芸妓酌婦芸妓置屋営業取締規則

藝妓酌婦藝妓置屋營業取締規則左ノ通定ム
第一條 藝妓(妓生ヲ含ム以下同シ)又ハ酌婦營業ヲ爲サムトスル者ハ本籍、住所、氏名、生年月日、營業地及藝妓ニ在リテハ藝名ヲ記載シタル願書ニ左ノ書面ヲ添附シ警察署長ニ願出テ許可ヲ受クへシ抱主アルトキハ抱主連署ヲ以テ願出ツヘシ
 一 有夫ノ婦ハ夫ノ承諾書、其ノ他ニ在リテハ父ノ承諾書、父知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ若ハ親權ヲ行フコト能ハサルトキハ家ニ在ル母ノ承諾書、母モ死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ若ハ親權ヲ行フコト能ハサルトキハ未成年者ニ在リテハ後見人成年者ニ在リテハ戶主若ハ扶養義務者ノ承諾書又ハ承諾ヲ與フル者ナキコトヲ疏明シタル書面
 二 前號ニ揭タル承諾者ノ印鑑證明書
 三 戶籍謄本
 四 抱主アルトキハ營業及前借金ニ關スル契約書寫
 五 經歷及藝妓又ハ酌婦ヲ爲ス事由ヲ記載シタル書面
 六 健康診斷書
前項第一號ノ承諾ニ付テハ繼父ハ後見人ト看做ス
第一項第四號ノ契約ノ更改ヲ爲シタルトキハ抱主ノ連署ヲ以テ警察署長ニ屆出ツへシ
第二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ警察署長ハ藝妓又ハ酌婦ノ營業ヲ許可スルコトヲ得ス
 一 傳染性疾患アルトキ
 二 風俗ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキ
 三 前條第一項第一號ノ承諾ナキトキ又ハ承諾ヲ與フル者ナキコトヲ疏明セサルトキ
 四 抱主トノ契約不當ナリト認ムルトキ
第三條 藝妓ハ宿屋、料理屋又ハ飮食店ニ酌婦ハ宿屋又ハ飮食店ニ寄寓スルコトヲ得ス
第四條 藝妓又ハ酌婦ハ左ノ各號ヲ遵守スヘシ
 一 宿屋又ハ飮食店ニ於テ營業セサルコト
 二 就業中許可證ヲ携帶スルコト
 三 藝妓置屋又ハ自宅ニ客ヲ誘引セサルコト
第五條 酌婦ハ客席ニ於テ舞踊ヲ爲シ音曲ヲ演奏スルコトヲ得ス
第六條 藝妓又ハ酌婦ハ一泊以上ノ旅行ヲ爲サムトスルトキ又ハ十日以上休業セムトスルトキハ豫メ警察署長ニ屆出ツへシ
休業中ノ者就業シタルトキハ直ニ警察署長ニ屆出ツヘシ
第七條 藝妓又ハ酌婦左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ許可證ヲ添へ十日內ニ警察署長ニ屆出ツへシ
 一 本籍、住所、氏名、藝名ノ變更アリタルトキ
 二 廢業シタルトキ
第八條 警察署長ハ藝妓又ハ酌婦ニ對シ其ノ指定スル醫師又ハ醫生ノ檢診ヲ受ケシメ又ハ健康診斷書ノ提出ヲ命スルコトヲ得
第九條 藝妓置屋營業ヲ爲サムトスル者ハ左ノ各號ヲ具シ警察署長ニ願出テ許可ヲ受クへシ營業所ノ位置ヲ變更セムトスルトキ亦同シ
 一 本籍、住所、氏名、生年月日
 二 屋號アルトキハ屋號
 三 營業所ノ位置
 四 寄寓セシムヘキ藝妓ノ數
 五 建物ノ間取、坪數及藝妓ノ部屋ヲ示シタル平面圖
第十條 藝妓置屋營業者又ハ其ノ同居ノ戶主若ハ家族ハ雇人周旋業ヲ爲スコトヲ得ス 藝妓置屋營業者又ハ其ノ同居ノ戶主若ハ家族ハ同一家屋內ニ於テ宿屋、料理屋、飮食店、貸座敷若ハ遊戲場ノ營業ス爲スコトヲ得ス
第十一條 藝妓置屋營業者ハ左各號ヲ遵守スヘシ
 一 藝妓ヲシテ外部ヨリ見透シ得へキ場所ニ於テ粉粧セシメサルコト
 二 藝妓ノ意思ニ反シテ契約變更若ハ抱主ノ變換ヲ强ヒサルコト
 三 藝妓ヲ强ヒテ就業セシメ其ノ他虐待ヲ爲ササルコト
 四 藝妓ヲシテ濫ニ失費ヲ爲サシメサルコト
 五 濫ニ藝妓ノ契約、廢業、通信、面接ヲ妨ケ又ハ他人ヲシテ妨ケシメサルコト
 六 客引誘引シ又ハ遊興セシメサルコトト
第十二條 藝妓置屋營業者ハ藝妓每ニ貸借計算簿二册ヲ調製シ其ノ一册ヲ藝妓ニ交付シ每月三日迄ニ前月分ノ貸借ニ關スル計算ヲ詳記シ藝妓ト共ニ捺印スへシ但シ他ニ抱主アル藝妓ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十三條 藝妓置屋營業者左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ十日內ニ警察署長ニ屆出ツへシ但シ第二號ノ事項ハ相續人ヨリ屆出ツへシ
 一 本籍、住所、氏名又ハ屋號ヲ變更シタルトキ
 二 營業者死亡シタルトキ
 三 廢業シタルトキ
 四 相續ニ依リ營業ヲ繼承シタルトキ
第十四條 藝妓置屋營業者ハ藝妓死亡シ、變傷シ又ハ行方不明シタルトキハ速ニ警察官ニ屆出ツヘシ
第十五條 藝妓券番ヲ設ケムトスル者ハ營業規程ヲ定メ道知事ニ願出テ許可ヲ受クへシ二人以上共同シテ藝妓券番ヲ設ケムトスルトキハ代表者ヲ定メ出願人ノ連署セル規約ヲモ添附シ願出ツへシ
藝妓券番ノ營業規程ヲ變更セムトスルトキハ前項ノ規定ニ準シ願出ツへシ
藝妓券番ノ規約又ハ代表者ヲ變更シタルトキハ十日內ニ道知事ニ屆出ツヘシ
第十六條 警察官ハ必要アリト認ムルトキハ藝妓置屋若ハ藝妓券番ニ臨檢シ又ハ營業用帳簿ヲ檢査スルコトヲ得
第十七條 警察署長ハ藝妓、酌婦又ハ藝妓置屋營業者ニ對シ風俗取締其ノ他公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
道知事ハ藝妓券番ニ對シ營業規程若ハ代表者ノ變更又ハ許可ノ取消其ノ他取締上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十八條 道知事ハ風俗取締上必要アリト認ムルトキハ藝妓若ハ酌婦ノ居住又ハ藝妓置屋ノ位置ニ付地域ヲ制限スルコトヲ得
第十九條 警察署長ハ藝妓、酌婦又ハ藝妓置屋營業者左ノ各號ノ一ニ該當スト認ムルトキハ營業ヲ停止シ又ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
 一 詐僞ニ因リ許可シタルコトヲ發見シタルトキ
 二 第二條第一號、第二號又ハ第四號ニ該當スト認ムルトキ
 三 第三條乃至第五條又ハ第十條ノ規定ニ違反シタルトキ
 四 第十七條第一項ノ命令又ハ第十八條ノ制限ニ違反シタルトキ
 五 藝妓置屋營業者ニシテ風俗ヲ紊リ若ハ他人ニ名義ヲ貸スノ事實アリト認ムルトキ
第二十條 第十條乃至第十四條、第十六條、第十七條第一項ノ規定及之ニ關スル罰則ノ規定ハ藝妓置屋營業者ニ非サル藝妓ノ抱主又ハ酌婦ノ抱主二之ヲ準用ス
第二十一條 左各號ノ一ニ該當スル者ハ拘留又ハ科料ニ處ス
 一 許可ヲ受ケスシテ藝妓、酌婦若ハ藝妓置屋ノ營業ヲ爲シタルトキ又ハ藝妓置屋營業所ノ位置ヲ變更シタルトキ
 二 第三條乃至第七條、第十條乃至第十四條又ハ第十五條第三項ノ規定ニ違反シタルトキ
 三 第八條、第十七條ノ命令又ハ營業停止ノ命令ニ違反シタルトキ
 四 許可ヲ受ケスシテ藝妓券番ヲ設ケ又ハ營業規程ヲ變更シタルトキ
 五 第十六條ノ規定ニ依ル臨檢又ハ檢查ヲ拒ミタルトキ
 六 第十八條ノ規定依ル制限ニ違反シタルトキ
第十五條第二項及第三項ニ關スル罰則ノ規定ハ代表者ヲ定メタルトキハ之ヲ其ノ代表者ニ適用ス
第二十二條 藝妓置屋營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者若ハ雇人ニシテ其ノ營業ニ關シ本令又ハ本令ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
   附 則
第二十三條 本令ハ大正五年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十四條 本令施行ノ際許可又ハ認可ヲ受ケ現ニ藝妓、酌婦若ハ藝妓置屋ノ營業ヲ爲ス者又ハ藝妓券番ハ本令ニ依リ許可ヲ受ケタルモノト看做ス
第二十五條 本令施行ノ際現ニ藝妓ヲ寄寓セシムル料理屋營業者又ハ其ノ戶主若ハ家族ハ本令施行ノ日ヨリ一月內ニ警察署長ニ願出テ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ本令施行後三年間繼續シテ藝妓置屋營業ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 警察署長ハ土地ノ狀況ニ依リ當分ノ間第三條ノ規定ニ拘ハラス藝妓ノ料理屋ニ寄寓スルコトヲ許可スルコトヲ得

関連資料

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