車線)前󠄁後に於て約200呎乃至270呎間最大約1呎の沈下を見,その他十條赤羽間並に2,3橋梁前󠄁後にも最大約6吋の沈下を生じたり。

土留壁 新宿驛構內土留石垣間知石空󠄁積約124面坪󠄁崩󠄁壞し(附圖󠄃第十六參照),尙惠比壽及び原宿驛構內に於ても土留石垣間知石空󠄁積の崩󠄁壞並に孕出を生じたるものあり。

橋梁 目黑惠比壽間乘越橋梁(電車線)に於ける橋脚の混凝土工にして方柱7箇を拱にて連結せるものゝ一部起󠄁拱線附近󠄁に於て剝落切斷し(附圖󠄃第十七及び寫眞第百九十二參照),これと略々同樣の構造󠄁より成る代々木新宿間乘越橋梁の一部亦水平󠄁に切斷せり(寫眞第百九十三參照)。又󠄂大崎驛構內大崎跨線道󠄁路橋橋脚(混凝土工)の下部切斷し,市外側橋臺の床石上面斜󠄁に切斷せる外橋臺の傾斜󠄁移動せるもの2,3あり。

尙當時新築工事中なりし新宿驛甲州街道󠄁跨線道󠄁路橋,及び出札所󠄁支󠄂ふる混凝土方柱(橋脚)14本は何れも數片に切斷して顚倒散亂せり(附圖󠄃第十八並に寫眞第百九十四乃至第百九十六參照)。又󠄂同じく工事中なりし淀橋乘越橋梁は,框構橋脚の上に鈑桁4連を架したるものなりしが,桁の固定端に當る橋臺上の混凝土面著しく破壞し,又󠄂可動端は最大約2 1/2吋の移動を示し,框構橋脚下端は浮󠄁上りたり。(寫眞第百九十七及び第百九十八參照)

停車場 驛本屋の最近󠄁改築せられたるものは悉く木造󠄁スレート葺なりしが何れも被害󠄂頗る輕微なり。又󠄂新築中なりし新宿驛新本屋は鐵筋混凝土造󠄁にして,軸部構造󠄁は大半󠄁竣成し內部造󠄁作に著手せんとせる際なりしが,壁と梁との接續部及び空󠄁洞煉化石を用ひたるカーテン·ウオルに龜裂破損を生ぜしため震災後接合部を修理し,間壁は全󠄁空󠄁洞煉化石を廢して鐵筋混凝土造󠄁に改めたり。(附圖󠄃第十九乃至第三十二參照)

又󠄂同驛貨物上家は古軌條造󠄁にして,屋根にプレカストしたる鐵筋混凝土スラブを用ひたるもの4棟の內1棟倒潰し3棟傾斜󠄁せしを以て(附圖󠄃第三十三參照)震災後古軌條造󠄁鉛󠄁引鐵板葺に改築せり。尙その他の乘降場上家及び貨物積卸場上家は木造󠄁又󠄂は古軌條造󠄁なりしが何れも被害󠄂輕微なりき。

乘降場及び積卸場 代々木驛新設乘降場は盛︀土に代ふるに鐵筋混凝土スラブを以てせしが,柱と梁との接合部殆ど全󠄁部破損せり(附圖󠄃第三十七並に寫眞第百九十九乃至第二百參照)。この外五反田,惠比壽,外2,3驛の築堤上に設けたる乘降場の路面沈下せり。(附圖󠄃第三十八參照)

跨線橋 惠比壽驛の跨線橋は乘降場面の沈下に伴󠄁ひて脚柱基礎並に階段昇り口沈下し,ために階段上部と橋體との接合部約1吋分󠄁離せしが他には殆ど被害󠄂なし。

地下道󠄁 板橋驛地下道󠄁壁に罅裂を生じたるのみなり。

給水器 給水器は殆ど被害󠄂なし。

信號機 自働信號󠄂機の倒壞せしもの1基,傾斜󠄁せるもの2基,小罅裂を生ぜしもの1基あり。