藪の中
檢非違使に問はれたる木樵りの物語編集
さやうでございます。あの
を つけたのは、わたしに ひございません。わたしは もの り、 の を りに りました。すると の の に、あの があつたのでございます。あつた でございますか? それは の からは、四五 たつて りませう。 の に せ の つた、 のない でございます。は の に、 のさび をかぶつた 、 けに れて りました。 しろ とは すものの、 もとの き でございますから、 のまはりの の は、 に みたやうでございます。いえ、 はもう れては りません。 も いて つたやうでございます。おまけに には、 が一 、わたしの も えないやうに、べつたり ひついて りましたつけ。
か かは えなかつたか? いえ、 もございません。 その の の がたに、 が ちて りました。それから、――さうさう、 の にも が つございました。 のまはりにあつたものは、この つぎりでございます。が、 や の は、一 に み されて りましたから、きつとあの は される に、 い きでも したのに ひございません。 、 はゐなかつたか? あそこは一 なぞには、はひれない でございます。 しろ の ふ とは、 つ たつて りますから。
檢非違使に問はれたる旅法師の物語編集
あの
の には、 かに つて ります。 の、――さあ、 でございませう。 は から へ、 らうと ふ でございます。あの は に つた と一しよに、 の へ いて りました。 は を れて りましたから、 はわたしにはわかりません。 えたのは ねらしい、 の ばかりでございます。 は の、―― か の のやうでございました。 でございますか? は もございましたか? ―― しろ の でございますから、その ははつきり じません。 は、――いえ、 も びて れば、 も へて りました。 に い り へ、二十あまり をさしたのは、 でもはつきり えて ります。あの
がかやうになろうとは、 にも はずに りましたが、まことに の なぞは、 に ひございません。やれやれ、 とも しやうのない、 の な を しました。檢非違使に問はれたる放免の物語編集
わたしが
め つた でございますか? これは かに と ふ、 い でございます。 もわたしが め つた には、 から ちたのでございませう、 の の に、うんうん つて りました。 でございますか? は の でございます。 ぞやわたしが へ じた にも、やはりこの の に、 しの を いて りました。 はその にも の り、 の さへ へて ります。さやうでございますか? あの の が つてゐたのも、――では しを いたのは、この に ひございません。 を いた 、 りの 、 の の が十七 、――これは 、あの が つてゐたものでございませう。はい、 も る り、 の でございます。その に されるとは、 かの に ひございません。それは の し に、 い を いた 、 ばたの を つて りました。この
と ふやつは、 に する の でも、 きのやつでございます。 の の の の に、 でに たらしい が 、 の と一しよに されてゐたのは、こいつの だとか して りました。その に つてゐた も、こいつがあの を したとなれば、 へどうしたかわかりません。 がましうございますが、それも さいまし。檢非違使に問はれたる媼の物語編集
はい、あの
は の が、 いた でございます。が、 のものではございません。 の の でございます。 は の 、 は二十六 でございました。いえ、 しい でございますから、 なぞ ける はございません。でございますか? の は 、 は十九 でございます。これは にも らぬ の でございますが、まだ一 も の には、 を つた はございません。 は の い、 の に のある、 さい でございます。
は と一しよに、 へ つたのでございますが、こんな になりますとは、 と ふ でございませう。しかし はどうなりましたやら、 の はあきらめましても、これだけは でなりません。どうかこの が一 のお ひでございますから、たとひ を けましても、 の をお ね さいまし。 に せ いのは、その とか とか す、 のやつでございます。 ばかりか、 までも、………( は き りて なし。)
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多襄丸の白状編集
あの
を したのはわたしです。しかし は しはしません。では へ つたのか? それはわたしにもわからないのです。まあ、お ちなさい。いくら にかけられても、 らない は されますまい。その わたしもかうなれば、 な し てはしないつもりです。わたしは
の し ぎ、あの に ひました。その の いた に、 の が つたものですから、ちらりと の が えたのです。ちらりと、―― えたと ふ には、もう えなくなつたのですが、 つにはその もあつたのでせう、わたしにはあの の が、 のやうに えたのです。わたしはその の に、たとひ は しても、 は はうと しました。、 を すなぞは、あなた の つてゐるやうに、 した ではありません。どうせ を ふとなれば、 、 は されるのです。 わたしは す に、 の を ふのですが、あなた は を はない、 で す、 で す、どうかするとお ごかしの だけでも すでせう。 は れない、 は に きてゐる、――しかしそれでも したのです。 の さを へて れば、あなた が いか、わたしが いか、どちらが いかわかりません。( なる )
しかし
を さずとも、 を ふ が れば、 に はない です。いや、その の もちでは、 るだけ を さずに、 を はうと したのです。が、あの の では、とてもそんな は ません。そこでわたしは の へ、あの をつれこむ をしました。これも
はありません。わたしはあの と づれになると、 うの には がある、その を いて たら、 や が た、わたしは も らないやうに、 の の の へ、さう ふ を めてある、もし み があるならば、どれでも い に り したい、――と ふ をしたのです。 は かわたしの に、だんだん を かし めました。それから、――どうです、 と ふものは、 しいではありませんか? それから もたたない に、あの はわたしと一しよに、 へ を けてゐたのです。わたしは
の へ ると、 はこの に めてある、 に てくれと ひました。 は に いてゐますから、 のある はありません。が、 は も りずに、 つていると ふのです。 あの の つてゐるのを ては、さう ふのも はありますまい。わたしはこれも を へば、 ふ にはまつたのですから、 を した 、 と の へはひりました。は の は ばかりです。が、 つた に、やや いた むらがある、――わたしの を ぐるのには、これ の い はありません。わたしは を し けながら、 は の に めてあると、 もらしい をつきました。 はわたしにさう はれると、もう せ が いて える へ、一 に んで きます。その に が らになると、 も が んでゐる、――わたしは へ るが いか、いきなり を み せました。 も を いてゐるだけに、 は にあつたやうですが、 を たれてはたまりません。 ち一 の の がたへ、 りつけられてしまひました。 ですか? は の さに、 を えるかわかりませんから、ちやんと につけてゐたのです。 を させない にも、 の を らせれば、 に はありません。
わたしは
を けてしまふと、 は の へ、 が を したらしいから、 に てくれと ひに きました。これも に つたのは、 し げるまでもありますまい。 は を いだ 、わたしに をとられながら、 の へはひつて ました。 が へ て ると、 は の に られてゐる、―― はそれを るなり、 の に から してゐたか、きらりと を き きました。わたしはまだ までに、あの の しい は、 も た がありません。もしその でも してゐたらば、 きに を かれたでせう。いや、それは を した が、 二 三に り てられる には、どんな も ねなかつたのです。が、わたしも ですから、どうにかかうにか も かずに、とうとう を ち しました。いくら の つた でも、 がなければ がありません。わたしはとうとう ひ り、 の は らずとも、 を に れる は たのです。の は らずとも、――さうです。わたしはその にも、 を すつもりはなかつたのです。 が き した を に、 の へ げようとすると、 は わたしの へ、 ひのやうに りつきました。しかも れ れに ぶのを けば、あなたが ぬか が ぬか、どちらか んでくれ、 の に を せるのは、 ぬよりもつらいと ふのです。いや、その どちらにしろ、 き つた につれ ひたい、――さうも ぎ ぎ ふのです。わたしはその と、 を したい になりました。( なる )
こんな
を し げると、きつとわたしはあなた より な に えるでせう。しかしそれはあなた が、あの の を ないからです。 にその一 の、 えるやうな を ないからです。わたしは と を せた 、たとひ に ち されても、この を にしたいと ひました。 にしたい、――わたしの にあつたのは、 かう ふ一 だけです。これはあなた の ふやうに、 しい ではありません。もしその の に、 も みがなかつたとすれば、わたしは を しても、きつと げてしまつたでせう。 もさうすればわたしの に、 を る にはならなかつたのです。が、 い の に、ぢつと の を た 、わたしは を さない り、 は るまいと しました。しかし
を すにしても、 な し はしたくありません。わたしは の を いた 、 ちをしろと ひました。( の がたに ちてゐたのは、その て忘れた なのです。) は を へた 、 い を き きました。と ふと も かずに、 とわたしへ びかかりました。――その ちがどうなつたかは、 し げるまでもありますまい。わたしの は二十三 に、 の を きました。二十三 に、――どうかそれを れずに さい。わたしは でもこの だけは、 だと つてゐるのです。わたしと二十 り んだものは、 にあの だけですから。( なる )わたしは
が れると に、 に まつた を げたなり、 の を り りました。すると、――どうです、あの は にもゐないではありませんか? わたしは がどちらへ げたか、 むらの を して ました。が、 の の には、それらしい も つてゐません。 を ませて ても、 えるのは の に、 の がするだけです。によるとあの は、わたしが を めるが いか、 の けでも ぶ に、 をくぐつて げたのかも れない。――わたしはさう へると、 はわたしの ですから、 や を つたなり、すぐに もとの へ ました。 にはまだ の が、 かに を つてゐます。その の は し げるだけ、 の に ぎますまい。 、 へはいる に、 だけはもう してゐました。――わたしの はこれだけです。どうせ一 は の に、 ける と つてゐますから、どうか に はせて さい。( たる )
清水寺に來れる女の懺悔編集
――その
の を た は、わたしを ごめにしてしまふと、 られた を めながら、 るやうに ひました。 はどんなに だつたでせう。が、いくら えをしても、 にかかつた は、一 ひしひしと ひ るだけです。わたしは はず の へ、 ぶやうに り りました。いえ、 り らうとしたのです。しかし は の に、わたしを へ しました。 その です。わたしは の の に、 とも ひやうのない きが、 つてゐるのを りました。 とも ひやうのない、――わたしはあの を ひ すと、 でも ひが ずにはゐられません。 さへ も けない は、その の の に、一 の を へたのです。しかも に いてゐたのは、 りでもなければ しみでもない、―― わたしを んだ、 たい だつたではありませんか? わたしは に られたよりも、その の に たれたやうに、 らず か んだぎり、とうとう を つてしまひました。その
にやつと がついて ると、あの の の は、もう かへ つてゐました。 には の がたに、 が られてゐるだけです。わたしは の の に、やつと を したなり、 の を りました。が、 の の は、 しもさつきと りません。やはり たい みの に、 しみの を せてゐるのです。 しさ、 しさ、 たしさ、――その のわたしの の は、 と へば いかわかりません。わたしはよろよろ ち りながら、 の へ りました。「あなた。もうかうなつた
は、あなたと 一しよには られません。わたしは ひに ぬ です。しかし、――しかしあなたもお になすつて さい。あなたはわたしの を になりました。わたしはこのままあなた 、お し す には りません。」わたしは一
に、これだけの を ひました。それでも は はしさうに、わたしを つめてゐるばかりなのです。わたしは けさうな を へながら、 の を しました。が、あの に はれたのでせう、 は さへも、 の には りません。しかし ひ だけは、わたしの もとに ちてゐるのです。わたしはその を り げると、もう一 にかう ひました。「ではお
を かせて さい。わたしもすぐにお します。」はこの を いた 、やつと を かしました。 には の が、一ぱいにつまつてゐますから、 は しも えません。が、わたしはそれを ると、 ちその を りました。 はわたしを んだ 、「 せ」と つたのです。わたしは 、 うつつの に、 の の の へ、ずぶりと を し しました。
わたしは
この も、 を つてしまつたのでせう。やつとあたりを まはした には、 はもう られた 、とうに が えてゐました。その ざめた の には、 に つた むらの から、 が すぢ ちてゐるのです。わたしは き を みながら、 の を き てました。さうして、――さうしてわたしがどうなつたか? それだけはもうわたしには、 し げる もありません。 に わたしはどうしても、 に る がなかつたのです。 を に き てたり、 の の へ を げたり、いろいろな もして ましたが、 に れずにかうしてゐる り、これも にはなりますまい。( しき )わたしのやうに ないものは、 の も、お しなすつたものかも れません。しかし を したわたしは、 の ごめに つたわたしは、一 どうすれば いのでせう? 一 わたしは、――わたしは、――( しき )巫女の口を借りたる死靈の物語編集
――
は を ごめにすると、 へ を した 、いろいろ を め した。おれは は けない。 も の に られてゐる。が、おれはその に、 も へ くばせをした。この の ふ を に けるな、 を つても と へ、――おれはそんな を へたいと つた。しかし は と の に つたなり、ぢつと へ をやつてゐる。それがどうも の に、 き つてゐるやうに えるではないか? おれは しさに えをした。が、 はそれからそれへと、 に を めてゐる。一 でも を したとなれば、 との も り ふまい。そんな に れ つてゐるより、 の になる はないか? はいとしいと へばこそ、 それた も いたのだ、―― はとうとう にも、さう ふ さへ ち した。にかう はれると、 はうつとりと を げた。おれはまだあの 、 しい は た がない。しかしその しい は、 られたおれを に、 と に をしたか? おれは に つてゐても、 の を ひ す に、 に えなかつたためしはない。 は かにかう つた、――「では へでもつれて つて さい。」( き )
の はそれだけではない。それだけならばこの の に、 おれも しみはしまい。しかし は のやうに、 に をとられながら、 の へ かうとすると、 ち を つたなり、 の のおれを さした。「あの を して さい。わたしはあの が きてゐては、あなたと一しよにはゐられません。」―― は が つたやうに、 もかう び てた。「あの を して さい。」――この は のやうに、 でも い の へ、まつ におれを き さうとする。一 でもこの むべき が、 の を た があらうか? 一 でもこの はしい が、 の に れた があらうか? 一 でもこの 、――( る き )その を いた は、 さへ を つてしまつた。「あの を して さい。」―― はさう びながら、 の に つてゐる。 はぢつと を た 、 すとも さぬとも をしない。――と ふか はない に、 は の の へ、 、 りに された、( 、 る き ) は かに を むと、おれの へ をやつた。「あの はどうするつもりだ? すか、それとも けてやるか? は けば い。 すか?」――おれはこの だけでも、 の は してやりたい。( 、 き )
はおれがためらふ に、 か 叫ぶが いか、 ち の へ走り した。 も に びかかつたが、これは さへ へなかつたらしい。おれは 、 のやうに、さう ふ を めてゐた。
は が げ つた 、 や を り げると、一 だけおれの を つた。「 はおれの の だ。」――おれは が の へ、 を してしまう に、かう いたのを えてゐる。その は も かだつた。いや、まだ かの く がする。おれは を きながら、ぢつと を ませて た。が、その も がついて れば、おれ の いてゐる だつたではないか? ( 、 き )
おれはやつと
の から、 れ てた を した。おれの には が した、 が つ つてゐる。おれはそれを にとると、 きにおれの へ した。 か い がおれの へこみ げて る。が、 しみは しもない。 が たくなると、一 あたりがしんとしてしまつた。ああ、 と ふ かさだらう。この の の には、 一 りに ない。 や の に、 しい が つてゐる。 が、――それも に れて る。もう や も えない。おれは に れた 、 い かさに包まれてゐる。その
か び に、おれの へ たものがある。おれはそちらを ようとした。が、おれのまはりには、 か が ちこめてゐる。 か、――その かは えない に、そつと の を いた。 におれの の には、もう一 が れて る。おれはそれぎり に、 の へ んでしまつた。………(大正十年十二月作)
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