貸座敷娼妓取締規則
貸座敷娼妓取締規則左ノ通定ム
第一条 貸座敷ノ営業ヲ成サムトスル者ハ左ノ各号ヲ具シ警察署長ニ願出テ許可ヲ受クヘシ
一 本籍、住所、氏名、生年月日
二 屋号アルトキハ屋号
三 営業所ノ位置
前項ノ願書ニハ営業用建物ノ間取、階段、料理場、浴場、厠、汚水排除ノ設備等ノ位置ヲ示シタル平面図ヲ添付スヘシ
営業ノ許可ヲ出願スル者営業用建物ノ新築、増築、改築又ハ大修繕ヲ為シタル後営業用に供セムトスル場合ニ於テハ願書ニ工事ノ着手及落成ヲ記シ且構造仕様書ヲ添付スヘシ
第二条 前条ノ規定ハ座敷営業者営業所ヲ新設シ又ハ位置の変更を為サムトスル場合ニ之ヲ準用ス
貸座敷営業者営業用建物ノ増築、改築、又ハ大修繕ヲ為サムトスルトキハ願書ニ工事ノ着手及落成期限ヲ記載シ前条第二項ニ規定セル平面図並ビニ構造仕様書ヲ添付シ警察署長ニに願出テ許可ヲ受クヘシ
第三条 貸座敷営業ハ道知事ノ指定シタル地域ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第四条 営業用建物ノ構造は左ノ各号ニ依ルヘシ
一 客室ハ換気、採光及保温ノ装置ヲ為シ外部ニ面スル箇所ハ戸締ヲ付シタル雨戸又ハ窓ヲ取付ケ且其ノ間仕切ニハ壁、襖又ハ板戸ヲ用ウルコト
二 階段ハ其ノ幅員内法四尺以上踏面八寸以上蹴上ケ六寸五分以下ト為シ且扶欄ヲ設クルコト
三 二階以上ノ階層ニ在ル客室ニシテ一階層ニ付其ノ坪数十五坪以上アルトキハ毎階層階段各二個以上ヲ設タルコト
四 客室ヲ三階以上ノ階層ニ設クルトキハ建物ノ出入口ハ幅三間以上ノ道路又ハ二十坪以上ノの空地ニ面セシメ且建物ニハ適当ノ場所ニ幅五尺以上ノ非常口ヲ設クルコト
五 非常口ハ外開キ戸又ハ引戸ト為シ其ノ戸締ハ内部ニ之ヲ設クルコト
六 厠ハ調理場カラノ相当ノ距離ヲ保チ且臭気ノ客室ニ及ハサル位置ニ設ケ糞尿溜及其ノ付属装置ハ汚物ノ滲漏セサル様構造スルコト
七 張店ハ道路ヨリ見透シ得サル様構造スルコト
第五条 新築、増築、改築又ハ大修繕ヲ為シタル建物ハ警察署長ノ検査ヲ受ケ其ノ認可ヲ得ルニ非サレハ営業用ニ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第六条 貸座敷営業者又ハ其ノ同居ノ戸主若ハ家族ハ雇人斡旋業ヲ為スコトヲ得ス
貸座敷営業者又ハ其ノ同居の戸主若ハ家族ハ同一家屋内ニ於テ料理屋、飲食店若ハ遊戯場ノ営業ヲ為スコトヲ得ス
第七条 貸座敷営業者ハ左ノ各号ヲ順守スヘシ
一 客室ノ入口ニハ番号又ハ符号ヲ掲示スルコト
二 燈火ニ石油ヲ使用スルトキハ金属製ノ油壷ヲ用ウルコト
三 客室、料理場、洗面所、浴場、洗浄所及厠等ノ清潔ヲ保持スルコト
四 防臭剤ヲ備ヘ厠其ノ他臭気ノ発散スル場所ニ時々散布スルコト
五 客用寝具ハ身体ニ接触スル部分ヲ清潔ナル白布ニテ纏ウコト
六 客ニ供スル飲食器ハ清潔ナル物ヲ用ウルコト
七 客ノ需メナキ飲食物ヲ供シ又ハ不当ノ料金ヲ請求セサルコト
八 客ノ需メナキ場合ニ芸妓(妓生ヲ含ム、以下同シ)、娼妓ヲ侍セシメサルコト
九 通行人ニ対シ遊興ヲ勧誘しないこと
十 学校生徒デアルコトヲ知リテ之ヲ遊興セシメサルコト
十一 客ニ面会ヲ求ムル者アルトキハ故ナク之ヲ隠避シ又ハ其ノ取次ヲ拒マサルコト
十二 客ノ承諾ナクシテ濫ニ他人ヲ客室ニ入ラシメサルコト
十三 伝染性疾患ガアル者ヲシテ客ニ侍セシメ又ハ飲食物、飲食器若ハ寝具ノ取扱ヲ為サシメサルコト
十四 娼妓ノ意志ニ反シテ契約ノ変更又ハ抱主タル貸座敷営業者ノ変換ヲ強ヒサルコト
十五 疾病中又ハ第十八条ノ期間内就業セシメ其ノ他娼妓ノ虐待ヲ為ササルコト
十六 娼妓ヲシテ濫ニ出費ヲ為サシメサルコト
十七 濫ニ娼妓ノ契約、廃業、通信、面接ヲ妨ケ又ハ他人ヲシテ妨ケシメサルコト
第八條 警察署長ハ必要アリト認ムルトキハ貸座敷営業者ニに対シ左ノ事項ヲ命スルコト得
一 防火壁ヲ設ケ又ハ煙突其ノ他火氣ニ接近スウル場所ニ防火設備ヲ為スコト
二 消火器又ハ消火剤ヲ備ヘ適当ノ場所ニ配置シ常ニ有効ニコレヲ保持スルコト
三 三階以上ノ階層ニ在ル客室ヨリ容易ニ屋外ヘ出ツルコトヲ得ヘキ避難設備ヲ設クルコト
四 非常口ニハ「非常口」ナル文字ヲ記シタル標札ヲ掲ケ夜間ハ標燈ヲ灯スルコト
五 各室ヨリ非常口ニ通スル要所ニハ非常口ヘノ方向ヲ指示シタル表示ヲ為スコト
六 洗浄所ヲ設ケ、必要ナル器具及薬品ヲ備フルコト
第九条 貸座敷営業者ハ付属様式ニ依リ遊客名簿ヲ調製シ使用前警察署長ノ検印ヲ受ケ遊客アル毎ニ記載ヲ為スコト
第10条 貸座敷営業者ハ娼妓毎ニ貸借計算簿二冊ヲ調製シ其ノ一冊ヲ娼妓ニ交付シ、毎月三日迄ニ前月分ノ貸借ニ関スル計算ヲ詳記シ娼妓ト共ニ捺印スヘシ
第十一条 貸座敷営業者ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ十日以内ニ警察署長に届出ツヘシ但シ四号ノ事項ハ相続人ヨリ届出ツヘシ
一 本籍、住所、氏名又ハ屋号ヲ変更シタルトキ
二 営業ヲ開始シタルトキ
三 廃業又ハ十日以上休業シタルトキ
四 営業者死亡シタルトキ
五 相続ニ因りリ営業ヲ継承シタルトキ
第12条 貸座敷営業者雇人ヲ雇入シ又ハ解雇シタルトキハ十日内ニ警察署長ニ届出ツヘシ雇人ニ非サル同居人ヲ営業上使用スルトキ亦同シ
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テ貸座敷営業者ハ速ニ警察官ニ届出ツヘシ
一 身分不相応ノ浪費ヲ為ス者アルトキ
二 挙動不審ト認ムル者アルトキ
三 客ノ変死傷アリタルトキ
四 客ノ所持金品ノ盗難又ハ紛失アリタルトキ
五 娼妓死亡シ若ハ変傷シ又ハ行方不明シタルトキ
第十四条 貸座敷営業者客ノ所持品ヲ遊興費ノ支払アル迄預リ又ハ其ノ代償トシテ受領セムトスルトキハ予メ警察官に届出ツヘシ
第十五條 警察察署長必要アリト認ムルトキハ貸座敷營業者ニ対シ本人又ハ其ノ戸主、家族若ハ雇人ノ健康診断書ノ提出ヲ命スルコト得
第十六条 娼妓稼ヲ為サムトスル者ハ本籍、住所、氏名、妓名、生年月日及稼場所ヲ記載シ且貸座敷営業者ノ連署シタル願書ニ左ノ書面ヲ添付シ自ラ出頭シ警察署長ニ願出テ許可ヲ受クヘシ
一 父の承諾書、父知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ若ハ親権ヲ行ウコト能ハサルトキハ家ニ居ル母ノ承諾書、母モ死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ若ハ親権ヲ行ウコト能ハサルトキハ未成年者ニ在リテハ後見人成年者ニ在リテハ戸主若ハ扶養義務者ノ承諾書又ハ承諾書ヲ与フル者ナキコトヲ疏明した書面
二 前号ニ掲クル承諾者ノ印鑑証明書
三 戸籍謄本
四 娼妓稼及前借金ニ関スル契約書写
五 経歴及娼妓ヲ為ス事由ヲ記載シタル書面
六 警察署長ノ指定シタル医師又ハ医生ノ健康診断書
前項第一号ノ承諾ニ付テハ継父ハ後見人ト看做ス
前項第四号ノ契約ノ変更ヲ為シタルトキハ貸座敷営業者ノ連署ヲ以テ警察署長ニ届出ツヘシ
第十七条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対テハ娼妓稼ヲ許可スルコト得ス
一 十七歳未満ノ者
二 伝染病疾患アル者
三 前項第一項第一号に載クル者ノ承諾ナキトキ又ハ承諾ヲ与フル者ナキコトヲ疏明セサルトキ
四 娼妓稼又ハ前借金ニ関スル契約不当ナリト認ムルトキ
有夫ノ婦ハ娼妓稼ヲ為スコトヲ得ス
第18条 妊娠六カ月以後出産後二ヶ月以内ニ至ル期間ハ娼妓稼ヲ為スコトヲ得ス
第十九条 貸座席内ニ非サシハ娼妓稼ヲ為スコトヲ得ス
娼妓ハ他ノ営業ヲ為スコトヲ得ス但シ貸座敷内ニ於テ芸妓ヲ為スハ此ノ限ニ在ラス
第20条 一九三五年一月削除
第21条 娼妓ハ貸座敷外ニ寄寓シ又ハ宿泊スルコトヲ得ス但シ父母ノ看護、転地療養其ノ他己ムヲ得サル事由ニ依り警察署長ノ許可ヲ受ケタル場合ハコノ限ニ在ラス
第22条 娼妓は、左ノ各号ヲ順守スヘシ
一 就業中、許可證及健康診断書ヲ携帯スルコト
二 通行人ニ対シ遊興ヲ勧誘セサルコト
三 客席ニ於テ舞踊ヲ為シ音曲ヲ演奏セサルコト
第23条 娼妓ハ定期又ハ臨時ニ健康診断ヲ受クヘシ
健康診断書、健康診断施行ノ場所及定期健康診断施行ノ期日ハ警察署長之ヲ指定ス
第二十四条 左ノ各号一ニ該当スル場合ニ於テハ娼妓ハ臨時ニ健康診断ヲ受クヘシ但シ前診断ノ時ヨリ次期ノ定期診断施行期日ノ期日ニ至ル間ニ於テ第一号又ハ第二号ニ該当スル場合ハコノ限リニ在ラス
一 娼妓許可後始メテ稼ニ就カムトスルトキ
二 休業後再ヒ稼ニ就カムトスルトキ
三 疾病ニ罹タルコトヲ自覚シ又ハ貸座敷営業者ヨリ注意ヲ受ケタタルトキ
四 警察署長ノ命令アリタルトキ
第二十五条 前条第一号の場合ニ於テ健康診断ヲ受ケタルトキハ警察署長ヨリ健康診断書ノ下付ヲ受ケ定期又ハ臨時ノ健康診断ノ際之ニ證印ヲ受クヘシ
第二十六条 娼妓疾病ノタメ健康診断所ニ出頭能ハサルトキハ医師ノ診断書ヲ添ヘ警察署長ニ届出ツヘシ此ノ場合ニ於テ警察署長必要アリト認ムリトキハ貸座敷ニ就キ健康診断ヲ行ウヘシ
第二十一条但書ノ場合ニ在リテハ警察署長ハ健康診断ヲ行ハサルコトヲ得
第二十七条 健康診断ニ依リ娼妓稼ニ堪ヘス又ハ伝染性疾病アリト認メラレタルトキハ治療ノ上健康診断ヲ受クルニ非サレハ稼ニ就クコトヲ得ス
健康診断ニ依リ伝染性疾患アリト認メラレタル娼妓ハ警察署長ノ指示ニ従ヒ治療ヲ受クヘシ
第二十八条 娼妓ハ本籍、住所、氏名又ハ妓名ニ変更アリタルトキハ十日以内ニ許可證及健康診断書ヲ添ヘ警察署長ニ届出ツヘシ
許可證若ハ健康診断書ヲ忘失、棄損シ又ハ健康診断書ノ使用ヲ終リタルトキハ其ノ事由ヲ具シ警察署長ニ再交付又ハ書換ヲ請ウヘシ
娼妓前条ノ場合又ハ妊娠分娩ニ因リ休業スルトキハ直ニ健康診断書ヲ警察署長ニ提出スヘシ
第二十九条 娼妓許可後始メテ稼ニ就カムトスルトキハ予メ警察署長ニ届出ツヘシ
第二十七条ニ規定シタル事由又ハ妊娠分娩ニヨリ因リ休業シタル後娼妓再ヒ稼ニ就カムトスルトキハ警察署長ニ届出テ健康診断書ノ還付ヲ受クヘシ
娼妓廃業シタルトキハ直ニ許可證ヲ添ヘ警察署長ニ届出ツヘシ
第三十条 警察官ハ必要アリト認ムルトキハ貸座敷ニ臨検シ又ハ営業用帳簿ヲ検査スルコトヲ得
第三十一条 警察署長ハ貸座敷営業者又ハ娼妓ニ対シ公衆衛生、風俗取締其ノ他公益上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第三十二条 貸座敷営業ノ許可ヲ受ケタル後三月以上開業セス又ハ開業後引続休業三月以上ニ亙リタルトキハ警察署長ハ許可ヲ取消スコトヲ得
第一条第三項ニ該当スル場合ニ於テ工事着手期限マデニ工事ニ着手セサルトキ、落成期限ヲ経過スルモ竣工セサルトキ、営業用建物ノ建築構造仕様書ト異ナリ営業用ニ適セサルモノト認ムルトキ又ハ工事竣工後三月内ニ営業ヲ開始セサルトキ亦前項ニ同シ
前二項ノ規定ハ貸座敷ノ新設又ハ位置ノ変更ヲ許可シタル場合ニ之ヲ準用スル
第三十三条 警察署長ハ貸座敷営業者又ハ娼妓左ノ各号ノ一ニ該当スト認ムルトキハ其ノ業ヲ停止シ又ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
一 詐偽ニ因リ許可シタルコトヲ発見シタルトキ
二 第五条、第六条、第十八条、第十九条、第二十一条、第二十七条ノ規定ニ違反シタルトキ
三 第八条又ハ第三十一条ノ命令ニ違反シタルトキ
四 第十七条の第二号又ハ第四号ニ該当スト認ムルトキ
五 貸座敷営業者ニシテ他人ニ名義ヲ貸スノ事実アリト認ムルトキ
第三十四条 貸座敷営業者組合ヲ設ケムトスルトキハ規約ヲ作リ警察署長ノ認可ヲ受クヘシ其ノ規約ヲ変更セムトスルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ組合ノ区域二以上ノ警察署管轄区域ニ跨ルトキハ道知事ノ認可ヲ受クヘシ
第三十五条 組合ノ役員ノ選任アリタルトキ又ハ其ノ変更アリタルトキハ組合ヲ代表スル役員ハ十日内ニ前条第二項ノ場合ニ在リテハ道知事其ノ他ノ場合ハ警察署長ニ届出ツヘシ
第三十六条 組合ノ設置ヲ認可シタル道知事又ハ警察署長ハ組合ニ対シ組合規約若ハ役員ノ変更、組合ノ解散其ノ他取締上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第三十七条 警察署長ハ建物ノ構造ニ依リ第四条ノ規定ニ拘ラス第一条若ハ第二条ノ許可又ハ第五条ノ認可ヲ為スコトヲ得
第三十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ拘留又ハ科料ニ処ス
一 許可ヲ受ケスシテ貸座敷営業ヲ為シタルトキ又ハ営業所ヲ新設シ若ハ其ノ位置ヲ変更シタルトキ
二 第五条乃至第七条、第九条乃至第十四条、第十六条第二項、第十八条乃至第二十二条、第二十三条第一項、第二十四条、第二十五条、第二十六条第一項又ハ第二十七条乃至第二十九条ニ違反シタルトキ
三 第八条、第十五条、第三十一条ノ命令又ハ営業停止ノ命令ニ違反シタルトキ
四 第三十条ノ規定ニヨル臨検又ハ検査ヲ拒否シタルトキ
第三十九条 貸座敷営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居人若ハ雇人ニシテ其ノ営業ニ関シ、本令又ハ本令ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス
附則
第四十条 本令ハ大正五年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第四十一条 本令施行前許可ヲ受ケ現ニ貸座敷営業又ハ娼妓稼ヲ為ス者ハ其ノ名称ノ如何ヲ問ハス本令ニ依リ貸座敷営業又ハ娼妓ノ許可ヲ受ケタル者ト見做ス
前項ニ規定スル貸座敷営業者又ハ娼妓稼ヲ為ス者ハ道知事之ヲ指定ス
本令施行前為シタル営業所ノ新設若ハ位置ノ変更又ハ営業用建物ノ増築、改築若ハ大修繕ノ許可ハ本令ニ依リ為シタル許可ト見做ス
警察署長ハ第一項ノ貸座敷営業者ニ対シ当分ノ間本令施行後第四条ノ規定ヲ適用セサルコト得
第四十二条 道知事ハ朝鮮人娼妓ノ稼業ヲ目的トスル貸座敷営業者ニ限リ当分ノ間第三条ノ規定ヲ適用セサルコト得
前項ノ場合ニ於テ第一条ノ出願ヲ為サムトスルトキハ願書ニ営業場所付近ノ見取図ヲ添付スヘシ
第一項ニ規定スル貸座敷営業者ハ娼妓ニシテ外部ヨリ見透シ得ヘキ場所ニ於テ粉粧ヲ為サシメ又ハ店頭ニ於テ座列若ハ徘徊セシムルコト得ス
第四十三条 一九三五年一月一日削除
第四十四条 第四十一条ノ貸座敷営業者ハ本令施行ノ日ヨリ一月内ニ第十二条ニ準シ届出ヲ為スヘシ但シ既ニ届出ヲ為シタル雇人又ハ同居者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十五条 第四十二条第三項、前条ニ違反シタル者ハ拘留又ハ科料ニ処ス
改正:貸座敷娼妓取締規則朝鮮總督府令第百十四號 : 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/2958871/1/2
貸座敷娼妓取締規則中左ノ通改正ス
昭和九年十二月十二日
朝鮮總督 宇垣 一成
第一條第一項中
「警察署ノ事務ヲ取扱フ憲兵分隊、憲兵分遣所ノ長ヲ含ム以下同シ」ヲ削ル
第三條、第三十四條第二項、第三十五條、第三十六條及第四十二條第一項中「警務部長」ヲ「道知事」ニ改ム
第十三條中「又ハ憲兵」ヲ削リ、同條第五號中「逃亡シタルトキ」ヲ「行衞不明ト爲リタルトキ」ニ改ム
第十四條及第三十條中「又ハ憲兵」ヲ削ル
第十六條第一項第三號中「又ハ民籍謄本」ヲ削ル
第二十條 削除
第四十三條 削除
第四十五條中「第四十三條二項」ヲ削ル
附 則
本令ハ昭和十年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
付録様式
到着月日時 | 出発月日時 | 人相又ハ着衣ノ特徴 | 招聘セシ娼妓ノ妓名 | 遊興費 | 住所 | 職業 | 氏名年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
記載例
一. 外国人ハ住所ノ外其ノ欄ニ国籍ヲ記載スルコト
二. 遊興一昼夜以上ニ亙ルモノハ一昼夜毎ニ遊興費ヲ該当欄ニ記載スルコト
付録A 朝鮮半島における風俗営業および衛生取締記録
編集A.1 認可売春業に従事した女性、仲介業者および稼業場所の数
編集Table A.1に、朝鮮半島で認可売春業に従事した女性(娼妓、芸妓および酌婦)、仲介業および稼業場所(貸座敷および料理屋)の1936年[1], 1939年[2]、 1940年[3] および 1942年[4]の数を示す。
西暦年 | 内訳 | 民族名 | |||
---|---|---|---|---|---|
内地人 | 朝鮮人 | 外国人 | 合計 | ||
1936 | 娼妓 | 1,921 | 1,653 | 1 | 3,575 |
芸妓 | 2,271 | 4,712 | 0 | 6,983 | |
酌婦 | 385 | 1,364 | 1 | 1,749 | |
仲介業 | 212 | 3,085 | 0 | 3,297 | |
貸座敷 | 241 | 243 | 1 | 465 | |
料理屋 | 696 | 1,075 | 175 | 1,946 | |
1939 | 娼妓 | 1,845 | 1,866 | 1 | 3,712 |
芸妓 | 2,226 | 6,122 | 0 | 8,348 | |
酌婦 | 351 | 1,145 | 0 | 1,796 | |
仲介業 | 197 | 3,380 | 0 | 3,577 | |
貸座敷 | 235 | 303 | 1 | 539 | |
料理屋 | 597 | 1,154 | 82 | 1,833 | |
1940 | 娼妓 | 1,777 | 2,157 | 0 | 3,934 |
芸妓 | 2,280 | 6,023 | 0 | 8,305 | |
酌婦 | 216 | 1,400 | 0 | 1,616 | |
仲介業 | 222 | 3,557 | 0 | 3,781 | |
貸座敷 | 223 | 247 | 0 | 480 | |
料理屋 | 567 | 1,122 | 89 | 1,778 | |
1941 | 娼妓 | 1,774 | 2,076 | 0 | 3,850 |
芸妓 | 1,797 | 4,490 | 0 | 6,287 | |
酌婦 | 240 | 1,376 | 0 | 1,616 | |
仲介業 | 194 | 3,537 | 1 | 3,732 | |
貸座敷 | 219 | 250 | 0 | 469 | |
料理屋 | 515 | 1,007 | 94 | 1,616 |
A.2 風俗営業に従事した女性の性病検査数、感染率および遊郭数
編集表A. 2に、朝鮮半島での1933年から1940年[5]の間の風俗営業に従事した女性の性病検査数とその感染率、ならびに遊郭数を示す。
西暦年 | 総検査数 | 感染率 (%) | 遊郭数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
娼妓 | 芸妓 | 酌婦 | 娼妓 | 芸妓 | 酌婦 | ||
1933 | 144,547 | 78,696 | 67,227 | 5.8 | 4.0 | 4.3 | 27 |
1934 | 144,144 | 83,512 | 71,645 | 5.6 | 3.4 | 4.6 | 28 |
1935 | 163,870 | 85,988 | 73,088 | 5.3 | 4.2 | 4.9 | 28 |
1936 | 179,911 | 97,547 | 89,035 | 4.9 | 4.1 | 4.5 | 29 |
1937 | 82,237 | 112,139 | 88,068 | 4.9 | 4.2 | 4.7 | 30 |
1938 | 176,736 | 109,377 | 79,563 | 4.3 | 3.6 | 4.3 | 29 |
1939 | 82,568 | 109,889 | 78,262 | 4.5 | 5.2 | 3.9 | 29 |
1940 | 221,182 | 110,156 | 76,111 | 4.3 | 3.9 | 3.9 | 29 |
付録B 朝鮮半島における犯罪取締記録
編集B.1 略取・誘拐罪の取締記録
編集表B.1に、1927年[6]、1930年[7]、1938年[8]、1939年[9]、1940年[10]、1942年[11]における略取・誘拐(略取:暴行や脅しにより連れ去ること、誘拐:騙しや誘惑により連れ去ること)罪の警察取締記録を示す。
西暦年 | 犯罪件数 | 検挙件数 | 検挙人数 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 内地人 | 朝鮮人 | その他 | |||
1927 | 1,836 | 1,896 | 2,882 | 60 | 2,814 | 8 |
1930 | 2,035 | 2,075 | 3,227 | 43 | 3,168 | 16 |
1938 | 1,123 | 1,136 | 1,709 | 10 | 1,699 | 0 |
1939 | 1,191 | 1,188 | 1,865 | 16 | 1,849 | 0 |
1940 | 943 | 951 | 1,470 | 16 | 1,454 | 0 |
1942 | 513 | 514 | 747 | 1 | 748 | 0 |
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和11年)”. p. 358. 2023年12月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和14年)”. p. 366. 2023年12月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和15年)”. p. 314. 2023年12月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和17年)”. p. 260. 2023年12月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和 17年)”. p. 276-277. 2023年12月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和2年)”. p. 347. 2024年10月10日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和5年)”. p. 345. 2024年10月1日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和13年)”. p. 306. 2024年10月1日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和14年)”. p. 353. 2024年10月1日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和15年)”. p. 301. 2024年10月1日閲覧。
- ↑ “朝鮮総督府統計年報(昭和17年)”. p. 247. 2024年10月1日閲覧。